少し文の構成を変えてみました。
今までと、このプロローグの文の構成。
どっちの方が読みやすいか。是非感想を頂ければ幸いです。
「あっちぃ〜」
10月だと言うのに気温と湿度は8月と大して変わらない。
溢れ出る汗のせいで、シャツが肌にへばり付いている。
とある街に青年は住んでいた。
彼は人でありながら異常なほど筋力が発達しており、幼い頃は蔑みの目で見られていた。
「助けて〜!赤ちゃんが!赤ちゃんがぁ!」
「ん?」
一人の女性が燃え盛る家に戻ろうとしている。その光景を見て誰も助けに行く事などできない。
それも当たり前。誰も死にたくないからだ。
現実にはドラマや映画のようなヒーローはいない。
だが
それを止めようと何人もの大人が組み付きにかかるが、彼は虫を払うかのように避けていく。
「やめろ!やめるんだ!消防隊を待つしかない!」
彼が燃え盛る家の中に入ったあと、玄関が崩れ落ちた。
その場にいた誰もが死んだと確信した。
組み付く事に失敗した自分たちのせいで死んだと大人達は絶望した。
数刻、崩れ落ちた玄関が吹き飛んだ。
誰もが目の前で起きた状況を理解できなかった。
「ふぅ〜余計熱くなっちまった」
吹き飛んだ玄関跡には、服を焦がしながらも赤ん坊を抱える青年が立っていた。
「ぶ〜」
「お〜幸い煙は吸い込んでないみたいだな。良かった良かった」
「あ、あぁ。美雨…美雨」
救いを乞う事しかできなかった母親は、彼の下に歩みを進める。
「そうか美雨ちゃんって言うのか。ほら、君のお母さんだぞ」
「ありがとうございます!ありがとうございます!本当にありがとうございます!」
母親は泣きじゃくりながら地面に膝をつきながら万謝した。
歓声が起きる。拍手も起きる。
彼はその力を怒りにではなく、自分の信念の為に使ってきた。
人を一人でも多く救うこと。
それが彼の信念。
故に彼には多くの友ができた。皆、彼を信頼し、尊敬してきた。
だが彼は、自分自身が一人の人間である事を忘れていた。
人を救う事で、自覚という概念が風化していってしまった。
故に彼は自分自身の弱点を理解しきっていなかった。
彼は友人である少女を救った。
自分の命を代償に。
彼は他人を救う為に自分を犠牲にしなければならなかった。今までは小さな物で済んでいた。だが、その慢心が彼を少しずつ破滅の道へと導いていった。
少女は見た。
惹かれている彼の撥ねられる瞬間を。
彼の体が宙に舞い、落下するのを。
彼の頭部から鮮血の絨毯ができていくのを。
彼の無残な姿を。
そして、彼が光と共にその場から跡形も無く消えてしまったのを…
感想を頂ければ、今後に活かしていけるよう努力します。