伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚   作:OTZ

44 / 80
今回はvsカスミ戦です。
段々題名がネタ切れ気味に……?


第三十九話 新年、元旦、そして洞窟

―2014年 1月1日 午前0時 ハナダシティ ポケモンセンター―

「除夜の鐘……これで68回目でしょうか」

「んな事よりも、今新年を迎えたぞ」

 レッドは腕のポケッチでの時間を見て、そう言った。

 彼らは今、ハナダシティに居る。大晦日の17時頃に到着し、年越しそばをソバ屋で食した後、こうしてポケモンセンターの一個室で除夜の鐘の鳴る中、新年を迎えたのである。

「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」

 エリカは三つ指をついて、レッドに恭しく言う。

「そんなに(かしこ)まらんでも……。まあいいか、こちらこそ宜しくな、それにしても外。盛り上がっているなぁ」

 外では神社に初詣でに行く人、新年のセレモニーを見る人でごった返しており、二人のように屋内にいる人の方が少数派であった。

「私は神道の家系なので、本来ならばタマムシ神社に詣でなければならないのですが……。今回は場合が場合という事で、氏神様も許してくれましょう」

 と、エリカは微笑みながら言う。

「ハハハ……、寛容な事だ。それにしても、いよいよ新年かぁ。去年の今頃こうなるとは思いもしなかったよ」

 レッドは少し嬉しそうに言う。

「私も同様ですわ。何しろ、貴方がシロガネ山に居るという事を知ったこと自体が、2月初頭ぐらいでしたもの……」

 エリカも思うところは同じなようである。

「そうか……、さて、明日もあるし、そろそろ寝るかぁ……、おやすみー」

 レッドはそう言うと、座っていたベットから立ち上がり、布団に潜った。

「あ……、もう、姫始めしてくださってもよかったのに……」

 レッドはすぐに眠りについていたので、その発言は耳に入らなかった。

 じきにエリカも寝、二人とも床に就いたのであった。

 

―午前9時 ハナダジム前―

 レッドは起きてすぐ、カスミに挑む為に、エリカが制止するのも無視してジムにたどり着いた。

 しかし、そこには自動ドアに少しいい紙で作成された、「謹賀新年」と大きく墨書風に印字された貼り紙があり、そこには更に、3日まで休業する旨が書かれている。

 レッドは頭を抱えた。

「だから申し上げましたのに……、ジムリーダーだって休む時は休むのですよ……って」

「分かってたんだけどさぁ……、どうも体が急いじゃって」

 レッドはそう自らの軽はずみな行動を後悔する。

「仕方ありませんわね。三が日くらいは休んでも宜しいのではないですか?」

「いやぁ……、戦闘の勘は毎日鍛えなきゃ、衰えちまうし……、そうだ、ハナダの洞窟に行ってみるか」

 レッドはそう思い立ち、ハナダの洞窟へと向かった。

 

―午前10時 ハナダの洞窟 入口―

「ここは、強いトレーナーのみが」

「ほい」

 レッドは、番人に対し、32個のバッジが揃ったケース、それに加えチャンピオンを破った証となるリボンを見せた。

「も……申し訳ない。どうぞ」

 そういう訳で二人は、洞窟の中に入った。

「いやー、あの番人の真っ青な顔、なかなかに見ものだったな……」

 レッドはエリカにそう話しかける。

「私たちの事、ご存知無かったのでしょうか……、それはともかくとして、ここは初めて来ましたわ。音に聞く、強者(つわもの)な野生ポケモンの棲家と聞き及んでおりますが……」

 エリカは、興味津々な物言いである。

「まあ、俺は三年前、ここに来たんだけどな。実をいうと、一つここには心残りがあるんだ……」

「あら、何ですの?」

 エリカは、身を近づけて、興味ありげに尋ねてくる。その様は可愛らしく、つい言ってしまいそうになったが、レッドはすんでのところで堪え、

「ついてくりゃ分かるさ。エリカ、離れるなよ。お前程の力でも、ここの野生は油断できない」

 と、エリカにあらかじめ忠告した。

「承知いたしましたわ」

 こうして二人は、手持ちを活用しつつ、ハナダの洞窟を探索し始めるのであった。

 

