Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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スコールが因果律を見守る二人の意思を受ける。

学園のピンチ(物理的な意味で)

破滅の新しい機体が犠牲の下、生まれる



以上


雰囲気が変わると誰でも驚くよね

破滅の軍勢に汲みした二人の襲撃から二日後、マドカは代表候補生の一人であるラウラと手合わせをしていた。

 

IS学園の生徒としてマドカは転入を認められた為、アリーナを使う事が出来ている。

 

ラウラはテックランサーを手に格闘戦を仕掛けているが、マドカの新しい機体、ガリルナガン・ナーゲルの固定武器であるバスター・アックス・コンポジット・ガン、通称バスタックス・ガンのアックスモードで受け返され続けている。

 

再現された物ではあるが、戦斧を彷彿とさせるその力強さにラウラ自身も圧倒される。

 

「このまま切り裂いてやる!デッド・エンド・スラッシュ!!」

 

戦斧による一撃が決まりそうになった瞬間、終了のブザーが鳴り響いた。

 

「あ、危なかった!」

 

「終了か。新しい機体の動きも未だに慣れないから力押しになってしまうな」

 

二人は機体を解除し、休憩を取るためにピットへと向かい、マドカが自販機から飲み物を購入するとラウラに投げ渡した。

 

「すまないな、私の機体の訓練を手伝ってもらって」

 

「構わない。私自身も未だに未熟だからな」

 

ウマが合うのか二人はメンバーと共に訓練していても話していることが多い。似ている所もあり同族嫌悪をすることもあるが、今では戦友に近い関係だ。

 

「とにかく今は機体を自分の思うように動かせるようになって、武装の反動を克服しなければな。時間も少ない」

 

「うむ、次は私がワンオフ・アビリティーを使い、ブラスター化して相手をしよう。高機動戦闘の訓練になる」

 

「わかった」

 

休憩後の二人の戦いは熾烈を極め、お互いに距離を取り必殺技を放とうとしていた。

 

「うおおおおおおおお―ーッ!!」

 

「メラフティー・ディーンよ!ディス・レヴの火を目覚めさせろ!テトラクテュス・グラマトン・・・!」

 

「AICボルテッカァァァ――!」

 

「アイン・ソフ・オウル!デッド・エンド・シュートォォォ――!!」

 

「止めんかァァァ―――!!大馬鹿共ォ!!」

 

「学園ごと一帯を崩壊させるつもりですか!

 

AICブラスターボルテッカとアイン・ソフ・オウルのぶつかり合いに発展しそうになったが、あわや発射される寸前で千冬とフー=ルーが巨大なエネルギーを感知し、大急ぎで駆けつけ怒鳴り散らした。

 

問題を起こしたラウラとマドカの二人は駆けつけた教員二人に拳骨と説教を貰う事になった。

 

 

 

 

 

 

 

その頃、アシュアリー・クロイツェル社が実験とテストの為に買い取っていた島で改修された機体のテストが行われていた。

 

「最終武装テストを開始します。最大出力での武装を使ってください」

 

「ああ、分かったよ。時空の狭間に消えやがれ!最終地獄ジュデッカ!」

 

海に立てられたターゲットへと向かって放たれたエネルギー波は海を円形に抉り、海底が一時的に見えるほどに強力なものであった。

 

「うう・・・コイツはキツイ。一番威力の低い武装の第一地獄カイーナを使っただけで腕が痺れたのに、ジュデッカは数倍のパワーで頭に響く・・・」

 

武装の反動に苦悶の表情を浮かべるオータム。本来、彼女達の使っている機体はテレキネシスが無ければ使うことが出来ないはずであった。

 

しかし、束から簡単なテストを受けた結果。二人はテレキネシス・リンク・システムを起動する事の出来る能力者であった事が判明していた。

 

だが、彼女達からすればそれは全く興味のない事であった。改修された自分の機体に逸早くなれる事しか考えていない。

 

希少な素質を持っていたのにも関わらず、それに対して二人は機体を動かす為に必要なものとして割り切ってしまっているのだ。

 

