東方月兎騙   作:水代

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おひさです。最後に投稿してからもう二週間くらいになるんですかねえ。
実は別の二次創作が頭から離れなくて、でも新連載するにももう連載いっぱいだし。なので書き溜めということで書いてました。ちなみに原作は問題児。
あとメガテンとかメガテンとかメガテンとかやってました、ネトゲで。
今イベントやってて強い悪魔と戦えるので行ったら一回ガチでやって二時間以上かかるキチガイ仕様だった。


第十話 ウサギ兎に会う

 

 

 

 稗田様とやらのお屋敷は里で一番大きかったのですぐに分かった。

 尋ねてみると割りとあっさり通された…………書庫に。

 聞くに、肝心の稗田様とやらは居ないらしい。

 稗田様の血縁はいるらしいが、稗田様と呼ばれるのは阿礼乙女と言う初代稗田阿礼の転生体だけらしい。

 意味が分からない? 大丈夫、私も正直分からない。

 と言うか、そこまで興味が無い。

 私が今置かれている現状を理解するのに、稗田家の事情は関係が無い。

 要するに、説明してくれる人間がいないから、書庫で自分で調べてくれ、と言うことなのだろう。

 

 後で知ることになるが、この稗田家は里で最も多くの史料が残された場所であり、あっさり通された私は運が良かったのだろう。

 やはり最初に人に化けた(化けたと言うか認識を誤魔化しただけだが)のは正解だったのだろう。

 

 まあそれはともかく。

 稗田家にあった史料で、幻想郷と言う世界の成り立ちはだいたい理解した。

 それと同時に確信を持つ。

 

 ここにあのお方はいらっしゃる。

 

 結界によって外から隔離された世界。

 この箱庭の世界は月からですら観測されない安全圏だ。

 どんなバカでもここを選ぶ。

 どれほど賢しい者でもここ以外は選ばない。

 と言うか、選べない。

 この国に…………日本に居る限り、ここ以外ではどうやっても見つかる。

 にも拘らず、豊姫様はこの国に居ると言い、にも関わらず…………例え綿月家が積極的で無かったにしろ、月の民たちはあの方たちを見つけることができていない。

 何故? 知らないからだ。月の民たちは。この箱庭の存在を。

 

 だが気になることがある。

 

 この箱庭の中は安全だ。

 来たばかりの私ですらそれが分かる。

 なのに、里で聞いた限りではあのお方たちの存在は誰にも知られていない。

 豊姫様たちの話を聞く限りでは、普通に過ごしているだけで十分話題になりそうな方々だというのに。

 どういうことか? 考えてみる。

 例えば、この箱庭にいない可能性。

 だがそれは無いだろう、と先ほど却下したばかり。

 だとするなら、箱庭にいるにも関わらず、他者との関わりを避ける理由は何だろうか?

 例えば、里の人間たちに顔を見せられない事情がある、とか。

 だが、里の人間たちに聞いた限りでは顔も知らない名前を知らない相手だ。一体どんな事情があればそんなことになる?

 例えば、何らかの事情で家から出られない、とか?

 これは案外あるかもしれない、この魔窟のような箱庭でなら何が起こっても不思議ではない。

 だとするなら、今からそこに向かわなければならない私は何らかの準備をしなければならない。

 けれど、問題はそれがどこか、だ。

 稗田の家で見た史料を読む限りでは、そんなところはどこにも………………。

 

「あ、あった」

 

 思わず声に出してしまう。

 そう、あった。思い出した。

 一つだけそれっぽいものが。

 

 

 迷いの竹林。

 

 

 一度入れば同じ景色に方向感覚を失い、迷って出られなくなった上に妖怪の餌となる危険地帯。

 隠れるにはうってつけ、さらに入ったら迷って出れない。

 先の考えのどちらにも当てはまる。可能性としては正直かなり高い。

 と言うか、稗田家の史料を信じるなら、この竹林かあとは魔法の森と呼ばれる場所以外候補が見当たらない。

 だが魔法の森は危険な胞子が飛び交う、常人には住みづらい場所と書かれていた。

 と言うかあまり人の住むようなところではないようだ。

 だからこそ、と言う考えもあるが、確率は低いように思える。

 単純に大きさの問題だが、竹林のほうが遥かに規模が大きい。だから確率的には竹林ではないだろうか。

 と言っても、これらの推測は全部、稗田家の史料が正しければ、と言う前提でかつ、記入漏れ、つまり史料に無かった場所が無ければ、と言う前提が付く。

 だが他の情報も無いし、聞いた話では里で一番情報があるのは稗田家らしい。

 つまり里でこれ以上の情報が出てきそうに無いのだから、今ある情報で推測を立てる。

 

