~序章~
いつも通り、もう朝とは言えないような時間に俺は起床する。
多分、もうめぐみんは学校に行ったのだろう。
腹を空かして階下に下りるが、こめっこもあの黒猫も姿は見えなかった。
こめっこは多分どこかへ遊びに行ったのだろう。
猫は……。こめっこが持っていったのか?
いや、流石に外出先に猫なんか持って行かないだろう。
ということは……。
……おい、あいつ学校に猫持ってったりしてないだろうな。
まあ、俺には関係無いし、怒られるのはあいつだし、放っておこう。
それより俺はやりたいことがある。
それは、スキルの習得。
俺の冒険者カードに書いてある冒険者という職業は全スキルを習得できるらしい。
何か気付いた時には冒険者って書かれていて、どういうことかと思い里の人に聞くと、ステータスが低くて勝手にそうなったらしい。
……まあその話は置いといて!
それで俺の耳にある街の名前が入って来た。
―――――水と温泉の都アルカンレティア。
本当は紅魔族の方々にスキルを教えて欲しかったのだが、みんな魔法使い職なので魔法スキルしか教えてもらってない。
そこでアルカンレティアに行って色んな人にスキルを教えてもらって温泉にも入っちゃおーって考えだ。
今日には行きたいが、とりあえず武器屋があるらしいからそこに行ってから考えよう。
そして俺は少ない金と旅の準備をして出かけた。
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「―――――おうらっしゃい!お、紅魔の里に旅人なんてめずらしいな。なんだ、何が欲しい?異様に長い剣だとか、こんな形したヤツもあるぞ」
……?この里は観光客とか来ないのか?
「いや、そんなのより普通の武器をくれよ。……もっとこう……おすすめとかはねえのか?」
紅魔族のおすすめって言ったらまた変な武器すすめそうだが。
「おすすめねえ……。あ、おすすめじゃなくて貰ったものだったらあるぞ。なんでも、捨てようしたけど珍しいしもったいなかったから置いたヤツだけどな。……ほらこれ」
と言われて渡されたのは、先っぽは普通の剣だが、持ち手の部分が魔法の杖みたいになってて、なんだか痛い傘みたいだ。
「家は武器防具専門店だから杖がついてるのはあまり置きたくなかったが、剣にはアダマンタイトも入ってるし、杖にはマナタイトも使ってたから置かせてもらった。……あ、そうだ、ついでにこれもやるよ」
と、言われて渡されたのは一つのキューブみたいなもの。
「……これは?」
「ああ、これは使った相手の魔法抵抗力をほぼ0にするどっかの誰かさんが作った魔道具だよ」
ほう、結構凄いじゃないか。
「でも相手の魔法攻撃力が上がる欠品だから気を付けてな」
誰だそれを作った奴は。
「じゃあそれ下さい。いくらですか?」
「まいどー。確か値段は……。そうそう、30万エリスだったな」
…………。
―――――俺は異世界に来てまで土下座することになった。
その後、ツケという形でこの謎の剣と魔道具を手に入れた俺はさっきの武器鍛冶屋の人とちょっと話をして、アルカンレティアに旅立つ所だった。
「お、もう行くのか?」
「はい。今日はお世話になりました」
鍛冶屋の人からテレポートの詠唱を教えてもらい、俺はテレポートの詠唱を開始する。
「あ、そういえばもう終わったと思うがアルカンレティアの登録は終わったよな?登録しないとランダムテレポートになっちまうから気を付けろよ」
えっ。
そんな話聞いて無いんですが。
だが俺はもう詠唱が終わってて、そのまま『テレポート』と言って、俺は未知の世界へ飛び立った。