伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

71 / 80
後日談です。
視点変更は多めです。


第六十六話 赤い帽子

―7月20日 午前10時 セイガイハシティ ポケモンセンター―

 

 その後、ポケモンリーグは総力を挙げてオーキド率いる伝説軍団と対決し、およそ5時間に及ぶ死闘を繰り広げた。

 何回もオーキドの粘り強い化学戦術に追いつめられたが、やはりパターン外の攻撃が効いたのか、勝勢を覆すには至らず。優勢に事を進める事が出来た。

 その戦いは激しく、どれほどかといえばプラズマフリゲードが粉砕されてしまうぐらいだ。最後の辺りになるとジムリーダー達も足場が悪くなって飛行ポケモンを持たないリーダーは借りて、そのポケモンの上から指示するという有様である。

 と、色々な事があってリーグは満身創痍になりながらも勝利し、オーキド及びロケット団、プラズマ団はアクロマを除き全員捕縛。リーグは何とかメンツを守り通した。

 翌日、ワタルはイッシュのトップであるアイリスも横に居させ、総括をする。

 ワタルとアイリスの前には40人のジムリーダーや16人の四天王等が一堂に会している。

 

「……という事を政府や報道各所で説明するが異論は?」

 

 ワタルが全員にお伺いを立てる。特に誰も反論はしない。

 

「イッシュの理事長殿は……?」

 

 内国とイッシュ地方のリーグは対等な関係にあるため慣例上聞くことになっている。

 

「えっと……」

 

 アイリスはシャガにアイコンタクトを取る。

 シャガは静かに頷く。

 

「特に異存はありません」

「了解致した。ではこれを以て緊急命令を解くものとする」

 

 ワタルに続いてアイリスが言う。

 

「皆さんはそれぞれの仕事場に戻ってください」

 

 という訳で、漸く本当の意味で戦争は終結した。

 各々のジムリーダーは三々五々それぞれの場所にへと戻っていく。

 そんな中、シャガとヤナギがすれ違おうとしていた。

 

「……、これはこれは、貴方が噂に聞く……雪柳斎殿でございますか」

 

 シャガがまずヤナギに話しかける。

 

「名をご存じでございましたか。こちらも貴殿の噂は存じておりますぞ、蒼龍、ことシャガ殿」

 

 ヤナギは恭しく、シャガにお辞儀をする。

 

「相当な強い技を習得なさっているようで……。ブリザードという名でござったか……、それほどの強さを持ちかつ、リーグの初代理事長とはいやはや内国は良きリーダーをお持ちですな」

 

 シャガが社交辞令半分にヤナギを褒めると、ヤナギはフッと笑いながら

 

「いやいや。小生は為すべきことを為しているまでの事……。そちらこそイッシュのドラゴン使いを養成し、そこからイッシュ第一のトレーナーになったとか……」

 

 その後も二言三言会話を続け、ヤナギは

 

「いつか、お手合わせ願いたいものですな」

 

 と言い、シャガはすぐさま

 

「私も興味が湧いてまいりましたな……。またいつか……、いやその前に互いに生きておればの話ですがな」

 

 二人はそう言うとハハハと笑い合ってすれ違っていくのだった。

 内国、イッシュを裏から支える実力者同士の対談は、見る者に何かを迫るものがある。

 その一方、レッドに別れを告げたエリカは一人で早くタマムシに帰ろうとしていた。しかし、その前にナツメに呼び止められる。

 

「エリカ」

「ナツメ……さん」

 

 エリカは呼び止められると、ゆっくりとナツメの方に体を向ける。

 昨日は戦いに気を取られており、あまりエリカは人と話していない。

 

 

「見ていたわよ……、レッドを、振ったのね」

「…………、そういえば、ナツメさんは見ておられたのでしたか。あの場面を」

「ええ。エリカも見たの?」

 

 ナツメはすぐに答え、エリカに尋ねる。

 

「はい、オーキドに見させられて……おかげで今回の事が分かった訳なのですが」

「そう……」

 

 エリカはさらに続ける。

 

「私……、レッドさんに……他の女性と同衾するような事はしないで下さい……って言ったのに……」

 

 エリカはなよき手を握り締めながら言う。

 

「……、それで約束を破ったから……レッドと別れてきた……と」

「約束を破ったというのもありますけれど……、何よりも、私という人がいながら……、それよりも、他の女性とそれ以上の事をなさったのが……私には悔しくて、悔しくて……!」

 

 エリカは切実に話す。エリカはそこまで言うとハンカチを目に遣って、紅涙を拭う。

 

「それ以上……? てことはあんたまさかレッドとはまだ……」

 

 ナツメが続きを言おうとすると、アカネがエリカの方にやって来た。

 

「エリカーー!!」

「アカネさん……」

 

