東方創造伝   作:るーびっく☆きゅーぶ

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お待たせしました。人妖大戦ならぬ神妖大戦です。


第20話 神妖大戦

都市の一番端、俺が初めて都市を訪れた時に通った門に来ていた。

そこに前のような門番はいない。兵のほとんどを都市の住人の誘導に回しているからだ。

 

門をくぐってから振り返り都市を見渡す。無限に続かのように連なるビル群が視界を埋め尽くしていた。

 

 

「多分これが最後か…」

 

 

俺が暴れるとなると都市が無事で済むとは思えない。まぁ、だからこそ移住計画を早急に進めようとした訳だが…

 

都市全体を見れたことに満足し、俺は目的の場所に向かって歩き出した。足取りは至って軽い。

 

本来なら何十億という妖怪相手なのだから、死地に向かう覚悟で向かうのだろう。だが今の俺からしてみれば、子供が沢山の玩具がある遊び場に向かうようなものだ。

 

少し歩くと都市の舗装された道ではなく、少しぬかるんだ泥の地面が延々と続いていた。その先には広大な平原が広がり、更に奥には森林が左右に広がるように延びていた。

木々が隙間なく重なっている様はまさに壁のようであり、黒や茶色の樹皮は重なりの中で完全な黒へと変わっていた。その隙間の無い森林の中から、無数の赤黒く光る目が見える。

 

 

「さて…と、こっちから仕掛けてあげた方がいいのかな?」

 

 

俺の問いに誰も答えるはずがない。誰もいないのだから。そのはずなのに…

 

 

「待ってみてはどうかの」

 

「さも当然のようにいるのな」

 

 

背後から神美の声が聞こえて、あぁやっぱりなと思う。

こういう時、必ず神美は俺の独り言に返事を返してくれる。宇宙を創造する前、修行している時は本当に孤独だった。

 

 

「妻が夫の勇姿を見るのはあり得ん事かの?」

 

「勇姿になるかは別として、ロケットに乗ったんじゃなかったのか?」

 

「妾には転移能力があるからの。今からロケットに乗っても暇なだけじゃ。特にお主がおらんとな」

 

 

あぁ、やっぱりね。

予想通りの返事が来たよ。俺がいないと暇だと言って大事な事を放っちゃう。俺からしてみればとても嬉しい事ではあるのだが…ほどほどにして欲しい。

 

 

「はぁ…まぁ分かったよ。で?神美がいるのは分かるんだ。なぜ月夜見と永琳がいる?」

 

「あれ?駄目でしたか?」

 

「駄目だったかしら…」

 

「はぁ…」

 

 

なんか疲れた。戦う前から疲れてるとか新鮮なんですけど。そして当の本人達は自覚してない。

 

 

「ロケット…」

 

『あっ』

 

「はぁぁぁ……」

 

「まぁ妾の転移能力でロケットの中に転移すれば」

 

「まず指示を出す奴が必要だろうに」

 

『あっ』

 

 

もう嫌だ。これ以上は疲労が溜まるだけだ。早く話を切り替えて、終わらせて、遊びたい。

 

 

「何か話があってきたんだろう?」

 

「そ、そうじゃそうじゃ」

 

「忘れてただろ」

 

「ヒューヒューー」

 

「吹けてない」

 

「…謝るからそんなに責めんでくれグスッ」

 

「あ、あぁ別に責めてるわけでは無くてだな」

 

 

や、やべぇ泣き出した。女の子泣かせるとか、それも自分の奥さんだぞ?人生最大の汚点だ…

 

 

「あー女の子泣かせましたねー」

 

「いくらなんでも酷いんじゃない?」

 

 

ここぞとばかりに月夜見と永琳が俺を責めてくる。実に出来過ぎだ。冷静に考えれば、神美が泣いたところを俺は一度も見た事がない。

これは…

 

 

「…正直に言え」

 

「嘘泣きですごめんなさい」

 

「「すいませんでした」」

 

 

そうだと思ったよ。

 

 

「とりあえず本題に移ってくれ…話が進まん」

 

「すぐに許してくれる寛容さ!」

 

「そこに痺れる!」

 

『憧れ「進めろ」はい』

 

 

すぐにネタに走る性格はどこから来たんだろうか。でもよく考えたら二人って俺の血筋なわけだろ?

