Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
以上
ISとなったファートゥムからは圧倒的なプレッシャーが放たれている。並の実力者であれば、間違いなく発狂してしまうだろう。
「ぐ・・・何ですの、この重圧」
「圧倒的な負の感情・・・?」
「違うよ、これは殺気だ」
「この私が怯えているのか?」
「負けない・・負けられないよ!」
「ディス・レヴとは違う性質の負念か?」
代表候補生達は己を奮い立たせ、ペルフェクティオと対峙する。だが、ペルフェクティオは試すと言わんばかりに男女の仮面の両目と口から、砲口を出現させる
「これは、我の力の一つの顕れ・・・」
テネブラエを展開したファートゥムは黒いエネルギーの弾を連射してくる。次第に連射速度が早くなり回避が厳しくなっていく。
「「「ああああああっ!?」」」」
「「ぐあああああ!」」
ファートゥムから放たれているエネルギーは一発一発が負の念を糧にしたものだ。それだけに威力は高い。
「こ、これが破滅の力・・・」
「まだ、だ!」
三機のラフトクランズはオルゴンライフルによる射撃、射撃に特化したISは援護を行い、鈴はブラキウム・ショットで攻撃していく。
「無駄だ……我は、死と滅びを糧として存在するが故に。我を滅ぼすことは出来ぬ」
「全く効いてない!?」
「それに・・・ううっ!?」
「どうした?みんな!?」
「機体がうまく動かない・・・!」
機体の能力が低下しているのはファートゥムの
名状しがたい何かに見られているような感覚によって、意志を持つと言われるISコアが狂気に染まりつつあるのだ。
「ぐ・・・うおおおおおお!」
オルゴンソードで向かっていったのは政征であった。横薙ぎに一撃を加えてが装甲を傷つけただけでオルゴナイトの刀身が砕けた。
「オルゴナイトが砕けた!?」
「受け入れよ、滅びんが為に生まれた者達よ!」
ファートゥムが上空に上がり、腹部にある口のような部分から黒い粘液のような物が発射され、全員がそれを浴びてしまい爆発する。
「うああああああ!」
「きゃああああああああああ!?」
ウルティムムと表示された武装はまるで大津波に押し流すかのように全員を飲み込んだ。この攻撃によって最も被害を受けたのは千冬と束であった。
「あ・・ああ」怨嗟
「う・・ぐうう」
千冬は破滅から受けたトラウマが蘇り、束は初めての恐怖に動けなくなってしまっている。
「絶望と恐怖の闇・・・」
ファートゥムが黒い霧の中に隠れ、姿を隠してしまう。ハイパーセンサー何も感知していないが、楯無の後ろにそれは現れた。
「!!楯無さん、後ろ!!」
「えっ!?」
「これは死をもたらすもの!」
瞬間、絶望の男面と呼ばれている仮面の口部からドリルのような物が楯無を貫き回転した。オルクステレブラーと表示されたそれは容赦のない一撃だ。
「あああああっ!」
シールドエネルギーが0となり、機体が解除され投げ出された。急いで簪が安全地帯になりそうな場所へ運び、千冬と束も運ばれた。
「うう・・・」
「よくもお姉ちゃんを!」
「簪さん、怒りに身を任せてはダメだ。奴に力を与えてしまう!」
「お前たちの焦燥、周章を感じるぞ。それもまた、我の力となる……」
簪の怒りの感情すら破滅の王は糧としてしまっている。それだけではなく、徐々に破滅へと飲まれてきているのだ。
「滅びよ、人と名乗る生命体よ。絶望の男面、恐怖の女面・・・・」
ファートゥムから両腕が分離し、戦闘可能なメンバー全員に照準を合わせた。
「轟哭!」
男女を模した二つの顔は血涙を流しつつ、怨嗟の声を上げそれが超音波のように戦闘メンバーへと響く。
「うああああああ!!」
「混沌へ堕ちよ!享笑!!」
今度は嘲るような声によって戦闘メンバー全員が暴風の如き、怨念の塊によって閉じ込められてしまう。
「な・・なんだよ!これ」
「抜け出せない!?」
ファートゥムがゆっくりと黒い塊に近づき、憑依したカロ=ランの肉体で内部から出てくると、その塊の上へと乗った。
「ふうっ・・・・はぁっ・・・・」
その目からは狂気とも何とも言えない光が宿り、塊に手を突っ込む。
「我は無限、我は混沌・・・・。全てを飲み込み・・・・そして!!