―午後3時 ハナダの洞窟 最奥部―

「あれ?」

 レッドは最奥部のとある所で立ち止まり、左右を見る。

 不思議に思ったエリカが尋ねると、

「いや、ここに確かここいらにミュウツーというポケモンがいて……、他の三鳥は捕まえたんだが、あいつだけ捕まえられなくてさ……」

「ミュウツーって、あの遺伝子組み換えの被害ポケモンの筆頭としてあげられる……?」

 エリカはそれとなく尋ねたが、レッドがそんな事を知るはずもなく、

「……、あぁそうそう……そんな奴」

 と知ったかをして続ける。

「で、今回捕まえに来たんだけど……、どうしてたか居ないみたいだな……。何があったんだろうか」

「興味深くはありますが……、もしかしてゴールドさんが捕まえたというのは?」

 エリカはそう尋ねたが、レッドはそそくさに、

「それはない。ゴールドは確かにここまで来れるほどの実力はあるが、俺ですら一度は持て余した相手だ。俺に負けたあいつが捕まえられるハズがない」

 と、あっさり斬り捨てた。

「なるほど……」

 エリカは合点がいったのか、何も反論しない様子である。

 

 こうして、二人は穴抜けの紐を使って、洞窟の外に出、モヤモヤした心持ちのまま、ハナダに戻った。

 

―午後3時30分 ハナダシティ 入り口付近―

 特に行くあてもないので、自転車屋の跡地を見て懐かしんだりしていると、思いがけない人物に出会った。

「あれ、もしかして……、レッドさん?」

 話しかけてきた少年は、黄色と黒の織り交ざった帽子を被っている人物で、レッドやエリカにはすぐに分かったのも当然である。

「おう、ゴールドか。明けましておめでとう」

「こちらこそ、おめでとうございます! 今年も宜しくお願いしますね……と、およそ2週間ぶりぐらいでしょうか……、もしかしてお二人もイッシュへの時間稼ぎですか?」

 ゴールドの尋ねにレッドが答えた。

「そうだ。お前はジョウトに居るんじゃ無かったのか?」

「ええ、そうです。それで、コガネまで行ったんですけど、正月休みの上に、アカネさんが産休を取ってお休みしているそうなんで、産休明けの日までカスミさんとゆっくりしようかなーなんて思い、ちょっとカスミ当人には内緒でここに来ました」

 と、喜々としながらゴールドは語る。

「仲の宜しいことで……、そうですわ。カスミさんのお宅にお伺いするのでしたら、私たちの挑戦も受けてもらえるよう頼んでは頂けないでしょうか?」

 エリカはそう、妙案を出す。

「……、エリカさんの頼みなら、止むを得ませんね。早い方が良いでしょう。ついてきてくれますか? 案内するので」

 そういう訳で、二人はゴールドの導きに従い、カスミ宅まで向かう事となった。

 

