伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

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更新遅れてごめんなさい。
今更ながらスクイズにハマってしまいまして……。
どうでもいいですが、世界可愛いですよね。
なかなか同好の士がいないので寂しい限りですが……。

それはそうと、vs四天王戦(前半)です。
vsイツキ戦までの予定です。


第四十七話 出る杭は打たれる、出過ぎた柱は放置

―1月21日 午前11時 ポケモンリーグ 広場―

 レッドはラプラスを、エリカはユキノオーを繰り出して、ゴールドはバクフーンを、シルバーはゲンガーを繰り出した。

 天候は無論、あられ状態である。

「バクフーン! ラプラスに雷パンチだ!」

 バクフーンは命令が下ると、拳に電力を蓄えはじめる。

「ゲンガー、ユキノオーに催眠術」

 ゲンガーは途端に、睡眠の念波を送る。

 しかし、外したようである。ぴんぴんしているからだ。

「ユキノオー! ゲンガーにウッドハンマーです!」

「オラの薪を喰らえ!」

 ゲンガーは、ユキノオーに太い薪を喰らわす。会心の一撃をくらわせたようであるが、防御が強い性格なのか何とか耐え切っている。

 そして、バクフーンは電気をまとった拳をラプラスに叩き込む。光り輝いた電光は俄かにラプラスの水色の首を黄色く照らし、ラプラスを見事に痺れさせる。

 しかし、ラプラスは倒れることなく、首筋をシャンとさせ直し応戦の体制を整える。所詮は不一致だ。大したダメージは喰らっていない。

「……、よし! ラプラス! バクフーンにハイドロポンプ!」

 ラプラスは大量の水を口内に生じさせ、バクフーンにその太く、猛き水流を被せる。さっきの仕返し……いや倍返しという表現すら甘い。なにしろ、タイプ一致の効果抜群の技である。それに、威力はかみなりパンチの1.5倍以上ある。

 無論、それがバクフーンにとって致命傷になった事は説明するまでもない。バクフーンは消火され、倒れた。

「……、バクフーン……、でも、これぐらいでめげるもんか! 行け、エアームド!」

「お前……! 同じ世代で固めんじゃねえっつたろ……!」

 レッドは、最初に戦った時、自らが言った助言を思い出し、ゴールドに忠告する。

「ごめんなさい……、どうしても同じ世代だけの手持ちで勝ち続けるレッドさんに憧れて……! でも、僕は、もうあの時と同じ失敗は繰り返しません……! レッドさんと同じ手法で……同じ条件で、勝ってみせます! それが、僕の流儀です」

 ゴールドは、帽子をキッとあげ、帽子の奥にある眼に闘志を燃やしているように見える。相当な決意が見て取れる。

 それに触発されたレッドは、応えてやらんとばかりに帽子を俯かせる。

「そうか……、じゃあ俺の流儀を教えてやろう」

 そして、眼をゴールドの方に向け、

「本気でかかってくる相手には……、本気で叩き返す! それも俺流にな。それが、俺の流儀だ!」

 そう言うと、レッドはその言葉通りに

「戻れ、ラプラス、行け、リザードン!」

「エアームド! ユキノオーにブレイブバード!」

 レッドは一瞬、俺じゃねえのかよ! と当惑したが、すぐに平静を取り戻す。そして、

「リザードン! エアームドに熱風!」

 リザードンは、翼に熱を蓄え、そしてそのためた熱をすかさず突風に形を変えさせる。摂氏1000度とも言われるその熱風は、エアームドを倒すには十分過ぎるぐらいである。

 しかし、エアームドはオッカの実を食べて、何とか耐え切る。そしてエアームドは翼を後ろへとたたみ、鋼の容姿も相俟ってか、さながら銃弾……いや砲弾の如く疾風迅雷の勢いでユキノオーに突撃する。

