隊長の顔面に拳を叩き込んだ後、俺は月夜見が心配になり瞬時に気持ちを切り替えた。
月夜見に近付こうと思い立った時、月夜見の顔を見て、俺は胸が締め付けられるような痛みを感じた。
頰には明らかに涙を流した痕があり、目は赤く腫れ上がっていた。
「月夜見…大丈夫か?」
「ハッ!?ま、真様!お、お怪我は!?」
「とりあえず落ち着け」
〜数分後〜
「落ち着いたか?」
「は、はい」
月夜見を落ち着かせるのに苦労したが、俺が幽霊でないことをしっかりと認識させた。
「ありがとうございます…そして申し訳ありません…私が先に解決していればよかったものを…」
「大丈夫大丈夫、気にするな」
「し、しかし」
月夜見によると俺が隊長をやろうと提案した時、ハイテンションになり過ぎて根回しなどその他諸々を忘れていたらしい。
「それよりもだ」ズイッ
「ひゃい!」
俺は月夜見に顔を近づけ、表情を確認しながら、次に掛けてやるべき言葉を思料する。
考えていないわけではないのだが、
月夜見をどのように慰めてあげればいいのか分からない。あそこまで言われて傷付かない女性がいるとは思えないのだ。
「大丈夫だったか?」
「へ?」
駄目だ思い付かない。脳の容量上げてまで知識詰め込んだのに、どうした俺、、、
「あんなこと言われてよ」
「あ、あ、大丈夫です」
ほぇ〜〜、、、強い子じゃな〜。孫みたいに思えてきた。
いや歳で考えると孫というか曽孫というか雲孫でも足りないな。俺も歳とったな〜、まぁ肉体年齢が老いることは無いだろうけど。
「真様」
「どうした?」
「私…」
月夜見は言葉に詰まり俯いてしまった。もっと声を掛けてやるべきだったか?
そんな後悔が俺の心をキリキリと痛めつける。後悔を振り払うために、もう一度声を掛けようとした時、月夜見が顔を上げて俺より先に口を開いた。
「真様が好きです」
…
「ふぁ?」
俺は月夜見から口から発せられた言葉が理解できず混乱して、充分な酸素を出せていない変な声を出してしまった。
月夜見の双眸から反射して見える俺の顔は、なんとも間抜けな面だった。
「え、え、ちょ、え、」
「確かに戸惑われるかと思います。真様には既に奥様とお子さんがいらっしゃいます。しかしそれでも私はッ…真様の側に居たいのです」ギュッ
月夜見は自分の服の端を握り、涙が滲んだ目で俺を見つめてきた。
こんなん反則でしょ、、、告白からのこのコンボは、男として断るのを躊躇う、いや断れないスキルを発動する。もう萌え死にそうです。
「月夜見の俺を想ってくれる気持ちはとても嬉しい、しかし…」
月夜見が言ったように俺には妻子がいる。俺には神美を裏切ることなんてできない。
最愛の妻を裏切ってしまったら俺は、、、自分が許せなくなる。だから申し訳ないが月夜見には、、、
お願いだからその涙目やめてくれ本当に!もう断る勇気なんて無いんだけど!死にてえ!