―午後4時 カスミ宅―

「さてと、ここがカスミさんのお家です」

 カスミの家は、ハナダ色の屋根で、平屋建ての簡素なものだった。広さは一般的な家屋と同等ぐらいか。

「あら、カスミさんにしては意外に侘びた家ですこと……」

 エリカは、皮肉か本気か判別のつかない事を言った。

「さてと……」

 そう言ってゴールドは、カギを持ち出した。

「合鍵?」

 レッドはそう尋ねる。

「ええ、そうですよ。ここは、僕がトレーナーから一歩離れて、二人で暮らすようになった時の為に……って、僕とカスミさんが共同で買ったものなんですよー」

 そう答えながら、ゴールドは鍵穴にカギを差し込み、回そうとした。

 しかしどうしたことか、カチッという解錠した音が聞こえない。

「あれ、おかしいなぁ……」

 ゴールドは何度も解錠を試みたが、甲斐なく終わることとなった。

「……、もしかして、カギを換えられたとか……」

 エリカはそう推測する。

「この様子だとそうかもしれないですね……、しかしどうしてだろう」

 ゴールドは首を傾げたが、こうしていても始まらないと悟ったのか、インターホンを鳴らした。

「カスミさーん! ゴールドだよー!」

 大きめな声で、ゴールドは送信機に話しかける。

 カチャ、という受話器と取ったと思われる音と共に、聞き覚えのある高い女の声がした。恐らくカスミの声であろう。

「えっゴールド!? 何で急に……、すぐに出るからそこで待ってなさい」

 そう言うとプツリと通信が絶たれる。

「良かったぁ、家に居てくれてて……」

 ゴールドは息をついて胸をなでおろし、安堵していた。

 窓の音が遠くから聞こえる。恐らく換気をしているのだろう。その後に草の踏まれる音もした気がしたが、風のいたずらであろう。とレッドは思った。

 そうこうしていると、すぐに。と言った割には5分ほど待たせて、カスミ当人がドアを開けて姿を現す。

「明けましておめでとう! ゴールド……って、なんでレッドにエリカまで」

 カスミは、驚きより寧ろ不快な顔をしていた。服装は相変わらずだが、慌てて着合せている感がある。シャワーでも浴びていたのだろうか。

「押しかけて申し訳ありません」

 レッドはそう言うと一礼をした。

「……、ああ、もしかして挑戦しに来たの?」

 カスミは、思い出したかのように言っている。

「そうですよ。言いだしっぺ貴方ですよね? 受けないとは言わせませんよ」

 レッドは、少し強めの口調で言う。

「へー、あんたにしちゃ強気ね。いいわ、特別に受けてあげる。前回のようにはいかないから覚悟しなさいね。ゴールド。折角来てくれたのに悪いわね」

「いえいえ、大丈夫です」

 ゴールドは首を横に振って、そう言った。

「あたしと二人が戦っている間、家で(くつろ)いでなさいな。終わったらすぐそっちに向かうから……。それじゃあジムで待ってるわ。準備整えてから来なさいよ」

 そう言ってカスミは立ち去っていく。

 ゴールドの激励も受け、二人はジムにへと向かった。

 

―ハナダジム―

「自己紹介なんかするまでもないわね。あたしの水ポケモンが四年間でどれだけ変わったか、みせてあげるわ! 今年の初笑いは、あんたの負けた時の表情よ!」

 と、カスミはレッドを指さしながら言った。

「その意地、どこまで張れることやら……」

 レッドは、そう毒づく。

「うるさいわね! とにかく行くわよー、行って、スターミー! ランターン!」

カスミに続いて、二人が繰り出す。

「行け、フシギバナ」

「おいでなさい、ルンパッパ!」

「スターミー! フシギバナに冷凍ビーム!」

「へアッ! カチカチの氷光線を喰らえ!」

 スターミーのコアから、氷の光線が繰り出される。

「うぐぐ……耐えろ……耐えるんだぁ……」

 フシギバナは3分の2程削れた。

「フシギバナ、スターミーに眠り粉」

「合点承知ぃ! 眠れぃ!」

 スターミーには、眠り粉が降りかかり、眠ってしまった。

「……、この程度の事は想定内よ! ランターン! 雨乞い!」

「あーめあーめふーれふーれ」

 ランターンが童謡を歌うと、雨が降り出される。

「ルンパッパ、ランターンにヤドリギの種です」

「種付け、種付け~!」

 ルンパッパはランターンに種を植え付けた。

「スターミー……起きそうにないわね。ランターン! ルンパッパに雷!」

「最大電力のこの雷で、しんじゃえい!」

 可愛い声で、恐ろしいことを言うのがランターンの特徴なのだろうか。

 天から太い稲妻が、ルンパッパに直撃する。

「ふぅ~、痺れる痺れる!」

 が、なんともないようだ。HPは3分の1程減った。

「ルンパッパ! スターミーからギガドレインです!」

「君の養分は、僕のもの!」

 と、言いながら、ルンパッパはスターミーから体力を吸い取った。

 急所に当たり、スターミーは倒れた。ルンパッパは更にやどりき、たべのこしでダメージ分をほとんど取り戻すことに成功する。

「これがルンパッパの耐久戦術ね……エリカ、あんたがそうくるなら、こっちは……、行って、ミロカロス!」

「耐久が高いミロカロスはさっさと倒すのが最良だ。 フシギバナ! ハードプラント!」

「俺の根で死ぬがよい!」

 フシギバナ自らが大樹となり、息をもつかせぬ程の素早さで相手の場まで根を引き伸ばし、根が巨大で鋭い、一種の刀と化し、ミロカロスを叩き続ける。

「いだいいだいだいいいいいいい!」

 ミロカロスは、絶叫と共に瀕死した。

「うぅ……疲れた……」

 フシギバナは、反動で動けなくなる。御三家のみに許されし技とはいえ、代償は大きいものである。

「……、まだまだ! 終わらないわ! 行って、フローゼル! ランターン! フシギバナに冷凍ビーム!」

「ふーっ!」

 ランターンは息と共に、氷の光線を出す。当然のことながら、フシギバナは倒れた。

「……、行け、ピカチュウ!」

「ピカー!」

 ピカチュウは、元気よく出てきた。

「ルンパッパ、ランターンからギガドレイン」

 ランターンは、吸い取られ尽くされ、倒れた。

「……!、行って、ラプラス!」

―――――――――

 こうして、レッドは一体を失い、エリカは完勝に終わった。

「……、やるじゃない。あんた……そしてエリカの実力。本物だって認めるわ。本気出せば勝てるって思ってたけど、甘いわね。それ以上の格差があるって事思い知らされたわ。あたしに勝った証として、ブルーバッジ、改めて渡すわ!」

