【登場人物】
提督(126)
不健康、だいたいモクモクしてるモクモク人間
萩風(2)
陽炎型17番艦、人と地球に優しい
嵐(2)
陽炎型16番艦、イケメン、腰のベルトからたまにク●ス・ペプラーみたいなイイ声がでる
「お待たせしました、シイタケの炒め物とシイタケの煮物とシイタケのサラダと…」
テーブルの上に次々と並ぶ並ぶシイタケの載った皿、かつてこれほどまでに執拗にシイタケを食わせようとする皿を見た事があっただろうか…
「あと、デザートのシイタケです」
ハジケる笑顔で俺達の前にシイタケを並べ終えた萩風はさぁおあがりよと言いたげに胸を張っている
「嵐クン」
「なんすかァ?」
「コレはナニかね?」
「シイタケすかねェ?」
「ではコレは?」
「シイタケすかねェ?」
何故こんな事になってしまったのか……話は小一時間ほど前に遡る
‐‐‐
昼下がり、今日はガッツリとカツドゥーンでも食うかと考えながら廊下を歩いていると、執務棟の外にあるベンチで何かのパンフレットみたいなものを片手にアツく喋る萩風と、それをゲンナリとした様子で聞く嵐の2人が座っていた
「よぉ、ナニやってんだオマエら?」
「あ、テイトク」
陽炎型駆逐艦、萩風
どことなくキラキラしたアイドルみたいな顔をしている気がする見た目は美少女、舞風曰く、脱げばスゴい健康的なドエロスボディらしい
「お、丁度いいトコに…ちょっとテイトク、オレを助けてやってくださいよォ~」
同じく陽炎型駆逐艦、嵐
ご覧の通りのイケメンで、その、あまりのイケメンぶりに初めて会った際、チ●ポついてるんですか?と尋ね、白手袋が赤手袋になるまで殴られた
「聞いてください、嵐がさっきコーラ飲んでたんですよ!」
「…はぁ?」
「別にいいじゃんかよォ~」
「いいワケないでしょ!嵐!アナタ死にたいの!?」
萩風は嵐の胸ぐらを掴みその身体をガックンガックンと揺らす
「まぁ、そうエキサイトせず落ち着きたまえ萩風クン、たかがコーラを飲んだ程度で死ぬワケが…」
「あんな黒い液体が身体にいいワケないでしょ!ねぇ?死にたいの嵐!?ねぇ!?」
「ちょ!揺らすのやめッ!はな…ッ!ちょ!タスケテー!」
更にエキサイトする萩風は嵐の身体だけでなく、確実に脳を揺らし、嵐は今やグニャグニャの世界へ足を踏み入れていた
「黒いだけならまだしも!あんなシュワシュワした液体を体の中に入れてタダで済むわけないでしょ!死ぬわよアナタ!わかってるの?ねぇ?死ぬのよ!?」
「まぁ待ちたまえ萩風クン、少し落ち着いて」
「ハッ!?………私ったらついエキサイトして、嵐ッ!?どうしたの嵐ッ!どうしてそんなにグッタリしてるの!?」
「おま……オマ…エが揺らすからだろ~がよォ~…」
「コーラね!やっぱりコーラがいけなかったのね!だからあれほどコーラなんて飲んじゃいけないって日頃から口を酸っぱくして言ってたのに…」
「ッ………ちげーし、っか離せよ、殺す気か」
「あ、ごめんなさい、私ったらついエキサイトして」
「ついエキサイトが多過ぎなんだよォ…」
健康オタクとは聞いていたが、これはなかなかエキサイティングな健康ぶりだな
「テイトクは今からメシっすかァ?」
「あぁ、たまにはカツドゥーンでも食おうと思ってな」
「カツドゥーンっすかァ~いいっすねェ~」
俺と嵐はアツアツのカツドゥーンを思い浮かべ、身体中のグルメ細胞が今すぐこの空腹を満たしたいと涎を垂らした
「いいワケないでしょ!!」
しかし、そんな俺達の活性化するグルメ細胞を力業で黙らせる萩風の両腕が俺達の首を締め上げた、コ…コイツ!この健康的な細腕でなんと言うパワーだ…ッ!
