この素晴らしい紅魔族に祝福を!   作:西陣L

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頭のおかしい紅魔の里

目が覚めると、木の天井が見えてきた。

 

日本に戻ってきた、なんて言ってみたいが、ここは明らかに俺の知らない場所だった。

 

……ここはどこなんだ。

 

と、思っていると、一人の女子生徒が入って来た。

 

「先生、失礼します……って居ないんですか……あ、貴方は朝の人じゃないですか。目が覚めたんですね」

 

「朝の人……?俺朝何かしたっけ……」

 

「覚えていないんですか……貴方、朝廊下で倒れてたんですよ?」

 

あー、確かにそんな記憶が……

 

「見たところ、貴方紅魔族ではありませんよね?名前は何ですか?」

 

「ああ……俺はカズマ。佐藤和真だよ……んで、そう言うお前は?」

 

「ふっ、よくぞ聞いてくれました!」

 

そう言うと彼女はバサッとマントを翻し。

 

「我が名はめぐみん!紅魔族随一の天才にして、いつか爆裂魔法を操る者!!」

 

…………は?

え?この世界の第一住民がこれ……?

……まさかこの世界の人が全員こんな奴じゃないだろうな。

しかもめぐみんって何だ。

 

「紅魔族は知力がとても高いのです……おい、今私の名前について思った事を正直に言ってもらおう」

 

何だこの喧嘩っ早いロリっ娘は。

 

「いや…別に何も思ってないよ」

 

「おい、ちゃんと私の目を見て言ってもらおう」

 

やばい。棒読みで喋ってるのがバレた。

 

そんな下らないことを話してると、一人の保健の先生みたいな人が入って来た。

 

「あ、起きましたか、旅人さん。あれ?めぐみんまたサボりですか?」

 

「違います、違いますよ!いつもここに来るとサボりって決めつけないで下さい!あとサボってません!……今日ここに来たのは、鍵を閉め忘れ、そこの…ええと、カズマを校内に入れた犯人がウチの担任のぷっちんだってわかり、そのウチの担任が現在逃走中だから捕まえてほしいということでここに来たのですよ」

 

どういう状況だそれは。

そして何だぷっちんって。

 

「あいつかっ!」

 

……保健の先生はそう言って保健室を後にしましたとさ。

 

「はあ……それでは私は用が済んだので教室に戻ります……あ、もう大丈夫だったら勝手に出て良いと思いますよ」

 

「あ、ああ……ありがとな、……めぐみん」

 

俺がそう言い終わる頃にはめぐみんは保健室から出ていた。

 

……呼びにくいよな……めぐみんって。

いや、発音じゃなくて。

 

「まあ、ここで寝てても始まんないし、外出るかぁ……」

 

そう言って俺は部屋を後にした。

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

俺が廊下を歩いているとこんな声が聞こえてきた。

 

「出欠を取る。……あるえ!かいかい!さきべりー!」

 

そう担任に名前を呼ばれ、次々と生徒が返事をしていく。

 

……ここにはこんな名前の奴しかいないのか。

俺はそう思いながら教室をチラッと見ると出欠をとってる先生がロープで縛られていた。

 

……どうしてこうなった!

 

「めぐみん!」

 

「はい」

 

その返事を聞いた担任は満足そうに頷いている。

 

ああ。なるほど。

あの担任がぷっちんって奴だな。

んで、逃げられないようにロープで縛られたって訳か。

 

「よしよし、全員揃っているな。では……」

 

「せ、先生!」

 

名簿を閉じようとする担任に、確かめぐみんとかいう奴の隣に座る子が泣きそうな顔で手を上げた。

 

「私の名前が呼ばれてませんが……」

 

「ん?おおっ、すまん!そういや、一人だけ次のページに掛かっていたんだったな。悪い悪い!では……ゆんゆん!」

 

「は、はいっ!」

 

ゆんゆんと呼ばれた、セミロングの髪をリボンで束ねた優等生といった感じの子が少し赤い顔で返事をした。

 

ゆんゆんってマジで何なんだ。

しかもさっきはあるえとかも言ってたし。

 

とか、そういうことを考えながら俺は学校を出て。

 

……まあ、何にせよ、俺の異世界暮らしが始まったわけだ!