 アカネは走って来たので少し息が切れている。ツクシは少し遅れてやって来た。

 

「あ……あれ? エリカさん? レッドさんはどうされ」

 

 アカネはすぐさまツクシにハリセンを叩きこんだ。今回は本気である。

 

「いでで!」

「表情で察さんかい! このナマクラ!」

「うう……、ごめんなさい……」

 

 ツクシが頭を撫でていると、アカネが話し出す。

 

「エリカ! 多分この状況を察するに例の件は全部オーキドから聞かされたんやろうけど……、気、落とさんといてよ! 女は幾多の失恋を乗り越えてこそ……」

 

 エリカはそれを聞くとクスりと笑いながら

 

「……、かつてアカネさんの恋の手助けをしてあげた私が、今度は逆にアカネさんに励まされるだなんて……現実は小説よりも奇なりというかのバイロンの格言は本当の事なのですわね……」

 

 エリカは哀愁に浸っている様子である。

 

「世界史かい……。全く、何かにつけて勉強の事話し出すエリカによくレッドはついていけたもんやね」

 

 アカネがそう言ってから笑いしていると、ツクシが尋ねる。

 

「あの、アカネさんバイロンさんってだ」

 

 ツクシが尋ねるとアカネはすぐさま

 

「イギリスの詩人や。それ以上は自分で調べてなー。でな、エリカ。一緒に帰らへん? どうせ内国に帰る事には違いないんやし……ナツメも一緒に!」

「え……私も?」

 

 ナツメは少し驚いた様子でアカネに尋ねる。

 

「そや! 一緒にヒウンに潜入した仲やろ? 仲良くしたいねん! なーツクシ」「わー! これがイッシュのイトマルかぁ……、なんだかジョウトのより少し大きい……」

 

 ツクシは近くの植栽にイトマルがついていたのを目ざとく見つけ、やはり観察していた。

 

「空気を読まへんかい!」

 

 と言ってアカネはパチンとツクシにハリセンを叩きこんだ。

 ツクシはすぐに観察を止めてエリカやナツメの方に体を向ける。

 

「痛い……。そうですね。僕ら二人だけで帰るっていうのも、盛り上がりに欠ける気がしますし」

「そやねー。ツクシどうせ帰ったらすぐ研究所やろ? なるべく喋らせてエネルギー消耗させて……」

「わわ、怖い事言わないでくださいよー……」

 

 ツクシは真に受けたのか、しゅんとしている。

 

「冗談やて」

 

 と言ってアカネは闊達に笑う。

 

「にしても……。どこに行ったんでしょうねレッドさん……」

 

 ツクシはレッドの消息を心配している様子である。

 

「まー、案外、うちらと同じタイミングで行ってエリカに付きまとおうとしてるんちゃうん?」

 

 エリカは苦笑いをしている。

 

「……、それ、洒落にならない」

 

 ナツメは静かに言う。

 

「え……、ホンマなん?」

 

 アカネは真面目な顔になって、ナツメに尋ねる。

 

「超能力関係なしに、レッドの性格を見た上の話よ。だから少なくともタマムシにつくまでは私がつく寸法。それに二人が加われば、もう盤石ね。レッドが付け入るすきは無いわ」

「抜け目あらへんな……。流石はエスパーやね」

 

 さて、そんな会話を二つ後ろのソファより見ている人物がいた。

 他ならぬレッドである。青色のウインドブレーカーを着てごまかしている。

 レッドはエリカに別れを告げられた後、いち早く船から抜け出してポケモンを回復させて野宿した。

 その後、集会しているのを見計らってエリカの姿を見ようと席について見張っていたのだ。

 アカネやエリカ等はセイガイハからフキヨセにへと向かう。

 

―同日 午後2時 フキヨセシティ フキヨセカーゴサービス 受付前―

 

 四人はすぐに帰ろうとしたが、他のジムリーダーや四天王が急いでいた為、数便遅れて乗る事になった。

 ナギは四人の元に駆けより

 

「ふう、待たせて悪いわね! さあ搭乗予約済ませて早く乗ってね!」

 

 ナギはいつになく急かしている様子である。

 

「あー。ナギ言うたっけ?」

 

 ナギは年下相手に呼び捨てされたのが癇に障ったのか一瞬だけ眉が動いたが、曲がりなりにも同業者なので、声にはださず

 

「何か所用でも?」

「うん。ちと、耳貸してくれへん?」

 

 アカネは、レッドが尾行している可能性があるのでレッドと思しき人物が来たら同じ便には搭乗させないように依頼した。

 一応どうしてかナギは尋ねたので、アカネは手短に見たことを話す。

 アカネが話し終ると、ナギは納得した表情になり、

 

「分かったわ……。フウロ! ちょっと」

「はーい、何でしょう?」

 

