伝説のトレーナーと才色兼備のジムリーダーが行く全国周遊譚 作:OTZ
段々題名がネタ切れ気味に……?
―2014年 1月1日 午前0時 ハナダシティ ポケモンセンター―
「除夜の鐘……これで68回目でしょうか」
「んな事よりも、今新年を迎えたぞ」
レッドは腕のポケッチでの時間を見て、そう言った。
彼らは今、ハナダシティに居る。大晦日の17時頃に到着し、年越しそばをソバ屋で食した後、こうしてポケモンセンターの一個室で除夜の鐘の鳴る中、新年を迎えたのである。
「明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
エリカは三つ指をついて、レッドに恭しく言う。
「そんなに
外では神社に初詣でに行く人、新年のセレモニーを見る人でごった返しており、二人のように屋内にいる人の方が少数派であった。
「私は神道の家系なので、本来ならばタマムシ神社に詣でなければならないのですが……。今回は場合が場合という事で、氏神様も許してくれましょう」
と、エリカは微笑みながら言う。
「ハハハ……、寛容な事だ。それにしても、いよいよ新年かぁ。去年の今頃こうなるとは思いもしなかったよ」
レッドは少し嬉しそうに言う。
「私も同様ですわ。何しろ、貴方がシロガネ山に居るという事を知ったこと自体が、2月初頭ぐらいでしたもの……」
エリカも思うところは同じなようである。
「そうか……、さて、明日もあるし、そろそろ寝るかぁ……、おやすみー」
レッドはそう言うと、座っていたベットから立ち上がり、布団に潜った。
「あ……、もう、姫始めしてくださってもよかったのに……」
レッドはすぐに眠りについていたので、その発言は耳に入らなかった。
じきにエリカも寝、二人とも床に就いたのであった。
―午前9時 ハナダジム前―
レッドは起きてすぐ、カスミに挑む為に、エリカが制止するのも無視してジムにたどり着いた。
しかし、そこには自動ドアに少しいい紙で作成された、「謹賀新年」と大きく墨書風に印字された貼り紙があり、そこには更に、3日まで休業する旨が書かれている。
レッドは頭を抱えた。
「だから申し上げましたのに……、ジムリーダーだって休む時は休むのですよ……って」
「分かってたんだけどさぁ……、どうも体が急いじゃって」
レッドはそう自らの軽はずみな行動を後悔する。
「仕方ありませんわね。三が日くらいは休んでも宜しいのではないですか?」
「いやぁ……、戦闘の勘は毎日鍛えなきゃ、衰えちまうし……、そうだ、ハナダの洞窟に行ってみるか」
レッドはそう思い立ち、ハナダの洞窟へと向かった。
―午前10時 ハナダの洞窟 入口―
「ここは、強いトレーナーのみが」
「ほい」
レッドは、番人に対し、32個のバッジが揃ったケース、それに加えチャンピオンを破った証となるリボンを見せた。
「も……申し訳ない。どうぞ」
そういう訳で二人は、洞窟の中に入った。
「いやー、あの番人の真っ青な顔、なかなかに見ものだったな……」
レッドはエリカにそう話しかける。
「私たちの事、ご存知無かったのでしょうか……、それはともかくとして、ここは初めて来ましたわ。音に聞く、
エリカは、興味津々な物言いである。
「まあ、俺は三年前、ここに来たんだけどな。実をいうと、一つここには心残りがあるんだ……」
「あら、何ですの?」
エリカは、身を近づけて、興味ありげに尋ねてくる。その様は可愛らしく、つい言ってしまいそうになったが、レッドはすんでのところで堪え、
「ついてくりゃ分かるさ。エリカ、離れるなよ。お前程の力でも、ここの野生は油断できない」
と、エリカにあらかじめ忠告した。
「承知いたしましたわ」
こうして二人は、手持ちを活用しつつ、ハナダの洞窟を探索し始めるのであった。
―午後3時 ハナダの洞窟 最奥部―
「あれ?」
レッドは最奥部のとある所で立ち止まり、左右を見る。
不思議に思ったエリカが尋ねると、
「いや、ここに確かここいらにミュウツーというポケモンがいて……、他の三鳥は捕まえたんだが、あいつだけ捕まえられなくてさ……」
「ミュウツーって、あの遺伝子組み換えの被害ポケモンの筆頭としてあげられる……?」
