【登場人物】
提督(69)
普段は米、気が向いたら麦、たまに芋
ポーラ(3)
帰ってきた最終禁断症状、アルコールなら何でも構わない
浜風ちゃん(3)
だいたい名前だけ出る、真面目
最近とみに寒さを感じる今日この頃、俺は明石に注文していた高い焼酎が届いたとの連絡を受け、明石の店に来ていた
普段はとりあえずビールのビール党だが焼酎も飲む俺は年の瀬だし多少贅沢してもバチは当たらんだろうと考え、高いヤツを買ったのだ
「羽振りがいいですねぇ、パチ●コでも勝ったんですか?」
明石の野郎がニコニコしながら現金を受け取るのがなんか気に入らなかったので、とりあえずビンタしてから金を払い、俺は高い焼酎を手に私室に戻ろう歩きだしたのだが、その前に煙草でも吸おうと考え喫煙所へ向かった
…それが悲劇の始まりだとも知らずに
◆◆◆
「え~…火はどこやったか」
喫煙所に来た俺は早速煙草を胸ポケットから取り出し火を点けようとしたが、ライターが無い、しまったな…ライターは上着の胸ポケにいれっぱなだったか
「火が欲しいんですかぁ?はい、どーぞ」シュボッ!
「おう、悪いな」ジジジ…
火を探す俺の前にライター売りの少女のごとく、偶然通りがかったのであろうそいつは大変助かるタイミングで火を貸してくれた
「フーッ~…」
「うへへへ~」
そう、偶然だろう、まさか尾行されていたとかそんな事は無い筈だ、俺はファミリーを疑ったりはしない、そう、例え相手の視線がさっきから俺の横にあるブツをガン見していたとしてもだ
「ポーラ知ってますよぉ~、それ、イモジョウチューでしょ~?」
狩人のような輝く瞳、イタリアから来たアルコール依存艦、ポーラ
「しかもポーラのお小遣いじゃちょっとお高くて買えない感じのヤツですよねぇ~」
「…フーッ~、いつからだ?」
「ポーラ、明石さんのお店では●めの一歩立ち読みしてましたぁ~」
「…明石から聞いたのか?」
「ポーラ鼻が良いんですよぉ~、控えめに言っても猟犬くれー鼻がいいって前にザラ姉様が誉めてくれましたぁ」
ゴゴゴゴゴゴゴ!!
選択肢は2つある、今ここでコイツとバトルし、勝利するか、もう1つはコイツの追撃を振り切って私室まで逃げ込むか!
前者はなかなかホネが折れるタフな展開になる、しかも、俺はこのブツを守護りきらねばならないと言う防衛戦になる、ならば後者、俺の私室の前には何人たりとも寄せ付けない鉄壁の守り、魔宮薔薇の陣がある、たかが重巡のボウヤ程度では突破は不可能…
「あ、ザラ姉様」
「え゛!?」
俺は灰皿を蹴り上げてポーラに目潰しをかまし一気に走るッ!最大速力!今の俺を止めるには同じく光速の世界に入門するしかないだろう
「アデュー!ポーラガール!」
「しまッ!!逃がさないッ!逃がさない!ニガサナイ!ニガサナWRYYYYYYY!!」
予想以上に速いッ!!廊下を疾走する俺、スタートが遅れている筈のポーラ、だがおそらくヤツは0コンマを争う位置に追って来ているッ!
「アルッ!アルアルアルアルコォォォル゛ル゛ル゛ゥゥゥゥ!!」
「怪物めッ!」
控えめに言って、ミケランジェロの彫刻のような大胆かつ躍動的に壁を蹴るポーラ!上から強襲するポーラの尻ギロチンをかわし、俺はさらに疾走する
「俺の部屋まではどんなコースを使っても40秒はかかる!」
「酒ッ!飲まずにはいられないッ!!」
「デ●オかッ!」
「テイトクのイモジョウチューはどんな味ですかぁ?ウヒ!ウヒェ!ウヒェヘヘヘヘ!」
侮っていたッ!ヤツの爆発力ッ!アルコールを摂取しようと生き抜くヤツの土壇場のエナジーをッ!このままでは追いつかれるッ!
どうする?ヤるか?ここでヤツを迎え討つか?だがおそらく今のポーラの速度は俺のスネークバ●トが当たるかどうかすら怪しい………ならば!
「スネークバ●トォー!!」
「Dolce!チョコ・ラテのよーに甘いですよぉ!」
案の定、ポーラは俺のスネークバ●トをかわした
「かかったなァ!」
「なんとぉ!?」
俺はそのまま壁をブチ抜いて中の部屋へと転がり込む、あとは部屋の壁を同じようにブチ抜き外に出れば40秒のところを5秒で部屋へと到達可能ッ!完璧なプラ…
「……うっ、なんだ?この部屋はッ!白いぞッ!まるで寒い日に硫黄臭漂う温泉地に迷い込んでしまったかのような白さ!さらにッ!ズボンにからみつく温水のような重さッ!!」
間違い、これは…お湯ッ!!ならばここはッ!
「ウヒ…ウヘヘヘ、そうですぅ…ここは大浴場ですよぉ~…テイトクぅ」
「なにィ!?」
俺がブチ抜いた穴から白い湯気が抜けてゆき、侵入してくるポーラ…
そして、今まさに身体を洗っていたらしき艦達が驚愕の視線を一斉に俺に向ける
「ちょ!え?ちょ!マジありえないんですけど!え?なんなの変態なの!?」
「変態!まごうことなき変態ですわ!」
なんてコトだ…紳士であるこの俺がまるでT●L●VEるみたいな展開にッ!!クソッ!まるで嬉しくねぇ!!
「さぁ~…テイトクぅ、それをポーラにもわけてくださいよぉ~…テイトクの持つそのポーラが大好きな濃い匂いの詰まったヤツをペロペロさせてくださいよぉ~」
「誤解を招くよーなコトゆーなァ!」
しかも!今ここでッ!!
クッ!今すぐこの場を離れたいが、あの銀髪は間違いなく浜風ちゃん!ダメだ、足が!足が動かないッ!まるで魔法にかかったみてーに動けない!
「WRYYYYY!!もはや行動不能ッ!そしてようこそ!ポーラの永遠のフューチャー………って!!ダビデッ!!」
今まさに、飛びかかろうするポーラにスナップの利いたビンタが炸裂し、ポーラは聖なるポーズで壁に激突した
「ポーラァァァァァ!!い、い!アナタ一体ナニやってる!ナニやってるのッ!」
「ヒッ!ヒィィ!ざ…ザラ姉様ッ!」
「部屋に居ないから1人でお風呂に行ったら……ねぇ?ポーラ、アナタ、ナニやってるの?ねぇ?ナニやってるの?ねぇ?」
「え…あ、いや…えっと……テイトクと夜のオウガバトルで…」
「ねぇ?」
M字開脚のまま床に頭を付ける新感覚の土下座をキメるポーラにゆらりと寄る姉は誰がどう見てもキレていた、おそらく、今から惨劇と言う名のオペラが始まるのだろうと誰もが確信した
「……よし」
俺は深く息を吸い込んで吐き出し、できる限り紳士的に全裸娘達に向き直った
「…じゃ、ご湯っくり」
よし、逃げよう
「ふざけんなテメーッ!!」
「この変態野郎がァ!ナニがご湯っくりだボケェ!!」
なんか色々飛んできた、痛い!なにコレ!痛いッ!!この石鹸ッ!ジャイロ回転しとるやんけ!痛ァ!!
後日、風呂場の改装費の一部負担と精神的トラウマの賠償金を請求され、せっかく貯めたプール金を失った