Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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ラウラが仮面舞踏会に参加。

人の心を持つもう一人の仮面の戦士を助けようとする。



以上


REASON (ラウラ・ルートその1)

「うう・・ここは?」

 

目を覚ますとラウラは廃墟らしき街にある一軒家で目を覚ました。見知らぬ場所だが待機状態となっているレーゲンを通じて、今いる世界の状勢を把握した。

 

「外に出よう、閉じこもっていては場所も把握できないからな」

 

軍に在籍していた事が役に立ち、ラウラは冷静に自分の状況を把握していた。この世界は自分のいた世界ではないという事を知ってからの現状把握は最も優先されるべきことだ。

 

「しかし、なんだ?この気味の悪い植物のようなものは?」

 

街を見渡した後、ラウラは休憩を挟みながら歩き続けた。レーゲンを展開すれば楽に進む事が出来たが紫色の植物が気になり、調査も兼ねて徒歩を選んだのだ。

 

「人が住めなくなる以外の被害は出ていない・・だが、何かありそうだな」

 

自分の五感や考察を交えながらラウラは紫色の植物の調査を終え、人の居る場所を探そうとした時、爆発が起こった。

 

「うわ!?な、何だ!?」

 

空を見上げるとそこには白と赤を基調とした戦士と赤と黒を基調とした戦士が戦っており、二人の戦いは熾烈を極めており一進一退だ。

 

「ふふ、どうした?ブレード、何もできないなら今日こそ引導を渡してやる!」

 

「俺は死ぬ訳にはいかない!」

 

両刃の槍で互いにぶつかり合うが僅かながらに赤い戦士が押している。ラウラはその様子を地上から見て援護すべきか迷いが生じる。

 

「お前が拘っている人間の愛というものがお前を滅ぼすという事を教えてやろう!ブレード!」

 

「何処へ行く!?エビル!!」

 

エビルと呼ばれた戦士はスラスターを吹かし、一体のロボットと一人の女性のもとへ向かっていく、すぐに女性を見つけたエビルは槍を女性へ投擲した。

 

「アキィィィ!!」

 

「っは!?」

 

投擲された槍は真っ直ぐにアキと呼ばれた女性へ向かっていく、そのまま当たれば間違いなく即死してしまうだろう。

 

「テック!!セッターー!!」

 

「!!????」

 

「その人を殺させはせん!」

 

エビルが投擲した槍をワイヤーブレードによって弾き返し、アキの窮地を救った仮面の戦士がもう一人現れた。

 

それはシュヴァルツェア・レーゲンを展開したラウラだ。その姿はエビルやブレードと呼ばれた戦士達と酷似している為、アキは混乱している。

 

「テ、テッカマンが私を助けた!?」

 

「何!?我々の知らないテッカマンだと!?」

 

「アキを・・・助けてくれたのか?」

 

エビルとブレードも混乱していた。テッカマンはお互いの事を知り尽くしており、更には同族共鳴する事も可能なため知らないはずがないのだ。

 

しかし、目の前に現れた灰色に近い黒と赤を基調に緑のアクセントの色を持つテッカマンに関しては何も知らない。

 

「ハハハッ!そうか、そういう事か!貴様がそうなのか!」

 

エビルは何かを理解したように高笑いを上げて笑い続けていた。それをラウラは睨み続け、いつでも攻撃出来るよう警戒を解かない。

 

「興が逸れた。ブレード、今回はこれで引くとするよ」

 

「待て!エビル!!」

 

「慌てなくても決着はいずれ付けるよ、それが今回じゃないというだけさ」

 

エビルは飛行補助のユニットような物へ乗り込むと素早く撤退していってしまった。エビルが去った後、ブレードはラウラに向けてテックランサーと呼ばれる槍を向ける。

 

「お前は・・・一体誰なんだ!?何故テッカマンでありながらアキを助けた!?」

 

「・・・」

 

ラウラは答えない。下手に答えてしまえば間違いなくブレードはラウラに襲いかかってくるからだ。

 

「答えろ!」

 

「待って!Dボゥイ!」

 

「アキ!?」

 

襲いかかろうとしたブレードを止めたのはラウラに助けられたアキだった。アキはラウラに助けられた恩返しと無益な戦い争いをしない為にブレードを止めたのだ。

 

「お願い教えて、あなたは誰?どうして私を助けてくれたの?」

 

ラウラは自分が争う意思が無い事を示すためにシュヴァルツェア・レーゲンを解除した。解除した姿は裸体ではなくIS学園の制服姿であり、年端もいかない少女であった為に二人は驚きを隠せない。

