おっぱいドラゴンに柱間ァ……!大好きクレイジーサイコホモがinしました(休載中)   作:ふくちか

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第二十話「吸血鬼の矯正」

 

さて、授業参観の翌日の放課後。

 

 

俺達は旧校舎一階の所謂「開かずの間」と言われる部屋の前にいた。

何でもこの閉めきった扉の向こうに、もう一人の『僧侶』がいるらしい。

 

リアスの実力が認められた事で開放が許可されたとの事だが………にしても、大袈裟な封印だな。

 

「一日中ここに住んでるのよ。一応深夜には術が解かれて旧校舎だけなら部屋から出ても良いのだけれど……中にいる子自身がそれを拒否してるの」

「要は引き籠りか」

 

俺がそう言うと、リアスは頷いた。

そうしている間にも、封印が解除された。

 

リアスが扉を開けると――――

 

 

 

 

 

「イヤァァァァァァッ!!」

 

………悲鳴?

いや、恐らくは他人が自分のテリトリーに入って来た事への驚きだろうな。

 

引き籠りと言っていたな。ならば中の住人は――――対人恐怖症も患っていると見た。

 

 

俺も入っていくと、そこは女っぽい内装を施されており、生活感に溢れていた。

 

 

 

 

 

 

そして――――

 

 

「あぅぅ…………」

 

いた。

さっきの悲鳴は此奴か。

 

しかし、解せない事がある。

 

「リアス。なぜ此奴は女の服を着ている?」

 

疑問に思い聞いてみると、奴は目を丸くした。

 

「……流石はイッセーね。この子が男の子だと気づくなんて」

「そんな事はどうでもいい。俺の質問に答えろ」

「…この子、女装趣味があるのよ」

 

……………………此奴の周りには、やたら濃い面子が揃うのだな。

 

 

 

「と、所で、この方々は誰ですか?」

 

女装野郎が俺とミナトとアーシア、ゼノヴィアをチラ見して聞くとリアスはソイツに説明した。

 

「あなたがここにいる間に増えた眷属よ。『兵士』の波風ミナト、『騎士』のゼノヴィア、そしてあなたと同じ『僧侶』のアーシア。そしてこっちが……人間だけど、オカルト研究部の部員の兵藤一誠よ」

 

だが奴は「人が増えてますぅぅぅぅぅ!!」として驚く一方だ。

 

「お願いだから、外に出ましょ?もうあなたは自由なのよ?」

「嫌ですぅぅ!僕に外の世界なんて無理なんだぁぁぁぁぁ!怖い!お外怖いぃぃぃ!!」

 

言っても聞かなさそうだな。

なら……

 

「来い」

 

強引に連れていくまでだ。

と思っていたが――――

 

 

「イヤァァァァァァ!」

「……む?」

 

すると一瞬、時が止まったかの様な錯覚を感じた。

それは直ぐに消えたが、相変わらず女装野郎は俺から離れようともがいてる。

 

チラリと辺りを見渡せば、他の全員は固まっていた――――いや、二人だけいた。

 

「き、木場先輩?!一体どうなって………」

「………はぁ」

 

ミナトとリアスだ。

時計を見れば、針も壊れたかのように止まっている。

 

「――――時を止めたのか」

「もしかして、彼が封印されていたのって……」

「見たところ、無意識化で発動している………つまり、此奴自身がコントロール出来ていないからか」

 

俺の言葉に、リアスは同意するように頷いた。

 

「この子は視界に入った物体を任意で停止させる神器を持っているの。停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)。ただし、対象が自分のスペックより上な場合は対象外なのだけど」

 

とは言え、コントロール出来ん力ほど厄介な代物はないな。

 

「怒らないで!怒らないで!ぶたないでくださぁぁぁぁいっ!」

 

女装野郎は端で泣き叫んでいた。

 

「誰が怒っている様に見える?第一俺は止められていない、怒る理由がない」

「で、でも不機嫌そうですぅぅぅ!!」

「失礼な奴だな。生まれつきだ」

 

リアスは奴の頭を撫でながら、今更ではあるが紹介を始めた。

 

「この子の名前はギャスパー・ヴラディ。私のもう一人の僧侶よ。そして、元人間と吸血鬼のハーフなの」

 

 

 

奴の口から、きらりと尖った歯が見えた。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

さて、リアスは今度の会談がどうとかでサーゼクスの元へと向かったため、残った俺達で、此奴の性格を矯正してほしいとの事だ。

因みに、ギャスパーに関しては木遁で縛って無理矢理連れてきた。

 