 

 

やめよう。

 

 

「この戦いが終わったら、いつこっちに月にこれるのか聞いておきたかったんじゃ」

 

「う〜ん…しばらく地球で活動しようかな。ある程度人類が繁栄したら月に行くよ」

 

「うむ、わかった」

 

「あ〜ちょっと待って、渡すものを忘れてた」

 

 

3人に何か贈り物をしようと考えていたのだが、すっかり忘れていた。

 

 

「まず神美だが…」

 

「なんじゃ?」

 

 

俺は掌に力を集中させ、ある物を創る。それを神美がワクワクしながら見つめているのを見ると、見た目相応の反応だなと思ってしまった。

 

 

(かんざし)だ」

 

「綺麗…」

 

 

創った簪は宝石の類が一切無くシンプルな物だが、複雑な形で構成される飾りの部分が神美の素の部分を引きずり出したようだ。

 

 

「月夜見には…ほい」

 

「扇子?ですか?」

 

「あぁ。風格というものを想像した時にパッと思い浮かんだ物をな」

 

 

こちらの扇子も同様にシンプルなデザインになっている。夜空の黒と、夜空に浮かぶ満月の月が描かれている。

 

 

「そして永琳」

 

「!これ前から欲しかったのよ!」

 

「それは良かった」

 

 

永琳が喜んで受け取ったのは、所謂ナースキャップだ。全体が紺色で、真ん中に紅い十字が刺繍されている。永琳は能力的な面でも医療関係に関わっているため、服装にも憧れを抱いているらしい。

 

 

「俺は今から戦う(遊ぶ)けどそっちはどうすんの?」

 

『観戦します』

 

「アッハイ」

 

 

もう戻ってくれるとありがたいんだが。

 

 

「今帰ってくれと思ったじゃろ」

 

「心読むのやめたんじゃなかったのか?」

 

「妻としての勘じゃ」

 

「「!!」」

 

「神美さん!是非私にも勘の習得のコツを!」

 

「わ、私にも!」

 

「やめて!俺の心情が3人同時に知られてるとか洒落にならない!」

 

 

なぜ永琳まで知りたがる!?

もうそこまで妖怪の皆さんが来てたのに空気読んで止まってくれてる…一向に始まる気配がないんだが。

 

 

「いやぁ〜お待たせしました。あのぉ〜かし『お!ま!た!せ!し!ま!し!た!凄い奴!バリバリ最強NO.1!』

 

 

古い!超古い!てかまだこの世界に無いのに何故知ってる!?

 

 

「…なんか…すいません」

 

「いえ…」

 

「あの、(かしら)とかいます?」

 

「呼んできましょうか?」

 

 

俺の問いに1人の女の妖怪が答えた。普通に会話してくれる奴も居るんだなーと呑気な事を考えてしまった。

 

 

「お願いします」

 

「少し待っててください」

 

 

常識のある妖怪というのは接しやすい。俺これから妖怪の教育しようかな。

常識のある妖怪が頭を呼びに行ったあと、少ししてから常識妖怪が1人の女性を連れてきた。

赤い髪に、赤い瞳。身長は俺より少し低いぐらい。筋肉はあるものの盛りすぎておらず、女性本来の力強さをそのまま形にしたような体格をしていた。

 

 

「おいおい、あんたらだけかい?飛んだ期待外れだね〜。うちはもっと殺戮を楽しみたいのに」

 

「まず一つ言わせてくれ」

 

「なんだい?」

 

「挨拶をしやがれ」

 

「ヒッ」

 

 

