【登場人物】
提督(112)
自称、漫画には少々うるさい面倒くさい大人
秋雲(5)
自称、アツかりし漫画家、一般的な秋雲と違ってエロへの興味が薄い
夕雲
秋雲組、画風が少々アレながら悪意はなく善意でやってるタチの悪さ
巻雲
秋雲組、センスが少々ハイで手先が器用、夕雲と組んだ方がその実力を発揮できるのではと噂されている
風雲
秋雲組、だいたいなんでも出来る秋雲組の生命線
早霜(3)
プロ漫画家、提督への好感度はやたらと高い
秋雲組ッ!
それは憧れの週刊少年誌での連載を目指すアツかりし漫画家(自称)秋雲の漫画をサポートするプロフェッショナルアシスタント集団、略してプロアシ集団である
「…どうすか?」
「そうだなぁ」
今回の漫画は飛び散る汗と熱気がムンムンと伝わってくる自転車競技に青春を賭けるアツかりし漫画、ムキムキ体育会系主人公が仲間達と共にナイスガッツに力を合わせて全国制覇を目指す物語らしい
「その、必殺のマッスルトレインの見開きはかなり気合い入れたトコっす」
「たしかに、迫力が伝わってくる絵ではあるが………この薔薇トーンのおかけで色々台無しだな」
「まぁ、私も完成した原稿見て、なんか違うなって思いました」
「わかってんならそのまま完成するなよ!明らかに合わねーじゃん!っーか主人公とライバル以外のキャラがほぼオ●カルじゃん!なんで全員フランス革命に参加しそうな顔してんだよ!」
「私はメインキャラに全力注いでモブっぽいのは夕雲の姉さんに任せたんすけど……まぁ、いざ完成した原稿見ると、なんか違うなって…」
「気付くのがおせーよ!!」
俺は原稿用紙を机にバシバシと叩きつけ、缶コーヒーの蓋を開けて一気に飲み干した
「…ふぅ」
「ナニが悪いんすかねぇ~」
「いや、どう考えても秋雲組だろ、なんなんだその役立たず集団は」
「ナニ言ってんすか!夕雲の姉さんが描くこの躍動感溢れるキャラクター!」
「あぁ、全員もれなくバスティーユ監獄にカチ込みしそうなキャラだがな」
「私では思いつかないハイセンスな巻雲の芸術的なトーン貼り!」
「指定しろよ!トーンを指定しろよ!バカか!?バカなのか?バカなんだろ?」
「モブ!背景!トーン!ペン入れ!ベタ塗り!ホワイト!消しゴム!効果線!痒いトコほぼ全部やってくれる風雲!」
「風雲すげぇなオイ!!」
使えるの風雲だけじゃねーか!っーか、あきらかに夕雲と巻雲が足ひっぱってるじゃねぇか!間違いなくその2人がいらんコトしてるじゃねーか!
「…秋雲よ」
「なんすか?」
「夕雲と巻雲クビにして、風雲と二人でやれよ」
「ナニ言ってるんすか!私達は4人で1つのチームっすよ!秋雲組はたとえ生まれも系列艦も違えど鉄の結束を持った家族ッ!決して散る事の無い秋の雲なんすよッ!」
「や、姉妹艦じゃねーのオマエだけじゃん」
まぁ、秋雲に関しては陽炎型なのか夕雲型なのかフワフワした感じなのでなんとも言い難いものもあるが、一応、陽炎型って話だしな
「とりあえず夕雲と巻雲の使い方について考え直してみたらどうだ?ほら、喉渇いた時にジュース買いに行く役とか、寂しい時に歌でも歌ってもらう役とか」
「それ必要なんすか!?」
むしろ、原稿に関わらない方が物事が順調に回るような気がするしな
「必要だろ」
「必要すかね?」
「必要だろ」
「…言われてみると、必要な気がしてきたっすね!」
「だろぉ?よし、決まり!夕雲はジュース買いに行ったり飯を用意する役、巻雲はスーパーヒットセレクションジュークボックス役な!」
「なんかやる気がMORIMORI湧いてきたっすよ!カーッ!テイトク!この秋雲!なんかすげーワクワクしてきたっすよ!」
「だろぉ?こんなにやべーのワクワクしてきちまったろぉ?ハッハッハ」
「ワハハハハハ!」
これで秋雲の漫画も少しはマシになるだろう、元々コイツは才能に溢れているんだ、そもそも、一般的な秋雲は生唾ゴックンのビシバシもんのドエロいエロ同人を得意としていると余所で聞いた事があるしな、ちょっと方向性が違うだけでコイツだってやればデキる子だ!