 そういうと、カスミはブルーバッジを2つ、二人に差し出す。

「有難うございます」

 エリカは、深々とお辞儀をした。

「エリカ、あんたはいつも礼儀正しいねぇ。あーあ、それにしても、新年早々、初笑いどころかこんなにボロ負けするだなんて……。きっと今年は厄年ね」

 カスミは、力なく笑いつつ、わざとらしく監督席の椅子を浮かせて、背中を預けている。

「そんな事無いですよ。たまたま今回運が悪かっただけです。腕はそれなりにあるのですから自信を持ってくださいよ!」

 レッドはカスミを激励した。

「運だけで片付けられるものかなぁ……これ。まあ、そういう風に前向きに考えるのも大事よね。さてと、ゴールドの所にもどろっと」

 カスミは監督席から立ち上がり、立ち去ろうとした。が、

「カスミさん」

 急に呼び止められたので、カスミは少し驚きつつ、振り向いた。

「ん? まだ何か用?」

「……、単刀直入にお伺いしますが、浮気していらっしゃいませんか?」

 エリカは鋭い一言を放つ。

 カスミは、急に矢を射られた鳥の如く、慌てた素振りを見せ

「ハァ?……な、何言ってるのよ。あたしはそんな」

「ならばどうして、そんなに狼狽しているのです? やましいところが無くば、もっと毅然と答えられても宜しいはずなのですがねぇ」

 カスミは、それでも反論する。

「根拠もなく疑うだなんて、あんたらしくないわね。証拠はあるの?」

「証拠ですか……、特に御座いませんが、強いて申し上げるのであれば、貴女が応対した後、すぐに出られなかったこと、あと、私の目には見えたのですよ……、微かですが、黒い影が」

「ば……、馬鹿じゃないの!? すぐに出れなかったのはあたし、シャワー浴びてて、タオル1枚しか身に着けてなくて、急いで着たからだし……、それにそんな黒い人影なんて、一体何の」

 最後の言葉を聞いた瞬間、エリカの目が鋭く光り、

「墓穴を掘りましたわね……」

「え?」

 カスミは、何をしたかわかっていない様子である。

「私、確かに黒い影とは申し上げましたが……、何も人影とまでは申しておりません」

 それを聞いた瞬間、カスミの目から光が消えた。

「そして、その上に、また微かなれど、私の耳には足音が聞こえましたわ。貴女が何かを飼っていたというお話は聞いた事ございませんので、動物はあり得ない……、だとしたら」

「ハッ……、馬鹿らしくてやってられないわ。あたしは浮気なんかしていないし、どうしてしなきゃいけないのよ! エリカ、あんたは前々から思慮深い人とは思っていたけど、こんな疑心暗鬼な子だったなんてね……! もういいわ! あたし帰る!」

 そう言って、カスミは足早に立ち去った。

 その後、レッドとエリカも続いて外に出た。

 

―ジムの外―

「ありゃ明らかに、クロだな」

 レッドはそう断言する。

「ええ。それも、ゴールドさんのように、純粋な少年を騙すような真似は許せませんわ。年端もいかない子に不倫の苦しみなど味あわせたくはない物……、近々ゴールドさんに分かれるように手紙でもお出し……」

 等とエリカが言っていると、少し離れているところにゴールドとカスミが居た。

 ゴールドは何やら手に持っている。赤色のつばに、白の下地にモンスターボールを青く簡略化したデザインが施されている帽子。それに加え、(ニャー)を彷彿とさせる、ピンク色のツボツボがついた棒状のものも持っていた。

 何やら口論しているが、聞こえなかった。しかし、敢えて近づこうとはせず、動静のみを伺う。

 ゴールドが珍しく、目をいからせてて、舌端火を吐いているかのように捲し立てている。

 終ぞ、彼はカスミを平手打ちにし、持っていたものを叩き落として、立ち去って行った……。

 カスミは呆然と立ち尽くしている。

「……、もしかしてバレてたのか? まぁ、叩かれて当然のことをしてたんだがな」

「そのようですわね。いい気味ですわ……、これを機会に反省して頂ければ良いのですが……」

 

こうして、ハナダジムを制覇した二人は、カスミの不倫劇を尻目にして、次のジムのある街、クチバシティへと向かうのであった。

 

―第三十九話 新年、元旦、そして洞窟 終―

 

 

 

 




どうでもいいですが、当SSのジムリーダーは強化版+10~15レベルぐらいと考えてください。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。