黒い塊に閉じ込められた負の念を解放するかのように引き裂いた。
「力と成して無へと還すもの!!」
言葉にならないほどの衝撃が皆を襲い、全員がエネルギーシールドを九割近くを削られている。それだけ破滅の王の必殺武装、エデッセサペレが強力なのを物語っていた。
「まもなく、我が本体が現出する。終焉の時だ。お前達に与えよう……これまでに我が糧となった、亡者達の怨念を。絶望の果てに滅びを迎え……我が糧となれ、人という名の生命体よ」
ペルフェクティオは自らの糧とした怨念を一気に開放した。それはかつて、カロ=ランが千冬に対して行ったものと一緒のものだ。
「う・・ああああ!これ・・・は・・・!」
「ぐ・・・身体が・・・震える!?」
「あ・・助けてください・・・嫌・・・嫌ぁ!!」
「か・・勝てない・・・・の?私達・・・・・では・・・!?」
「くううう・・・動いて・・動いてよおお」
「ふざ・・ける・・・な・・・がああ」
「怖い・・怖いよおお!(うう・・・私も割りかし・・・マズイ)」
「政・・・征・・・助け・・・て!」
それぞれが絶望にうちひしがられる中、それぞれの機体が辿った世界での光が溢れた。
◇
『負けないで、セシリアさん!』
「比瑪さん?比瑪さんですの!?」
『アンタはやれるはずだ。まだ希望は潰えちゃいない』
「紗羅さん!?」
『アンタの希望という名の野生をアイツに見せてやりな!』
『あの子達もセシリアさんともう一度会いたいって、だからもう一度立ち上がって!』
「ええ、やってやりますわ!」
「勝てないの?私は・・・」
『馬鹿者!!』
『そんな心構えで、よく流派東方不敗を修め、俺達を越えるなどと言えたものだな?鈴』
「マスターアジアさん!?それにドモンさんまで!」
『お前にはまだ龍の炎が残っているはずだ。命の力の炎が』
「シュバルツさんも!」
『お前が信頼する仲間達と共にシャッフル奥義を使え、今なら出来るはずだ!』
「はい!!」
「も、もうボクには・・・」
『諦めてどうするの?私を越えたいんでしょ?』
「カ、カルヴィナ義姉さん!?」
『あの時に見せた不屈はウソだったの?』
「そ、それは」
『立ち上がって戦いな、絶望の中の希望を見出す事が出来るはずだぞ』
「マサ=ユキまで!?」
『諦めが悪いのが貴女でしょ?シャル』
『行け、この世界を破滅から救ってみせな』
「うん!」
「ぐ・・私はこんなにも」
『弱かったなんて言うなよ?ラウラ』
「え?この声は・・・シンヤさん?」
『この僕に勝っておいて勝手に敗北するなよ。タカヤ兄さんも幻滅してしまうだろ』
『そうだ、お前もテッカマンならば立ち向かって見せろ』
「Dボゥイさん!?じゃあ!?」
『私もいますよ。ラウラさん』
「ミユキ!」
『俺達は抗う事で希望を掴んできた。お前もテッカマンなら抗って見せろ!』
『勝て、テッカマンレーゲン!』
「私達は共に戦っています!」
「ああ!」
「ち・・きしょう、俺はまだ」
「守れていないのに・・・」
『情けないわよ!あの時の啖呵はどこへ行ったの!?』
「「クド=ラ!?」」
『絶望の中にある希望、人との繋がり・・・それが破滅の王に対抗するものよ』
「「・・・」」
『行ってきなさい!あん時のアンタ達を・・・今一度見せてよ!』
「「おう!」」
◇
それぞれが出会いの中で繋いだ絆。それが形を成し、
「
「
「
「
「
「
各々が身に付けた
「何だ、これは?我の、我の力を押しのけるだと?あり得ぬ……我は無限、我は永遠。滅びの宿命を持つただの生命体が、死と滅びと負の波動によって存在し続ける我の力を退けるなど」
「例え、我がこの仮初めの体を通してのみ、この宇宙に存在しているとしても……あり得ぬ!」
破滅の王は絶望へ叩き込んだはずのメンバー達から溢れる希望の想いが、破滅の王の波動を押し返している事を信じる事ができない。。
◇
「シャナ!セシリア!シャル!ラウラ!私に力を貸して!シャッフルの紋章と共に!!」
「はい!鈴さん!」
「わたくし達の命を!」
「鈴から授かったこの紋章と共に預けるよ!」