 フロア内にいたフウロをナギは呼び出した。

 ナギはフウロの耳を自らに少し近づけさせて、小さな声で

 

「14時45分のヒワマキ行の便。あんたが運航担当してくれない?」

「えっ!? でもナギさん今日はジムリーダーや四天王の接客や便の手配などで忙しいから、責任者のあたしたちは片時もここを離れるなって……」

「状況が変わったの。細かい事はいつか話すから、とりあえず今は指示に従って。ここは私と数人でなんとか回すから」

「は……はい」

 

 フウロは先輩の命なので、納得しなさげではあるが承諾した。

 そして彼女は運航準備の為、忙しなく外に出ていく。

 

「? 何してたんや」

「追加の根回しよ。フウロもフライトの名目で同じ便に乗せたの」

 

 ナギはウインクしながら、小さな声でアカネに話す。

 

「気が利くなぁ。おおきに! 恩にきるわ、ナギはん!」

「これからも敬称つけなさいよ……、多分だけど私の方が年上なんだから」

 

 ナギはそういうとくすりと笑う。

 

「覚えとくわ! そんじゃ、さいならー!」

 

 と言って、アカネはエリカたちの元に戻る。

 

 

 さて一方のレッドは、アカネに聞き耳を立てたが周りの騒音に加え、当人たちも小さな声で話していた。その為、全く聞き取れずに終わる。

 フウロを見れたことにまた時めくが、そうしているのも一瞬に終わる。そうこうしているうちに次の便の搭乗手続きが始まり、次から次へと客が入りその中にエリカも入った。

 レッドはそれから少し遅れて、満席でも戦ったよしみとかで何とかしてくれるだろうという甘い期待を抱きながらカウンターの前に居たナギに話しかける。

 

「あ……、あの、ナギさん」

「あらレッドさんじゃない。久々ね」

 

 と、いつも通りの口調でナギは接したのでこれはいけるとレッドは思い、

 

「あの、次の便乗りたいんですけど……」

「あー、ごめんね。次の便はもう満席なの。悪いけど次に乗ってもらえるかしら?」

 

 ナギは素っ気なく返す。次の便と言ったらおよそ3時間後である。

 

「そ……そこを何とか!」

 

 レッドは必死の思いで頼み込む。

 

「無理よ。急いでいるのは皆一緒なんだから……貴方だけ特別扱いはできないの。ごめんなさいね」

 

 と言って、ナギは颯爽と立ち去る。レッドには見せなかったが、ナギはしてやったりといった表情だ。

 

 

 次の便にはミカンが乗っていたが、ミカンからは話しかけられることすら無く距離を置かれた。ほかのジムリーダーはトウキやスモモ、スズナ等が乗っていたが全くかかわる事は無くレッドは孤独な時間を過ごす。

 そして、カントーに帰ってくると、彼はリーグに呼び出された。

 

―7月23日 午前10時 ポケモンリーグ 理事長執務室―

 

 呼び出された場所は理事長の執務室である。

 選挙の時、レッドが見た副理事長室よりも一回り大きな光沢のある荘厳な木製の扉。レッドは目の前にあるドラゴンの頭を模した装飾のドアノブにかかっている鉄の輪をバンバンと二回前に出して叩く。

 

「どうぞー」

 

 中からはワタルと思しき声がしたので、レッドは中に入る。

 内装もまた豪勢で、10mはある天井に、荘重な木机の前には赤い絨毯の上にある大理石の机に、革製のソファ。真っ白な正方形タイルの床。

 そして何よりも目を引くのは机の後ろにある壁一面をふんだんに使った大きなワイドガラスである。

 ポケモンリーグの最上階にあるので、セキエイ高原が一望千(けい)とばかりに見渡せる。ガラスの上にはブラインドと思しきものがある。ワタルの真後ろには2メートルぐらい幅のあるフローリングされた明るめの木調色の板があり、ワタルの4メートルほど上にはポケモンリーグの紋章であるモンスターボールが描かれている。

 レッドが中に入ると、ワタルは机の前に来るようにすすめた。

 そしてレッドはワタルの前にまで進む。ワタルは苦い顔をしている。

 

「今日は一体何の用事ですか?」

 

 レッドが尋ねると、

 

「単刀直入に言う。君の持つカントーチャンピオンの称号。今日をもって剥奪させてもらう」

 

 ワタルはこの前のような明るい口調ではなく、威厳の籠った真面目な雰囲気が漂う声でそう言った。

 

「……、どうしてですか?」

「まずは、皆一所懸命にオーキドと戦っていたのに、君だけどこかに行ってしまったという敵前逃亡の責。そしてもう一つは心に決めた人が居ながら、他の女性に浮気していたという不義行為。この二つは罷免事項にぴったりと該当するので、君の称号を奪う事にしたんだよ」

 