「あんなカロリーの塊みたいなモノが食べたいの?カロリーの暴君、いえ!カロリーモンスターなのよ!!豚肉!卵!タマネギ!出汁!醤油!砂糖!米!これだけ一度に人体に加わってタダで済むハズないでしょ!………アナタ達死ぬわよ?」
「ぐるッ!ぐるグルぐる゛じぃ!!」
「ギブッ!ギブギブギブ!ハギェ!ギバーップ!!」
「ハッ!?………私ったらまたエキサイトして、ごめんなさい」
「殺す気かァ!」
「…まぁ、萩風クンの言わんとするコトもわからんではないが、たまには良いじゃないかね?」
「そうですね、スイマセン、私ったらカッとなりやすいタイプで…」
「そうだぜ、こないだなんてちょっとピザポ●ト食ってただけで手袋が赤くなるまで殴られたしなァ」
「あれは嵐が悪いのよ、おやつには炒った豆を用意してたでしょ?だいたいあの袋菓子どうしたの?なんであんなの持ってたの?どこで買ったの?明石さん?明石さんのお店?明石さんのお店なのね?あぁもうッ!!なんでそんな健康を害するものばかり売るのかしらあの淫乱ピンクはッ!よく考えたらあのお店には合成着色料がふんだんに使われた袋菓子だとか清涼飲料水だとか平然と棚に並べて!毒よッ!毒を並べてるのと同じなのよ!あのムカつく笑顔で毒を販売して私達を殺そうとしているのよッ!許せない…許せない許せない許せない許せない許せない許せない!許せないッッッ!!………そうよ、殺せばいいのよ、明石さんが死ねばみんな健康になれる、もう合成着色料にも科学調味料にも怯えずに済む、人が人として天然自然の下に生きていける世界になる、そうだわ…それがいい!それが一番だわ!アハ…アハハ……アハハハハハハハハ!!」
萩風は狂ったように笑いを上げ、急にピタリとその動きを止めた
「…よし、殺そう」
「よし!じゃねーよ、ハギェ!目を覚ませェ!」
「…目ならとうに覚めてるわ」
ビタンッ!(ビンタ)
嵐が萩風の健康的にハリとツヤのある頬にビンタした
「しまむっ!………ハッ、私ったらまたエキサイトして」
「もォ…カンベンしてくれよォ」
「大変だな、オマエも」
俺は嵐の肩に手を置いてその心労に心の底から同情した
「すぐカッとなるのは私の悪い癖」
「わかってんなら自重しろよォ」
これ以上コイツらに関わるとロクな事なさそうだし、さっさとこの場を去るか…
「とりあえず、俺ハラ減ってるから食堂行くわ、じゃあな」
「…そうだわ!テイトク!なんかご迷惑をおかけしたみたいですし、私が健康的な料理を作りますのでそちらを食べて頂けませんか?」
「いや、俺、カツドゥーンが…」
「遠慮なさらずにッ!」
萩風の両腕が俺の両肩を掴み、その健康的な細腕からは考えられない想像を絶する超パワーに俺の肩がミシミシと悲鳴を上げた
「アガァ!!ちょ…痛い!痛い!わかったッ!わかったから!食べるから離せッ!」
「そうですか、嵐、アナタもお腹空いてるでしょ?一緒に食べなさい」
「あ゛?」
「食べなさい」
「…はい」
この後、俺は嵐にあの健康オタクが作るぐらいだからさぞかし健康的な料理を作るのかと尋ねたら、嵐は一言、ハギは料理ダメだぜとだけ答え、俺達は全てを諦めた