エリカはそれとなく尋ねたが、レッドがそんな事を知るはずもなく、
「……、あぁそうそう……そんな奴」
と知ったかをして続ける。
「で、今回捕まえに来たんだけど……、どうしてたか居ないみたいだな……。何があったんだろうか」
「興味深くはありますが……、もしかしてゴールドさんが捕まえたというのは?」
エリカはそう尋ねたが、レッドはそそくさに、
「それはない。ゴールドは確かにここまで来れるほどの実力はあるが、俺ですら一度は持て余した相手だ。俺に負けたあいつが捕まえられるハズがない」
と、あっさり斬り捨てた。
「なるほど……」
エリカは合点がいったのか、何も反論しない様子である。
こうして、二人は穴抜けの紐を使って、洞窟の外に出、モヤモヤした心持ちのまま、ハナダに戻った。
―午後3時30分 ハナダシティ 入り口付近―
特に行くあてもないので、自転車屋の跡地を見て懐かしんだりしていると、思いがけない人物に出会った。
「あれ、もしかして……、レッドさん?」
話しかけてきた少年は、黄色と黒の織り交ざった帽子を被っている人物で、レッドやエリカにはすぐに分かったのも当然である。
「おう、ゴールドか。明けましておめでとう」
「こちらこそ、おめでとうございます! 今年も宜しくお願いしますね……と、およそ2週間ぶりぐらいでしょうか……、もしかしてお二人もイッシュへの時間稼ぎですか?」
ゴールドの尋ねにレッドが答えた。
「そうだ。お前はジョウトに居るんじゃ無かったのか?」
「ええ、そうです。それで、コガネまで行ったんですけど、正月休みの上に、アカネさんが産休を取ってお休みしているそうなんで、産休明けの日までカスミさんとゆっくりしようかなーなんて思い、ちょっとカスミ当人には内緒でここに来ました」
と、喜々としながらゴールドは語る。
「仲の宜しいことで……、そうですわ。カスミさんのお宅にお伺いするのでしたら、私たちの挑戦も受けてもらえるよう頼んでは頂けないでしょうか?」
エリカはそう、妙案を出す。
「……、エリカさんの頼みなら、止むを得ませんね。早い方が良いでしょう。ついてきてくれますか? 案内するので」
そういう訳で、二人はゴールドの導きに従い、カスミ宅まで向かう事となった。
―午後4時 カスミ宅―
「さてと、ここがカスミさんのお家です」
カスミの家は、ハナダ色の屋根で、平屋建ての簡素なものだった。広さは一般的な家屋と同等ぐらいか。
「あら、カスミさんにしては意外に侘びた家ですこと……」
エリカは、皮肉か本気か判別のつかない事を言った。
「さてと……」
そう言ってゴールドは、カギを持ち出した。
「合鍵?」
レッドはそう尋ねる。
「ええ、そうですよ。ここは、僕がトレーナーから一歩離れて、二人で暮らすようになった時の為に……って、僕とカスミさんが共同で買ったものなんですよー」
そう答えながら、ゴールドは鍵穴にカギを差し込み、回そうとした。
しかしどうしたことか、カチッという解錠した音が聞こえない。
「あれ、おかしいなぁ……」
ゴールドは何度も解錠を試みたが、甲斐なく終わることとなった。
「……、もしかして、カギを換えられたとか……」
エリカはそう推測する。
「この様子だとそうかもしれないですね……、しかしどうしてだろう」
ゴールドは首を傾げたが、こうしていても始まらないと悟ったのか、インターホンを鳴らした。
「カスミさーん! ゴールドだよー!」
大きめな声で、ゴールドは送信機に話しかける。
カチャ、という受話器と取ったと思われる音と共に、聞き覚えのある高い女の声がした。恐らくカスミの声であろう。
「えっゴールド!? 何で急に……、すぐに出るからそこで待ってなさい」
そう言うとプツリと通信が絶たれる。
「良かったぁ、家に居てくれてて……」
ゴールドは息をついて胸をなでおろし、安堵していた。
窓の音が遠くから聞こえる。恐らく換気をしているのだろう。その後に草の踏まれる音もした気がしたが、風のいたずらであろう。とレッドは思った。
そうこうしていると、すぐに。と言った割には5分ほど待たせて、カスミ当人がドアを開けて姿を現す。
「明けましておめでとう! ゴールド……って、なんでレッドにエリカまで」