 ワタルは感情をなるだけ抑えている様子である。

 

「浮気だったらグリーンもしているし、風の噂だと参加すらしなかったそうじゃないですか! 別に俺が称号持ってかれる事に異存はありませんが……」

 

 レッドの言葉に、ワタルはすぐさま

 

「確かに。グリーン君は病気だとか言って休んでいたし、女を囲っているらしいというのは聞いているさ。でもね、彼はカントーで一番最後という砦の役目を果たしている。その砦の役目を他に任せる事が出来ないからクビにする事は難しいんだ。まあ勿論、無罪放免という訳にはいかないから減俸ぐらいにはするつもりだけど……」

 

 そんなの痛くもかゆくもねーだろとレッドは思い

 

「どうして俺だけこんな目に遭わなきゃいけないんですか!」

 

 と、レッドはまたもあがいてみせる。

 

「素行に問題のあるマチス君は、なんだかんだ言ってもクチバの治安維持に一役買っている。彼が元締めだからね。カスミ君も浮気したとか色々な噂を聞くけど、ハナダであの子に勝てるトレーナーは居ないし、代々リーダーやっている家柄、その上男女のジムリーダー間のいい橋渡しの役目も果たしてくれているんだ……。エリカ君は平等には接してくれないし、ナツメ君は正直話しづらいし、アンズ君はまだまだまだ幼いしで」

「何が言いたいんですか」

 

 ワタルの勿体ぶった物言いに、レッドはしびれを切らせそうになりながら尋ねる。

 

「まだ分からないの? 素行に問題があってもそれを覆うぐらいの働きをすれば僕は別に何も言わないよ。やる事はやってるんだからね。でも君はどうだい? 確かに全国を周った事の功績は素晴らしいけど、所詮周れたのはオーキドの力じゃないか。それにエリカ君が居なければ果たして出来たかどうか……」

「え!?」

 

 エリカが居なければ無理だったかのようなワタルの口ぶりに、レッドは思わず驚いてしまい、そう返した。

 

「おっとこれは失言だったかな……。まあこれはナツメ君の推測でもあったんだけど……。君の功績は代替が効くんだよ、一緒に旅したエリカ君は勿論の事、君を下したゴールド君と二人もね」

「ぐっ……!」

「君の今の地位を保障する義理や理由は無い……、そう思ったから今回の決断に至った。そういう事だから、もう帰っていいよ」

 

 ワタルはそう言うと、もう関わりたくないとでも言いたげなばかりに革のソファをレッドの目に映させた。

 

「……、分かりました。失礼します」

 

 そう言って、レッドはそそくさと出て行った。

 そしてその身のまま、レッドはある所に向かう。 

 

―7月30日 午後3時 タマムシシティ ジム前―

 

 レッドはこのよに及んでもエリカとの復縁を望んでいたのだ。

 レッドの脳内でエリカの『胡蝶の夢』とは、エリカはつぼみで、俺は蝶で、俺が受粉しなければエリカは花を咲かす事は出来ない。だから、潜在では俺をまだ必要としているんだという理解で人が聞いたら噴飯もののこじつけ。

 それを本気で信じてレッドはエリカの元に向かうのだ。

 

「よし!」

 

 そう言ってレッドはタマムシジムの中にずかずかと入っていく。

 

―タマムシジム 入口―

 

 いつも通りの百花繚乱ぶりのこのジムだ。

 しかしレッドはそんなのも気にせず先に進もうとする。

 

「あ! 挑戦で……」

 

 駆け寄ってきたジムトレーナーはレッドの姿を見て言葉を失った。

 

「エリカに会いに来た! 通してくれ」

「おーい! どうしたの……あ」

 

 元、臨時ジムリーダーを務めていたナツキが続いて来て、彼女もまた言葉を失う。

 

「……、どうしたんです?」

 

 レッドは戸惑っている二人にそう尋ねる。

 そうしていると、ナツキは意を決した表情になり

 

「あの……。大変申し訳ありませんが、エリカさんから通さないように言われて……」

「全く、照れ屋な奴だ……。構わん」

 

 と言って、またずかずかと進んでいく。

 ナツキは静止を求めたがレッドは一向に取り合おうとしない。

 そうこうしているうちに、レッドは最奥部にたどりつき久々にエリカの美しい姿を拝んだ。

 ジムなので、やはり彼女は和服を着ている。黄土色の下地に紅葉が描かれている彼女の着物姿は美しく、似合っているなあとレッドは思う。

 

「あら、レッドさん……、どうされたのですか?」

 

 通さないといっていた割には親しげな口調である。

 二人称に疑問を持ちこそしたが、レッドは構わず

 

「エリカ! お前の気持ちを裏切ってしまったことは、本当に悪いと思っているし、本当に反省している。でも、やっぱり俺にはエリカしか……」

 

