【登場人物】
提督(9)
ファックボーラー、球種はファックボールのみ
五月雨(6)
キャッチボールでも人事は尽くす
昔はよく提督から理不尽な腹パンをされていたので腹筋はなかなか強い
速吸クン
洋上補給艦、提督からはスポドリくれる気の利いた女マネとしか認識がなかった
世界最速を狙える肩
夕張(3)
人道的などくだらないエゴイズムでしかないと考えるマッド思考
「たまには健康を考えてキャッチボールでもするか」
日中は暑すぎて外を出歩きたくはないが、夕方になれば少しはマシになる
「いいですね、適度な運動は大切です」
「よし、行くぞ五月雨」
基地内グラウンド、この時期は朝にラジオ体操するぐらいしか使われないが、秋になれば誰かがラグビーとかやっているのを去年は見たな
「くらえ!ファックボール!」
バシンッ!
「ちょ!ちょ!どんな曲がり方ですか!キャッチボールなんだから捕りやすいの投げてくださいよ」
「悪い悪い」
文句タレるくせにしっかり捕球するんだよな、コイツ
さすが、無駄に付き合いが長いだけはある
「いきますよー………死ねッ!!」
直球か…?いや違う!これは、カット・ファスト・ボールか!!
バシンッ!
「…お前、咬竜か投げられんのか?」
「さぁ?何を言ってるのかよくわかりませんね」
「っーかテメー!投げる時、死ねって言ったろーが!死ねって!」
「言ってませーん」
この野郎ォ…俺の知らない間に練習してやがるな
いいだろう五月雨、次のセンバツが楽しみになってきたよ
「ほらほら、早く投げてくださいよー」
「…クソがァ!ファーック!」
びょーん
「あ~ぁ、どこに投げてるんですか、ちゃんと投げてくださいよ」
しまった、ついカッとなって暴投してしまったか、っーか投げ辛いんだよな、ファックボール
こんな持ちにくい投げ方でメットまで破壊するにはハードなトレーニングと毎日のコーンフレークが大切だろうな、たぶん
「うるせぇよクソが、さっさと拾って来いよ」
「結構遠いし、めんどくさいなぁ」
「めんどくさいとかゆーな……ん?」
丁度、俺のボールが飛んで行った先になんかバレー部のマネージャーみたいなのが歩いていた
「オイ、あの誠意を持って必死で頼めば致しても大丈夫みてーなマネージャーみたいな奴、名前誰だっけ?」
「速吸さんですよ、なんで名前覚えてないんですか?結構前から居ますよ」
「速吸クンだな、今覚えた」
たしか洋上補給だかなんだかよくわからんヤツだったな
まぁ、丁度いいとこにいるし投げ返して貰うか
「オーイ!!」
「速吸さーん!ボール、ボールをこっちに投げてくださーい」
「ん…?ボール?」
速吸クンは足元のボールに気付いたらしくボールを拾い上げた
「これ?これを投げたらいいのかな?よぉ~し!」
遠目からだが速吸クンは大きく振りかぶっているのがわかる
所謂、ワインドアップモーションってヤツたが、それだけでは無かった
「トルネードッ!?」
大きく身体の回転と捻りが作用するその投法から投げられる!速吸クンと球が!
ズドォン!!!
「おごぉ!!」
予想だにしなかった恐るべき豪速球が五月雨の腹に突き刺さった
「お゛…お゛ええぇぇぇぇ!!」
「さ…五月雨ェ!!大丈夫か!?」
「ガハ…ァ!ハァ…ハァ…」
「五月雨ェ…今の、何マイルだ?」
「わ…わかりません、でも…確実に100マイルは超えてました」
「スイマセン!スイマセン!ついリキんでしまって!」
五月雨に突き刺さったのを見た速吸クンは急いでこっちへと走って来た
「大丈夫でしたか?アバラとか?」
「え…えぇ、ワリと大丈夫じゃないです、内臓破裂するかと思いました」
「きゅ!救急車!救急車呼ばないと…!」
あの豪速球、マネージャーにしておくには惜しい逸材だな
「誰かー!誰か助けてくださーい!助けてくださーい!」
そして流れるような応急救護
これはたぶん病院送りにしたのは初めてではないな
「どうしました?私は医者です」
速吸クンの声を聞こえたのか、たまたまスマホ片手に近くを歩いていた夕張がやって来た
「私が投げたボールが当たってしまって…」
夕張は五月雨の腹を軽く平手で叩き、沈痛な面もちで顔を上げた
「ふむ、これはオペが必要ですね、阿頼耶識を付けましょう」
「お願いします!彼女を救ってやってください!」
「大丈夫、彼女はすぐに元気になります………ガ●ダムとしてね」ニコッ
コイツ…丁度いいサンプルが手に入ったと思ってやがる
「提督…」
「なんだ?五月雨、冷蔵庫にあったお前のプリンならもう食べたぞ」
「夕張さん殴っていいですか?あと、プリン返して下さい」
「俺が許す、殴れ」