 見事に()の砲弾は、ユキノオーの巨体を撃ち抜いた。

「ぐ……グオーーーーッ!」

 ユキノオーの最後は原因こそ呆気ないものではあるが、壮大である。まるで、大爆発を喰らって崩落していくビルのように、その身を崩すのであった。

「戻りなさい、ユキノオー。おいでなさい、ロトム!」

 ロトムは意気揚揚に、触媒を上げながら出てきた。

 ゴールドとシルバーは当惑気味の表情をしている。どうして草タイプのジムリーダーが、かけ離れてそうなタイプのポケモンを使うのだろうと疑問に思ったのだろうか。

「エリカさん、そのポケモンは一体……?」

 直にゴールドが、レッドの予測通りの質問をした。

「旅の成り行きで手に入ったポケモンですわ。私の普段使うタイプとは相違があるので驚かれたかもしれませんが……」

 エリカは、くすりと愛想笑いを浮かべつつそう答えた。

「そ……、そうですか」

 ゴールドはどこか納得しきってなさげな表情を浮かべている。

「おい、ボケッとすんな! ゲンガー! ロトムにシャドーボール!」

「ロトム、エアームドに10万ボルトですわ!」

 ゲンガーの方が早く、ロトムに黒い球が直撃する。

「痛い……。でもこれぐらいじゃやられない! もてる限りの電力を僕の手に!」

 そう言って、ロトムは触媒を上に掲げ莫大な電力を集中させ、その触媒をエアームドの方向に向ける。そして、光り輝く電流をエアームドに(こうむ)らせた。

 エアームドは、あまりの電流に耐えかね、ガチャンという鈍い金属音と共に倒れた。

……

 こうして、レッドは一体残し、エリカは一体を残す。残ったポケモンはレッドはカメックスで、黄色ゲージ。エリカはラフレシアで、体力は緑ゲージと勝利を収めた。

「チッ……、負けか」

 シルバーは相変わらずの強気の態度を取り、

「ま……負けた。やっぱ伝説の夫婦は格が違う……」

 と、ゴールドは膝を折って負けを認めた。二人の態度は対照的である。

「いやいや二人とも流石だと思うぞ。あのヤナギさんを打ち破っただけの事はあるよ」

 レッドはそう、二人の戦果を評した。

「私も同感ですわ。二人とも本当にお強くなられました……。私のジムに挑戦に来られていた頃と比べてもその差は見て取れます」

 エリカはにこやかに微笑みながら、二人を評す。恐らく心からの評価だろう。

「……、おいレッド」

 シルバーは、重い口調でレッドに話しかけてきた。

「何だよ」

 レッドもそれ相応に、つんけんな口調で答える。

「次に会った時こそ……、お前の最後だ」

 度重なる挑戦的な態度に、とうとう業を煮やしたレッドは、憤然とした声を上げる。

「お前なあ! いつまでそんな慳貪(けんどん)な態度取るんだよ! いい加減自分の無力を認めろよな!」

「フン。言ってろよ」

 そうとだけ言ってシルバーはツカツカと帰っていく。

「おい! シルバー……ったく」

 レッドはシルバーの後を追おうとしたが、無駄だと悟ったので、元の場所に戻った。

「貴方、怒っては負けですわ……」

「うるさい! 俺はああいう諦めの悪い奴は虫が好かないんだよ」

 レッドは苦虫をつぶしたような顔をして、諭すエリカに反論する。

「同族嫌悪……」

 エリカはポツリと呟く。

「えっ?」

「何でもございませんわ。ゴールドさん、手持ちを早く回復された方が……私たちと同じくリーグに挑まれるのでしょう?」

 彼女は何でもなかったように、ゴールドに話しかける。

「いや、僕はもう少しチャンピオンロードで修行し直します」

「そうか、あのさ、シルバーとは……戦ったか?」

 レッドはゴールドに気にかかっていたことを尋ねた。

「何回かは……。あの人、僕が旅する先々で鼻息荒く突っかかってきて……」

 レッドはだろうなぁ。という表情を浮かべ、

「大変だな。ゴールド、お前さぞかし煙たがってるだろう?」