「行け!鈴!!」
「ぬう!?何を!」
「ドモンさん達が思い出させてくれた!新しく出会い、苦楽を共にした人との絆こそが、最高の力なのだと!!」
鈴の右腕からキング・オブ・ハートの紋章が浮かび上がり、それに共鳴した四つの紋章が託された四人の右手の甲に浮かび上がる。
鈴の掛け声と共にシャナを含めた代表候補生達がファートゥムに向かい、胸部に紋章を浮かぶ上がらせ全身が黄金色に輝き出す。
「「「「「この魂の炎!!極限まで高めれば!倒せないものなど、ないッ!」」」」」
「「「「「私のこの手が真っ赤に燃える!勝利を掴めと叫びを上げるッ!!」」」」」
「「「「「爆ぁぁぁ光!!」」」」
【推奨BGM【我が心 明鏡止水 ~されどこの掌は烈火の如く】原曲】
一時的とはいえど、完全な状態でシャッフル同盟の力を受け継いだ五人の紋章が重なっていき、一つになる。その輝きは命の炎を凝縮させたものだ。
「「「「「シャッフル!!同盟けぇぇぇん!!」」」」」
ファートゥムに向かっていった命の炎はファートゥムを焼き、再生を追いつかなくさせた。だが、反動で鈴は片膝を着いてしまっている。
「まさか、ここまで我を押し返すか!」
「うう・・・私はここまでよ・・・。後を頼んだわ!皆!!」
◇
「皆様のお力、お借りしますわ!シャルさん!わたくしのユニットをパージしますわ!お使いなさい!」
「え?」
「蒼の心にて・・・悪しき空間を撃ち抜く!名付けて断空光牙弾!!やぁぁぁぁってやりますわ!」
たった一発の弾丸に込められた絆という銀が蒼い軌道を描いて行き、破滅という名の怪物の身体を撃ち抜く。これによってセシリアも行動不能になってしまう。
「仮初とはいえ、この機械体を貫いただと!?」
「シャルさん!受け取ってください!わたくしの力を!バスター・ユニット・パージ!・・・ここまでですわ、後をお願いします・・・!」
【推奨BGM 【Guardian Angel】スパロボOGアレンジ】
「これは!うん、ダブルBフォーム!ガイド・レーザー!ドッキング!」
セシリアからシャルに託されたユニットは砲台となり、ベルゼルート・リヴァイヴと合体した。
「セシリアから・・・ブルー・ティアーズから託された力を感じる!先ずは弾幕のミサイル!オルゴノン・レーザー!スプレッド・シュート!」
実弾のミサイルからオルゴンによるレーザーの連携攻撃を加えていく。今のファートゥムは自分と相反する強力な二種類の攻撃を受けた為に、ダメージを負っていた。
その影響で防御機能が破壊され、通常兵器が通じる状態だ。シャルの放つオルゴンエネルギーがダメージを与えていく。
「今だ!いけええ!!」
オルゴナイトのエネルギーがファートゥムを結晶の中へと封じ、動きを縛る。
「エクストラクター・マキシマム!これが!皆から託された一撃!オルゴン・バスター・キャノン!シュートォォォ!」
最大級のオルゴンエネルギーがファートゥムを捉え、内部で結晶爆発を引き起こし、地に崩れた。バスターユニットと分離しシャルもまた動けなくなってしまう。
「有り得ぬ・・・滅び行く宿命を持った者がこれほどの力を持つなど!」
「ボクも・・・限界・・・頼んだよ!ラウラ!簪!政征!雄輔!シャナさん!」
◇
そんなシャルの横を、灰色と紅の線を持つ仮面の戦士が横切っていく。
ブラスターテッカマンレーゲンは両腕四つ、両肩五つの18の砲門を展開し、エネルギーを収束させていく。
「(Dボゥイさん、シンヤさん、ミユキ、ゴダードさん、スペースナイツの皆さん、そして掛け替えのない私の仲間達!私に力を貸してくれ!!)」
【推奨BGM【永遠の孤独】スパロボWアレンジ】
「私は、私はもう孤独じゃない!!私には守りたい大切な人達がいる!私は被検体009号でも、力に溺れたラウラ・ボーデヴィッヒでもない!!私はテッカマンレーゲン!だがこの世界を守るテッカマンレーゲンだ!」
ラウラの左右に四人のテッカマン達が並ぶ、待機状態であるテッククリスタルが目の前で砕け散り、そこから発生した余剰エネルギーすら取り込んだ。
