Fate/Grand order 虚構黄金都市ウルク   作:Marydoll

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シノアリスはニーアコラボしてるけど、fgoも月姫コラボして良いのよ?


土塊、それと黄昏

 

目前を覆った巨大な影は、心地よい花の匂いと共に霧散していた__いや違う。霧散したのではなく一箇所に集合していったのだ(・・・・・・・・・・・・・)

歪に形を変えて表れた人の型に、師匠は二歩、俺たちの前に立った。

「______嗚呼、ここであなたが……」

 

シャムハトの喘ぐような声に、返事をしたのは、正に目の前の泥の塊であった。

 

「久しぶりだね、シャムハト」

「ええ、お久しぶりです。我が娘よ」

「________」

 

すぐ隣で、ダ・ヴィンチちゃんが息を呑むのを耳にした。握り締められた杖が、手甲の軋む様子をぎりぎりと音にしていた。半身をマシュの大盾に隠して、俺は彼女たちの様子をどうすることもできずに、ただ浅ましくも伺い立てることしか出来ないでいた。

 

「聖娼婦シャムハトの子____まさか、『彼』がエンキドゥなのか……?」

「ギルガメッシュ叙事詩に描かれる、かの王の、ただ一人の盟友……なんて強大な気配なのでしょうか…………」

 

二人が溢した言葉に、応えるのは灰燼が風に煽られる細やかな騒めきだけであった。

二人の会話は、単調なままに続いていた。

 

「あなたが神イシュタルの許へ下るとは思いもしませんでした」

「まさか。僕があんな女に屈服するとでも思っているのかい?」

首を振るう。

萌黄色の髪の毛が、灰の影を撒き散らした。

師匠が、ぴくと身体を揺らしたのを感じた。その横顔を、斜め後方から見つめる。そんな俺の視線を感じ取ったか、彼女はこちらに振り向いて、赫い瞳で穿ち抜くようにしてから、また前方へと向きなおった。

____違和感があった。

何処か、尋常ではない気配を肌で感じていた__汗がゆったりと額を流れて落ちていくのを、感じていた__

「一時的な同盟関係さ。協力するに値する面倒な事態が解決すれば、あれは直ぐに殺してしまおうと__」

「それは今は関係のないことでしょう」

 

____声が、凍えるようであった。

 

「シャム……ハト…………?」

 

驚きに、彼女の名前を呼んだ。

今まで、慈愛の影で俺たちを包み込んでくれていたシャムハトの姿は、一切存在していなかった。

俺はああと、目を瞬かせた。

違和感__何処か、現実味のない感覚の正体を遅まきながら悟った。

 

「あなたとイシュタル(・・・・・)との間柄など、わたしには関係ない」

 

シャムハトの気配が、強くつよく、燃え立つように大きくなっていた。

マシュが、ダ・ヴィンチちゃんが後ずさった。

かつて、何処かの特異点で、聖女の写し身がそうであったように__

またシャムハトもそうであったのだ(・・・・・・・・)

つまり、今の彼女のそれを__

 

「____よくも彼女を、裏切ってくれましたね(・・・・・・・・・・)、この人形風情が」

 

____憤怒と、呼ぶのであろう……と。

 

 

 

 

「求婚された?」

「…………………………あぁ」

「それはまた、面妖な話じゃないか。おめでとうと、そう言えばいいのかな?」

「…………………………面妖なことを」

 

本当に参っているのか、ギルガメッシュは額に手を当てて、僕に身体を預けてきた。右腕に感じる肉感や熱がもぞもぞと僕の身を(まさぐ)るように蠢いた。

夕景が、彼女の金の髪を鮮烈に染め上げていた。遠方の潮騒が、時間に押されて、ぽつりぽつりと海に産まれる星の影を揺らしていた。闇夜を引き連れる、穏やかな黄昏の行進を二人で眺めていた。

安寧が、僕らの狭くて深い溝を埋めていくようであった。

 

「……イシュタル、ね。いつも君を弄り倒してはいなくなるあの変な女神様のことだろう?」

「あぁ、そうだよ。まったく……」

 

彼女は身体を傾かせて、そのまま僕の膝へと頭を収めた。

投げ出された金布を掬いとって、口付ける。

擽った気に身体を捩ったギルガメッシュは、目を閉ざした喉を鳴らした。

「それで?」

「……断るに決まっているだろう。神と人とが、交わることなど決してないんだから。あれが望んでいるのは、私という人格ではないだろう」

「それだけじゃあ、ないだろう?」

「…………………………もう、彼奴らに何かを奪われるのは………………いやだ」

「…………………………そっか」

 

与えられることで定められた彼女の行く末は、或いは奪われてしまった数多の選択肢の残骸によって造られているのかもしれなかった。

穏やかで、ありふれていて、窮屈で不自由で__けれど、何よりも輝いていて。暗闇を意識してしまえば、もうその瞳には痛ましい光の姿は、ゆるやかに綻んだ、彼女自身が紡いできた憧憬の在り処に違いなかった。

選ぶということは、つまり何かを捨てることと同義なのだ。

ならば、そうやって選択の権利を生来有することなく、今まで生きてきた彼女は__きっと、どれほどの重荷であっても、どのような重責であっても捨てることなどできずに、こうやって苦しんできたのだろう。

「______僕は」

「…………………………?」

 

ギルガメッシュが、微かに瞼を揺らした。紅色の星が、潮の中で泳いでいるのが見えた。

それは誰に取っても、遠く高く__触れられざる、彼女の深い傷跡から流れる血の尊さであった。

 

