提督(114)
なんやかんや、たまに飲んでは不味いと言える大人
五月雨(39)
熟練秘書艦、アレ持ってこいや、アレだよアレで話が通じる熟練
夕張(21)
胸も含めてスレンダースタイル
五月雨の淹れるコーヒーは不味い
最高の機材と、最上級の豆、そして常に美味しい一杯を目指し研鑽を続ける飽くなきコーヒーへの情熱、これだけの条件を揃えながらも何故か淹れるコーヒーは不味い
苦いとか苦くないとかそーゆーコトじゃない、なんと言うか………我慢すれば決して飲めない事はないが、我慢しなければならないのだ、これは一杯のコーヒーにブレイクを求める者にとっては致命傷と言っていい
「…マズっ」
当基地では、新しく配属されたヤツに五月雨がコーヒーを淹れ、その後、二度と飲まなくなる風習がある
「進歩しねぇな、オイ」
「失敬な」
しかし……不味いなコレ、この微妙に飲めない事はない絶妙な不味さを作り出す技術はもはや、THE世界遺産に申請していいだろう
「まぁいい、腹減ったしメシでも食いに行くか、メシ」
「そうですね」
‐‐‐
近所の定食屋にやって来た俺と五月雨、とりあえず昼間からガッツリ食いたい気分でもないのできつねうどんでも食うか…
「俺はきつねうどんを選択してターンエンドだ、さぁ、お前のターンだぜ」
「ん~…私も同じものにしましょうかね、あ、かしわのおにぎり食べます?一皿頼んで分けましょう」
「チッ、好きにするがいい」
五月雨は店員を呼んで注文を伝える、たしかに、うどんだけでは健康的な成人男性では少々物足りないものがあるかもしれない、かと言ってメインでないものをガッツリ食べたいほどでもない、そんな時に、適度な量のライスがあるの実に有難い、有難い………が
「なんですか?その面白くなさそうな顔は」
「いや、そーゆートコがムカつくなと思ってな」
「そうですか」
五月雨は温かい茶を啜りながらどうでもよさげにため息をついた
「なんだそのため息は………ん?」
五月雨の後方、俺の視線の先になんか見覚えのあるミドリボンが新しく店に入った来た
「あ、テイトクと五月雨ちゃんじゃないですか、お二人も昼食ですか?」
「よぉ、お前もか」
緑のリボンと腹出しスタイル、目の錯覚を利用してなんとなく細く見える気がする黒タイツを愛用する軽巡、夕張…
「私も同席してもいいですか?」
「構わんぞ」
「どうぞどうぞ」
夕張は五月雨の横の椅子に座り、店員のお姉さんを呼ぶと天ぷらうどんを注文した
「お前、うどんとか食うんだな」
「そりゃ食べますよ、え?私うどん食べないイメージなんですか?」
「三食S●YJOYとか食って生きてるかと思ってた」
「どーゆーイメージですか、私だって色々食べますよ、天ぷらうどんだって食べるし、天ぷらそばだって食べるし、天丼だって食べるし」
「天ぷらから離れろよ」
どんだけ天ぷら好きなんだコイツ…
「それだけ天ぷら食べてヘソを見せつけるスレンダースタイルはみんなムカついてますよ」
「え゛!?ウソ、マジで?五月雨ちゃんマジで!?」
「えぇ、村雨姉さんなんか死んだらええねんって言ってますし」
艦娘とは言え、女社会の闇は深い…
「そう言われても、ほら、私あんま太らない体質みたいだし…」
「やめておけ夕張、それ以上は天ぷら油火災にマヨネーズを注ぐだけだ」
「はぁ?」
コイツ、己の興味ある分野以外ではポンコツらしく、何故死んだらええねんとまで言われるのか、その理由がよくわかってないようだ
「お待たせしましたー、きつねうどんとかしわにぎりでーす、天ぷらもすぐにお持ちします」
「ほぉ、テイトクと五月雨ちゃんはきつねうどんですか…」
「やらねーぞ」
「いや、別にいりませんけど…」
「だが、お前がどうしても言うのならこのカマボコと海老天を交換してやる事もやぶさかではない」
「それメイン!天ぷらうどんのメインじゃないですか!絶対交換しませんよ!」
「ケチくせぇ野郎だな」
「テイトクにだけは言われたくないです」