 

「テックセットを解いた・・のか?」

 

「貴方と戦う意思がない事を示すためです。それに女性を助けたのは私自身の意思である事に変わりません」

 

「貴女、名前は?」

 

「ラウラ、ラウラ・ボーデヴィッヒです」

 

名前を聞いてブレードとアキは警戒を解いた。ブレードもぺガスと呼ばれるロボットを呼び寄せ、テックセットを解除した。

 

「お前、テッカマンでありながらラダムの支配を受けていないのか?」

 

「私はラダムの支配も不完全なテッカマンでもありません、似たような鎧を纏っているだけです」

 

Dボゥイと呼ばれた男性からの質問にラウラはISの事を隠しつつ、事実だけを伝えた。ISの事を伝えれば間違いなくこの世界で利用されることが確かだと確信を得ているからだ。

 

「つまり、ソルテッカマンに似たような物と考えていいのかしら?」

 

「ええ」

 

「だが、あの戦闘力は間違いなくテッカマンでなければ無理だ!」

 

Dボゥイの指摘も最もだろう、ソルテッカマンは射撃武装しかなくエネルギーとなるフェルミオン粒子が無くなれば戦えなくなってしまう。

 

しかし、ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンはテッカマンと変わらない武装と武器を持ち戦闘力もテッカマンと同等だ。

 

「私は色々な方達に特訓をしてもらい、今でも訓練を怠ってはいませんので」

 

「自分の実力という訳か」

 

「お願いがあるの、私達に協力してくれないかしら?ラウラさん」

 

「アキ!?」

 

「考えてもみて?Dボゥイ。人の心を失っておらず、時間制限も無く私達に協力してくれるテッカマンがいれば貴方の負担も軽減できるわ」

 

「っ!」

 

アキの言葉は正論だ。人の心を失っていないとはいえど自分にはタイムリミットあり、テッカマンは自分でなければ倒せず戦いの負担が大きすぎていた。

 

しかし、ラウラは自分と変わらないテッカマンそのもので協力してもらえれば二対六の戦いにする事ができ、ほんの僅かだが戦いの質を上げられる。

 

「分かりました、協力させて下さい」

 

「良いのか?」

 

「私も身を寄せられる場所が欲しかったので、ありがたい誘いです」

 

「ありがとう、一緒に着いてきて」

 

移動用の車に乗り、ぺガスは飛行でその後に着いていく。三時間後、スペースナイツ基地へと到着し案内された。

 

チーフであるフリーマン、オペレーターのミレッタ、メカニックのレビンと本田のおやっさんにもラウラは紹介され、まるで妹分が増えたようにメンバー達は感じていた。

 

 

 

 

その後、ラウラはDボゥイとコンビを組んでラダム獣やテッカマン達と激闘を繰り広げ続けた。その最中、一人のテッカマンが敵側のテッカマン達に追撃されているのを発見した。

 

「まさか、あれは・・・いや、そんなはずは!」

 

「あのテッカマン、追われている?」

 

「お、お兄ちゃん・・・」

 

「ミユキ!?ミユキなのか!」

 

「Dボゥイさん、ここは私が先に行きます!テック!セッター!!」

 

シュヴァルツェア・レーゲンを展開し、ラウラはテッカマンの姿でスラスターを全開にし飛び出した。

 

ラウラは急いで追われているテッカマンの所へ駆けつけようとしたが四人のラダムテッカマンが現れ、行く手を遮られてしまう。

 

「久しぶりだな!イレギュラー!レイピアを追っていた中で貴様と再会するとは」

 

「ほう?あれが報告にあったイレギュラーのテッカマン、裏切り者のブレードと共に居る奴か」

 

「荒削りのようだが、実力は高そうだな」

 

「ふん、ブレードと共にいる奴など大したことはない」

 

エビル、ソード、アックス、ランスの四人はラウラに視線を注いでいる。ブレードと同じ人の心を持つテッカマンを許す訳にはいかないというラダムのプライドからくるものだろう。

 

 

[推奨BGM『REASON』歌有り原曲]

 

 

「・・・私もテッカマンだ、今ここで名乗りを上げる!私はテッカマン、テッカマンレーゲン!」

 

「レーゲン、ドイツ語で雨か」

 

フリーマンはラウラの名乗った名前の意味を口にしていた。雨は恵みと厄災を与えるものだ、その名を名乗ったラウラが運んできたのは恵みか厄災かは未だにわからない。

 

「来い!ラダムのテッカマン達!Dボゥイさんが来るまでの間、私が相手をしてやる!」

 