「最終武装テスト、終了です。帰投して下さい」

 

「おう、了解だ」

 

オータムの機体であるジュデッカ・リートが帰投し、それと入れ替わるようにスコールがタオフェ・アストラナガンで外へと飛び出した。

 

「それではタオフェ・アストラナガンの武装最終テストを開始します。全て空中にターゲットを配置してますので、最後はAI制御の戦闘ヘリが出てきます」

 

「分かったわ」

 

「では、テスト開始」

 

「(タオフェ・アストラナガン・・・本物には遠く及ばないって言っていたけど、本来のアストラナガンってどれほど強力だったのかしら・・・っ!?)」

 

スコールが機体へ意思を向けた瞬間に引っ張られる感覚を感じた。その速度はあまりも早く、気づいた時には二人の男らしき影が眼前に立っていた。

 

「だ、誰!?それに此処は一体?」

 

『此処は正の力と負の力が交わる因果律の境界』

 

『機体だけとはいえど、この世界において因果律に触れる事の出来る者が現れた事で俺達は来ることができた。最も一人は自覚がないようだが』

 

「そう、それで私に何をしようというの?(もう一人はMかしら)」

 

『お前の機体はアストラナガンの名を冠している。それ故に知らねばならない、戦いの軌跡・・・そして』

 

『ディス・アストラナガンとアストラナガンが渡り歩いた世界も』

 

語られた瞬間、スコールは吹き飛ばされるように空間の流れを体感した。時間にしては数秒のはずが、まるで何年もの時間を経験してきたかのような感覚に襲われる。

 

「こ、これが。二つのアストラナガンが歩んできた世界の全て・・・重い、重いわ。アストラナガンという名前そのものが」

 

『アストラナガンは因果律を見守る番人ゆえ、姿を変えつつも並行世界を渡り歩いている』

 

「そう・・なの、ねえ、一つだけ聞かせて頂けるかしら?」

 

『何を聞きたい?』

 

「私も、その・・・因果律の番人となり得るのかしら?」

 

『お前ともう一人は番人には成りえない、可能性があるとすれば平行世界を渡り歩く【旅人】だろう』

 

「そう、ありがとう」

 

自分が背負った機体の名前の重さと使命にため息を吐きかけたがそれをこらえる。番人となった瞬間に自分はどうなるかを想像してしまい恐ろしさを隠すためにため息をしなかった。

 

『だが、お前のタオフェ・アストラナガンは未だ枷が残されている』

 

「枷ですって?」

 

『そうだ。それを俺達二人の力で枷を解き放つ・・・』

 

『生きる意志を持って、破滅を追い返せ。命の力は生きる意志そのもの』

 

その言葉と共にスコールは己の肉体へと引き戻されていく。その中で銀髪の青年が口にした言葉が耳に残っていた。テトラクテュス・グラマトンと。

 

「テストを開始しています。始めてください、スコールさん。スコールさん?」

 

「・・・・」

 

「スコール?何やってんだ?止まったままで」

 

 

[推奨BGM【THE GUN OF DIS】第三次スパロボαより]

 

 

 

「『我が手に還れ、タオフェ・アストラナガン・・・!テトラクテュス・・・グラマトン・・・』」

 

スコールの声ではあるが低めの声で何かを見据えるような瞳をしている。雰囲気がいつもと違う、まるで何かに憑依されているような様子だ。

 

「『時を遡り、お前は無に帰するのだ!インフィニティ・ヴァルツァー!』」

 

タオフェ・アストラナガンの象徴である黄金色の翼からオルゴンと似た色をしたエネルギーが溢れ出し、それと同時にスコールは男性も女性も虜にする恐ろしくも見惚れてしまうような妖艶な笑みを見せていた。

 

「『デッド・エンド・シュート!』」

 

美しく長い金髪が深い青色へと染まり、それを靡かせ更には隣に同じ髪の色をした長髪の男らしき影が重なると左手を握りこみ、同時に巨大な光弾を胸部から放った。

 

その光弾は分裂し、ターゲットである軍用ヘリに向かうと囲むように衛星のような軌道を描き取り囲んでいく。弾の一つが命中し、その部分が削り取られたかのように穴が空き、次々とターゲットの身を削っていった。