「一先ず須佐能乎で追い回すか」

「止めましょう先輩。お願いですから止めてください」

「………ならどうする」

「私に任せてくれ」

 

そう言って前に出てきたのはゼノヴィア。

その手には何故かデュランダルが握られている。

 

「ほら、走れ 逃げなければデュランダルの餌食になるぞ!」

「ひぃぃぃぃぃぃ!デュランダルを振り回しながら追いかけてこないでぇぇぇぇ!ハントされるぅぅぅ!!」

 

 

………………

 

 

「おい塔城。俺がやろうとした事をそのまま実行してるぞ」

「………イッセー先輩より加減は分かって――――にゃん!!!」

 

失礼な奴だ。

俺は生意気な猫を拳骨で沈めると、アーシアが近づいて来た。

 

「ゼノヴィアさん。活き活きしてます」

「やはりか」

「はい。スッゴク輝いてますので」

 

恐らくあれでストレスを発散しているのだろう。

 

「も、もう駄目ですぅ…………!!!」

 

見た目通り体力はないな。

 

「…ギャー君、大丈夫?」

 

と、いつの間にか復活した塔城がへばっている奴へと近づいて来た。

 

「小猫ちゃん………」

「疲れた時は……にんにくが一番だよ…………」

「やぁぁぁぁん!!ガーリックらめぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

何だ、まだ元気があるじゃないか。

 

「おーっす、オカ研!」

 

この気配は……匙か。

 

「どうした、匙」

「あ、どうも。匙先輩」

「よ、兵藤にミナト君。解禁された眷属を見に来たぜ」

「今追い回されてる奴だ」

 

俺がにんにくから必死に逃げるギャスパーを指さすと、匙は目を輝かせる。

 

「おぉ!アーシアちゃんと同じ金髪僧侶か!良いなぁ!!」

「男だぞ」

「……え」

「女装趣味があるそうなんです」

 

ミナトの言葉がとどめとなったのか、奴は静かに崩れ落ちた。

 

「そんなの、あんまりじゃねーか………ッ!!」

 

若いな。

まぁ、気持ちは分からんでもないが。

 

 

 

 

…………む。

 

 

「……先輩」

「あぁ」

 

 

―――――俺は近くの茂みに向かって苦無を投げた。

 

「兵藤!?」

 

隣の匙は驚いているが、苦無は構わず茂みへと向かった。

が、それは後ろの木に刺さる事無く弾かれ、木の前の地面へと落ちた。

 

 

「…………おいおい、殺す気かよ!?」

 

出てきたのは、作務衣を着た怪しげなおっさん…………。

 

「……確か、アルデンテ?」

「アザゼルだッ!!」

 

アザゼル、と聞いてか、俺以外の連中は全員顔を青ざめさせた。

 

「落ち着け。もう奴は終わりだ」

「な、何言ってんだ………ッ!?」

 

アザゼルだけでなく、匙達も驚いていた。

 

 

 

 

何故なら、アザゼルの背後から、特注苦無を首筋に当てるミナトがいるんだからな。

 

 

 

「い、いつの間に………!?」

「……はは~ん。さっきの苦無、だな?」

 

……ほう。

 

「堕天使総督とは名ばかりではないらしいな」

「あんがとよ………さて、そろそろ離れてくんねーかな?争いに来たわけじゃねーから」

 

それは恐らく本当だろうな。

ミナトもそう思ったのか、苦無を離して俺たちの元へと戻ってきた。

 

「それはそうと、聖魔剣使いはいねーのか?」

「木場ならいないぞ」

「あぁ、そうか。そりゃ残念………って、おいそこのヴァンパイア」

 

アザゼルは木の影に隠れたギャスパーを凝視していた。

 

「『停止世界の邪眼』か。そいつは使いこなせないと害悪になる代物だ。神器の補助具で不足している要素を補えばいいと思うがな。……そういや、悪魔は神器の研究が進んでいなかったな。五感から発動する神器は、持ち主のキャパシティが足りないと自然に動きだして危険極まりない」

 

次に、その視線は匙に移る。

 

「そっちのお前は『黒い龍脈』の所有者か?」

 

……確か、対象者にラインを接続して力を吸収する、だったか?

