Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
以上
フー=ルーと千冬の決闘という名のケンカが終わった後の土日に特訓を予定していたメンバー達を集めて、本音がある提案を出した。
「ね~、みんな~。このメンバーでカラオケ行かない~?」
「カラオケ、ですか?」
「なんだそれは?」
カラオケを知らないシャナとラウラに皆が説明する。歌を歌えると聞いて他のメンバーもノリノリだ。
「カラオケかぁ、良いな!」
「確かに久々にいいかもしれないな」
政征は目が輝いており、雄輔も賛成側に回っている。女性陣も鈴やシャルロットはノリノリでセシリアも参加したいと言っている。
もう、決定事項となり本音も簪も巻き込まれてカラオケ店へ行くことになった。
大人数である為、そこそこに良い店をチョイスした。簡易的ながらダンスができる広さのステージがあり、スタンドマイクも設置されていて動画撮影も可能なようだ。更には映像によって衣装や姿を変えられる装置まである。
「何この無駄に豪華な設備」
「全くだな」
男性二人が呆れているが女性陣が各々、好きな席に座ると歌本を早速広げたり、端末で曲探しをしている。
「一番手は貰うわよ!!」
すぐに曲に入力し、鈴が一番で歌うためにステージに立つ。マイクを持つとそこはもうステージに変わっていた。
言うまでもないがIS学園の生徒は容姿レベルが高い。それだけにカラオケに行くというのは、アイドルが隠れてカラオケに来ているようなものなのだ。
「一番最初に歌います!凰鈴音で【好吃スマイル◎】!!」
◇
音楽始まり、鈴が歌い始めると驚く。明るい曲調と時折歌詞の中に織り交ざる中国語、それでも鈴はノリノリだ。
特訓や勉強ばかりでこういった娯楽は少なかっただけに怒り以外の鬱憤も溜まっていたのだろう。それに歌唱力はアイドル並で上手い
歌が終わると鈴は笑顔で席に戻り、飲み物を飲み始めた。
「じゃあ、次はボクだね?聴いてください【mon cherie,ma cherie】」
女性陣、曲入れるの早すぎるだろう。シャルロットもマイクを持って歌い始めた。何処か、のどかな町並みを連想させるような曲でシャルロットは丁寧に歌っている。
うん、これもこれで良い。しっとり系だけどシャルロットにぴったりじゃないか。
「次はわたくしですわね。【Perfect Pride】聴いてくださいませ!」
真っ直ぐな曲できたな。セシリアにピッタリ過ぎないか?この曲。セシリアは心底楽しそうに歌っている。歌い終えると一礼して席へと戻っていく。
「う、うう。初めてだが次は私だ!【An die Freude】というのを歌わせてもらう!」
ダークっぽい曲調とは裏腹に初めは恥ずかしがっていたが、次第に曲に入り込んできたのか凛々しく歌っていた。
「うーん、雄輔・・・この曲で行くか?」
曲入れの端末を見せると雄輔は少し驚いた表情をする。デュエット曲を提案された為だ。
「これか、パートはどちらを歌う?」
「俺が鎧武者だよ」
「じゃあ、俺が男爵か」
曲を入力し、すぐに始まった。二人の雰囲気が変わり曲に入り込んでいく。
[曲名 【乱舞Escalation】]
歌い始めた途端に二人が歌いながら戦いを始めた。戦いといっても暴力ではなく、ダンスで殺陣を再現しているような感じである。
政征のパートは背後が白、雄輔は黒という演出がされている。曲が最後に近づいていき二人の全身が優しさを貫いた白銀の鎧武者、強さを求めた紅い伯爵の姿となった。
ただの映像処理だが、その世界感に魅せられ女性陣は固まっていた。歌い終わって曲が終わり二人の姿が元に戻った。
「どうしたのさ、みんな?」
「ボーッとしてるな」
二人の声に意識が覚醒した女性陣はそれぞれ感想を言い始めた。
「世界観がすごかったですわ」
「二人共、本気すぎよ」
「まさか、ここで戦国のライダーを観られると思わなかった」