 

 

 

 

 

 

 

~2時間後~

    

「いきなり躓いた」

 

俺は太陽が上の方に上がる頃、呆然と呟いた。

 

はあ……ここ宿すら無いのかよ……

 

そう、俺は2時間の間聞き込みしてわかったことが、ここは紅魔の里というところで、観光客がほぼいないらしく、そのため宿も無い。まあ、俺無一文だし宿があったとしても借りられないけども!

後、里の外に居るモンスターは強くて、駆け出し冒険者にとってはほぼ100%勝てないらしい。

 

「もっと情報収集した方がいいか……」

 

そう言って俺は歩き出した。

 

 

 

 

 

 

「へいらっしゃい!我が名はちぇけら!アークウィザードにして上級魔法を操る者、紅魔族随一の服屋の店主!あれ?あんた紅魔族じゃないね?何しに来たんだい?」

 

「あ、俺は佐藤和真と申します……あの、冒険者になりたいのですが、冒険者カードって物が必要らしいんですよね。んで、冒険者カードってどこで手に入れるか聞きたいのですが……」

 

「ああ、君冒険者になりたいんだね。確か冒険者カードを作る魔道具があったはず……」

 

「あるんですか!?」

 

「うん、あるよ。確かこの辺に……あったあった。じゃあこの上に手をかざしてくれ。」

 

「こうですか?」

 

そう言って俺は手をかざすと。

魔道具の針の先端から光が出て、カードに字を刻んだ。

 

「よし、完成したぞ兄ちゃん。どれも普通だな……知力がそこそこ高い以外には……」

 

どれも普通って。

 

「他には……おおっ!幸運がかなり高いじゃねえか。なあ、俺と一緒に服屋でもやんねえか?」

 

いやいや、服屋って。

 

「はああああああああああああああああああっっっっっ!!!!!????」

 

「えっ!?えっ!?どうしたんですかっ!?」

 

何事だと言わんばかりに俺が聞くと。

 

「す……スキルポイント200って何だこれは……多くても20くらいなのに……」

 

あー。そういえば言ってたなぁ……自称女神が「スキルポイント200にしてあげるからー」って。

 

……スキルポイントって。

もっと武器とか才能のチートがよかったなあ……

 

「な、なあ兄ちゃん?ここで今日一日バイトしてみねえか?」

 

「はい?」

 

「あんたの幸運の高さだとかなり儲かると思うんだ。勿論、バイト代は出るし、結果がよけりゃあお礼として魔法も教えてやる」

 

魔法か。

異世界と言えば魔法だよな?

しかも金ももらえるって一石二鳥じゃねえか!

 

「はい!じゃあやらせて頂きます!」

 

 

 

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

 

「今日はありがとな!新入り!」

 

そんな声を背に受けながら俺は店を出た。

 

……正直、こんな稼げるとは思わなかった。

 

4時間で1万6000エリス。

1エリス何円なのかわからないが、時給4000エリスと言うことになる。

 

ついでに上級魔法と中級魔法、あとテレポートという魔法を教えてもらった。

今すぐ魔法を使いたい……ところだが、魔法には詠唱が必要らしい。

詠唱を覚えて魔法を使う前に唱えなければ魔法は使えないらしい。

 

「しっかしこの雨は何なんだ……」

 

そう、今は普通の雨より強いくらいに収まったが、1時間前くらいは土砂降りだった。

 

ちぇけらさんは「多分どっかのバカが雨と雷の魔法を使ったんだろう」って言ってたんだが。

まあ、おかげで「土砂降りなのにこんなに稼げたのは初めてだ!」という事になってバイト代弾んだから良いんですけどね。

 

「とりあえず何か食い物買いにいくか……」

 

そういえば朝から何も食ってなかったんだよな……

早くどっか行って食おう。

 

そして俺はちぇけらさんから借りた傘を差して雨の降る道を歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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