カスミは、驚きより寧ろ不快な顔をしていた。服装は相変わらずだが、慌てて着合せている感がある。シャワーでも浴びていたのだろうか。
「押しかけて申し訳ありません」
レッドはそう言うと一礼をした。
「……、ああ、もしかして挑戦しに来たの?」
カスミは、思い出したかのように言っている。
「そうですよ。言いだしっぺ貴方ですよね? 受けないとは言わせませんよ」
レッドは、少し強めの口調で言う。
「へー、あんたにしちゃ強気ね。いいわ、特別に受けてあげる。前回のようにはいかないから覚悟しなさいね。ゴールド。折角来てくれたのに悪いわね」
「いえいえ、大丈夫です」
ゴールドは首を横に振って、そう言った。
「あたしと二人が戦っている間、家で
そう言ってカスミは立ち去っていく。
ゴールドの激励も受け、二人はジムにへと向かった。
―ハナダジム―
「自己紹介なんかするまでもないわね。あたしの水ポケモンが四年間でどれだけ変わったか、みせてあげるわ! 今年の初笑いは、あんたの負けた時の表情よ!」
と、カスミはレッドを指さしながら言った。
「その意地、どこまで張れることやら……」
レッドは、そう毒づく。
「うるさいわね! とにかく行くわよー、行って、スターミー! ランターン!」
カスミに続いて、二人が繰り出す。
「行け、フシギバナ」
「おいでなさい、ルンパッパ!」
「スターミー! フシギバナに冷凍ビーム!」
「へアッ! カチカチの氷光線を喰らえ!」
スターミーのコアから、氷の光線が繰り出される。
「うぐぐ……耐えろ……耐えるんだぁ……」
フシギバナは3分の2程削れた。
「フシギバナ、スターミーに眠り粉」
「合点承知ぃ! 眠れぃ!」
スターミーには、眠り粉が降りかかり、眠ってしまった。
「……、この程度の事は想定内よ! ランターン! 雨乞い!」
「あーめあーめふーれふーれ」
ランターンが童謡を歌うと、雨が降り出される。
「ルンパッパ、ランターンにヤドリギの種です」
「種付け、種付け~!」
ルンパッパはランターンに種を植え付けた。
「スターミー……起きそうにないわね。ランターン! ルンパッパに雷!」
「最大電力のこの雷で、しんじゃえい!」
可愛い声で、恐ろしいことを言うのがランターンの特徴なのだろうか。
天から太い稲妻が、ルンパッパに直撃する。
「ふぅ~、痺れる痺れる!」
が、なんともないようだ。HPは3分の1程減った。
「ルンパッパ! スターミーからギガドレインです!」
「君の養分は、僕のもの!」
と、言いながら、ルンパッパはスターミーから体力を吸い取った。
急所に当たり、スターミーは倒れた。ルンパッパは更にやどりき、たべのこしでダメージ分をほとんど取り戻すことに成功する。
「これがルンパッパの耐久戦術ね……エリカ、あんたがそうくるなら、こっちは……、行って、ミロカロス!」
「耐久が高いミロカロスはさっさと倒すのが最良だ。 フシギバナ! ハードプラント!」
「俺の根で死ぬがよい!」
フシギバナ自らが大樹となり、息をもつかせぬ程の素早さで相手の場まで根を引き伸ばし、根が巨大で鋭い、一種の刀と化し、ミロカロスを叩き続ける。
「いだいいだいだいいいいいいい!」
ミロカロスは、絶叫と共に瀕死した。
「うぅ……疲れた……」
フシギバナは、反動で動けなくなる。御三家のみに許されし技とはいえ、代償は大きいものである。
「……、まだまだ! 終わらないわ! 行って、フローゼル! ランターン! フシギバナに冷凍ビーム!」
「ふーっ!」
ランターンは息と共に、氷の光線を出す。当然のことながら、フシギバナは倒れた。
「……、行け、ピカチュウ!」
「ピカー!」
ピカチュウは、元気よく出てきた。
「ルンパッパ、ランターンからギガドレイン」
ランターンは、吸い取られ尽くされ、倒れた。
「……!、行って、ラプラス!」
―――――――――
こうして、レッドは一体を失い、エリカは完勝に終わった。
「……、やるじゃない。あんた……そしてエリカの実力。本物だって認めるわ。本気出せば勝てるって思ってたけど、甘いわね。それ以上の格差があるって事思い知らされたわ。あたしに勝った証として、ブルーバッジ、改めて渡すわ!」
