ちょっと早く書いたので変かもですが、最後まで見ていただければ幸いです。
「―――――で、あなたは遠いところから来て、ここに泊まったってことですね?」
「はい」
俺はあれからいつの間にか帰ってきた奥さんと旦那さんと共に居間に座っていた。
「そんなことより、キミは昨日どこで寝たんだね?」
いきなり何を言い出すんだこの人は。
俺は正直にこう言った。
「……この部屋ですが」
「なあああああああああああああああああああああ!」
「あなたああああああああああ!止めてっ!ちゃぶ台ひっくり返して壊すのは止めてください!」
俺は本当の事を言っただけなんですが。
「失礼、取り乱した。いやキミがわかりやすすぎる嘘を吐いたものだからね」
『嘘なんか吐いて無いんですが』と喉まで出かかった言葉を飲み込み、俺は話題を逸らそうと、今持ってるある物を取り出した。
「あのこれ。さっき買って来た食べ物ですが……」
と、俺が差し出した食べ物の袋を、ひょいざぶろーと奥さんが同時に掴んだ。
ひょいざぶろーと奥さんはしばしお互い怖い笑顔で見つめあい。
「それではカズマさん、私は今からこれを使って夕食を作ってきますので……風呂にでも入って来て下さい……」
「じゃあワシは魔道具でも作ってくる。……あ、カズマさんはこれからここに居てかまわんからな」
何だろう。
何だろうこの変わり様は。
と言うか風呂入っても着替えが無いんですがそれは。
……まあ、その時はその時で考えよう。
―――――結局あの後、俺は奥さんから貸してもらった紅魔族ローブってやつを着て、居間に戻り夕飯を食べていた。
さっきからひょいざぶろーが居間の真ん中で高いびきを上げているんだが正直うるさい。
俺が風呂に行く前は起きていたはずなのに、なんだか寝るのが早くないか?
そして食べ終わった俺は皿を片付けようとして台所に行こうとすると奥さんが。
「あ、カズマさん、今日は上で寝て下さい。居間は家の主人が使ってますし……」
「あ、はい……じゃあ俺は寝ますんで……」
と言って部屋に行こうとすると奥さんが後ろからついてくる。
俺が気になって後ろを振り返ると、奥さんが笑顔でぐいぐいと俺の背中を押してくる。
何故押してくるんだろう、と思っていると部屋に着いて部屋にそのまま押し込まれ。
「それではごゆっくりー……明日も私達は朝早くから居ませんので……」
と言われてドアを閉められた。
……ドアを閉められた後に『ロック』と聞こえたのはただの空耳だよな。うん。
ま、そんなこと考えないで寝るか……。
と、俺が布団に寝っ転がると。
「ミギャッ!」
と言う声と共に何か踏んだ感触が伝わってきた。
何事かと思い、感触がしたところを見ると。
「……こめっこが持って来た猫じゃねーか」
そう、あの黒猫だった。
あれ……?待てよ……何であの黒猫が居るんだ……?
と、思い隣を見ると、目を擦りながら起き上がるめぐみんだった。
「うるさいですね……。こんな時間に何を……って、カズマじゃないですか」
って言うか、何でめぐみんがここに居るんだよ。
「って言うか何でカズマがここに居るんですか!?しかも何で同じ布団に入ってるんですか!!」
「いーや、それはこっちのセリフだよ!何でここで寝てんだよ!!」
「それはここが私の部屋だからですよ!勝手に人の部屋に入っておいて何言ってるんですか!」
「え?俺はただここに奥さんに進められてきただけだけど?」
「そんな嘘吐かないで下さい!紅魔族随一の天才にそんな嘘通じませんよ!というわけで、私はもう寝ます!」
「嘘じゃねーよ!何が紅魔族随一の天才だよ、ガバガバじゃねーか!よくそんなんで紅魔族随一の天才を名乗れたもんだな!!」
「なっ……!紅魔族随一の天才の名を馬鹿にしましたね!」
「俺はほんとの事を言っただけだから何も悪くないんだよ。分かったら、いつまでも布団の中独占してないでそこをどけよ」
「どこが本当なんですか!と言うか、ここは私の家で部屋なんですから独占するなと言われる筋合いは無いはずです!」
「え?お前何言ってんだ?家は親のだし、俺はここで住むことを認められたんだからお前の部屋を使う権利はあるんだよ!!」
「最低です、最低ですよこの男!居候の分際で!」
「ふははははは!何とでも言うがいい!!そんなんで俺は屈しな……!と言うか押すなよ!俺を布団から追い出そうとすんなよ!」
「私がここで寝るんですからカズマはもう他の部屋で寝て下さい!じゃないとぶっ飛ばしますよ!?」
「お?お!?なんだやるのかこの男一人とすら寝れないお子ちゃま風情が!お子ちゃまの分際で大人に勝てるとでも思っているんですかねえええええええええ!!!!」
「この人自分を大人とか言い出しましたよ!私ともそれほど歳は変わらないはずなのに!」
「いやいや、俺にはお前がただの子供にしか見えないんだよ。んで、俺は大人。それが分かったんなら行った行った」
「そうですかそうですか!それなら一緒に寝れば解決ですね!ええ、一緒に寝ればいいですよ!」
「ああそうか。んじゃ、俺は先に寝るとするよ。おやすみー」
「あれっ!?」
何故か言い出しっぺのはずのめぐみんが逆に驚いている。
「すみません、こういう時って、『ばかっ、そんなことできるわけ無いだろ!?』とか言って譲るのではないでしょうか」
「何で俺がそんな流れに乗ってやんなきゃいけないんだよ。俺に常識とかは通用しないからな」
「はあ……。じゃあ私はもう他の部屋で寝ますよ……」
「あ、言い忘れてたけどお前の母ちゃんがドアに魔法で鍵かけていったぞ」
「私がこの男と寝ないって選択肢は無いんですか!?もう……!」
と、言いながら布団に入って来た。
って言うか結局布団入るのね……。
うわあ……。何か凄く疲れたわ……。
「これなら日本で引きニートやってた方良かったかもな……」
そう自然と声が漏れていた。
「……?カズマは引きこもりだったのですか?ああ、だからこんなにダメ人間なんですね」
「ダメ人間ゆーな!これには深い訳があってだな……」
「で、その訳は?」
「まあ、簡単に言うと俺には『大人になったら結婚しようね』って言ってくれた子が居て、その子が先輩のバイクの後ろに乗っていた所を見て何とも言えなくなった俺は……」
そこで俺は自分の口を片手で塞いだ。
やべえ、流されて洗いざらい吐いちまった……!
「流されないって言った後にこれですか……。そう言うことなら、ちょっとだけ慰めてあげてもいいですよ?」
「えっ。マジでいいの?じゃ早速……」
と言って、俺は両手を広げて指先でくいくいっと手招きした。
「……少しでも可哀想って思った私が馬鹿だったようです……」
「あれっ?これじゃないのかそうかーちがうのかー」
と、棒読みで言ってると、めぐみんが静かな寝息を立てていることに気付いた。
寝るの早えーなおい。
「明日こそ……。爆裂魔法を……。習得するん……。で……す……」
いやだから爆裂魔法って何なんだ。
窓から差す淡い月明かりの中。
俺の隣ではいつの間にか俺の手を握ってくれているめぐみんが静かに寝息を立てていて。
少し心地よいとも言えるこの中で俺は就寝した。