【登場人物】
提督(127)
風紀に厳しい大人
天津風
陽炎型9番艦のホロいやつ、下着の発想が天才のそれ、意外と真面目
連装砲くん
天津風に憑いてる超カッコイイロボ
上から次期作戦についてのお達しが書かれたFAXが届き、どうにも今回は北方海域辺りがどうのこうの書かれていたが……北方海域か、イヤな事を思い出させやがる
「フーッ~………ん?」
イヤな事を思い出しつつ、歩き煙草しながら工廠の裏辺りを歩いていると、連装砲くんが草刈りしながらその辺をウロウロしていた
「よぉ、連装砲くん、今日もメチャシブいな」
連装砲くんは俺に気付いて一旦作業を停止し、二秒ほど目を点滅させ、再び除草作業を開始した、実に働き者で提督としては感心だ
「連装砲くん、どこに行っ………ゲッ!提督っ」
「なにがゲッ!だ」
除草作業を続ける連装砲くんを捜していたのか、建物の裏から痴女みたいな格好をしたヤツが現れた
「だいたい、誰だオマエは?敵か?」
「天津風よっ!」
「天津風ェ~…?聞き覚えがない名前だな、新手の敵か?」
「なんで聞き覚えがないのよ!陽炎型9番艦の天津風っ!ケッコー前からこの基地に居ますケドっ!」
陽炎型…?陽炎型はなんかいっぱい居るし、似てない姉妹が多いので未だに区別がつかねぇんだよな、とりあえずどちら様なのか困った時は陽炎型ですか?と尋ねればいいと飲みの席で誰かが言ってたが…
「…言われてみると、陽炎型に見えなくもないな」
「言われなくても陽炎型よ」
「……あ、そうか!オマエ!アレだろ?なんかいつも連装砲くんの近くをウロチョロしてるオマケみたいなヤツか!」
「誰がオマケよっ!逆よ!逆っ!私の近くに連装砲くんが居るの!むしろ、連装砲くんが私のオマケなのよっ!」
「嘘つくんじゃないよこの痴女は、そもそも誰だオマエは?」
「天津風よっ!あ・ま・つ・か・ぜ!!ってか!誰が痴女よっ!」
天津風を名乗る痴女は頭の煙突みたいなものから黒い煙を噴出し、地面を力強く踏みつけて抗議してきた
「そんな朝慌ててスカート穿き忘れてきたみたいな服で痴女じゃないと言われてもなぁ」
「コレはこーゆー服なのよっ!!」
「嘘つくんじゃないよこの子は、そんないやらしい制服、エロゲーでしか見たコトないよ」
「ッ……じゃあ、雪風はどーなのよ?雪風は?私のとほぼ同じデザインの制服よ!あの子もスカート穿いてないじゃない?あの子も痴女なの?」
「雪風様はいいんだよ」
「様付け!?」
少々素行や成績に問題があっても力さえあれば全てが許される、圧倒的な力と才能の前では時にルールすらねじ曲げてしまう事すらある、常に勝ち続ける限りあらゆる我儘が通る、勝者とは絶対であり、雪風はまさにその勝者だ、彼女がスカートを穿かないスタイルを貫くのならばそれは仕方のない事だ
「じゃ…時津風は?あの子だって私のと似たデザイ……」
「俺は愛犬家だからな」
「犬じゃないわよっ!たしかに犬っぽいとこがある……いや、なんかウチのは人語すら怪しいけど、犬じゃないからっ!」
そういやこないだ、長門の奴が嫌がる時津風を歯医者に連れて行ってたな、まだ治ってなかったのか、虫歯…
「あ!そーだ、島風!島風がいるじゃない!あの子こそ痴女でしょ!あの露出狂は間違いなくどこに出しても恥ずかしい痴女そのものでしょ!まさに痴女の中の痴女、痴女オブザ痴女よっ!私なんかメじゃないわ!」
コイツ、どんだけ同僚をディスってるんだ…まぁ、あの穿く事の意味を考えさせられるスタイリッシュ露出ファッションはなかなか出来る事じゃない
「だが、天津丼くん」
「誰が天津丼よ!天津風っ!あ・ま・つ・か・ぜ!!次間違えたらその辺の石で殴るわよ」
ディーゼル機関車みたいに頭から黒煙をモクモク吐き、イライラした様子でこっちを睨んできた
「島風はスカート穿いてるから風紀的には問題無いのだよ」
「問題だらけよっ!!アレのどこが風紀的に大丈夫なのよ!ナニ?スカート?スカート付き?スカート付きならOKなの?スカート付きが大丈夫だってならド●だって許されるわ!」
「オマエ、●ムとか知ってんのな」
黒煙を撒き散らしてエキサイトする天津風の足元に、その辺の除草作業を終えたらしい連装砲くんがトコトコとやって来て、目を点滅させた
「あ、うん、終わったの?お疲れ様」
「お疲れ様なのだよ、連装砲くん」
しかし、連装砲くんに、除草機能があるとは知らなかったのだよ
「ハァ………まぁいいわ、なんか無駄に疲れたし、帰りましょ、連装砲くん」
「まぁ待ちたまえ天津風くん」
「あ゛ぁ?天津風よっ!………ん?」
「これで連装砲くんと美味しいものでも食べなさい」
俺は財布から紙幣を数枚取り出して手渡しやった
「ありがと……って!ちよ!コレちょっと多すぎなんじゃ…」
「それでスカートでも買うといい」
提督は最初からわかっていたのだよ、スカートを買うお金がなくて困っていたがそれを恥ずかしいと感じ、なかなか言い出す事ができなかったのだろう…
俺はできる限り彼女の尊厳を尊重し、爽やかな笑顔で…
「………だからっ!!こーゆーデザインだって言ってるでしょ!!」
…二時間後、たまたま通りがかった明石が頭部から血を流す俺を発見、医務室に緊急搬送された
なんでも、その辺で拾った固い石のようなもので頭を強打されていたらしい………よく覚えてないが、おそらく、深海の魔の手がここまで伸びていたのだろう、恐ろしい事だ