不健全鎮守府   作:犬魚

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優しさにアツい涙が止まらない回

【登場人物】

提督(83)
評価と出世を気にする小物臭漂う将校

五月雨(34)
評価と出世を気にする小物を支える屋台骨

夕張(15)
帰ってきたドリルアームズ

春雨(4)
オチ担当


提督と悪雨と春雨

「提督ッ!大変ですーッ!」

 

「何が大変なのかね?」

 

昨日までの曇天を払拭する冬の晴天、俺と五月雨は特にやる事もなく執務室で録画していたアタ●ク25を見ていたら、ヘソ丸出しで焦った様子の夕張が執務室へ駆け込んで来た

 

「タイヘンタイヘンタイヘンなんですよ!」

 

「タイヘンタイヘンゆーな、放送禁止で走りてーのか?」

 

「すぐ近くに深海棲艦が来ています!!」

 

「どうせイ級だろ?いつものコトじゃねーか」

 

基地の近海に生息しているイ級、たまに釣りに来たオッサンも引っかけるらしく、海沿いの釣具屋にはイ級の魚拓が何枚も飾られている、ちなみに、難易度は高いが調理出来ればその味は大変美味らしい

 

「姫級です」

 

「は?」

 

「は?じゃないです、姫級です」

 

夕張はポケットから例の戦闘力を計る機械みたいなものを取り出した、夕張曰わく、この深海スカウターをイジっていたところ、急に物凄い戦闘力を持つ光点が現れたらしいのだが…

 

「おそらく、もう基地に来ているハズ…」

 

「さすがにそれはマズいな」

 

せっかく貯めた資材を燃やされでもしたらシャレにならんし、むしろ、姫級の襲撃で基地が壊滅的打撃を受けたとか上に知られたらオマエのトコのザル警備どうなってんの?ねぇ?どうなってんの?とかネチネチ言われて俺の評価に致命的な傷がつき出世への道が閉ざされてしまう

 

「夕張、場所はわかるか?」

 

「はい!この深海スカウターでバッチリですよ!」

 

「よし!夕張、五月雨、ついて来い!」

 

下手に人数を動かすと上にバレる可能性を考慮し、今いる人員、俺と五月雨と夕張で秘密裏にこの件は処理しよう

 

◆◆◆

 

ぴこーん…ぴこーん…

 

「近いですね」

 

夕張の深海スカウターをアテに、俺達は執務棟から駆逐艦達が勉学を学ぶ教育棟へ来ていた

 

「あの…今更ですけど、姫級相手に私と夕張さんだと些か戦力不足では?」

 

五月雨の言う事はもっともな気がするが、正規の作戦行動として人数が動かせない以上は仕方がない、まぁコイツにしても夕張にしても地味に練度は限界に達してるし、夕張に至っては以前、夕張のア●ルを掘ったドリルアームズを装備している

 

「大丈夫だ、俺はオマエ達を信じている!」

 

「はぁ、じゃ…とりあえず提督がまず不意打ちスネークバ●トでメリメリしたら後は私と夕張さんでなんとかする感じで」

 

「近い!近いですよ!ここです!この教室にいますッ!!」

 

ドドドドドドド!!!

 

教室か……今日は香取先生のアツい熱血指導の日らしく、数人のバカどもが教室内にいるようだが…

 

「特に変わった様子はありませんね」

 

「そうだな」

 

俺と五月雨が教室を覗き込んでみたものの、特に教室内に変わった様子はない、休み時間のバカトークしてるみたいだが…

 

「オイ夕張、それ壊れてるんじゃねーのか?」

 

「ししし!失礼な!このッ!この私の発明は常に完璧!完璧ですよッ!」

 

「何が完璧だ、姫級が教室に居たらそこはもう暗殺教室だろーが、殺意のミッション発生中だ」

 

「待ってください提督、夕張さんも!ちょ…ちょっとアレ見てください!」

 

五月雨は何かに気付いたらしく俺と夕張にも教室内を見るようにハンドシグナルで合図するので俺達は教室内を覗き込んだ

 

「なんだよ、別に…普通のパンツ丸見え女子校トーって!!………いたァァァァァァ!!」

 

「声ッ!声が大きいです!!」

 

‐‐‐

 

「あー…マジダリぃっぽいわー、補習とかマジダリぃっぽい」

 

「夕立ィ、終わったらゲーセンいこーぜゲーセン、春雨も」

 

『ソウデスネ』

 

白露型キセキのバカコンビ、夕立と村雨、そして、そのバカコンビに常に足を引っ張られている薄幸の妹、春雨………ではなく、春雨に良く似た深海棲艦

 

「春雨宿題見せてっぽい」

 

『エ?イヤデスヨ』

 

「何をー?春雨のくせに生意気っぽい!」

 

‐‐‐

 

「悪雨じゃねーかッ!」

 

「駆逐棲姫ですね」

 

なんでアイツら普通に接してんだよ!明らかに春雨じゃねーじゃんそいつ!顔色悪いし!髪白いし!足がな………いや、足はあるな、なんか鉄の足が付いてる

 

「ゼス●スですね」

 

「ゼ●モス!?」

 

夕張曰わく、ゼス●スとは念動力の一種で“繋ぎ止める力”、サウナのような高温多湿の部屋で自らを追い詰めるハードなトレーニングを積めば習得可能らしい

 

「っーか、なんでフツーに馴染んでるんだよ、アイツらバカなのか?バカなんだよな?」

 

「まぁ、夕立姉さんと村雨姉さんがバカなのは認めますけど…」

 

‐‐‐

 

「っーか、春雨ェ…」

 

ようやくネイルの処理を終えた村雨が春雨?に鋭い眼光を向けた

 

「村雨さぁ~…さっきから気になって気になって仕方ないコトがあるんだよねぇ~」

 

さすがは来週は期待していい淫乱ビッチ候補生村雨だ、この異常事態に気付いたか…

 

「春雨ェ…」

 

『ナ…ナナナナニカナ?』

 

ほら見ろ、アイツめっちゃ焦ってるよ、っーか今まで気づかれなかった方がキセキだよ、よし!ツッコめ!

 

「春雨………シャンプー変えた?」

 

『ア?ワカル?深海エキスノエクストラバージンオイル』

 

「あ、夕立もそれ思ってたっぽい!」

 

バカだよッ!!やっぱりコイツらバカ以外の何者でもねぇよ!!

 

◆◆◆

 

深海秘密基地…

 

『オマエノ仲間助ケニ来ナイナ』

 

「…そうですね」

 

頑丈なロープでぐるぐる巻きにされて吊された春雨、深海の戦士達は仲間を取り戻しに来る艦娘達を今か今かとワクワクしながら待っていたが、一向に敵が来る気配がなく、飽きてオセロしたりテレビを見ていた

 

『オ腹空イテナイ?ピザトローカ?』

 

「大丈夫です、お気遣いなく…」ぐー

 

『ホラ、オ腹空イテルジャン、集チャン、ピザ屋ニ電話シテ、ピザ屋』

 

毛先まで深海エクストラトリートメント、戦艦棲姫の優しい気遣いに、春雨の目から自然とアツい水が溢れ出した

 

『モウスグ迎エクルカラ、ネ?ピザ食ベテ待ッテヨ?ア、ゲームスル?集チャンゲームイッパイ持ッテルカラネ?』

 

「ありがとうございます…ありがとうございますぅ」ポロポロ


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