 

光弾が霧散すると同時にターゲットは初めから存在しなかったかのように跡形もなく消滅している。

 

「す・・・すげえ、これがスコールの生まれ変わった機体。タオフェ・アストラナガンの力・・・」

 

「スコールさん、テストは終了・・・です」

 

空中で放たれていたとはいえど、あまりの威力に職員もオータムも戦慄していた。機体のエネルギーは収束し静止したままだ。

 

「はっ!?わ・・・私は一体何を?え?インフィニティ・ヴァルツァー?何なのかしら、この武装は」

 

スコール自身、インフィニティ・ヴァルツァーを放った瞬間を覚えていない様子だ。髪も青から元の金髪に戻っており、雰囲気もいつもの感じになっている。

 

「あの二人は一体誰だったのかしら?っう!?身体が・・・急に重く・・・」

 

どうやら先程の一撃で、身体への反動が表立ってきたようだ。何かに憑依されていた時は自意識が無かったために反動に対しての反応が鈍っていたのだろう。

 

「急いで・・・戻らないと」

 

帰投したスコールは全身疲労で医務室へと運ばれ、オータムが付き添った。運ばれている中で自分が話した謎の二人組の男性の言葉が浮かんだ。

 

「(枷を外すって行っていたわね。インフィニティ・ヴァルツァーを使える事が枷を外したと解釈するべきなのね、それに・・・一部が機械化されていても生きる意志が力となる・・か)」

 

疲労から来る眠気に身を任せ、スコールは自分の中で目覚めた因果律の事を思いつつ目を閉じていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

各々が機体に慣れるための訓練をしている中、アイスランドにあるルイーナの基地ではISコアを使った起動実験が行われていた。

 

『嫌・・・イヤ・・・イヤアアアアアアアアアアアア!!』

 

「ウィオラーケウムへの搭載、完了しました。人工知能パイロットも問題ありません」

 

「そうか、では次の機体だ」

 

カロ=ランは自分の記憶と破滅の王の欠片から引き出した情報を基に決戦へ備えた指揮官クラスのミーレスを生み出していた。

 

『止めて!ヤメテ!止めてくれエエエエエエエエエエ!!』

 

「フォルティス・アーラへの搭載、完了です」

 

搭載されていくISコアは自意識がある事を発見された物ばかりであった。それを知ったからこそ破滅の軍勢の機体を再生させているのだろう。

 

「残りは一つ、最もバランスがよく連度の高いこのコアはこの機体に使いましょう」

 

『ア・・・・アアア・・・私が消える!塗りつぶされる!嫌ッ!助けて!誰か、誰か!ワタシハ・・・宇宙へ・・・お母さあああああああああああああん!!』

 

「プリスクス・ノクスへの搭載、完了」

 

三つあったISコアの全てが破滅の軍勢の機体へ搭載され飲み込まれていった。その意志はミーレスと一体化し表に出てくる事は二度とない。

 

そんな中で科学者やカロ=ラン達は自分達が行った搭載実験の結果に満足しているような笑みを浮かべていた。

 

「これで指揮官の機体が出来上がった。所詮は機械のコア・・・操作でどうとでもなる」

 

「私の頭脳は間違っていなかった!今こそ、私が篠ノ之束以上の物を作り上げるのよ!」

 

「(馬鹿な奴だ、その程度の頭脳では奴の足元にも及ばん。せいぜい駒を作り続け、夢心地に浸っているがいい)」

 

 

カロ=ランは心の中で科学者へ向けて冷笑を浮かべていた。夢を見ている間が幸せだと思いながら。




スコールはあの二人から枷を外してもらい、刻印を刻まれました。

マドカの方はまだ自覚していません。

ヴァルツァーは独語でワルツを意味します。

ガリルナガン・ナーゲルがアイン・ソフ・オウルを撃てるのは発射口が胸部にあるためです。形状はガリルナガンでも元はディス・アストラナガンのデータを解析して改修されているため発射が可能です。

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