「よし、腹減ったし何か食いにでも行くか!」
「いいっすね!この秋雲、今日はガッツリ!カツドゥーンとか食いたいっすね!」
「カツドゥーンか!いいね、ロックじゃねーか!よし!今日は俺の奢りだ!秋雲、秋雲組の仲間達も呼んできなーッ!」
「ヒュー!!」
◆◆◆
依頼されていた読切原稿を無事にバイク便に渡し、たまには贅沢でもしてみようと考えた私は間宮さんのお店で今日のオススメ、季節のスプリング・スプラッシュ・スウィーツ、通称トリプルSなるジェラートを食べていた…
「…」
なるほど、これはなかなかだ…口の中でもう4度も味が変化した
「カツドゥーンを一丁!みんなは何にするっすか?」
静かにこの上質な甘さを堪能していると、なにかやかましい声が聞こえてきた、あれは………秋雲と、夕雲姉さん達……
「私はきつねうどんにしましょうか、巻雲さんは?」
「巻雲はカレーうどんにしますかねぇ、風雲は?」
「私は…う~ん、あ、サラダでいいや」
「ヘイ!風雲!サラダなんてロックじゃねーっすよ!テイトクの奢りなんすからもっとガッツリいけよ!ガッツリ!ヘイ女将!このポニテにスペシャルツインハンバーグを!ライス大盛で!」
「ちょ!」
相変わらず五月蝿い子………ん?今、テイトクの奢りって……?
「よぉ、キタローくんじゃないか?君も来ていたのかね?」
て…提督ーーーっ!?提督!提督がッ!提督がァ!提督がわ…わわ私に?私にも!私に声をッ!ハーハー…うっ!あまりに突然過ぎ!て………ンンはぁん!アッ…アア…ァ、フー…フゥ…ンクっ!!!
「ゴフッ!!ごほぉ!!エフッ!エフッ!」
「だ…大丈夫かね?」
「…大丈夫です、少し噎せただけですから」ボソボソ
……ふぅ、あまりの不意打ちに上の口だけでなくて下の口も甘酸っぱくなってしまったわ…フゥ~…よし、少し落ち着いた!ハァ…ハァ…ンン!よし、ハァァン!落ち着いた、よし!
「ん?お、早霜じゃん?イイモン食ってるっすねー?」
「…別に」ボソボソ
秋雲の奴、提督の奢りでカツドゥーンとはなんて羨ましい…
思えばこの子、よく提督と漫画の話で楽しくお喋りしているみたいだし、私もこの子みたいに提督と楽しくお喋りできたら………ウッ!!ハァ…ハァ……ハー…ん!く!ハァン……想像っ!しただけでっ!!
「…ふぅ」
……ハー…ハー…よし、今週はコレでイこう
「体調でも悪いんすか?」
「…別に」ボソボソ
「そうっすか…まぁいいや、さぁ食うっすよ!カツドゥーンを!あ、テイトク、秋雲のカツとテイトクのカツ交換しねーっすか?」
「フェアプレイの精神だな、よし、なら俺の食いかけのカツとお前の無傷のカツを交換してやろう」
「それフェアじゃねーっすよ!」