「人の営みを、僕は君のすぐ側で見てきたんだ__たぶん、君と同じ場所から、ね」

「…………エルキドゥ」

「孤独であっても、孤高であっても構わない」

「…………………………」

「けれど決して、君は__」

 

ついに、彼女はその瞳を晒した__流れ落ちた雫は、頬を伝って金糸のような髪の毛を掠めるように消えていった。

「君は、それを受け入れたりすべきではないんだよ」

「…………………………わからない」

「分からないなんてこと、あるもんか。君は知っているはずだよ__僕はそれを、知っている。だって、僕は君と同じ場所に立って、君と同じ景色を見てきたんだから」

 

ギルガメッシュは首を振るった。

僕は彼女を起き上がらせる。

目を閉ざして、耳を塞げば傷つくことなんてないだろう。けれど、君はそれをしなかった

なんて高潔で、なんて嘆かわしい。

彼女は知るべきことを知り、為すべきことを為して__そして、何かを喪っていったのだ。

 

「暗黒を恐れるならば火を起こせばいい。獣を恐れるならば武器を持てばいい__独りであることを嫌うならば、君は誰でも良い、君という人間を望み愛する何者かを欲するべきだったんだよ」

「そんな人、いない……」

「いるさ。ほら____涙を拭いて」

 

ギルガメッシュは乱雑に目元を擦った。

 

「君の瞳には、いったい何が視えているんだい?」

「________エルキドゥ」

「…………なんだい?」

 

彼女は、ぐっと息を呑んだ。

それから力なく笑みを浮かべて、乾き切った声で僕に言った。

 

「あなたは本当に、ずるい人なのね」

 

__不意に、二人の影が重なって地面へと倒れこんで行った。

 

 

 

 

「うっわ、喧嘩売りに行きましたよ」

「勝算は____そんなことにまで思考を巡らせているようには見えないわね」

 

能面のままに、腕を振り上げた女のそれに合図されて__空から巨大な岩石が雲居を裂いて現われた(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 

「__隕石が軌道を変えて地球に降ってきた、という訳でもないですよね」

「というよりも、遥か上空で唐突に出来上がったようにも見えるわ」

「つーことは……なんでございましょう?」

「『異端調教』のスキル、だったかしら……」

「意思なきものに、意思を与えるスキル。つまり?」

「さあ? まあ、もしかしたら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

素材には、困っていないようだし。

「こわいこわい。何が琴線にふれたのかなんて私には、一切分かりませんけどね、あんなの相手にするのはごめんこうむります」

「私だって嫌よ」

 

カッとなってやってしまった、では済まないでしょうしね。

 

 

 

 

「オレは、どうすれば良い?」

 

「何もしなくて良い……少なくとも、今はまだ」

 

「だが、『アレ』をどうにかできるような者は、あの場にはいないように思えるが?」

 

「ふん。一度死合ったというのに、まさかわからないとは言うまいな、施しの英雄」

 

「__いや、今のは確かに失言だったな。許せ、言い直そう」

 

「『アレ』をどうにかするなるば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、お前はどう考えているのだ____英雄王」

「違いない……だが此処は私の箱庭だぞ?」

 

「____いや、成る程。そうか」

 

「私の領土が壊れて、消えて無くなってしまいったと言うならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

 

 

 

「________止めなさい、シャムハト」

 

空気を引き裂き、大地を揺るがすような砂塵の塊は、そんな静粛な言葉によってその気配を殺されてしまっていた。

「____あら?」

「私の巫女が、私の世界を壊そうとするなんて……赦されないわよ」

「あなたは……」

 

空から、降り立ったの少女を表すならば____純白、と。

いっそ、穢れをその身に受けるためだけに、そのような姿をしているのではないかと、勘繰りたくなるほどの不自然さであった。

不躾な世界の空白は、一歩一歩シャムハトに歩み寄っていく____師匠が、二槍を回転させた。俺は、身動ぎさえもすることが出来なかった。

 

「どうして来たんだい?」

「____ワタシ」

 

琥珀色の瞳が、此方を詰るように舐めとった。

けれど、興味無さげに髪をくるりくるりと弄びながら、エルキドゥの言葉に対して少女は言う。

 

「これでも、嘘は嫌いなのよ?」

「__今までの行い総てを、冗句の内に済ませるのは難しいと思うけれど?」

「ふふ、言うのね。でも、事実よ。ワタシはあの娘に、昔言ったの……この世界は、生きる人間の手によって滅ぼされる運命にあるんだって」

「それが?」

「だから、ね……だめでしょう? 『死人』の手で世界が終焉してしまったら()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「………………………はあ、これだからお前たちは」

少女は____イシュタルは、微笑みながら言う。

 

「だって、これでも私神様なんだもの」

 

彼女が、この特異点で俺たちが討ち果たすべき『敵』であった。

 

 

 

 

「私は憶えているがな、彼奴が幼い頃の私に__手を繋ぐだけでも子供が出来るから男とは手を繋ぐなよ、と言ったことを」

 

「…………………………いや、恐らくそれは本気だったのではないか?」

 

 

 





マテリアルが更新されました____的な。

流行りな感じで言うならば、神代のバーサーカー『シャムハト』みたいな感じになるのかなとか。

いばらちゃんを愛でるのに忙しくて構ってあげられなくてイシュタルちゃんごめんねー(棒

あと水着ガチャの10連で並み居る美少女を差し置いて現界しやがったウラドのバーサーカーお前だけは絶対に許さないからな(怒

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