「まさか、毎回挑んでくるだけの強さはありますし、いい好敵手です。快勝なんか一度も出来ませんでした……、この前、エンジュシティで戦った時は惜敗を喫しましたし……」

 ゴールドは、嫌な事を思い出して少し暗い顔になっている。

「ほう……。お前に勝ったのか。やるなあいつ……。というかお前、好敵手と言う割にはどうしてあまり話さないんだ? てっきり俺はあいつなんか問題にしてないと……」

 レッドは、ふと思ったことをゴールドに尋ねる。

「まさか。もし僕に、シルバーを易々と下せる力があるなら、そもそも組んだりしませんよ。足手まといは嫌なんでね」

 ゴールドは静かに笑いながら言う。可愛い顔をしておいて、冷たい事を言うのが特徴なのだろうか。

「恐らく、シルバーさんもチャンピオンロードに引き返したと思われますわ。もしかすると」

 エリカが言い終わる前に、ゴールドが続きを言う。

「挑んでくる可能性は大いにありますね……。よーし! 頑張ろ! それじゃ、レッドさん、エリカさん。次はイッシュ地方でお会いしましょう」

 と言ってゴールドもチャンピオンロードへ引き返すのであった。

「そうか……、そういやあいつも全国の旅してるんだっけ」

「嫌だ、お忘れになられていたのですか? しかし次に会うときはイッシュ地方ですか……、もう目前なんですね」

 エリカはどこか嬉しげな声で言った。

「まだまだイッシュに思いを馳せるのは早いぞ。大きな関門が待ち構えているんだから……。よしyじゃあ、回復させて、行くか!」

「はい!」

 二人はポケモンセンターに行って手持ちを回復させて、昼食をとる。そして、いざ四天王に挑むのであった……。

 

―午後1時 ポケモンリーグ イツキの部屋―

 イツキの部屋は、四角い立方体の物体が浮遊して溝から溝へと移動する仕様になっている。

 なんとも不可思議なその部屋を興味深げに見ていると、イツキが話しかけてきた。

「不思議かい? これはすべて僕のアイデアさ」

 イツキの声の方向に二人は体を向ける。

「貴方が……、最初の四天王ですか」

 レッドが発言した。

「そうだよ。ようこそポケモンリーグへ! 僕の名前はイツキ。ヤマブキ大学を出た後、世界を旅して、相棒と共にエスパーとしての更なる鍛錬に明け暮れた」

「あら、ヤマブキ大学という事はナツメさんとお知り合いですか?」

 エリカはヤマブキ大という言葉に反応したのか、尋ねている。

「ああ、一年後輩だったけど、とんでもない化け物だったよ……。本当だったら三年後輩だったんだよあの子」

 その一言で、二人は全てを察した。

「さ……左様ですか」

 エリカは引き気味にそう言う。

「そういや、エリカさんって、ナツメ君と友達なんだっけ?」

 イツキは、逆に質問をしてきた。

「は……はい。どうしてご存知なのですか?」

 エリカは驚いたふうに、イツキに尋ねる。

「時々、難しい言葉とか、エピソードとか聞かせてくれた時の元ネタで君の名前が出てくることがあってね。『エリカから聞いた話よ』……みたいな感じで」

「ナツメさんったら……、案外お喋りな方ですのね」

 エリカは、くすりと笑いながら答える。

「ナツメさんの話は後でもいいでしょう! 早く勝負しましょ?」

 俺は痺れを切らして、少し強めな声でイツキさんに迫った。早いところケリをつけたかったからだ。

「そんなに急がなくても宜しいではないですか……。まだまだお昼ですよ?」

 それもそうなんだが、実をいうと自分以外の異性と親しげに話すエリカに俺は少し焼き餅を焼いていたのだ。そんな事を思いつつ、彼は引き下がった。

「そうだねー、じゃ、彼女の話は後にしよう。それで、鍛錬に明け暮れた結果、ついにカントーの四天王にまで上り詰めた! でも、僕はもっと強くなる。その為に、伝説のお二人さん! 手を貸してもらうよ。行け、ドータクン、サーナイト!」

