目を開けるとそこはだだっ広い草原でした。
「ここが異世界か……」
初期転生位置が草原かよ。
普通は街とか村とかが基本じゃないのか。
「おい自称女神、ここはど……こ………ってどこ行ったんだよ!!あの自称女神は!?」
普通は勇者を導いてくれるはずの女神がいねえ。
あたりを見回しても女神はいなかった。
だが、代わりに100メートルほど離れた場所にぽつんと立つ人影がみえた。
「しょうがない……あの人に聞くか……」
そして俺はその人影に近づいていき。
その人影が人ではない事に気が付いた。
さらにあの生物もこちらに気付いたようで、こっちに近づいてきた。
その生物は、花と耳は豚だが、顔の造形は人に近かった。
俺は少しこれとは違うが、似たようなものを知っていた。
オーク。
豚の頭を持つ二足歩行型のモンスターで、ゲームの類ではコボルトやゴブリンと並ぶ、大変メジャーな雑魚モンスター。
旅人から奪ったのだろうか、一丁前に服まで着ていた。
そして、特徴的なのは髪がある事。
ザンバラな髪をした、緑色の肌を持つオークは、パッと見には本当に人に近い姿をしている。
「こんにちは!ねえ、男前なお兄さん。あたしと良い事しないかい?」
えっと。
どういうことでしょうか。
とりあえず、俺は当然の事ながら。
「お断りします」
「あらそう、残念ね。あたしは合意の上での方が良かったんだけど」
……合意の上とか何言ってやがるんだコイツは。
「ここはあたし達オークの縄張り。通ったオスは逃がさない。そうねえ……。三日。三日ほどウチの集落に来て頂戴?この世の天国を味わわせてあげる。まあ、捕まえた男達は本当に天国に行っちゃうんだけどね!」
そう言いながらオークが飛び掛かってきた!
「ちょっ!?待っ……!ふあああああああああああああ!」
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お父さん、お母さん。
僕は、日本で死んでも異世界に転生して元気にやってます。
でも、そんなことより、
助けて下さい。
助けてくださいたすけてくださいタスケテクダサイ。
俺はオークから半泣き……いや、ガチ泣きで逃げていた。
ついでに言うと、絶叫もしながら。
「ああああああああああああああああああああっっっっっっ!!!!!!!!!」
怖い恐いこわい。
日本に帰りたい。
帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい。
どうしてこんな事になってしまったのだろう。
ああ、そうか。これは夢か。
目が覚めたらいつも通り学校サボって家でネトゲするんだ。
ああ………足が痛い。脇腹も痛い。
もう俺は、泣くのを止め、考えるのを止め、自分でも走っているのかどうかすらわかっていない。
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俺が少しだけ意識を取り戻した頃には、もう夜だった。
俺は歪む視界の中、トラウマを植え付けられ、自分が夜森の中を歩いている事も知らずに
いた。
そして、自分の視界が少しずつ明るくなっていくのがわかった。
どうやら森を抜けたらしい。
「つ……着いた……」
着いた場所は村だった。
俺は何とか重い足を引きずってどこか泊まる場所はないかと思い一つの建物を見つけ。
そこで意識を失った。