「これとかはどうですか?最近TS物とか流行ってますよ」
「視点とか話自体は面白いけど、性転換させた意味が良くわかんないこれ。TS物とか僕あんまり好きじゃないんだよね」
たぶん良作とかはあるんだろうけど、人には好みってものがあってね。
読まず嫌いでごめんなさい。
「でも先生『プリティフェイス』とか好きっすよね?」
「あれ顔が美少女になったってだけで性別は男のままだしTSとは違うんじゃ?でも立場的には女になってるし通じるものはあるのか?よくわかんないな」
現在は原稿も上がり仕事後のマンガ談義中。
お相手はアシスタントその1 田中くん。アシスタントその2 秋野くんは机の下で眠っている。2人共年上だがまだ20代前半と比較的歳も近く、時々こうやって仕事後にだらだらしながら喋っている。
「先生ギャグ漫画好きですよね」
「うん。最近のだと『恋のキューピッド 焼野原塵』とか。個人的には5話のファミレスのやりとりが爆笑もの」
マジで面白いから読んだ事無い人は一度読んでみてくれ。
ギャグ漫画といえば先週の11月29日発売の週刊少年ジャンプ51号にて亜城木叶夢先生の読み切り『TEN』が載っていた。
吉田さん経由で聞いた話によると笑いを取り入れる為に描いたそうで、『疑探偵TRAP』でいきなり試すのは怖かったらしく読み切りを描いたらしい。
次号新年1号では亜城木先生の所でアシをしている高浜さんの読み切り『BBケンイチ』が掲載される。尚『Future Watch』の掲載予定は無いようだ、残念。しかし毎年思うけどなんで12月なのに新年1号なんだろ。何処かで出版業界の都合とか聞いた気もするけど、大した問題でもないから詳しくは調べてないんだよね。
最近の亜城木先生は絶好調なようでアンケート順位も上位をうろうろしている。
「僕もギャグは好きなんだけど描くとなるとなかなか難しいっすよね。単発なら色々思いつくんすけど、それを話しに絡めようとするとなかなか上手くいかなくて」
例外も居るだろうが、アシスタントの多くはマンガ家を目指している。うちのアシスタントもその例に漏れず開いた時間を見つけては自分の漫画を書いている。
「でもこの間見せてもらった『Final Future』上手くできてたと思うよ」
『Final Future』は絶望の未来を回避する為、未来から主人公がやってくるって感じの田中くんが描いている作品だ。何処かで見た事あるような設定だったが、内容は中々に面白かった。
「あれは上手く組み込めたと自分でも思ってました。友達にも見てもらったけど中々評判いいんですよ」
「見せる相手は選んだほうがいいですよ」
後ろから聞こえた声に振り返ると、秋野くんが体を起こし机の上に置いてあった眼鏡を掛けていた。
「ごめん、うるさかった?」
「いえ、そこまで寝るつもりは無かったので丁度良かったです」
「そうだ、秋野にはまだ見せてなかったっけ。良かったら見て感想聞かせてくんない?」
そう言って田中くんは近くに置いてあったカバンから原稿を取り出し秋野くんに差し出す。
「だからそういうのは軽々しく人に見せないほうが良いですよ」
「なんで?」
「なんでって……なんででしょう。ちょ、押し付けないでください!わかりました、わかりましたから。『Final Future』承認」
「それな。タイトル付けてから気付いたわ。秋野もそういうネタ好きだよな(笑)」
「まぁ好きだからこういう仕事してるんですけどね」
「んで、どう?」
「そうですね、これトランクス出てきませんけど大丈夫ですか?」
「出て来る方が問題だろ!」
「冗談です。まぁ未来から誰かが来る漫画なんて結構ありますしね。でも話の導入の所とかもうちょっと変えないとダメだと思いますよ」
「先生にも言われて直したんだけどまだダメかぁ。もういっそ設定変えようかな。未来から電波を受信したとか」
「有りですね。はっきり言って今のままの設定だとジャンプ読者には『ドラゴンボール』の印象が強すぎて…パクリと言われかねません」
「まぁ実際トランクス編見てこれ思いついたわけだし」
「似たような設定なら『ターミネーター』ですかね、漫画じゃないですけど。時間移動メインの漫画だとジャンプなら『タイムウォーカー零』ですかね」
「それ欲しいんだけど売ってねえんだよな」
「今度持ってきましょうか?」
「まじで!?サンキュー」
アシスタント共々売れっ子漫画家を目指して頑張ってるからみんな応援してくれよな!
最近までバクマン映画化してるの知らなくて先週DVD借りてきて視聴しました。
時間が限られているせいか色々省かれていたり原作とは少し違う展開でしたが、原作を知っていても楽しめる内容でした。
映像技術なども上手く使って動かないシーンでも飽きさせない作りだったり、逆にこんなふうに動かしちゃうんだと感心させられました。
作中の漫画なども原作と色々違いがあって見ていて楽しかったです。