「お久しぶりです、零さん。そして初めまして佐藤和真さん、それに…」
そうでしたね私達はあの甲冑に切られて…あれ、三人?ダクネスじゃない様ですけど…。
「…まゆたんさん、急にこちら側にお呼びしてしまいすみません。」
「まずここどこっスか?」
「「まゆたん!?」」
ーまゆたんsideー
どういうことっスかね?たしか我はゆんゆんと一緒にモンスター退治をするために馬車に揺られてる最中だったはずだったんスけど、今は何故か零とカズマと知らない人と我が椅子に鎮座してるんスけど…夢?揺られて気持ちよくなって寝てしまったんっスかね?じゃあ…。
「おやすみなさいっス。」
「えっ、ちょっと待ってください!?」
我が寝転がり二度寝を決行しようとすると見知らぬ人が止めに入った、本当になんっスかこの知らない人?
「まずあんた誰っスか?名乗ってほしいっス、そこの人。」
言ってやったっス!どうやら名乗るのは忘れていただけの様で思い出した途端ワタワタしだしたっス。
「申し遅れました、私はあなた方を導く女神エリス。今回は零さんの言語消失の原因が判明したのでこうして来ていただきました。カズマさん、すみませんが少々お待ちいただくことになりますが宜しいですか?」
「あ、はい…良いんですけどなんでまゆたんもいるんですか?エリス様。」
それっス、なんで零の事で我も呼ばれなくちゃならないんっスかね?というか言語消失?
「じつは零さんの件について重要な存在なんです、わかりましたか佐藤和真さん。…いいですかまゆたんさん、落ち着いてよく聞いてください。貴女は…。」
落ち着いてるっスよ、でなんなんスかね。
「貴女は人間ではありません。」
…。
…え?
ちょっと待ってほしいっス。え?我が人間じゃない?
エリスの言う事があまりにも想像を遥かに超えていたせいで我はその意味を受け止められなかった。
「な、何を冗談言ってるんっスか。そんなことあるわけないっスよ!あるわけないっス、あるわけが…。」
「お辛いでしょうがそれが真実です。」
人間じゃない、それが真実なら…じゃあ我は…。
「…我は一体なんなんっスか。」
エリスは虚ろな目になって項垂れている我にこれから長くなるであろう我についての話の最初に「では1から話しましょう。」と言い、それに続けた。。
「貴女は、いえ貴女こそ零さんが失った言語、そして新たに与えられるはずだった言語そのものです。」
「「「ッ!」」」
「異世界の言葉を転生者の方々の頭内に入れるには魔力を用います、しかしその魔力がイレギュラーによって誤作動を起こし自身の持っていた言語をも道連れにし零さんの記憶から分離、この世界へと行き着きました。イレギュラーとはアクア先輩を加えて三人で一度に異世界に飛ばされた事です。」
「…ほんとすいません。」
カズマが横で深刻な顔をして謝っていたっス、異世界…カズマと零は異世界人だったんっスね。
我は何の疑いもなく異世界の存在をすんなり受け入れていることに何故か疑問は抱かなかった。その間エリスはというと何度も謝っているカズマを何とかなだめようと必死だったらしい。
「…そ、それでは続けますね。まゆたんさん、貴女が最初にいたのは紅魔の里の近くで間違い無いですか?」
「…間違いは、ないっス。」
我はショックの余韻は残るものの質問については隠す必要がなかったのですんなりと答えた。
「これについては私達でも結局理由は解明されませんでした。しかし仮説としては高い紅魔の魔力に魔力同士で引かれたのではというのがありますが、いまだ真実には至っていません。そしてその魔力は紅魔の里に漂っていた魔力と混ざり合い、何故か人の形になったのです。…実はこれも初めてのケースでして、一体何故人型になったのか、何故こうして人と変わらず動くことができるのか、全く解明できていません。」
…何なんっスか、それじゃあまるで化け物じゃないっスか…。
魔力の化け物、異形の者、モンスター、怪物、異物…頭に様々な単語が浮かび上がる。我の目からは沢山の雫が落ち、言葉にならない声が口から漏れだしそうになった。我はなんとかそれを押し殺し、エリスの方へと目を向けると、エリスは話を再開する。
「先ほども言いましたがまゆたんさんは零さんの言語そのものです、規定上ですと貴女が魔力として零さんの元に戻らなくてはなりません。」
「…じゃあ我は消えるんっスか。」
「記憶は零さんに引き継がれます、ですが貴女の存在は…そうなるでしょう。」
それを聞いた時、我の頭の中にはゆんゆんがいた。初めてあった時、クエストを一緒にやった時、めぐみんと出会った時…。
我と一緒の時、ゆんゆんは笑顔だったっス。一緒に泣いたり、怒ったり、悩んだり、喜んだり、どんな時も最後は笑顔だったっス。
じゃあ我が居なくなったら?紅魔の里では友達は沢山居たらしいっスけど、今はアクセル暮らしっス、…ゆんゆんは悲しむっスかね。
一人で朝食を食べるゆんゆん、一人でクエストを選ぶゆんゆん、一人でクエストを終わらせるゆんゆん…そこに笑顔はあるっスか?そこにゆんゆんの楽しい生活はあるっスか?
