Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
二つの機体が飲まれる。
リベラの意志が二つに別れる(フラグ)
以上
政征と雄輔が不思議な声を聞き、時間にして翌日。ある国の地域で破壊活動が行われていた。
「この程度かよ?全然足りないな」
「ふふ、こんなに斬ったのは初めてだ!興奮が収まらなくて仕方ないぞ!」
破壊されたISの機械油が二機のISに対し、まるで返り血のように浴びていた。
白を基調とした機体は機械油がまるで血のように白い部分へ付着し、どれだけの破壊をしたのかを物語っており、反対に鮮やかな紅色をしていたはずの機体は血が染み込んだ羽織のように赤黒く変わっている。
「ふむ、亡国機業の粛清地域に対する破壊はこのくらいで良いな」
カロ=ランは二人が殺しに対して慣れが出てきているのを確認し、笑みを浮かべていた。
当初は殺したくないと喚いたり、命を奪った瞬間に嘔吐などを繰り返していたが破壊活動を続けるにつれて二人は殺戮に慣れていった。
「必ず俺がシャナ=ミアさんを守る騎士になる・・!この手でお前を必ず!」
「待っていろ、あの時の屈辱を必ず晴らしてやる!!」
一夏と箒は復讐という名の炎を燃え上がらせていた。自由と城壁の騎士、その二人をこの手にかけるその時こそ自分達の復讐は果たされると。
「(因子は芽吹き始めているな。そろそろ、あの者にこの二人の機体の改修を頼まねばな)」
完全に破壊された廃墟を歩きながら、三人は転がっている人間の四肢などを踏み潰し去っていった。
『助け・・・て・・・・わた・・・ヲ』
『嫌・・・ダ・・・飲まれ・・』
◇
「どういう事、手を組んでいたはずの破滅の軍勢が私達の支部を破壊するなんて!」
「機体も仲間も全員皆殺しな上、施設まで完全に破壊してやがった!クソッ!!」
亡国機業の幹部であるスコール・ミューゼルとオータムは出向いていた別の支部いたために難を逃れていたが、もう一人の仲間の安否は不明であった。
「スコール、どうすんだ?このままだとアイツ等に全部やられちまうぞ!」
「わかっているわよ、癪だけどIS学園にいる別の男性操縦者に接触するしかないわ」
「そんな事出来るかよ!あたしらが亡国機業だって事が知られたら!」
「もう、なりふり構っていられないのよ。こうしている間にも奴らは次々に支部を破壊してる。証拠となりうるこの映像を持っていけば信用されるはずよ」
「くうう、手を組んだ奴らに噛み付かれるなんて」
「奴らの目的を見抜けなかった私の責任でもある。それよりもMが心配だわ」
「うまく逃げ切れてればいいがな。アイツの事だ、必ず無事なはず」
二人は悔しさを内に隠し、握り拳を作り強く握り締めていた。決して少なくはない仲間を全滅させられてしまった故だ。
「破滅の軍勢とはよく言ったもんだ。あたしはアイツ等とは手を切るぜ!」
「それに関しては私も同意よ。とにかくMを探しましょう」
「ああ!」
二人はそれぞれの愛機であるISを展開すると支部を脱出し、仲間の探索へと向かった。
◇
同時刻、一人の少女が街の裏路地と似た場所で腹部から出血し、壁にもたれかかっていた。
「く・・・はぁ・・はぁ・・。機体の飛行機能は生きているがこのまま動けば傷が開いてしまうか」
ある少女がISを纏ったままの姿で物陰に蹲っていた。彼女の名はM、コードネームではあるが自分の名であり、戦士としての物でもある。
「止血剤は・・・まだあったか、崩壊してるとはいえ運がいい。傷の手当ができる物が残っていて」
その施設は崩壊しているが堅牢に作られていたのか、治療室らしき場所で消毒用アルコールを使い、傷を洗い止血剤を塗りこむと包帯を巻き傷を開かないようにした。
乱暴な応急手当だが、幾らかはマシな程度になった。手当を終えるとMは急いで崩壊した施設から飛び出した。
彼女がこのような状態になったのは二時間前に遡る。
◇