 レッドはカビゴンを、エリカはルンパッパを繰り出した。

「カビゴン! 地震だ!」

 ドータクンがどっしりと地べたについている事から、浮遊ではない事を見破ったレッドは地震の指示を出す。

「サーナイト、瞑想! ドータクン、カビゴンにしっぺ返し!」

「ルンパッパ、雨乞いです!」

 天候は俄かに雨空になった。そして、カビゴンはその巨体をフル活用して、思い切りフィールドを揺り動かす。

 しかし、不一致である事に加え、ドータクンの堅牢な防御は一撃で仕留めるには足りなかったようだ。HPにして三分の二ほど減るにとどまった。

 ドータクンは、後攻でその力を倍加させるしっぺがえしをカビゴンに見舞わせる。しかしこれも所詮は不一致である。半分ほど減るにとどまった。

「サーナイト! ルンパッパにチャージビーム! ドータクン、もう一度カビゴンにしっぺ返し!」

 サーナイトが攻勢に出る。細長い電流を、ルンパッパに喰らわせる。しかし、特攻が一段階上がった程度では威力不足はあまり拭えないようで、ルンパッパは存外ピンピンしてる。

「地味に能力を上げる手合いは……早いうちに始末するのが吉ですわ。ルンパッパ、サーナイトにハイドロポンプ!」

 ルンパッパの放つ高圧水流はサーナイトを見事に捕える。その上雨乞いも手伝ってか、一撃で始末に成功した。

「ナイスだエリカ! 一気に畳み掛けるぞ! カビゴン、地震だ!」

 流石に二発目の地震は、かの銅鐸も耐え切れなかったようで、鈍い金属音と共に倒れる。倒れた姿はただの釣鐘にもみえてしまいそうだ……。

「流石は伝説の夫婦だね! 一筋縄じゃいかなそーだ! だけどそれが面白いっ! 行け、ヤドラン、ブーピッグ!」

「ルンパッパ、ヤドランにエナジーボールです!」

 ヤドランはモンスターボールから出るや否や、エナジーボールの洗礼を喰らった。

「あー、何か当たったな……」

 しかし、ヤドランはどこ吹く風だ。相当なダメージを喰らっているはずだが、流石はヤドランと言うべきか。

「ヤドラン! ど忘れ! ブーピッグ! ルンパッパにシグナルビームだ」

……

 こうして、レッドは2体、エリカは2体失い、残ったポケモンは黄色ゲージの辛勝に終わる。

「……、参ったよ。流石は生ける伝説だ。噂に相違はないね」

「いえいえ、それほどでも……」

 レッドは手を後ろにやって照れている。

「僕が君たちに負けようと、やる事は変わらない。トレーナーの頂点に立つ為、ひたすら精進し続けるのみだ」

 イツキは俯き加減にそう言った。どこか悔しそうではある。

「流石は四天王だ……。さっきとは一味も二味も違うや……」

「まだまだ序の口だよ。所詮僕は一番目。次はキョウさんという忍びだよ。二人……というかレッド君の事今か今かと待ち構えているから、四方八方に気を付けた方が良いかもね」

 イツキは、冗談半分な風で笑いながら言った。

「あはは……、そうですか」

 レッドはそれに対して空笑いをする。セキチクジムでの記憶が脳裡をよぎったからだ。

「それにしても、イツキさんって如何にもエスパーな(なり)をしていますよね……。ナツメさんはそれ程でもないのに……」

 エリカは俄かにそんな事を言う。

「いや何、僕は昔からエスパーに憧れてたから、格好までなりきりたくてさ……。でも彼女は、超能力そのものは好きらしいけど、エスパーの姿形はあんまり好きじゃないようだったしね」

「なるほど……。あの、もう少し聞かせて頂けますか? 私、ナツメさんに近しい人の話が少し気になるもので……」

 イツキはエリカの要請に応えて、ナツメの話をする。

「近しいって程じゃないよ。ただ同じ大学に籍を置いていて、一回生違う後輩ってだけの仲さ」

 と、前置きしつつイツキは続ける。

「ナツメ君。何度も言うけど本当にすごい子だったよ……、でもね、そのせいでいらぬ嫉妬とかも呼んじゃって……、それに加えてあの子美人でしょ? だから僕のような男にはよく分からないんだけど、一部女子との確執はもうすごいのなんのって……、一回殺し合いになりかけたからねぇうん」

 イツキはうんうんと頷きながら当時を追想している。

「こ……殺し合いとは、穏やかではありませんわね……」

「どこぞの学生と一夜を共にしただの、やれ教授をぶん殴っただの……根も葉もないうわさを吹っかけられて、とうとうナツメ君がぶち切れてね……。噂を流した元凶の子の前で刃物振りかざしたらしいよ……。怖い怖い」