「うぉぉぉおおおおおおおお!」
全ての想いと共にラウラは最強の武装を放った。その瞬間に四人のテッカマン達がレーゲンへと一つになっていった。
「AICボルテッカァァァーッ!!」
放たれたボルテッカは機能再生をしかけていたファートゥムへと命中し、
「この機械体が!?」
同時に、ラウラもゆっくりと落下していき、それをシャルがギリギリのところで受け止めた。
「私も全てを・・・出した。後は頼む!簪!シャナ=ミア姉姉様、政征兄様、雄輔殿!」
◇
「私達だって!」
「(譲れないものが私にも出来た!)」
「ケラスス・レーギーナ!行くよ!レース・アルカーナ出力上昇!ブースト!!」
【推奨BGM【Duologue】&【Duet】スパロボOGアレンジ】
二人の簪から受けた想いによってケラスス・レーギーナと呼ばれた打鉄弐式はリミットを大幅に越え120パーセントを示した。
「加速速度限界値突破!ターゲットロック!ベクター・ミサイル!!」
ミサイルを再び受けたファートゥムの動きが止まる。その隙を逃すほど愚かではない。
「レイヴ・レーザー!バレル展開!!」
シュンパティアの影響によって武装の扱いに長ける笄(こうがい)が粒子砲を拡散で発射する。適切な距離を見計らい、チャージを完了させた。
「(シュンパティア、LBファンクション・・・!)(笄、私も)」
二つの魂が共鳴し、その力を受けたケラスス・レーギーナは限界を越えた砲撃を放った。
「行っけええええええ!ニュートロン・バスタァァァ!」
リミットオーバー状態から放たれたその一撃はファートゥムの右腕を完全に奪ったが、二人も冷却状態に入り動けなくなってしまった。
「三人共、後はお願い!」
「(恐らく封印の鍵になるのは)」
「この肉の体に縛らえた故か・・・これほどまでに!」
破滅の王は再生できない自分の機械体を維持できなくなってきていた事で綻びが生じ始めている。
◇
「行くぞ、雄輔!」
「ああ!」
政征と雄輔は同時にバスカー・モードを起動し、ファートゥムへ突撃していく。それと同時に二人の間へ走る緑の閃光があった。
「オルゴン・ドラコ・スレイブ!!行ってください!!」
その一撃はグランティード・ドラコデウスを纏ったシャナからの一撃だ。それを好機に二人の騎士は連続攻撃を加えていく。
「飛ばすぞ!」
「分かった!!」
オルゴンクローによって打ち上げられ、オルゴンソードによる一閃を与えた。二人のコンビネーションは例えるならば戦場における相棒だ。
「これが!」
「双剣の極意!」
リベラが上空から、モエニアが正面からファートゥムへと突撃していく。二つの青と蒼が閃光となって二つの刃となった。
「オルゴナイト!」
「バスカー!!」
「「クロォォォス!」」
「有り得ぬ・・・このような事はありえぬはずだ!!」
機械体を破壊された破滅の王はカロ=ランの肉体ごとクロスゲートの内部へと消滅していった。
「や、やりましたわ!」
「破滅の王を追い返した!」
「これで、ようやく!」
「全てが終わったのだな!」
代表候補生達が喜んでいると同時にスコールとオータムが合流した。歴戦の風格よろしくのようで機体には損傷が殆ど見られない。
「あら、パーティーは終わっちゃったのかしら?」
「ちっ、おいM?」
「っ!?まだだ!!まだ終わってない!!」
◇
マドカが叫ぶと同時にクロスゲートが揺れ始め、内部から何かが蠢いていた。それは何かの球体であるかのようにで出てこようとしている。
「!!あれは破滅の王の本体だ!あれをこの世界に出現させたら、世界が終わってしまう!」
「今動けるのは俺たちだけか・・・うっ!おおおおおお!」
「政征さん!?」
「「政征!?」」
「政征兄様!?」
「この世界を・・・破滅させてたまるかああああああ!!」
政征は再びオルゴナイト・バスカー・ソードを手に突撃し、クロスゲートの中心に刃を振り下ろし押しとどめた。
「ぐ・・・・おおおおおおおおおお!!」