 

「丁度良い。そのヴァンパイアの神器を練習させるならお前さんが適役だ。ヴァンパイアにラインを接続して余分なパワーを吸い取りつつ発動させれば、暴走も少なく済むだろうぜ」

「後は、俺の血か?」

「――――あぁ、それが一番の近道だ。ヴァンパイアなんだし一度やってみな」

 

それだけ言って、アザゼルは去って行った。

 

 

 

 

「………堕天使と言うのは、暇人なのだな」

 

 

 

その後の特訓は、程なく順調なものになった………とだけ、言っておこう。

 

 

 

ーーーー

 

 

 

「ギャスパー、出てきて。無理してミナトと一緒に行かせた私が悪かったわ」

 

後日、吸血鬼がまた引き籠った。

 

何でもミナトと共に契約者の元に向かった際、その契約者がギャスパーを見て興奮したらしく、恐怖に駆られたギャスパーは契約者を止めてしまったらしい。

 

 

今は懸命にリアスが説得しているが、奴はただ泣くだけ。

 

『ぼ、僕は、こんな力いらないっ!だ、だって、皆停まっちゃうんだ!怖がる!嫌がる!僕だって嫌だ!と、友達を、仲間を、停めたくないんだ…………!大切な人の停まった顔を見るのは、も、もう嫌だ……!』

 

それは、奴自身の慟哭だろう。

なら、俺達に出来る事は一つだ。

 

 

 

 

 

「放っておけ」

「「!」」

 

俺がそう言うと、リアスとギャスパーは驚いたように息を飲んだ。

 

「此奴自身が出たくないと言っているんだ。なら、その意思を尊重してやれ」

「だ、だけど……」

「第一、ずっと自分に宿った運命に泣き喚いてる奴が何をしようが、変われる訳ないだろう」

 

絶句するリアス。

俺は構わずリアスを引っ張っていく。

 

「ちょ、ちょっとどう言うつもりよイッセー!?」

 

まぁ、教育を頼んだのに行き成り突き放すような発言。

驚かない方が稀か。

 

「お前、まだこれから用事があるんだろう?」

「っ」

 

そう、此奴にはまだこれからサーゼクスの所へ用事がある。

ならば、其方に集中して貰わねばならん。

 

「……火は付けてやったんだ。後は奴がそれを燃やすか、消すか………俺が見極める」

「イッセー………」

「さぁ、行け」

 

名残惜しげではあったが、リアスはその場を後にした。

 

 

「…………飛雷神の術」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

場所は変わって、ギャスパーの部屋。

 

 

「僕は………僕は……………………ッ!」

 

 

………やれやれ。

 

 

「いつまでウジウジ泣いている気だ?」

「っ!!」

 

ギャスパーは驚いたように俺を凝視していた。

 

「ど、どうやって………」

「初めてこの部屋に入った時に、予めマーキングを施していた」

 

まぁ、こうなるのはある程度予想はしていたからな。

していて正解だったな。

 

「………お前が生まれ持った力、それはお前がいくら泣き喚いても無くならん」

「っ…!」

 

辛いだろうが、此奴には一度、現実を受け入れてもらわねばならん。

 

「…でも、僕はッ、先輩みたいに、強くないから…………!!」

「――――言い訳はそれだけか?」

「へ……」

 

俺は奴の目線へと腰を下ろした。

 

「お前が言っている事は自分の弱さを正当化して、逃げているだけだ。……良いか。逃げて逃げて、逃げ続けて、自分だけの牢獄に蹲っていても、誰もお前に手など差し伸べん。それにな、一人でどうにかしようとしても必ず限界がある。――――だから他の眷属が、仲間がいるんだろう?お前が変わりたいという意志さえ見せれば、必ず手を貸すさ。……………………………初めからこう言うべきだったんだ、リアスもな」

「あ、う……………」

「さて、お前はどうしたい?一生この空虚な箱庭に籠るか、辛くとも、外の世界に飛び立つか………………決めるのはお前だ」

 

俺の言葉に、奴は直ぐに返す事無く、俯いた。

 

………数分後、奴は恐る恐る顔を上げた。

 

 

「……僕は、僕は、変わりたい!僕を救ってくれた、リアス部長の助けになりたい!!!何時までも――――泣き虫のままは、嫌だ!!!」

 

 

 

 

―――――上出来だ。

 

 

「……ちゃんと、自分の考えを言えるんじゃないか」

 

俺は乱暴にではあるが、奴の頭を撫でてやる。

 

「お前は一人ではない。他の眷属がいる。それに………俺も、出来る限りは協力してやる。だから、他人からどう言われようが戸惑うな。お前は、お前の生き方を貫け」

「――――はい!!!」

 

さっきまでと違い、ギャスパーは笑顔だった。

 

 

 

 

 

 

 




休みって、過ぎるのも早いんだね………

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