セシリアと鈴は世界観に飲まれ圧倒されており、ヒーロー番組や特撮が好きな簪は感動したように感想を述べている。
「ユッキー、ゆーゆー、ダンスがある曲歌って~」
のほほんさんに催促され、周りを見回す。女性陣はやれという雰囲気が強い。
「それなら、これかな?終わったら一回休みで頼むよ」
曲名を端末で検索し、入力する。まだ歌っていないメンバーに出番を回すために政征と雄輔は一回休みという条件をつけた。
[曲名【EXCITE】エグゼイド主題歌]
政征が歌い始め、雄輔がバックダンサーを務める。立体映像で四人ほど増やされダンスが形となっていく。
『EXCITE EXCITE!』
6人(うち四人は立体映像)のダンスが激しく華麗に披露されている。流石に疲れがあるのか歌に少し追いついていないがそれを補うダンスパフォーマンスが女性陣の前で披露され続ける。
全てを歌い終わり、ダンスを終えると同時に二人はステージから息を弾ませたまま降りて椅子に座り込んだ。
「ぜい・・ぜい」
「はぁ・・はぁ」
「お疲れ様~ありがとうね~!」
「はぁ~ゲームのライダーまで聞けるとは思わなかった」
次に入力していたのはシャナで曲が表示される。
[曲名【哭】どうこく]
「初めてですが歌ってみます」
曲調は少し早めだが、シャナは歌っている。強気でありながら献身的な愛を捧げる何処か悲しげなプリマドンナの曲を。
「ど、どうでしたか?」
「すごい、シャナ=ミア姉様はこのような曲も歌えるのだな!」
「イメージと全然違う・・・でも良い曲だったわ!」
「おしとやかな曲を歌うと思ってたけど・・・」
「意外ですわね・・・本当に」
「ミアミアって声が柔らかいんだね~」
男性陣二人は拍手しており、女性陣は女性陣で褒め合っている。
「ねえねえ、ミアミア~。強気な言葉やってみて~」
「え?そ、それは・・・」
「お願い~」
本音のからの押し頼みに折れたシャナはマイクを手にセリフを発する。
「で、では!」
コホンと軽く咳払いをすると意を決したような顔つきになり、彼女の雰囲気が一変した。
「アナタ私のモノになりなさい。甘く溶かしてあげる」
「程々にしないとお仕置きだぞ?」
「あら、怖い怖い」
政征が咎めるとシャナは強気なまま残念そうな目でセリフを言い終え、元の雰囲気に戻った。
「い、いかがでしたか?」
「ミアミア~雰囲気全然違ってた~」
サプライズも終えてカラオケを楽しんだ後にそれぞれが別れる。雄輔は呼び出しがあったらしく途中で離脱し、簪と本音も寄りたい所があると言って別れた。
学園へ戻る組は歩きながら、会話をしている。そんな中、セシリアと鈴は最後尾から最前にいる政征とシャナを見ていた。
「セシリア」
「はい?」
「やっぱり、あの二人さ」
二人の目の前にはシャナと政征が歩いており、仲が良さそうに話している。それはどこか、友達というよりも恋人同士のような感じだ。
「ええ、わたくしも同じ考えですわ」
「そうよね、うん・・・でも」
「でも?」
「はっきり気持ちを伝えてから引き下がる事にするわ。そうじゃなきゃ引きずっちゃうもん」
鈴の言葉にセシリアは頷く事しか出来なかった。女性であるが故の柔軟な発想で二人の関係を薄々気づいたのだろう。
「わたくしは・・・」
「これだけは自分の気持ちをしっかり自覚してからの方がいいわよ?」
鈴の言葉にセシリアはストンと自分の中に何かが落ちたような感覚がした。
確かに自分は政征に好意と似た様なものがあった。それが恋なのか。憧れなのかをわかっていない。
恋ならば、恥ずかしくともはっきり気持ちを相手に伝えるべきだろう。憧れならば追いついて肩を並べられるように精進すればいい。
「(わたくしは騎士としての政征さんに憧れを抱いていただけなのでしょうね・・・)」
セシリアは自分の憧れを胸の内にしまいながら、女性としての想いに別れを告げ、改めて二人を祝福した。
曲名は散りばめたのでコピペ&検索でわかると思います。
次回は更識姉妹の姉妹ゲンカ(ISで)です。