不健全鎮守府   作:犬魚

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冬の劇空間ダイナマイトファミリーワンアウト回

【登場人物】

鳳翔(4)
通称、ビッグママ
クラブを経営する軽空母
ヤキュウが好きらしく、よくラジオを聞いている

サラトガ(2)
秋の大型新人、投打に優れている

アイオワ(4)
メジャー出身の強打者、枕元にはピストルが無いと眠れず、寝間着はジーンズ一丁


提督と鳳翔と荒野と言うダイヤモンド

「死ね!ファ●クボール!」

 

「もうちょっと捕りやすいの投げてくださいよ」

 

執務室でダラダラとNARUT●を読んでいると、五月雨から寒くなると運動不足になり様々な症状を併発するのでは?と言う話になったので俺と五月雨は外にキャッチボールをしに来ていた

 

「悪い悪い」

 

「まったく…」

 

五月雨の特に何の変哲も無い返球、いや……これは低回転ストレート!

 

「…チッ」

 

「捕りにくいわッ!っーか今、舌打ちしたろ!舌打ち!」

 

「してませんけど?」

 

この野郎、いけしゃあしゃあとなんて球を投げやがる……次の球種について考えていると、グラウンドに珍しい人物がやって来た

 

「ママ!」

 

「…ん?あぁ、ボーイとサミーじゃないかい?アンタ達もヤキュウかい?」

 

当基地初の空母、ビッグママこと鳳翔、現在は滅多な事では出撃する事はなく、もっぱら自前の店のカウンターに立っているのが仕事になっている

 

「ボーイはやめてくれよ、俺達はキャッチボールしてるだけさ」

 

「そうかい、サミーも久しぶりだねぇ、今度そこのバカとウチに来な、オレンジジュースでも飲ませてやるよ」

 

「ありがとうございます」

 

俺もそうだが、ママには五月雨だけでなく最初期組の誰もが頭が上がらない

 

「ところでママ、なんでまたこんなところに?」

 

「あぁ、例の新人?あの娘が投げるって言うから見に来たのさ」

 

よく見ると、グラウンドにはどこからかやって来たバカどもがゾロゾロと集まって来ている

 

「例の大型新人ですか…」

 

ママの言う新人とはアイオワと同じく、あの国から海を渡って来た期待のスーパールーキー、サラトガだろう

 

‐‐‐

 

「Hey!SARA!Nice ball!」

 

マスクを被ったアイオワがサラトガの球を受けている、なるほど、なかなか良い球を投げるじゃあないか

 

「トーキューレンシューはこのぐらいにしとこーか?」

 

「そうね」

 

「Hey!そこのBattleship!打席に入らない?SARAの球を外野に飛ばしたらburger奢るワ」

 

アイオワはマスクを外し、フェンスの向こう側に立つBattleship、しかも、よりによって強打に定評のある武蔵に挑発をカマす

 

「ほぉ…」

 

もののふの本能を刺激したか、武蔵はニヤリと笑い木の棒を手に取ろうとしたその時!

 

「よっしゃー!!その挑戦受けたーッ!」

 

陛下の授業のおかげで英語力がちょっと上がった大戦艦清霜が金属バットを持ってバッターボックスへと走ってきた

 

「あー!リベも!キヨシ!リベも打ちたい!」

 

「リベは後な!後!まずは清霜から!」

 

「Oh…Girl、ケガするワ?」

 

「は?清霜打つけど?早くマスク被ってM字開脚で座れよショーガール」

 

「SARA」

 

清霜の言葉に、アイオワは笑顔でマスクを被り直し、サラトガに首をカッ切るサインを送った

 

「えー…(マジで?)」

 

「いいから(殺れ)」

 

どうやらサインは決まったらしい…

サラトガとはワインドアップモーションから第1球ッ!

 

ズドォン!!!

 

「チッ……Strike」

 

ヤキュウとは思えない擬音と共に、サラトガの豪球がアイオワのミットに収まった

 

「あ……あ?」

 

「ヘーイ!SARAー(次こそ当てろ)」

 

「はいはい…(大人気ないなぁ)」

 

ダメだ、キヨシは最初ので完全にビビっている、まるで本気の現役メジャーリーガーにリトルリーグに入りたてのヤングボーイが挑戦するようなものだ、そう、たった1球でキヨシは心の底から震え上がった、真の恐怖と決定的な挫折に…

 

「ぅ…ぅぅ」ジョー…ドボドボ

 

恐ろしさと絶望に涙を流し、ついでに尿も漏らした

結局、キヨシは手加減されたスローボールを2球とも空振り打席を去った

 

「ぅぅ…チクショウ!チクショウ!」ポロポロ

 

「泣くなよキヨシ!リベが!リベがカタキとるから!」

 

「む…ムリだ、あんなの打てるワケがない」

 

「フッ、では今度こそ武蔵がお相手しよ…」

 

木の棒を手に、今度こそ大打者武蔵が前に出ようとしたその時!

 

「その通りですLibeccio……次は私がお相手しましょう」

 

「陛下ッ!」

 

「陛下ァ!」

 

失意の清霜の頭を優しく撫で、陛下がその高貴なる御椅子から立ち上がった

 

「Oh……まさかヘーカが立ち上がるとは」

 

「ちょ…ちょっとアイオワ、どうするの?これ本気で投げていいの?ブラッシングとか怖くて投げられないわよ!」

 

「No Problem、SARAはミットめがけてGOよ」

 

もし、高貴なる陛下に死球でも当てようものなら第三次世界大戦の開幕になるであろうこの打席、バッターボックスに入る陛下、そしてアイオワはサラトガにサインを出す

 

「…(インハイ)」

 

「…(ムリムリ)」

 

「…(投げろ)」

 

「…(外!まずは外で様子見!)」

 

「…(早くしろ!)」

 

「…(調子に乗るなShowgirl!)」

 

サラトガの第1球…

 

ズドォン!!!

 

ストライクゾーンギリギリに入る外角低め、アウトロー

 

「…チッ」

 

「…ふむ」

 

まずはワンストライク、アイオワの次なるサインは…

 

「…(インハイ投げろって言ってんだろバァカ!)」

 

「…(やかましい!アンタ責任取れんの?)」

 

第2球……外角低め!

 

カーン!

 

「おぉ!!」

 

「当てた!陛下当てた!」

 

「いや、ファウルだな」

 

これでカウントは追い込む形になったものの、アイオワはやや不満そうにしているが座り直した

その後、第7球までファウルが続き、アイオワはサインを送る

 

「…(ド真ん中)」

 

「…は?」

 

「…(は?じゃないワ、ここは勝負、力でねじ伏せる!Statesの威信に賭けて)」

 

「…(OK、最初からそのつもりよ!)」

 

‐‐‐

 

「フーッ~…どうだい?」

 

「どうだいも何も陛下がバッターボックスに入った時点で第三次世界大戦を告げるギロチンの音が聞こえてきたね」

 

勝負の結果より、第三次世界大戦と地獄断頭台は回避された事が俺としては喜ばしい、ママは煙管の火種を落として懐にしまった

今、マウンドにはインチキナックルボーラーの鈴谷が上がり、古鷹さんが空振りをしている

 

「来年の開幕が楽しみになってきたじゃないかい」

 

「そうですね」

 

「さて、開店準備でもするかね…サミー、来る時はボーイのツケにしとくからいつでも来な」

 

「はい、ありがとうございます」


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