不健全鎮守府   作:犬魚

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帰ってきたカスタム瑞雲ショップ回

【登場人物】

熊野(14)
ワガママボディじゃないワガママガール、必殺技はマグ●ムトルネード

日向
カスタム瑞雲ショップZ-DRIVERSの店主、表情が変わらない一枚立ち絵みたいな顔でカウンターに立っている

ローマ(2)
イタリアから来た魔女、カスタムRo44、通称ディ●スパーダのアディオなんちゃらはとても強力


提督と熊野とレアモノ

基地内にひっそりと存在するカスタム瑞雲ショップ、Z‐DRIVERS

ズイウンの走りと速さを求めるズイウンレーサー達御用達のメーカー非正規ショップ…

 

「よぉ、今日はどんなパーツをお探しだい?」

 

カウンターの向こう側でズイウンのボディを磨きあげながら気さくに声をかけてくる店主、日向

かつてジャペンカップ七連覇を達成したこともあるらしいズイウンレーサー界のレジェンド

 

「えぇ…今日はニューマシンをと思いまして」

 

そして、ズイウンの魅力に取り憑かれたアホな航巡、熊野…

 

「そっちのアンちゃんも好きに見ていってくれよ」

 

「そっちのアンちゃんじゃない、提督だ」

 

最早、日向の佇まいは航空戦艦ではなく武器と防具の店か冒険者に仕事を斡旋する酒場兼ギルドの店主と言っても過言ではない…

 

「早く選べ、モタモタすんな」

 

「ゴチャゴチャうるさいですわよ、私のズイウン壊したくせに」

 

「地面スレスレを飛ばしてる方が悪いんだろーが」

 

つい1時間程前、俺が喫煙所に向かって力強く歩いていると、廊下を高速で走るナニかが視界に入ったのでつい反射的にネオタ●ガーショットをぶち込んだら、それは熊野の瑞雲だったらしく、瑞雲はたまたま近くを歩いていたオイゲンをふっ飛ばし、さらにグラーフの左腕を弾いてゴミ箱のネットを貫いた

愛機である瑞雲を破壊された熊野は大いに悲しみ、オイゲンは大いに怒り狂って俺とリアルバウト、グラーフはまさか自分がゴールを抜かれるとはと大いに嘆いた…

そんなワケで、俺は熊野のズイウンを弁償する為にこのカスタム瑞雲ショップへと一緒にやって来たワケだが…

 

「そう言えば最近、コイツを入荷してな…」

 

「そ…それはッ!?」

 

日向がカウンターの下から取り出したピカピカのマシンに熊野の目がキラキラと輝いた

 

「紫雲、なかなか市場には出回らないレアなマシンだ」

 

「うわぁ~…すげー!マジカッケーですわ!提督!ほら!マジカッケーですわよ!」

 

「あ?あぁ、うん、カッケーんじゃない?」

 

正直、あまり興味がないんだが…

 

「店主!触らせて頂いても?」

 

「あぁ、構わない」

 

「嗚呼…イイ!イイですわぁ、コレ!火星エンジンと美しい二重反転プロペラ、さらに投下機構を備えたフロート!」

 

「オイオイ、気をつけて扱ってくれよ、そいつはかなりのレアモノでどうしても欲しいマニアから所有者が自殺に追い込まれるぐらい追い込みをかけられる逸品だ」

 

「青眼かッ!」

 

「?、なんのコトだ?」

 

日向の野郎、なんでよりによって今日、そんな上等品を出しやがるんだよ…見ろ!熊野の野郎、完全に欲しくて欲しくてたまらない目をしてるだろーが!

 

「提督」

 

「ダメだ」

 

「私、コレが欲しいですわ」

 

「ダメだ」

 

「ほーしーい!ほーしーい!私コレがいいですわー!いえ!コレじゃないと提督を許せませんわー!」

 

「駄々こねるんじゃないよこの娘は、ほら、このズイウンなんてどうだ?このデチューンはなかなか出来る事じゃないぞ?」

 

俺は特価品コーナーに置いてあったフロートがないズイウンを手に取り勧めてみたが熊野は頑なに紫雲を欲しがり駄々をこねる、まったく、ワガママボディじゃないのになんてワガママなヤツだ…

 

「ハッハッハ、パパ買ってやりなよ」

 

「誰がパパだ、ブッ殺すぞ航空戦艦が」

 

「ハッハッハ」

 

「…日向、一応聞くが、コレ、お高いんだろ?」

 

「そうだな…まぁ、提督も熊野も知らない仲ではないし………コレくらいでどうだ?」

 

日向は電卓に数字を打ち込み、俺に見えるようにその数字を提示した

 

「ちょっと0が多過ぎるんじゃないか?」

 

「レアモノだからな、これでも勉強した数字だぞ」

 

「熊野、諦めろ」

 

「イヤですわ!!」

 

「ほら!こっちの六三四空とかカッコ良くねぇか?うん、カッケーよ、やっぱ男は水偵じゃないで水爆だよな!」

 

「絶対ッ!イヤですわ、私、コレを買うまでテコでも動きませんわよ!風林火山で言うなら山ですわ!」

 

「駄々こねるんじゃないよこの娘は、何が風林火山だ」

 

こうなるとこのアホは面倒くさい、チッ…仕方ない、この特価品ズイウンを紫雲に見える邪眼でここは一時撤退をと考えていたら、カスタム瑞雲ショップの戸を叩き、新たなる客が入ってきた

 

「Buon Giornov、ヒューガはいるかしら?」

 

「ん…オマエは、ゾーマ?」

 

「ローマよ」

 

イタリアから来た魔女みたいな戦艦、ローマ

 

「なんだ?オマエもズイウン買いに来たのか?」

 

「違うわ、私のRo.44のパーツを受け取りに来たのよ」

 

「よく来たな、パーツなら入荷しているぞ」

 

「Grazie………ところでアナタは何してるの?」

 

「ご覧の通り、アホな航巡が高い玩具欲しいって駄々こねて困っているところだ」

 

「買ってあげれば?」

 

「軽くゆーなッ!」

 

この魔女め、他人事だと思って軽く言いやがる…

 

「まぁ、多少良いマシンに乗り換えたところで次の大会でも私に負ける未来は変わらないと思うけど?」

 

「………は?」

 

ローマの何気ない挑発に、紫雲欲しい欲しいと駄々をこねていた熊野の駄々が止まった

 

「今、なんと仰りましたの?このパスタ野郎は?」

 

「多少良いマシンに乗り換えた程度じゃ私と私のマシンとは勝負にならないと言ったのよ」

 

「上等ですわ!多少良いマシン?いえ!私の魂を込めたズイウンでそのメガネをギトギトにして土下座させて差し上げますわーッ!」

 

熊野は特価品………ではなく、素人目にもわかる輝きを放つズイウンを手に取りカウンターに置いた

 

「コレをお買い求めしますわ!お持ち帰りで!」

 

「そいつに目をつけるとはな、フッ…」

 

まぁ、紫雲よりは安いんだが…それでも俺の財布がスカスカになる

ローマと熊野はメンチと言う名の火花を飛ばし合い、ローマはメガネをクイッと上げて“フッ…楽しみにしているわ”と言い残し店を後にし、熊野の早速カスタムしますわーと息巻いて去って行った…

 

「まぁ、そうなるな」

 

「何がだよ!!」

 

 

今日もどこかでアツかりしズイウンバトル!


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