「真様あれって…」
「え?…!?」
俺が絶望(いろんな意味で)した時、俺の女神が凄まじい光の中から現れた。
はい、俺の女神であり妻、神美さんのご登場。神美の後ろには龍妃が複雑な表情でこちらを見ていた。
お願いだからそんな目で見ないで!あれ?なんかデジャヴ。
「はぁ〜情けないのぉ〜」
「月夜見も大胆ですねぇ〜」
「「オワタ」」
ナンテコッタイ、、、
妻子がいるにも関わらず俺に告白してきた月夜見。
それに対し戸惑い、さらに妻と子の登場で絶望する俺。
戸惑う俺に呆れながら近づいて来る妻、神美。
部下が自分の親に告白してきたという状況を複雑な心境で見つめる龍妃。
「あ、アハハ…神美、どうしッ…すみませんでしたぁぁ」ズザザザァァァァ
神美に声を掛けようとしたら視線だけで殺せるんじゃねえかってほど睨まれたんですけどぉぉ!もうこれ死んだわ。
でも最愛の妻に殺されるなら本望。
「妾の夫なのじゃ、自身を持て」
ごめん何を言いたいのか分かんない。分かんない!分かんないよぉぉ!絶望的状況の中で頭が真っ白。顔面蒼白。あー、肌が血の気引いて白くなってきた。
松○しげるさんもビックリな全身真っ白ですありがとうございました。
「母上それはちょっと違います」
「へ?あ、月夜見、お主に言っておくべきことがある」
「は、はい!」
月夜見ドンマイ…何を言われても受け入れるしか無い。
「妾の夫に告白した、その決意、そして想いは痛い程に分かる」
君はそれだけのことをしたんだ。他の人からしてみれば、告白しの奥さんが出てきて修羅場になったようにしか見えないだろう。
だがそれは違う。それは人間だった場合の話だ。
「だがな?」
ここは修羅場なんてものじゃない。修羅になったのは神、それも創造神である俺の妻だ。
庇ってやれる自信はあるが、守ってやれる自信はない。どうか無事でいて「本妻は妾だと言うことを忘れるな」
「「「…」」」
ヒュオォォォォ〜〜
「?」
「「「え?」」」
え?今なんと?
「今なんと仰いました?」
「だから妾が本妻じゃ」
「母上…月夜見を叱りに来たのでは?」
「なぜそんな事をする必要がある。妾としては自分の夫がモテるというのは嬉しいことじゃ」
俺は神美達の言葉が終始理解できなかった。告白してきた月夜見本人も理解できずに、ブツブツと何かを呟いている。
「それに妾は、真の妻になった時に既に決心しておったわ」
俺信用されてなかったんだね泣きそうです、てかもう既に目から汗が出てるよ。
「妾の夫は誰にでもモテるような男じゃ、まぁその男に惚れられたのが妾な訳じゃがな」ドヤッ
「「オォ〜〜」」
無ッゲフンッゲフンッ胸を張ってドヤる神美の話を聞いて、月夜見と龍妃が感嘆の声を上げた。
「そ、それでは私は側妻…」
「うむ、これから2人で真を支えていくぞ」
「は、はい!!」
あれ?なんか丸く収まってないけど、月夜見が側妻になること決定してる?俺に拒否権無し?
あ、最初からありませんでした、すいませんでした、お願いしますその眼光をどうかやめてください、泣きそうです。
「じゃ、私も」
「「「いや娘は無理だろ(ですよ)」」」
「ぶ〜いいじゃん!みんなしてお父さんのお嫁さんになるなら私もなるぅ〜!」
龍妃がとんでもないことを言い出したので思わず突っ込んでしまった。
龍妃を除きその場にいた全員に突っ込まれた龍妃は、駄々をこねるように手足をジタバタしはじめた。
「子供か」
「「「あなたのね」」」
「…」
3人の視線が痛い。視線だけで風穴開けられるじゃないか?
月夜見は神美の目をしっかりと見つめ、意を決したように頷くと笑みを浮かべながら口を開いた。
「不束者ですが、これからよろしくお願い致します」
「うむ、よろしく頼むぞ…と、それ真に言うべきではないかの?」
「あ…」
何この天然可愛い。
確かに正妻である神美に挨拶はしておくべきだろうけど、その挨拶はちょっと違う気もする。
神美に指摘された月夜見は俺には向き直ると、その場で座りだした。まだ訓練場なのでもちろん地面は砂利だ。
「不束者ですが、よろしくお願いします」
俺は我が目を疑った。月夜見は座礼をした。室内ならまだいいだろう。
屋外でだ、それも砂利の上で、額を地面に付けてまで深く座礼をしていた。
「つ、月夜見?ここ外だぞ?」
「ハッ!」
、、、もう何も言うまい。
今日で月夜見が天然属性を持っている事が判明した。幸い兵達は皆兵舎に戻っているようなので誰も見ていないが、、、
まぁ、妻が増えた訳だが。俺の身体持つかな?いろんな意味で…
スイッチが入らないと書く気が起きない…
君のスイッチ♪君のはどこにあるんだろ〜♪見つけ〜てあげるよ♪君だけのやる気スイッチ〜♪