何度考えても思い浮かぶのは悲しげにうつむいた様子のゆんゆんだけ。
たぶんゆんゆんに会う前の我なら悩みはすれど悲しみはしなかったと思うっス。
でも、今はゆんゆんと一緒に居るっス、ゆんゆんと一緒に…居たいっス。
消えたくない…。
消えたくないんっス。
ゆんゆんと約束したっス、ズッ友だって…言ったっス、だから。
「ゆんゆんを…独りにさせたく…ない、っス。」
ようやく導き出した自分自身の思いを口にすると今までせきとめていたものが崩れるように涙も、泣き声も、そして本音も止めどなく我から漏れだし始めた。
「我はゆんゆんと一緒に居たいんっス!ゆんゆんを悲しませたくないんっス!だから…だから…。うぎゅっ、うえぇぇん…だからっズぅああぁぁん。」
「一つだけ、方法があります。」
「うぎゅ…グシュン。ほんと…スか。」
「えぇ、しかしそれは零さんにも了承していただく必要があります。零さん、貴女がもし了承した場合、戻ってくるのは今貴女がいる世界の言葉だけになります、日本語は戻ってきません。覚えるとなると1からやり直しですよ。零さん、どうされますか?」
その時、我から流れ出ていたものは止まり全身が強張った。次の一言で我の存亡が決まってしまうのだから。
「りょうしょう だいじょうぶ。」
…即答だった、なんで直ぐ決められるんっスか。
「…教えてほしいっス。なんでそんなにあっさり決められるんっスか?なんで…赤の他人みたいだった我に、過去の記憶そのもののような言語を捨てられるっスか!?」
「すてる ちがう、あげる した。(捨ててませんよ、貴女にあげたんです。)」
「零…ありがとうっス、本当にありがとうっス!」
「了承は取れたようですね。ではご説明しましょう、まゆたんさんは未だ魔力の塊です、それはとても不安定ですのでこちらで変化させてもらいます。」
「その…危なくないんっスか?」
「今のままででいる方が危ないとだけは言っておきましょう。そこでまゆたんさんには天使となり、私の…後輩となってもらいますが宜しいですか?」
…ん?天使?我が天使っスか?
「えっと、それはゆんゆんと一緒に居られるっスか?ここに住み込みとかじゃないんっスよね?」
「はい、天使と言っても見習いのようなものでもので、たまにここに来ていただいて私からの指導を受けていただければ問題ありません。少し先の将来、私の補佐をしてもらうかもしれませんが問題ありません。」
それなら大丈夫っスね…って、なんで天使なんスかね?他にも種族がいる中で天使を選ぶなんて。
「なんで天使なんっスか?他に選択肢がないのはなんでっスか?」
という我の質問に、エリスは…。
「こういうことはさっきも言った通り規定上は本人に戻さなくてはいけません。でも私はまゆたんさんを助けたかった、だから私のそばに天使として置き、監視体制を作っておく事で上からの理解を得なければならない、という事です。さっき零さんに了承を得たのもそのためです。それで…天使になっても構いませんか?」
…エリスが我の事を気にかけてくれていた、女神であるエリス…エリス様が我を救ってくれた。まったく、答えは決まってるのに…本当にエリス様は優しいっスね。
「構わないっス、我はゆんゆんと一緒に居られればあとは何にも望まないっス。本当にありがとうございまっス。」
我はそういい頭を深く下げエリス様にお辞儀をした。
「それでは今から貴女を元の世界に戻します。神の御加護があらんことを…。」
エリス様がそういうと天井が光り輝き、足元には魔方陣が浮き出した。
「一段落したらまたこちらにいらしてください。」
「はいっス!」
「まゆたん ばいばい。」
「またなまゆたん!」
「はいっス!」
今帰るっスよゆんゆん。我はずっとゆんゆんと一緒にいるっスからね。
ついに明かされたまゆたんの真実、一体なん人くらい気付いてましたか?
※作中のオリジナルキャラの零とおしゃべり(コメ)してくださる場合、必ず{零}と付けてコメント宜しくお願い致します。
{まゆたん}と付けてコメントして頂ければまゆたんが貴方とお喋り。
もう欲望は抑えないどうか自分にコメントを分けてくれー!