ガタンッドンッと物音が鳴り誰か来たのかと思い寝惚けながら物音のあった隣の部屋への扉を開いた。
「すみません、自分今日は日勤でしたっけ? 変な夢見ちゃって曜日感覚おかしくなっちゃって……て……」
扉の先には大きな物音をたてたことで慌てている4人の少女が居た。何故一人は倒れているんだ……。
「はわわ大変なのです! 起こしてしまったのです」
「響、大丈夫? 生きてるかしら?」
「……ハラショー。問題ない」
「暁は一流のレディーだから静かに行動できていたわ!」
……なんと言えばいいのだろうか。一人はこちらの心配をし一人は転んでおりそれを心配するもう一人。あと一人に関してはよく分からんな。一流のレディーの定義を求むぞ。
「それで、君たちは何か用があるのかい?」
「提督から食堂への案内を任されたのです」
「そうだったのか。案内の前に転んだそこの子はちょっと見せてもらえるかな?」
ロシア語を話す彼女の近くにしゃがみよく診ると額が少し赤く腫れていた。恐らく先ほどの物音は彼女が頭をぶつけた音なのだろう。
「血は出ていないようだし大丈夫そうだね。他にぶつけた所はないかな?」
コクンと頷く彼女を見て安心する。そして小さい女の子が相手だったためか自然と彼女の頭を撫でていた。
「おっと悪い、ついな。さて案内をお願いしようか」
痛い視線を感じ慌てて彼女の頭から手を離し、案内をお願いする。決して今の雰囲気を逃げたいからではないぞ。誰に言い訳してるんだろう……。
その後お互いの自己紹介を行い部屋を出て少女4人に案内をされているのだが……。一つ問題が発生している。4人のうち3人――――暁、雷、電は俺の前を歩いており通る時に見える部屋や建物の説明をしてくれている。後の一人と言えば……。
「あの響さん、そろそろ降りませんかね? 頭ぶつけたら危ないですよ」
「食堂までの間でいい、もう少し頼む」
「……。頭上には注意してくださいね」
そうなぜか俺に肩車されている。部屋を出た際にしゃがんでくれと言われよく分からずしゃがむと後ろからいきなり乗られた。無理に降ろすのも危ないと判断し現状維持のまま今に至る。前を歩く3人の目線が痛いと考えていたがどちらかというと羨ましそうな目をしていたが気にせず案内を受ける。
その後食堂に到着すると3人は先に扉をガララと開け中に入っていった。取り敢えず響に降りてもらうか。
「響、着いたんだが降ろすぞ」
「もう少しダメだろうか?」
「いやそんなこと言われても響もご飯食べるんだろ」
「……ふむ。確かにそうだね。それじゃあ、降ろしてくれないか」
響を落とさないようにしゃがむとスッと肩から降りる。少し間があったのが気になったがまぁいい。
「さあこっちだ」
響の後に続き食堂に入る。大きな食堂には時間があっていないためか彼女たち以外の姿は見えない。本来はもっと活気があるんだろうなと思いながら食堂の様子を考える。すると厨房があるであろう奥から一人の女性が出てきた。
「あら、貴方が提督の言っていた方ですね。私は間宮、厨房と裏にある甘味処を担当しているわ。よろしくね」
「初めまして白猫(はくびょう)と言います。今後ともよろしくお願いします」
「はい。お食事は既に出来ていますので少々お待ちください。貴方達少し手伝ってもらえるかしら?」
「「「「はーい」」」」
間宮さんと4人は厨房に入り、俺は食堂で一人になってしまった。立ったままもおかしいだろうから、端の方にでも座って待っていようかな。待っている間にふと考える。眠りから覚めても元の世界というわけでは無かったことからこれは夢でないと改めて実感する。俺が今ここですることは職業柄やっていたことを皇さんに行う事。でもそれだけだと命を救ってもらった事、ここで衣食住の確保の恩には届かないだろう。だったら他に自分にできることを皇さんに聞いてみるか。
上着をチョンチョンと引かれ何事かとそちらを見ると響が居た。机を指差しておりそちらに目を向けるとカレーが置かれていた。ふむ、朝カレーとは面白い。なぜ周りを見ると自分の席があるためか暁達は俺とは別の列の机に座っていた。何か距離を置かれている様な気がして心に刺さるな……。
「ありがとう響」
「気にしないでくれ。それと少し失礼するよ」
そう言うと響は俺の膝の上に座る。何でカレーが2つあったんだろうなと疑問に思っていたがまさかこのためとはな。よく考えると俺かなり食べづらいんだがな……。まぁいいか妹が出来たと思って役得と思うかな。
☆☆☆☆☆
食堂まで案内し終え朝食を食べると白猫さんが提督の場所まで案内を頼まれ彼を連れて行く。そこまで連れて行くと解散となった。
「所で響、アンタやたらと彼に懐いていたみたいだけど……」
「あれかい? 特にこれといってはないよ。彼の近くに居ると心地が良かったからね、それだけだよ」
「響ちゃんだいたんなのです」
「暁は分かっていたわ」
そう彼に頭を撫でられてから不思議と心が安らいだのだ。今までこんなに心が落ち着いたことは無かったかな。今日は良い日になりそうだと思い姉妹達の後ろをついて行く。
☆☆☆☆☆
朝食後、彼女達に案内してもらい皇提督の元へ向かった。
「おはよう。それで話と言うのは何だい?」
「あの、色々考えてみて思ったんですけど。私に手伝う事とかありませんか? 雑用でも良いので」
「仕事の量が少ないのではと思っているのなら気にしなくてもいいのだけどな……。少し待ってくれ」
すると皇提督は無線機を使い何処かへ連絡を始めた。誰か呼んでいるのだろうか?
「大丈夫だそうだ。すぐに来るそうだから待っていようか」
「ヨンダカ」
すると可愛い声が提督の方から聞こえ、机をよく見ると小さな人がいた。
「もう来たとは、いやはや毎度驚かせられるな君たちには」
「ソレデ コイツカ?」
「ああ、彼がお願いしたいそうだ」
「ソウカ ナラバ ヨロシクナ」
「あ、はい。こちらこそお願いします」
この小さい人こそ妖精さんという謎生物らしい。こう見えて艦娘の修繕や謎技術を生かして敵に対抗できる武器などを創れる。というのが部屋にあった資料に書かれていたことだ。
「アシタカラ コウショウニ キテクレ シゴトハ ソコデ セツメイスル」
「分かりました。ではお願いします」
グッとサムズアップすると妖精さんの姿が消えていた。
「これで問題は解決かい? あまり厳しい事はさせないと思うから気楽に行ってくれていいよ」
「何から何まですみません。なんか我儘ばかりで……」
「問題ないですよ。その分の働きを期待してますから」
イケメンスマイルを自然としてくるとは、流石は皇さんだな。これが経験の差なのか……。そんなことよりも取り敢えずはここで頑張っていこう。
感謝の意を伝え部屋を出ると自分の部屋はどの方向にあったかなと記憶を辿りながら足を進めた。案内呼んでもらえばよかったかな、そろそろ道を覚えないとか……。などと考えながら歩みを進めた。