 レッドが復縁を求める言葉を言い終わる前にエリカはクスりと笑いながら

 

「嫌ですわね……。すべては胡蝶の夢と申し上げたではないですか」

「本当か!? だったら」

 

 夢だったら全てを流してくれるだろう。そう思ったレッドは続けようとするがすぐにエリカは返す。

 

「今までの事は夢ですから……。現実のレッドさんには何にも惹かれませんし、心が動いたりも致しませんわ。ですから、お付き合いする事はできません」

 

 と、エリカは一刀両断とばかりにレッドを切り捨てた。

  

「そんな! 俺はエリカの事……」

「もう、恋の夢はさめたのです。私も、周りの皆様も起き現在の状況となっているのですわ。レッドさんもいい加減、お目覚めになられて、現実と向き合ったら如何ですか?」

 

 エリカはにっこりと爽やかな笑顔で言う。

 

「夢じゃない! 現実なんだ! だって今でも俺はエリカの事……」

「例え貴方がどれほど私に恋焦がれていようと……、私が今一度夢に向かう事はありません。レッドさんが開くことを望んでいる逢坂(おうさか)の関は二度と開かれることはございませんわ」

 

 と言ってエリカは、用事を思い出したのかレッドの元から去ろうとする。

 進退窮まったレッドは、後は野となれ山となれとばかりにエリカに背後から抱き着こうとする。

 が、抱きつこうとする行動を見せたのをエリカは察したのか、すぐに振り向き、護身用の匕首(あいくち)をレッドに抜き身で差し向ける。

 

「それ以上近づきましたら……、私も容赦いたしませんわよ」

 

 エリカは先ほどの緩やかな目線では無く、凍てつくような視線を注ぎながら言う。そこまで言われると、レッドはまだ死にたくないので諦めた。

 レッドが諦めた行動を見せると、エリカは汚いものでも見るかのような目つきで

 

「下郎が……。ナツキさん。そこに居らっしゃるのでしょう? はやくこの男をモンジャラのツルでも何でも使って追い出してください」

「は、はい!」

 

 ナツキはモンジャラを繰り出し、モンジャラに指令してツルをレッドに差し向ける。そしてレッドは訳も分からないまま放り出されるのだった。

 

 その後、レッドはまた行けば殺されそうなので、行くのを止め、タマムシ市街に出る事にした。出て噴水の辺りまで行くと、グリーンに出くわした。

 

―午後4時 タマムシ市街 噴水の前―

 

「よう」

「げ、グリーン……」

 

 レッドは嫌そうな視線を注ぐ。

 

「あれ、愛しのエリカさんはどうしたんだい? レッド君?」

 

 グリーンは下卑た笑いを浮かべながらレッドに尋ねた。

 

「ぐっ……」

「……、聞いたぞ。別れたんだってな」

「分かってんなら聞くなよな……。てかなんでお前こんな所にいるんだ」

 

 レッドはグリーンにそうこぼした後、尋ねる。

 

「彼女のプレゼント選びさ。たく16時待ち合わせっつてたのにひでーもんだよな、まだ来ないんだぜ?」

「……。贅沢なお話だ事で」

 

 今や、レッドにとっては遠い世界の話になってしまったので、グリーンにはそう返すしかなかった。

 

「ケッ……。まあお前がここにいる理由は大方予想つく。どうせエリカさんに『また付き合おう』とかなんとか言って、で、案の定振られたと」

 

 まさにその通りなので、レッドは押し黙る。

 

「だから言ったろうがよ。ああいう女は夢中になっているうちはベタベタくっついてくれるけれど、冷めたら棺桶の死体みたいに関わんなくなる……ってな」

「グッ……!」

「ポケモンマスターの称号も事実上ゴールドの物になるとかなんとかって話だし。全くつい数か月前は伝説のトレーナーだ、なんだとちやほやされてた癖に落ちれば早いねえレッド君!」

 

 グリーンはせせら笑いながら言う。あまりに辛いのでレッドは声を上げて

 

「っせーよ!!」

 

 と言った。周りにいた待ち合わせの人などは皆、一瞬だけ黙ってしまう。

 

「……、だが全部はてめーが招いた災いだ。もう二度とやらねーよう気を付けるんだな。ま、俺も何回か泣かされたり泣いたり色々してるから人の事あまりとやかく言えるもんじゃねーけどな」

「……」

「……、そうやって黙って、自ら顧みもせずに人のせいばかりにしてるんじゃ、いつまで経っても、お前は死体のままだがな……。おっと彼女が来たみたいだ。バイビー、死に体レッド君!」

 

 グリーンは嬉しそうに彼女の元へ向かい、立ち去っていく。

 