押し返し続けていたが、政征のオルゴナイト・バスカー・ソードに亀裂が走っていく。その真横でもう一本のバスカー・ソードが振り下ろされ押し返し始めた。
「っ!?雄輔!?」
「一人でカッコつけて、特攻なんてやってんじゃねえよ!大馬鹿野郎!ぬううううううう!」
二本のオルゴナイト・バスカー・ソードが押し返している中、更にその横へ通常のオルゴンソードで押し返すもう一人の騎士が現れた。
「フー=ルー!?」
「本当に世話が焼けますわね!貴方達は!」
代表候補生達が三人の騎士の援護に向かおうとするが、全員がまるで命令されているかのように動くことができない。
破滅の王への根本的な恐怖と力を使い切ってしまった弊害によって身体の自由が利かなくなってしまっていたのだ。
その最中、限界を迎えた政征のオルゴナイト・バスカー・ソードが砕けてしまう。
「しまった!」
「政征!」
「シャナ!?」
グランティード・ドラコデウスが咆哮を上げ、尻の先端部と頭部にある角状のパーツが連結し、それを政征の手に握らせる。
「無窮の剣を貴方に・・・!」
「おう!オルゴン・マテリアライゼーション!っ!うあああああああああああ!?」
あまりの高出力にラフトクランズ自体も悲鳴を上げていた。本来はグランティード・ドラコデウスの扱うインフィニティー・キャリバーを強引にラフトクランズが扱っているためである。
神話的な表現でいうところの、神だけが扱うことの出来る武器を人間の戦士が扱おうとしてその力に振り回されているようなものだ。
「私達も行くわよ、マドカ!」
「了解した、スコール!」
因果律の旅人となりかけている二人もZ・Oの名を冠する剣で押し返し始めた。僅かな時間稼ぎにしかならないが、その時間が大きな好機となった。
「ぐぬううおおおおおおお!!」
「政征、私も共に・・・」
シャナの手が政征の手に重ねられ、シャナは笑みを浮かべた。
「っ!ああ、行くぞ!シャナ!!」
「はいっ!」
「「はああああああああ!!!」」
ラフトクランズ・リベラがグランティード・ドラコデウスに乗る形になり、二人でインフィニティー・キャリバーを握り締め突撃している。
「破滅の王!そして、ヴォーダの門よ!この世界から出て行けえええええ!インフィニティー!オルゴナイト!」
「バスカー!」
「「キャリバァァァ!」」
インフィニティー・キャリバーにラフトクランズのバスカー・モードによる余剰出力によって破滅の王の本体は押し返された。
だが、クロスゲートは暴走を始め近くにいた政征、雄輔、シャナ、フー=ルーの四人とスコール、マドカの二人も巻き込まれ、転移が始まってしまった。
「!転移が始まるのか!?」
「ダメだ、抜け出せない!」
「オルゴン・クラウドの転移機能まで封じられていますわ!」
「ラースエイレムも使えません!」
「このままじゃ、私達まで!」
「う、動けない!」
ようやく身体の動いた代表候補生達は全員、転移に巻き込まれそうになっている六人を救出しようとした。
「今行きますわ!」
「待ってて!」
「ボクはまだ恩を返せてないからね!」
「兄様と姉様は必ずお助けする!!」
「「来るな!!!」」
その怒号のような叫びに全員が足を止めてしまった。クロスゲートから発せられるエネルギーは止める手段がない。
「来てはならん!お前達も転移されてしまう!!」
「で、ですが!」
「俺達は元々イレギュラーな存在だ。お前達まで付き合う必要はない!」
「何言ってんのよ!?それじゃ、アンタ達が!!」
「そうだよ!!」
「貴女達はこの世界の住人、並行世界に渡れば対消滅を起こして、存在そのものが無くなるかもしれませんわ!」
「スコール!マドカ!!」
「シャナ=ミア姉様!!」
「オータム、この世界を頼んだわよ?」
「私達の居た証を守って欲しい」
「ラウラ、この世界を守ってください。私は政征と共に参ります」
転移が始まり、巻き込まれた五人の存在が薄まっていく。
「お、お待ちになってくださいませ!政征さん!わたくしは、わたくしは!!」
「雄輔、待って!私、アンタに言いたいことが!!」
「貴方様(アンタの事)が、好きでしたの(だったのよ)!」
