【登場人物】
磯風(3)
帰ってきたグルメ駆逐艦、とにかくフーフーしたい難しい年頃らしい、浜風ちゃんと仲が良いらしい
「あけましておめでとう提督、この磯風、早速だが年始らしく雑煮を作ったので食べてくれ」
机の上に置かれた見た目は普通の雑煮、だが、食さなくてもわかる、味は普通でなかろう雑煮
「マウスで試したか?」
「勿論だ、食後15秒程で上半身が有り得ないぐらい肥大化し、鉄の檻の柵をまるでバターやチーズのように折り曲げるヤンチャぶりだったぞ」
そうか…血管から直接注入べる感じのタイプか
「人体は試したか?」
「谷風に勧めたらただ一言“死ね”とだけ言われたよ、この磯風、正直メンタルは弱いのだがな」
「そうか」
あの最高にイキでイナセな谷風クンに死ねとまで言わせるとはなかなか出来るコトじゃないな…
「さぁ!おあがりよ!」ドヤァ!
「え?普通にイヤですけど?」
「あぁそうか、アツいのは苦手か、そうかそうか、よし!ではこの磯風がフーフーしてやろう、さぁ!遠慮するな、我慢は身体に良くないからな!」
「我慢とか我慢じゃないとかじゃない、単純に食いたくねぇんだよ!」
「…本気か?」
「あぁ、マジだぜ」
何が驚愕なのか、磯風は信じられないぜ承●郎といった表情で雑煮と言う名のBC兵器を取りこぼしそうになった、しかし!そこは歴戦の武勲艦として名高い磯風、マイナス修正は1ターンしか影響が無いのか、すぐに立ち直り、いつもの根拠ゼロで自信満々な表情に戻った
「しかし提督よ、この磯風のフーフーは希少価値が高いと思わないか?」
「フーフー吹くだけなら、この俺の為にファンファーレでも吹いてくれる方がよっぽど有り難い」
「ふむ…」
「わかったらその破壊力満点の重火器を下げろ、な?」
破壊力だけで言うならばメガバ●ーカランチャーに匹敵すると噂されているISO's kitchen、かつて処分に困り適当に海に廃棄した際、鎮守府近海のイ級をレッドリスト入りに追い込んだ事もある
「わかった、この磯風、ここは退くべき時だな」
「わかってくれて嬉しいよ」
「この磯風、物分かりは良いと自負している!」
意外とアッサリ引き下がったな、まぁゴネられても困るんだが…
「それはそうと提督、この磯風、実はカレーを作ってきてな、是非食べて貰えないだろうか?」
「本命はそっちかァァァァァ!!」
なんかカレー臭いとは思ってたがこの野郎ッ!まだ隠し弾を用意してたかッ!
「おせちもいいけどカレーもね!と思ってな、どうだ?なかなか気が利くだろう?この磯風、我ながら良妻賢母の才能はズバ抜けていると思うのだ」
「あぁ、ズバ抜けてるぜ」
「ではこの磯風がカレーをよそってやろう……うむ、アツいから気をつけろよ?もしアレならこの磯風、フーフーしてやるのもやぶさかではないぞ」
コイツの中で流行ってんのか?フーフーすんのが?なんか変な漫画でも読んだのか?
「さぁ!会心の一食や!」ドヤァ!
「一応聞くが、ラットで試したか?」
「あぁ、ラットには少々スパイスが効き過ぎていたのだろうな、のたうち回ってウレションを撒き散らしながら昇天したよ」
「そうか…」
「まぁ、1つ気になる事があるとするなら……谷風から刃物を渡されて自決しろと言われたコトぐらいか」
あの谷風クンにそこまでは言わせるとはな…大したヤツだ
「さぁ遠慮なく食べてくれ提督、ほっぺた落ちちまうZE!」
「なにがZEだ、カッコつけやがって!」
磯風と俺の位置関係上、この場を抜ける為には磯風のブロックを抜ける必要がある…
今の俺のコンディションは先日の餅つき大会のダメージから察するに30%ぐらいか…
「ほらほら、早く食べないと固まってしまうではないか」
「なんでカレーが固まるんだよ!おかしいだろォ!」
「早く!早く食べるんだ!」
「チッ……わかったわかった、一口だけな、一口」
仕方ない、まぁ一口だけなら死にはしないだろう、俺は勇気を出してカレーにスプーンを挿入す……
「…ん?」
ガギィン!!
挿入す……んん?
「なんだコレ?硬いぞッ!」
スプーンが通らないッ!なんだコレは!カチカチ!いや、カチカチだッ!!
「嗚呼ッ!提督がモタモタしているからカレーが固まってしまったではないか!!」
「だからなんでカレーが固まるんだよ!おかしいだろォ!なんだコレ?速乾コンクリートか!?」
「そんなワケがないだろう」
何をブレンドしたらこんなカチンコチンになるんだよ?おかしいだろ、固形ルーよかカティンコティンとか…
「はぁ、もういいから海にでも棄てて来い」
「むぅ…残念ながら仕方あるまい」
結局、磯風はカレーっぽい何かを海に廃棄し、待つ事10秒ぐらいすると白目を剥いた19が浮いて来たそうだ