「……う……うわああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

 レッドの心中に去来する色々な鬱憤、憤怒、懊悩、煩悶、嫉妬……様々な感情が集積し、遂に発狂してサイクリングロードの方向へと消えていくのだった……。

 

――――――――

 

 あれから一年余り。

 オーキドはフレア団なる組織の手によって脱獄を果たし、サカキの公判が始まり、アカネとツクシは入籍して挙式し……等と様々な事が起こった。

 そして、エリカは相変わらずジムリーダーをやっていた訳だが、そんなある日、カネの塔が遂に落成したという報せがエリカの元に届く。

 エリカはすぐさま落成式に出向こうと、お忍びでエンジュシティにへと向かった。

 

―2015年 11月22日 午後4時 エンジュシティ―

 

 エリカは落成式のスピーチを聞き、カネの塔の中を巡ったりして一人、堪能する。寺の住職などからも話を聞いて手記にまとめたりもした。

 着いたのは正午ごろだったので周った後になると、あたりはもう茜色に染まっていた。

 秋の紅葉が舞う頃のエンジュ、しかも夕刻の時ほど憂いを誘う風景はそうない。

 エリカがエンジュ市街を眺めて旅愁に浸っていると、横から一人の青年が話しかけてきた。

 

「エリカさん!」

「わっ……、あら? 確か貴方様は……」

 

 エリカは思い出そうとするが、すぐに青年が

 

「ミナキです! マツバの親友の! いやー本当お久しぶりですね」

「確か……、一昨年以来でしょうか。お変わりないようで喜ばしい限りですわ。ところで何用でございましょう?」

「いやー、用と言うかなんというか……。マツバの事ですよ」

「ああ……、マツバさんの……。どうかなされたのですか?」

 

 エリカは既にマツバが千里眼を失った話は聞いている。本当の理由は知らされていない。

 

「なかなかエリカさんと話す機会なんて無いものだから、ずっと機会を伺っていたんですが……、千里眼の一件、エリカさんはマツバ当人とかから何と聞かされた?」

「ええ、何でもオーキドに脅されて死にたくなかったから……と。何とも気の毒なお話ですわ」

 

 エリカは途端に暗い顔になる。

 しかしミナキはやっぱりかとでも言いたげな顔をして

 

「あぁー……あのバカ野郎……」

「はい?」

「いえいえ、エリカさんのことでは無くて……。オーキドに脅されたことは確かにその通りです。ただ、その先が違うんですよ……」

 

 エリカはミナキの発言に目を点にして

 

「え? 如何な相違があるのですか?」

「マツバは……、ある大切な人を守る為に自らの千里眼を譲ったのです」

「……? 大切な人……ですか」

「オーキドは、千里眼を譲らなければ、その大切な人の隙があるうちにかっさらって、脳を改造して自分好みの女性にして……その人物と結婚すると言ったそうです」

「何と……」

 

 エリカは呆気にとられたいたが、結婚するという言葉がひっかかったのか

 

「ちょっと待ってください……オーキドが……結婚すると言った?」

 

 とミナキに確認する。

 

「そう、それがマツバの言う大切な人……という事です」

「それって……もしかして」

「流石はエリカさんだ……。そう、それは他ならぬエリカさん。貴女の事です」

 

 エリカはまたも目を点にする。

 

「まあ……。しかし、どうして大して話したことのない私などを大切な人だなんて」

 

 エリカの疑問に、ミナキは含み笑いをしながら

 

「決まってるじゃないですか。マツバは貴女の事を……大いに愛しているからですよ」

「マツバさんが……?」

「最初あった時から一目ぼれだったみたいでね……」

 

 エリカは途端に頬を赤くする。

 

「し……しかし、どうしてその事を私に内緒に……」

「これはマツバ自身に問いただして聞いたんですが……、エリカさんに、迷惑とかそんな下心で救ったとか思われたくないから……らしいです」

 

 エリカはその言葉で更に赤くなる。

 

「……、しかし、ミナキさん、そこまで内緒にしたかった事……私にお話ししてよろしかったのですか?」

「……、いくら内緒にしろとか言われても……、これじゃマツバが不憫すぎる。千里眼を失って……、自分の体をボロボロにされて……。これじゃマツバがあんまりです。マツバは今気丈に振る舞ってはいるが、心身ともに耗弱の一途をたどっていることは明らか……だからエリカさん」

 

 ミナキはエリカの目をしっかりと見つめ

 

「……、マツバの事、宜しく頼みます」

 

 と深々と礼をした。

 エリカは少しの時間考えた後、

 

「……、ミナキさん。マツバさんはどこにおられるのです?」

「あいつは日曜のこの時間、ジムを閉めて、スズねの小道でたそがれて……」

「有難うございますっ!」

 

 と言って、エリカは一目散にスズの塔の関所に向かうのであった。

 

「ふう……。これで私のやるべきことはやった……。マツバ、幸せにな」

 

