お久しぶりです。
しばらく忙しかったので遅れてしまいました。
今後も時間を見つけて書いてはいますので少しずつでも投稿していきたいと思います。
どこまでも続く青い空、それに伴う様に深く輝く蒼海。人生で二度目となる海上滑走を経験している。しかし今回は女の子に抱きかかえられた状態ではなく小舟に乗っている状態だ。それを縄で艦娘が引っ張り目的地に向かっている。引っ張っているのは潮であり俺は荷物と一緒に船と一体化している。それもすべてはこの仕事を円滑に進めるためにも俺は潮に迷惑をかけず空気のように振る舞えばいいのだ。
それにしても本を読もうにも水しぶきでまともに本も読めず、景色を楽しもうにも水平線を眺めるのにもそろそろ飽きが来ていた。これは非常にまずい……。まだ出発して2時間ほどしか経っていない。目的地まで約6時間程の予定であるためまだ三分の一しか進んでいないのだ。深海棲艦のいない安全海域を進んでこれである。皇さん出張先地味に遠くないですかね……。
お互い無言でいるが時は進む。することもないので申し訳ないとは思うが潮の後姿を見ながら何故見えないのかをひたすらに考えていた。何がって? ヒラヒラしてるものは一つしかないでしょ。
そんな事をしていると5時間程経過しており目的地にもそろそろ到着するのではないかと期待している。
「そろそろ到着するので準備して下さい」
期待通り到着が近づいている事を潮が教えてくれる。気付かなかったが進行方向に島らしきものが見えてきている。漸く到着か……。そう考えると緊張してきたな、ここは気合い入れていきますか。自分の頬を叩き気合いを入れる。
そんな突拍子もない事をするから潮に不思議そうな顔をされた。自分もそんなことしている奴いたら何だこいつ……って顔で見るもんな。潮、お前は間違っていないぞ。ふざけてないで降りる準備しよう。
☆☆☆☆☆
彼が執務室から出てから皇提督は話を再開した。
「潮、君はこの数日彼を見てどう感じた?」
どう感じた。白描さんは1週間前ほど前から提督の命令で付いている人だ。提督からの資料では異邦人である事が書いてあったがその様な雰囲気は見られなかった。それに、医務室でダラダラする事もなく妖精さんの所で手伝いをしているため遠目でしか彼を見る事が出来ていない。しかし、妖精さんとの関わりは良好で私に対しても丁寧に接してくれている。
「聞いていた情報よりも良い方で異邦人の様な発言や行動は見られていませんでした」
私の発言を聞き提督は難しい顔をしている。何か気に障ってしまっただろうか……。
「そうか、やはり彼は異邦人であるが異邦人ではないか。それの確実性も今回の鎮守府に向かう事で分かることだろう。異邦人に対して好意的ではないのは知っているがくれぐれも彼の事を頼んだよ」
肯定の意を伝え私も部屋に戻り遠征の準備を行う。異邦人には未だに拒否感があるが彼はそれが余り感じないので今回の遠征では少しでも前に進めるだろうか。
「そんなに思い詰めた顔して大丈夫なの?」
後ろに立つ曙が心配そうに見ていた。
「明日から遠征で白描さんと2人で行くのがね……。少し不安なのかな」
正直怖い。またあの時の様な事があるかと思うとぞっとする。けれど前に進みたいって気持ちもあり私はどうしたいのだろうか。
「アイツと2人でね……。潮が不安なのも分かるよ、いきなり来た異邦人だもんね。そりや身構えるだろうし不安だよね。でもきっと潮はあの時を乗り越えて前に進みたいって思っているんでしょ? だったら私は応援するし協力だってするよ。だからアイツが変な事してきたらいつでも言ってよ、ぶっ飛ばしてやるから、ね」
こんなにも思ってくれている人がいるんだ。やっぱり私は進まないと。
「ありがとう。私頑張ってみるね」
少し目元が熱いが笑顔で答えられたはずだ。
時は進み。
彼の乗った船を引っ張り海上を移動する。安全な海域を進んでいるため敵との会敵は未だにない。2人での遠征のため何か話そうにも彼とは殆ど話したことがないため無言のまま時間は進んでいく。彼の方をチラリと見ると遠い目をして水平線を眺めていた。その時の顔は少し寂しそうな楽しそうな顔をしていた。
時は進み目的にまでもうすぐ着くため彼に伝える。するとパンッと音がした。彼を見ると頬の所が赤くなっており自分で叩いたのだと分かる。ここで私は彼は少し不思議な人だと思った。