それは突然やってきた。レーダーに反応はあったが、突然攻撃を仕掛けてきたのだ。
「全員、戦闘態勢に入れ!」
Mの指揮の下、所属メンバーとして集まっていた亡国機業に賛同する者達がISを纏い、先頭を開始した。
その戦闘は無差別破壊と言っていいほどのものだった。M以外のメンバーはまるで肉食獣が獲物を貪るがごとく殺され、施設も破壊されていったのだ。
「クソッ!くらえ!!」
『我らの役目は・・・・終わった』
『此処で我らを打ち倒したところで・・・』
倒しても聞こえてくるのは断末魔ではなく、機械的に何かを遂行したような声ばかりだ。
「うあっ!?しまった!前方ばかりを気にしすぎ・・・!」
そのまま落とされたMは気絶し、意識を失った。意識を取り戻した時には既にメンバーも施設も破壊されていた。
「(仇は必ずとる・・・!その為にはまず二人と合流しなければ)」
止血を確認した後、Mは仲間と合流するために移動を開始した。
◇
破滅の軍勢による破壊活動が活発化してはいたが、亡国機業の施設ということもあり世界は対して騒がなかった。
IS委員会にいる過激派がカロ=ランと手を組んでいることもあり、表沙汰にはならなかったのだ。
そんな中、日本では政征達、専用機を持つメンバー達は学園祭の準備に勤しんでいた。
「ああ、看板の立てかけはそこだ」
「おーい、雄輔!こっち手伝ってくれー!女性陣じゃ持ち上がらないんだ!」
「わかったー、今向かうから待っててくれ」
男性二人は看板の組立や力仕事を主に手伝い、女性陣は飾りつけやテーブルを配置したりとそれぞれが動いている。
「衣装はOKですわね、裏方の設置はどうです?」
「はい、出来上がっていますよ。少しスペースを取ってしまってますが」
「仕方ありませんわね、裏方のスペースはどうしても必要ですから」
セシリアとシャナは料理や飲み物を作る裏方の設置を担当し、ラウラとシャルは飾り付けの花を配置したり、他の生徒と共にメニューを書いたりしていた。
今現在、クラス代表を務めているのはセシリアであった。一夏が学園から出て行ってしまった臨海学校後に、改めてクラス内で決められたのだ。
「皆さん、明日には本番です!総仕上げをしましょう!」
「「おおーー!」」
それぞれが協力し、本番へ向けての意気込みと気合いを入れて準備を急いだ。
◇
それと同時刻、ISの心象世界の中でリベラは何かと対峙していた。自らの影が形となり顔は伺えない。
「貴様、何者だ!?」
『我は王、全ての頂点に君臨する者』
「ふざけるな!王などと、ここは自由を守る者の聖域だ!!」
王と名乗った影はリベラの姿を模しており、自らを王と名乗った。
リベラにとって最も愛し、守るものは自由だ。自由とは何もしないことではない。
己の意思、思考、行動、全てを自分で決める事の出来る事、それが自由である。
王は彼女とは相容れない存在である。王とは君臨し導く者と支配する者に分かれる。
己の姿を模した、この王と名乗る存在は支配する者だ。彼女は剣を王へと向ける。
『我に刃を向けるか?不敬であるぞ』
「言ったはずだ!此処は自由を守る者の聖域だと!ここを侵させん!」
『仕方あるまい、しばらくは眠るが良い』
王と名乗った影が手をかざすと、リベラはまるで縛り付けられたかのように動けなくなってしまった。
「な、何!?」
『あの
リベラの姿を模した影は玉座へと向かって行ってしまった。
「(我が友よ!私を・・・止めてくれ!城壁の騎士、龍の爪、黒雨の騎士、銃撃士、博愛の騎士よ!)」
リベラは己が友と慕う機体達へ必死の呼び掛けをすると同時に影へと飲み込まれていってしまった。
短いですがここまでで。
楽しく学園祭を準備している裏側では着々と破滅が侵攻しています。
更にはリベラが危機に!
またもやスパロボ的イベント、システムLIOH・・・サルファ、うっ!頭が!!
因みにリベラの姿をした王はFGOの[獅子王]を思い浮かべていただけるとわかりやすいです。