テッカマンレーゲンを名乗ったラウラが戦闘態勢を取り、エビル達に向き合う。その言葉にラダムテッカマン達は怒りを露わにした。

 

「貴様一人で我々と戦うだと!?」

 

「舐められたものだな!」

 

「良いだろう」

 

「ならば私が先に相手になってやろう、レーゲン!」

 

先行したのはテッカマンランスだ。テックレーザーを放ちながらテックランサーで斬りかかってきた。レーザーを回避しテックランサーは手刀ブレードで受け止めた。

 

「ぐ、ううううう!」

 

「何!?」

 

「私を・・・舐めるなぁ!」

 

ラウラはランスを蹴り飛ばし、ワイヤーブレードを展開した。このワイヤーブレードこそが一人で多人数戦をこなす事の出来る要因であり最大の武器だ。

 

「な、何だ!?うわあああ!」

 

「テックランサー!ふんっ!」

 

テックランサーを取り出し、ラウラは二つの刃を連結させバトンを回すように回転させランスへと向かっていく。

 

「うおおおおお!」

 

「不完全なテッカマン如きがぁ!」

 

ランスもテックランサーで迎え撃つ。二つの刃がぶつかり合い、押しては返し、返しては押されるという攻防戦を繰り広げる。

 

「隙を見せたな!テッカマンランス!」

 

「何!?ぐわあああああああ!?」

 

ラウラが刃の競り合いを誘ったのはワイヤーブレードをによる一撃をランスに撃ち込むためだった。その誘いに乗せられたランスは大きなダメージを受けた。

 

「・・・さぁ!次だ!」

 

 

 

 

ラウラが四人のラダムテッカマンと戦っている最中、Dボゥイはぺガスの調整を手伝っていた。新装備であるハイコートボルテッカの調整が難航しているためにテックセット出来ない。

 

「急がないとミユキやラウラが!」

 

「急かすな!そんな事を言っている暇があったら手を動かせ!」

 

本田のおやっさんは慌てるDボゥイに調整を手伝えと促した。メカニック総出で調整をしているが、それでも難航している。

 

「Dボゥイ、気持ちは分かるけど手伝ってちょうだい。簡単な部分だから」

 

レビンも手を動かしながらDボゥイが手伝える部分を指示している。こうしている間にもラウラとミユキは危険な状態だ、一刻も早く調整を終わらせるために手伝いを始めた。

 

 

 

 

「はぁ・・はぁ・・・」

 

「まさか、本当に我々四人を相手に一人でランスとソードを戦闘不能にまで追い込むとはね、素直に称賛するよ」

 

「だが、ここまでのようだな?レーゲン」

 

「く・・・!」

 

レーゲンは戦闘力の高いテッカマンエビルとテッカマンアックスを前に体力切れを起こしていた。長時間のIS展開だけはラウラ自身も経験した事がなく、おまけに連続戦闘という事も相まって体力を削られ続けていたのだ。

 

「終わりだ!レーゲン!」

 

「ぬおおおお!」

 

「ぐあっ!うああああああ!」

 

エビルとアックスはテックランサーでラウラを切りつけ、エビルが腹部を蹴り飛ばして地上に落下させた。

 

「ぐ・・・う」

 

「ほう?急所と直撃だけは避けたか」

 

「なかなかの体術だ、だが」

 

エビルとアックスは追撃するためにレーゲンが落下した場所へと降り立った。それを見たレーゲンはテックランサーを杖代わりにして立ち上がった。

 

「まだ、戦うつもりかい?」

 

「エビル様、私がコイツにトドメを刺しましょう。貴方様はブレードを」

 

「任せたぞ、アックス」

 

エビルはそのままブレードが待機している基地へと向かっていった。アックスはラウラへと近づいていき、斧型のテックランサーを振り上げると同時にその刃を振り下ろした。

 

 

[推奨BGM『REASON』スパロボW アレンジ]

 

 

「死ね!テッカマンレーゲン!」

 

「わ、私は死ねない!必ず生きて帰るんだ!姉様や兄様達、そして仲間達の所へ!はあああ!」

 

ラウラはアックスが振り下ろした刃を白刃取りで止め、その底力にアックスは驚愕した。咄嗟とはいえど武術の見切り技の最高峰である白刃取りを実戦の中で見せられたのだ。

 

「白刃、取り・・だと!?」

 

「うあああああ!」

 

「うおおお!?何!」

 

ラウラはワイヤーブレードでアックスを攻撃し、間合いを開いた。奇襲をかけられたアックスは地に倒れ、ラウラはスラスターを吹かし、急いでDボゥイとエビルの居る場所へ向かった。