「…………行って見るしかないわね」

 

 まあ、ああだこうだと論じているより実際行って見たほうが早い。

 迷いの竹林などと言っているが、それは普通に歩けばであって、飛べば迷うことも無い。

 最悪能力を使えば人里の方向くらいわかるし、方角を間違えることも無いだろう。

 数秒思考し、問題なさそうだと結論付けると、里から離れたところまで歩き、そこから飛んだ。

 

 

 

 

 竹、竹、竹、竹。

 左右どこを見渡しても竹だらけ。

 なるほど、これを視覚頼りに歩けば、それは迷いもするだろうと思わず納得してしまう壮大な竹林。

 そしてその竹林の中。

 私は穴に落ちていた。

「あ、ありのまま今起こったことを」

 話す必要も無くそのまま。穴に落ちた。

「痛いわね…………誰よ、こんなところに穴なんて掘ったの」

 しかも丁寧に隠されているところを見ると、わざとだ。

 けれど、こんな竹林の奥に落とし穴?

 もしかして動物用の罠か、とも思ったがそれにしては浅い。

 そんなことを考えていると。

 

「おや、何かかかったと思ったら、珍しい(オナカマ)がいるじゃない」

 

 穴の上から声が振ってくる。

 顔を上げると一人の少女がそこにいた。

 何故こんなところに? とそう思うよりも先に視線を釘付けにしたのは少女の頭頂部。

 そこに自身と同じ、兎の耳があった。

 

「月兎…………いや、そんな感じじゃない…………でも」

 

 戸惑う。何故地上に自身と同じ耳……否、同じと言うには彼女の耳は短いのだが……を持つ存在がいるのか。

 玉兎ではない。雰囲気が完全に地上のそれだ。月の住人特有の雰囲気が微塵も無い。

 だからこそ戸惑うのだが、そんな私の様子を見た少女が首を傾げ。

「いつまでそこにいるつもり?」

 そう言われ、ハッとなって穴から出る。落ちた時に打ったお尻がちょっと痛い。

 穴から出て、改めて少女を見る。

 うん、服装も耳も玉兎のソレじゃない。だとすると、地上の妖怪兎、と言ったところだろうか?

 少なくとも私の知っている地上にこんな兎はいなかった。

「あんた誰?」

「…………レイセン」

「そ、あたしは因幡てゐ。この竹林の主さ」

 私の素っ気無い答えを気にした様子も無く少女……てゐは快活に言う。

「あなたは…………妖怪なの?」

 そんな私の疑問に対し、けれどてゐは首を傾げ。

「当たり前じゃん。レイセンは違うの? あたしらの仲間(ドウゾク)でしょ?」

 そう返され、一瞬答えに詰まる。それから数秒考え、答えを返す。

「私は…………月の兎よ」

「月……………………もしかして姫たちの仲間?」

 姫、と言う言葉。そして月と言う言葉に対して使ったと言う事実。

 つまりそこから導き出される答えは。

「ここにいるのね? 月の姫君様…………輝夜様が」

 それと…………地上で最も賢しき方、八意××様も。

 

 そんな私の問いに。

 

 てゐが…………頷いた。

 

 




結局なんで投稿が遅れたかと言うと、稗田の屋敷に行ってから先の展開がまるで浮かばなかったんですよねえ。
で、いい加減進めないと、と思って今日久々に兎開いて書き始め。
「もう稗田の屋敷の話いいか。どうせ40年代はまだ阿求いねえし」
ってことでさくさく飛ばし、いい加減話進めたいから竹林に飛ばしたら、なんとか話が進みました。

いよいよ、いよいよ次話で永遠亭に辿り着くと思います。
ここまで長かったと言わざるを得ない。

因みに永琳の名前ですけど、レイセンは月の兎なので、正しい発音で呼べる、と言う設定にしてます。実際はどうか知らんけど。
あとてゐの口調は原作に台詞が無いので、 儚月抄とウドン月抄を参考にしました。
ウドン月抄楽しいからついつい読みふけってこんな時間だけどwww

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