俺の威圧にその女は後退りして小さな悲鳴をあげた。その光景に周りの妖怪たちが焦り始めた。

自分達の頭が俺1人相手に臆したという事が信じられないようだ。

 

 

「俺の名は魅剣 真。人類を守護する神の代表として来た」

 

「チッ…鬼子母神…本当の名はあたしを倒したら教えてやるよ!フンッ!」

 

 

鬼子母神はそう言い切ると、俺の顔面目掛けて拳を放ってきた。

 

 

「さて…始めるか」

 

 

 

〜〜〜〜〜〜

 

 

 

鬼子母神が真に殴りかかる。それを見て私達は止めようとはしない。

何故か?答えは簡単。

 

 

「死ねぇッ!」

 

 

肉が弾ける音と共に、真の頭が弾け飛んだ。それを見てもまだ私達は動かない。

 

 

「はっ!こんなもんかい!全く本当に期待外れだ!おいあんた達!あんたらの旦那だろ?殺されて何もしようとしないのかい!?」

 

「死んどらんよ」

 

 

鬼子母神の問いに神美が答える。

 

 

「ハァ?あんたら現実から目を背けてんじゃないよ!見てみな!この通り頭が…あれ?」

 

「頭がどうした?」

 

 

鬼子母神が指差した方向には、頭を吹き飛ばされて死んだはずの真が立っていた。だがそんな光景を見ても私達は驚きもしない。

 

 

「な、なんで…た、確かに今頭を…」

 

「脳を吹き飛ばされたくらいで死ぬほど、何百億生きてないよ」

 

「あんた…何を言ってッ!?」

 

 

さっきの答え、真からしてみれば頭が弾け飛ぼうが、細胞全てを消されようが関係ない。彼はまた無から生み出される。

 

真の何百億という言葉が理解できず呆然としている鬼子母神の腹部に、真の拳が滑り込む。

踏み止まろうとするが、予想外の攻撃に防御姿勢が取れず他の妖怪達を巻き込みながら、後方に大きく吹き飛ばされていった。

 

 

「お前らに警告しておこう!死にたくない奴は見逃してやる!5秒数える!いぃぃぃぃっちぃぃ!!」

 

『ヒ!ヒィィィィィ!鬼子母神がやられたぁぁ!?もうダメダァ!お終いだぁぁ!!!』

 

「にぃぃぃぃい!!」

 

『逃ぃぃげるんだよぉぉぉ!死にたくねぇぇぇぇ!』

 

「さぁぁぁん!!」

 

『どけぇ!どけどけどけぇ!』

 

「しぃぃぃぃい!!」

 

『森だ!森に逃げろぉぉぉ!」

 

「ちょ、ちょっとあんた達!」

 

 

何十億という妖怪達は、真によってその半数以上が逃げて行った。

その光景に鬼子母神は戸惑いを隠せない。明らかに焦りが見え始めていた。

 

 

『ヒィィィィエェェェェェェ!」

 

「ダークネスアーマー!」

 

 

数え切った真は、赤黒い鎧のようなものを全身に身に付けていた。筋肉の筋などには紅い線のようなものがあり、全身の筋肉を目立たせていた。

胸には両肩の肩口から胸の中心めがけて太い線があり、真ん中で重なるとYの様な形に変化していった。

 

 

「少し遊ぶとするか…オラァ!」

 

「んな!?」

 

 

真が無造作に拳を放つと、視界に映っていた筈の妖怪達が血と肉の塊となった。

 

 

「あ、あんた、な、何者なんだい!?」

 

 

目の前で起きた出来事が理解しようと必死になるが、その張本人が目の前にいると理解した瞬間、鬼子母神は真に質問を投げかけた。

 

 

「魅剣 真だよ。創造神であり破壊神であり、そして邪神でもある」

 

「ふぇ…」

 

「お〜い?」

 

「気絶しておるぞ」

 

