不健全鎮守府   作:犬魚

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キラキラのアイドルとは、鎧袖一触

【登場人物】

提督(128)
アイドルに詳しくない大人、好きなアイドルは西条き●りちゃん

五月雨(42)
好きなアイドルはST☆RISH、プリ●イには毎年必ず申し込んでおり、意外とミーハー

那珂
通称NAKA、かつては勝者じゃなくて勇者になりたかった


提督と五月雨とアイドル

世の中にはアイドルという名の職業がある

 

それは、歌って踊って笑顔を振り撒く事を義務付けられた最高にキラキラした職業であり、キラキラしていない者には基本的には向いていない職業でもある…

 

‐‐‐

 

執務棟や食堂の掲示板、本来は張り紙禁止の場所に至るまで最近よく見かけるポスターがある、大きく死刑執行と書かれた文字と、階段を登る誰かの後ろ姿…

 

「最近よく見るけどなんだコレ?」

 

「あぁ、NAKAさんのLIVEイベントですよ」

 

「何がNAKAさんだ、舐めてんのか」

 

俺は朝から五月雨と共に倉庫で貯めていた資材を指差し確認でチェック作業を行い、作業も終わったのでメシでも食いに行くかと廊下を歩いていた

 

「NANAじゃあるまいし、何がNAKAさんだ」

 

「意外と人気あるんですよ、見た事ないんですか?」

 

「あるよ、前にチラッと見た」

 

たしか去年だったか、なんか夜中に体育館がうるせぇなと思って見に行ったら、なんか壇上でサバトみたいな儀式やってて、オーディエンス全員マリファナでキマったヤツみたいに頭振ってたな…

 

「まぁ、アイドルのステージじゃなかったな」

 

「まぁ、アイドルのステージとは言い難いですね」

 

俺の知っているキラキラなアイドルはみんなを笑顔にし、その対価として財布から金を巻き上げる仕事だが、NAKAのステージは違う、ギラギラとした野心と欲望、傲慢・強欲・嫉妬・憤怒・色欲・、七つ中、五つも大罪に該当するまさしく大罪フェスティバルだ

 

「とりあえずラーメンでも食うか」

 

「いいですね、ラーメン」

 

「俺トンコツラーメンにするから俺のメンマとお前のNARUTO交換しよーぜ」

 

「イヤですよ、ってか、それトンコツラーメンじゃなくてもできるんじゃないですか?」

 

「バカ野郎、俺はキュウシュウ男児だからラーメンはホカホカのトンコツラーメンしか食わねぇんだよ」

 

豚骨ラーメンは濃いわ臭いわで苦手な人は本当に苦手らしく、先日、ポーラと飲んだ際にシメにラーメンでも食うかーとラーメン屋に入った際、ポーラはその濃厚でプリプリの●ーメンの臭気にアテられ、光るゲロをブチ撒け、危うく出禁になりかけたが、店員に気絶中のポーラのおっぱい揉ませたら許してくれた

 

「フッ…」

 

「ん?」

 

「どうしました?って…ゲッ、NAKAさん」

 

俺達が進む廊下の先、その丁度曲がり角の辺りで背中を壁に預けて両腕を組んだ那珂が立っていた

 

「久しぶりね、SAMIDAREちゃん」

 

「お久しぶりです」

 

三代目メイジン・カワウチこと川内姉妹の三女、那珂、軍なんてヤバい組織からさっさと抜け、一流のアイドルとしてちやほやされながら生きたい難しい年頃

 

「この間の話、考えてくれたかしら?」

 

「その話は断ったはずですが…」

 

「フッ、そこをなんとか!!」

 

「だから!イヤですって!」

 

「オイ、なんの話だ?」

 

なんだ?五月雨と那珂って実は仲良かったのか?意外だな

 

「私はただみんなに教えてあげたいのよ、SAMIDAREちゃんが作った歌で輝けるのはこの世でたった一人…………このNAKAだけだってことをなァ!!」

 

「え?オマエ作曲とか出来るの?」

 

「え?えぇ…まぁ、ちょっとだけですが」

 

コイツ、クソマズいコーヒー淹れる事以外はワリとなんでもこなせるんだなと感心していると、那珂が驚愕した顔で膝をガクガクさせていた

 

「テイトク、まさか知らなかったんですか!?」

 

「知らねぇよ、コイツの才能とか興味ねぇし」

 

「な……なんてコト!これほどの才能を埋もれたままにしているなんて!大罪!大罪ですよ!」

 

「だから、知ったコトじゃねーし」

 

「SAMIDAREちゃんはあの大ヒットソング、KAGAMI/SAKIを作ったんですよ!」

 

「いや、知らねーし」

 

そういや一時期、基地内でスラッシュメタルみたいな曲が流行ってたな、なんかやたらファックとか言う単語が出てくる些かアレな曲だった気がするが………そうそう、サビの部分でめっちゃ早口でKAGA‐KAGA連呼するんだよ、10秒間に100KAGAらしいが…

 

「アレ、オマエ作ったの?」

 

「えぇ、加賀さんから頼まれまして」

 

「ふ~ん」

 

「なんで加賀さんは良くて私には作ってくれないの!?」

 

「う~ん……気分ですかね?」

 

「気分屋ッ!?」

 

音楽に関してはよくわからんが、まぁ何事も気分と言うものは大事だろう、これは色々なものにも言える事だが気分の良し悪しで結果が大きく変わったりするものだ

 

「そう言うワケでお引き取りください、私達は今からラーメン食べに行くので」

 

「クッ!私は諦めないよ!」

 

那珂は諦めないと台詞を残し、窓ガラスを開けて元気良く飛び降りた、たしかここ二階だった気がするが……アイツ、アイドル路線で生きたいのかロックに生きたいのかよくわかんねぇな

 

「お腹空きましたし早く行きましょう」

 

「そうだな」

 

 

その後、食堂に行くと壁に背を預けて両腕を組んだ加賀が立っていたが、もしかして流行っているのだろうか?


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