 そう言ってミナキはまたスイクン探しの旅に出るのである……。

 

 

―午後4時50分 スズねの小道―

 

「はあっ、はあっ……」

 

 エリカは和服のまま、長い道を走り抜けた。慣れない事をしたためか息は絶え絶えで、秋にも関わらず汗も大いにかいている。

 それでも彼女は、紅葉を踏みながらマツバを探す。

 10歩ほど歩き、漸くスズの塔を眺めているマツバを見つけ、呼びかける。

 

「マ、マツバさーん!!」

 

 マツバは突然の声がしたので驚いて振り向く。

 

「うん? ってあれ……エリカさん!? どうしてこんな場所まで……」

 

 マツバは小走りでエリカのもとに向かう。

 

「はぁっ……、カネの塔が出来たとお聞きしましたので……」

 

 エリカは膝を手で押さえながら言う。

 

「あぁなるほど……、それで比較でスズの塔にも……。エリカさんらしいね。あれ……それじゃあどうして僕を?」

「ち……違いますわ! マツバさん……全てお聞きしましたわ」

 

 エリカはようやく息を整えて、直立してマツバの目をしっかりと見る。

 

「全てって……何の全て? もしかして平家物語の作者が……」

「ですから違います! ……千里眼の事ですわ」

 

 そう言うと、エリカは顔の汗をハンカチで拭う。

 

「……、はあ。全くあれほど口止めしたのに……馬鹿が……」

 

 マツバはミナキをけなしたが、その表情はそこまで困ってなさげである。

 

「申し訳ありません……。私のせいで、大事な片目を……」

「いや、実をいうと千里眼はある程度の修行を積んだ者には、失っても1回限りもう一度ハメこむ事はできるんだけれど……、まあ見えない世界と言うのも面白いと思ってね、断ったよ」

「見えない世界も面白い……ですか。マツバさんにしか言えない言葉ですわね」

 

 エリカはクスリと微笑む。

 

「それに……失ったから今、僕凄く心臓がドキドキしてるんだ……」

 

 そう言われると、エリカは途端に顔を赤くし

 

「……、貴方の思いの丈、私にぶつけてください……」

「…………、エリカさん。初めて会った時から……ずっと好きでした。付き合って……くれるかな?」

 

 マツバは照れながらも最後まで言い切る。そしてエリカはすっきりとした笑顔で、漸く本当の思い人に会えたとばかりに目端に涙をつけながら

 

「はい!」

 

 と答えた。

 

「ふう……、これで漸く……安心して眠れる……。エリカさん、大事にするよ」

 

 その後、エリカの方から抱きついて、二人は熱い抱擁を交わす。

 秋風が吹き、紅葉が舞う。冬の足音も少しずつ聞こえてきそうな日であった。しかし、この空間だけはただ暖かく、そしてどこか甘酸っぱいものがあった。

 

 

 

――――――――――――――

 

 そしてそこから10年。

 マツバとエリカは2年間の清廉な交際を経て婚姻に至り、3児をもうける。理事長は交代し、シロナが念願の座に着き、カツラが病に倒れたりと10年の間にも色々な事が起こった。

 

―2025年 4月20日 午後2時 コガネシティ コガネ百貨店 百文堂書店―

 

 ツクシは長年の功績が認められて、28歳にしてウツギに次ぐ副所長に就任する。

 この日は休みだったので本でも買おうかと書店に立ち寄っていた。

 普段は研究書や論文などを読みに行くのだが、この日は気分を変えて紀行文を探していた。

 ジョウト一周、ホウエン温泉巡り……色々な本があったが、その中で一つ緑の簡素な背表紙な本がある事にツクシは気付く。

 題名は『赤い帽子』。何か見覚えがあると思ってその本を手に取って読んでみる。どうやら筆者が全国を周った時に綴った本のようである。

 興味を抱いたので、ツクシはその本をカゴに入れる。他にも数冊別ジャンルの本を買って、その日は自宅に帰った。

 

 その後、ツクシは数週間かけて読了する。

 

―5月13日 午後9時 同市 アカネ宅―

 

「ふう……やっと読み終わった」

 

 ツクシは卓上で漸く本を読み終える。

 子どもたちは、繋がっている前の方の居間でテレビを見ている。

 

「何よんでたん?」

 

 アカネはぬうと肩の右側から耳元で囁く

 

「わっ……お前か。驚かさないでよ……」

 

 流石に結婚10周年ともなれば、初々しさは消えて、気安く呼び合っている。

 

「へへー。ごめんな。で、何よんでたん?」

「前も言っただろう。赤い帽子っていう全国周った人の紀行文だよ」

「あー、そないなこと言うてたなぁ。ごめんごめん」

 

 アカネは茶目っ気たっぷりに謝る。

 