「ありがとうな、セシリア。その気持ちは嬉しいが、すまない・・・」
「鈴、俺もだ。好意は嬉しいが俺はお前の恋人になる事は出来ない・・・」
二人の告白を聞い政征と雄輔は申し訳なく思いながらも、告白に返事を大声で返した。
「良いんですの、政征さん。このセシリア・オルコット・・・お伝えできただけでも誇らしいですわ!」
「雄輔、必ず後悔させてやるんだから、帰ってきなさいよ!!」
その言葉を最後に五人は転移し、今いる世界から完全に居なくなってしまった。それと同時に施設が崩れ始めていく。
「脱出だ!早くしろ!!おい、銀髪のガキ!!行くんじゃねえ!!」
「嫌だ!シャナ=ミア姉様が居なくなったなど認めるものか!助けに行くのだ!離せ!!」
駄々をこねる子供のようにクロスゲートへ向かおうとするラウラをオータムが強引に連れて行き、気絶した楯無を簪が千冬をセシリア、鈴、シャルの三人が運んだ。
束は最初に脱出しており、ウチガネと呼んだ戦艦の誘導をしている。
◇
全員が脱出し、ウチガネに乗り込んだが一言も喋らずに全員が暗い顔をしていた。
「破滅の王は追い返したけど・・・・」
「仲間が居なくなってしまいましたわ・・・」
「これからどうなるのか、分からないわね」
「うん・・・」
「兄様、姉様・・・」
それぞれが思いに耽っていると束が改めて宣言するように口を開いた。
「みんな聞いて、ここにあるISのコア・・・8つだけを残して、世界で動いているISを休眠状態にしようと思う」
それを聞いた全員が驚きを隠せず、驚嘆の声を上げた。
「どういう風の吹き回しだ?束」
千冬の言葉に束はどこか寂しそうな笑みを浮かべて答えた。
「私はISを本来の姿に戻したいと言ったよね?今のままじゃ到底無理だから、休眠させようと思うの」
「男性でも動かせるISを開発したら休眠を解除しようと思う。スポーツ分野やレスキュー分野、開発分野などの作業用としてしか使用できなくするんだ」
「束様・・・」
「贖罪に近いけどね?君達の機体は武器を置く事を学んでるからそのままで良いよ」
束の決意は固いようで皆は了承していた。自分達も束の夢を本来に戻す手伝いのために。
「世界に向けて宣言するよ。大混乱になるだろうけどそうしなきゃ前に進めないから・・・」
その後、IS学園に束とクロエ以外のメンバーが降り、束は再び行方をくらました。
翌日には政征、雄輔、シャナの三名は急遽海外へ転校してしまった事になった。クラスメート達は突然の別れに驚き、嘆いたが千冬の説得によって渋々納得し、騒動は収まった。
アシュアリー・クロイツェル社においては、クロスゲートへの突入をシャナ=ミアが手紙にて伝えてあったために大きな騒ぎにはならなかった。
次代は皇権制度ではなくなり、また新しい皇女が誕生していた。シャナ=ミアとは違い、勝気で優しいという正反対の皇女が誕生していた。
そして・・・・。
また、新たな物語が始まる。
Moon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~の世界へ・・・。
本編はこれにて完結です。
どんな作品でも終わりが来るのは必然。
最終回ということで詰め込みまくったらこのようになりました。
この作品は愛着があるので、基本世界として並行世界を書くかもしれません。
ラフトクランズを使いたいと思って始めたのがきっかけでしたが、文でスパロボの戦闘を表現するのは難しいと痛感させられたものでありました。
私の作品にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。
ISガールズのエピローグは書く予定です。
書き終えたら、並行世界であるMoon Knights IS~Prayer of a Rabbit Fury~の世界を更新していく予定です。
https://syosetu.org/novel/120230/ ←作品URLです。
では、別の作品でお会いしましょう!
※もう、ちっとだけ続くんじゃ