「マジか…君と遊ぶの楽しみだったのになぁ〜…ま、あとは残ってるので遊ぶかな」

 

 

鬼子母神に問われ、答えただけだというのに、それだけで鬼子母神は気絶してしまった。

 

 

『ば、化け物!く、来るなぁ!来るなぁぁぁ!』

 

「酷いなぁ、化け物だなんて。俺は創造神であり邪神だよ?少しは敬って欲しいもんだなー」

 

「そんな呑気なこと言うとる場合か」

 

「なんか真様…性格変わってません?」

 

「確かに」

 

 

顔までもが殻で覆われているため表情は分からないが、言動から危ない匂いがするのは気のせいではないはずだ。

 

 

「楽しい、こいつらの恐怖し絶望する顔が…粘土のようにコロコロと形が変わる様が…やべぇこの高揚感癖になりそうだ!」

 

「真…お主…」

 

「真様…」

 

「真…」

 

 

「「「落ち着け」」」

 

「はい」

 

 

『今がチャンスっグゲッ』

 

 

呑気に会話していたところを狙った妖怪が、神美の手から放たれた光によって跡形もなく消え去った。

真は少し驚いた素振りを見せながら振り向いた。

 

 

「そろそろロケット乗った方がいいと思うぞ」

 

 

真にそう言われ私達は都市の方角に向き直った。

都市の上空には何機かのロケットが既に発射していた。真の設計したロケットエンジンによって、ロケットの巨体は悠々と空高く飛んでいた。

 

 

「そうするかの。ほれ、行くぞ」

 

「あ、はい。では真様、月で会いしましょう」

 

「ほどほどにね、真」

 

 

真の言葉に各々が答える。

神美が手に光を生み出すと、そこにロケットの中が見えてきた。

光の中に入り振り返ると真の背中が見える。

 

視界を覆い尽くすような妖怪達の前で悠然と構える様は、ロケット内の人間たちを大いに沸かせる事となった。

 

 

〜〜〜〜〜

 

 

 

「行ったか…」

 

 

神美達がロケットに乗ったのを確認した俺は、楽しみにしていた気玉を使う事にした。

 

 

「こんなもんかな」

 

 

両手に気を集中させて玉を作り出す。

サッカーボールほどの気玉は、色は無いものの、周りの空気を巻き込みながら常に回転していた。

 

修行中、指先程の範囲で試してはみたものの、周りが何も無いため効果がどれ程のものか把握できていなかった。

 

 

「気玉の強化版、鬼玉だ。どれだけの威力を持つのか!お前らで実験させてもらおう!」

 

「あ、あぁぁ」

 

 

意気揚々と鬼玉を投げようとしていると、怯えた声が聞こえる。

 

 

「ん?あぁ、さっきの常識妖怪か」

 

「じょ、常識妖怪…わ、私ですか?」

 

「そうだ。常識のあるお前に一つ助言をしてやろう。生き残りたいなら地面に穴を掘って隠れてな」

 

「へ?あ、え?どういう」

 

「これをぶん投げるから」

 

 

俺が言い切ると常識妖怪は目にも留まらぬ速さで、3メートル近くの縦穴を掘った。

そこから横穴を掘り、思い出したかのように鬼子母神を穴に引きずっていく。

 

 

「んじゃ、またなー」

 

 

俺は常識妖怪に別れを言い、霊力で飛行する。

鬼玉を片手に持ち、構える。上空から垂直に叩きつけるように腕を振ると、鬼玉は地面に吸い込まれるように落ちていった。

 

 

 

爆発が終わってから地面に足を付ける。

 

足元さえも妖怪達の屍体で埋め尽くされていた。一歩踏み出すと、屍体から粘着質の奇怪な音が出た。

 

 

「面白いな…壊すのも…クク」

 

 




長くなってしまいました。
言い訳になりますが。最近リアルが忙しかったため、あまり書く時間がありませんでした。
もう少し投稿スペースを上げれる努力します。

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