「それでどうなったんですか?」

 いつの間に聞き入っていたレッドが、次を促す。

「幸い、相手に怪我は無かったようだ。で、ナツメ君は賢いからね……。刃物振りかざしたのも傷つける為ではなく、自分に刃を向ければこうなるぞという事を知らしめんがためにやった……と僕は本人から聞いた。ナツメ君の計算通り、それ以来誰もちょっかいかけなくなったよ」

 と言って、イツキは一息つく。

「そうなんですか……、ナツメさんってそんな事もされたいたのですね。ナツメさん曰く、大学ではあまり話し相手がいなかったらしいですが……」

「そうそう。たまに僕が興味半分で話しかけていくぐらいしか、話すことはなかったらしいよ。まー、ナツメ君鬼才奇才勢揃いのヤマブキ大の中でも、白眉って言うべきか、ぶっ飛んでたからね……。釣り合う人が居なかったってのが実の所だろう……」

 そんなのと恋仲になるぐらい親しくなったエリカは一体何者なんだよ!? とレッドは心の中で突っ込んだ。

「そんな子だから、エリカさん。大事にしてあげてよ。世界で指折りの超能力者と釣り合えるのは、それに対応しきれる程の知識と知性を持つ君以外には誰もいないから……」

 イツキは、エリカの目をしっかり見ながら言った。

 エリカは何も言わず、静かに頷くのみである。

「超能力に対応しきれるほどの知識……? それってどういう意味です?」

 俺は、その事だけが頭に引っかかったので素直にイツキに尋ねてみる。

「あの子の超能力の何が恐ろしいって……、相手の知識や経験等を読み取って、その相手と話している間だけともいえどその情報を操れる事だよ……。少なくとも僕ら凡人の知識量……、いや教授ですら同等になれてしまう」

 レッドは顔をすぼめて驚嘆する。つまり、辞書何冊分にも相当しそうな相手の知識や記憶をナツメの眼前に立っただけで全て丸わかりにされてしまうという事だ。

「ただ、ナツメ君、言ってたよ……、”追いつけない”ってな」

「え? それってつまり……」

「人間の脳みそにも容量の限界がある。『私の記憶容量を唯一越えた相手』……、それがエリカさん。君だという事さ」

 エリカ当人も、信じられないと言いたげな表情をしている。

「全く……、規格外とはまさにこの事だねぇ……、そんな化け物……いやもう神とも言うべき人がカントーに二人もいるとは。驚嘆の限りだよ。本当……」

 その後も少し話をして、二人はイツキの部屋を後にした。

 

―キョウの部屋―

 部屋に入ったはいいが、中には誰も居ない。

「あれ、どうなってんだこれ……」

「貴方、不用意に前に出られると……」

 エリカが注意するや否や、大量の手裏剣が天から降り落ちてきた。

「うわわわわわわわわわ!! なんだこれ! なんの悪戯だよ!」

 持ち前の反射神経で全てよけきる。すると、後ろから高く大きく笑う声がする。

「ファファファ! 流石は拙者が見込んだ相手だ、これしきでは傷一つつかぬか……」

 レッドが振り向くと、そこには痩せた男が立っている。流石は忍者だ。誰にも気づかれぬうちに何処ぞから移動してきたようだ。

「キョウさん! お久しぶりです」

「うむ。選挙以来……、戦うのは四年ぶりだな。繰り言で悪いが自己紹介をさせて頂く。拙者は四天王のキョウ! 今に生きる忍びよ。ところで娘に勝ったようだな」

 キョウは俄かにアンズの話を始める。

「はい。中々にファザこ……じゃなくて親思いの娘さんをお持ちのようで」

「娘も大した子だが……所詮は童。まだまだ熟し切ってはおらぬ。今ぞ本物の忍びの戦い、変幻自在かつ神出鬼没な攻撃の前に静かに倒れるが良い……! 行け、スカタンク! ドグロッグ!」

 こうして、四天王二人目の戦いが、幕を開けた……。

 

 

―第四十七話 出る杭は打たれる、出過ぎた柱は放置 終―

 

 


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