そういうと、カスミはブルーバッジを2つ、二人に差し出す。
「有難うございます」
エリカは、深々とお辞儀をした。
「エリカ、あんたはいつも礼儀正しいねぇ。あーあ、それにしても、新年早々、初笑いどころかこんなにボロ負けするだなんて……。きっと今年は厄年ね」
カスミは、力なく笑いつつ、わざとらしく監督席の椅子を浮かせて、背中を預けている。
「そんな事無いですよ。たまたま今回運が悪かっただけです。腕はそれなりにあるのですから自信を持ってくださいよ!」
レッドはカスミを激励した。
「運だけで片付けられるものかなぁ……これ。まあ、そういう風に前向きに考えるのも大事よね。さてと、ゴールドの所にもどろっと」
カスミは監督席から立ち上がり、立ち去ろうとした。が、
「カスミさん」
急に呼び止められたので、カスミは少し驚きつつ、振り向いた。
「ん? まだ何か用?」
「……、単刀直入にお伺いしますが、浮気していらっしゃいませんか?」
エリカは鋭い一言を放つ。
カスミは、急に矢を射られた鳥の如く、慌てた素振りを見せ
「ハァ?……な、何言ってるのよ。あたしはそんな」
「ならばどうして、そんなに狼狽しているのです? やましいところが無くば、もっと毅然と答えられても宜しいはずなのですがねぇ」
カスミは、それでも反論する。
「根拠もなく疑うだなんて、あんたらしくないわね。証拠はあるの?」
「証拠ですか……、特に御座いませんが、強いて申し上げるのであれば、貴女が応対した後、すぐに出られなかったこと、あと、私の目には見えたのですよ……、微かですが、黒い影が」
「ば……、馬鹿じゃないの!? すぐに出れなかったのはあたし、シャワー浴びてて、タオル1枚しか身に着けてなくて、急いで着たからだし……、それにそんな黒い人影なんて、一体何の」
最後の言葉を聞いた瞬間、エリカの目が鋭く光り、
「墓穴を掘りましたわね……」
「え?」
カスミは、何をしたかわかっていない様子である。
「私、確かに黒い影とは申し上げましたが……、何も人影とまでは申しておりません」
それを聞いた瞬間、カスミの目から光が消えた。
「そして、その上に、また微かなれど、私の耳には足音が聞こえましたわ。貴女が何かを飼っていたというお話は聞いた事ございませんので、動物はあり得ない……、だとしたら」
「ハッ……、馬鹿らしくてやってられないわ。あたしは浮気なんかしていないし、どうしてしなきゃいけないのよ! エリカ、あんたは前々から思慮深い人とは思っていたけど、こんな疑心暗鬼な子だったなんてね……! もういいわ! あたし帰る!」
そう言って、カスミは足早に立ち去った。
その後、レッドとエリカも続いて外に出た。
―ジムの外―
「ありゃ明らかに、クロだな」
レッドはそう断言する。
「ええ。それも、ゴールドさんのように、純粋な少年を騙すような真似は許せませんわ。年端もいかない子に不倫の苦しみなど味あわせたくはない物……、近々ゴールドさんに分かれるように手紙でもお出し……」
等とエリカが言っていると、少し離れているところにゴールドとカスミが居た。
ゴールドは何やら手に持っている。赤色のつばに、白の下地にモンスターボールを青く簡略化したデザインが施されている帽子。それに加え、(ニャー)を彷彿とさせる、ピンク色のツボツボがついた棒状のものも持っていた。
何やら口論しているが、聞こえなかった。しかし、敢えて近づこうとはせず、動静のみを伺う。
ゴールドが珍しく、目をいからせてて、舌端火を吐いているかのように捲し立てている。
終ぞ、彼はカスミを平手打ちにし、持っていたものを叩き落として、立ち去って行った……。
カスミは呆然と立ち尽くしている。
「……、もしかしてバレてたのか? まぁ、叩かれて当然のことをしてたんだがな」
「そのようですわね。いい気味ですわ……、これを機会に反省して頂ければ良いのですが……」
こうして、ハナダジムを制覇した二人は、カスミの不倫劇を尻目にして、次のジムのある街、クチバシティへと向かうのであった。
―第三十九話 新年、元旦、そして洞窟 終―
どうでもいいですが、当SSのジムリーダーは強化版+10~15レベルぐらいと考えてください。