「はぁ……。でもこの本、不思議なんだよなあ」

「何が?」

「ほら、確か丁度10年前にさ、レッドさんとエリカさんが旅出てたの覚えてるか?」

 

 ツクシはアカネに尋ねる。

 

「覚えとるよー。だってうちらが結ばれたのって、そん時旅してたエリカのおかげやん?」

 

 アカネは顔をほんのり赤くしながら言う。

 

「はいはい……。で、それも含めてこの赤い帽子っていう本に書いてあるんだよ……。ペンネームは『誰某何某(だれそれなにがし)』とか明らかに本名じゃないし。これってもしかして」

 

 ツクシはアカネに確信めいた視線を注ぐ。

 

「レッドはこんなん書けるほど頭良くないしなー。もしかしたらエリカが書いたかもしれへんね」

 

 アカネは笑いながら言う。

 

「うーん……気になるな」

「手紙出してみたらどや?」

 

 アカネは唐突にそんな提案をする。

 

「手紙? いいよ面倒くさい……、エリカさんに二回旅している最中に手紙書いたけど、帰ってきた後真っ赤になった添削済みの紙になって帰って来たし……」

「ハハハ……でも、うちから聞くのはなんか嫌なんやよね……。なんだか直接水を差すみたいな感じになるのもあれやし」

「あの二人、本当に幸せそうだもんね……」

 

 ツクシは遠い目をしながら言う。

 

「いーやうちらのが仲ええって絶対!」

 

 アカネは頬を膨らませて反論する。

 

「くだらない事で闘争心燃やさないでよ……。でも、そうかアカネが嫌だったら、僕から聞くしかないか……」

「とことん突き詰めんなー……。研究者やなホンマ」

「そんなに褒めないでよ。それじゃ書くか……」

 

 という訳でツクシはエリカに手紙を出すのだった。

 そして書いた机のわきには大量の紙屑がありましたとさ。

 

―6月7日 午後6時 エンジュシティ マツバ邸―

 

 マツバとエリカはジムを任せ交代交代で週末互いの家に行っている。 

 子供の世話はエリカが請け負っており、マツバはエリカの家に行くとき子どもに会うという寸法である。

 さて、この週はエリカがマツバの家に居て夕食を作っている時の事。

 

「ただいまー」

「貴方、お帰りなさいませ」

 

 エリカは火を止めて、玄関まで出てきて、マツバを三つ指ついて出迎えた。

 

「あー段々暑くなってきたな……。そうそう、エリカ、お前宛に手紙来てたぞ。ツクシ君からだ」

「私に……? 暑中見舞いの時期でもないのにどうして……」

「さあね。ところでエリカ、今日の夕餉は?」

 

―午後8時 同所―

 

 夕食を食べ終わり、片付けが終わった後、エリカは居間の椅子に座り封を切って、ツクシの手紙を読む。

 読み終わると、エリカはクスリと笑って

 

「ツクシさん……相変わらずの文体ですわね。さてとお返事を書かなくては……」

 

 という訳でエリカは書をしたためるのであった。

 

 

―6月18日 午後4時 ワカバタウン ウツギ研究所―

 

「郵便でーす!」

「はいはい、ご苦労様……」

 

 助手の柏木が郵便を受け取る。

 中にはツクシ宛の手紙があったのですぐに柏木はツクシに手紙を届ける。

 

「副所長ー。手紙来てますよ」

「有難う! すぐに読むからこちらに渡して」

 

 という訳でツクシはカイロスの解剖データの集積作業をいったん止め、封を切って手紙を読む。

 

「こ……これは……」

 

 読み終わるとツクシの手には汗が握られていた……。

 

 

 

―2014年 8月3日 午後2時 シロガネ山 山頂―

 

 シロガネ山。

 ポケモントレーナーの極みに達した者にのみ入山が許されるジョウトとカントーを分かつ大山。

 最早、全ての物を失い彼の居所はここにしか残っていなかった。

 記憶を呼び起こしながら歩みを進んでいたらいつの間にか頂上についていた。

 到着すると、彼はカバンからあるものを取り出す。

 彼女のしょっていたバッグである。

 彼は彼女の所持品を眺めて、友人の言葉、上司の言葉、友人の友人の言葉……色々な警告の言葉を改めて反芻させる。

 そして漸く、彼は全て、自分が悪かったんだと猛省し、自分の愚かさを責める。

 山頂にかかる烈日は彼などおかまいなしに背を照らし続け、風は無視するかのように彼の背を吹き抜ける。

 やるせない思いにかられながら、山頂で一人たたずんでいると、彼の目には影が映り、人の気配がする。

 彼がそれに感づいて立ち上がり、振り返るとそこには――――

 

 

―第六十六話 赤い帽子 終―

―伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚 完―


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。