 

Dボゥイはテッカマンブレードにテックセットしてエビルと戦っており、もう一人のテッカマンであるレイピアはその後ろで倒れている。

 

「Dボゥイさん!」

 

「ラウラか!」

 

「ほう?レーゲン、まだ戦う気力があったか」

 

エビルの嘲りも今のラウラには通じない、あるのはDボゥイと同じエビルを倒すという目的だけだ。

 

「行くぞ!エビル!!」

 

「はあああ!」

 

Dボゥイとラウラは同時に攻撃を仕掛けるがエビルは簡単に受け流しと反撃をこなしている。ラウラはエビルと競り合いを起こすと同時に何故、彼がこんなにも強いのかというのを感じる事が出来た。

 

彼は天才でも何でもない。ただ、兄を越えたいという思いだけで努力を重ねてきた努力型の人物だったのだ。それはラウラ自身、最も共感できる事だろう。

 

己自身も出来損ないの烙印を押され、自分の努力と教官である織斑千冬の指導によって軍の一部隊である黒ウサギ隊の隊長にまで返り咲いた。

 

兄弟でも仲間でも越えたい相手は必ず出てくる。それを糧に自分も強くあろうとしている姿勢はエビルも一緒だろう。

 

「ほう?レーゲン、なかなかやるじゃないか。ブレードと同じくらいの楽しみが増えたよ」

 

「ぐ、刃を合わせた今なら分かる!このテッカマンエビルという者、強い!」

 

両刃の槍の刃をぶつけ合いエビルを押し込んでいく。ラウラの狙いは間合いを開き、距離を開けることだ。

 

「なぜだ?なぜここまで間合いを・・・!レーゲン、貴様!まさか!?」

 

「ふ、気づいたようだな!私の狙いは貴様をミユキさんから引き離し、Dボゥイさんが救出できる時間を稼ぐ事だ!」

 

ラウラの狙いに気づいたエビルだったが既に遅く、ブレードはレイピアを救出し再びエビルのもとへ向かって来ている。

 

「はあああ!」

 

「調子に乗るな!イレギュラー如きがァ!」

 

テックランサーの応酬を続け、互いに装甲を傷だらけにしながらも一切手を抜かない。テックランサーをぶつけ合い後ろへと間合いを開いた瞬間、ラウラはユニットを接続し荷電粒子砲の発射態勢に入った。

 

しかし、それを見たエビルは仮面の下で口元に笑みを浮かべていたのをラウラは知らなかった。

 

「これで終わりだ!ボルテッカァァァ!!」

 

「バカめ!!SPYボルテッカァァァ!!」

 

ラウラの放ったボルテッカはエビルのSPYボルテッカに吸収されていき、飲み込まれて逆に拡散されラウラに向かっていく。

 

「何!?私のボルテッカが!?うああああああああ!」

 

「ふん、まさかボルテッカまで使えるとはな、少しは見直したよレーゲン。でも、タカヤ兄さんとの決着も貴様との決着も今つけてはつまらないからね」

 

「ぐ・・うう・・・、なんだ・・と?」

 

「楽しみはとっておくさ、さらばだ。レーゲン」

 

「く・・・待・・・て」

 

ラダムテッカマン達は撤退していき、ラウラはその場で倒れてしまった。絶対防御機能でもSPYボルテッカの直撃で受けた為に無傷とまではいかず、全身が傷だらけだ。

 

倒れる瞬間、エビルに本当に勝つ事が出来るのだろうか、元の世界に戻る事が出来るのかと思いながらラウラは気を失った。




ラウラがテッカマンとして名乗りを上げました。

このデータ世界においてラウラはブレードやレイピアと同じように[人類の味方をしてくれるテッカマン]として認知されています。

ラダムテッカマン達からすれば全くのイレギュラーであり、自分達と同じで戦闘に時間制限が無い為ブレードと同じ危険性で警戒されています。

ラウラにブラスター化はありませんが、鈴と同じように単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の更新の可能性はあります。

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ラダムから逃れる事の出来たテッカマンレイピア、相羽ミユキはスペースナイツ基地において治療を受ける。

テックシステムによるダメージはミユキの身体の内部を蝕んでおり、テッカマンの治療方法も研究段階であった。

そんな時、確実な治療に必要となるのはラダムテッカマンのテッククリスタルである事をフリーマンから極秘事項として知らされるラウラ。

ブレードとレーゲンを倒すためにテッカマンアックスがテッカマンランスと共に現れる。

次回

『蘇るアマリリス』

仮面の下の涙を拭え!

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