Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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セシリア、オーガニックを理解し野生をものにする。

以上




セシリア個人ルート最終です。



Ground Zero(セシリア編・最終)

飛ばされた先には花畑が広がっており、一面自然に覆われていた。

 

セシリアにとってその風景は幻想的としか言いようが無かった。自分の世界では自然を見ること自体が難しく、花畑など本の世界での中だけでの想像でしか無かったからだ。

 

「綺麗・・」

 

花畑を眺めている中で勇と比瑪が互いに抱き合っているのを目撃した。二人の間には純粋な気持ちしかなく、何も卑しさがない。

 

「比瑪は強いな、その強さをブレンに分けて.くれないかい?」

 

「良いよ!ネリー・ブレンが嫌でなければ!」

 

比瑪が両腕を広げてネリー・ブレンに強さを分け与えようとしていた。その姿は同性であっても見惚れるほどに美しく映る。

 

「セシリアさん?」

 

「え?」

 

「あ・・・」

 

二人に見惚れていたセシリアは見つかってしまい、気まずそうに目を逸らした。比瑪はそんなセシリアを気にした様子もなく笑顔のまま近づいて来る。

 

「セシリアさんも、ほら!」

 

比瑪は笑顔でセシリアの手を握る、その手は暖かく力強さすら感じるようだ。

 

「セシリアさんだってブレン達と心を通わせられるんだよ?だって本当は優しいから!」

 

セシリアは比瑪の言葉を聞き、二人のブレンを見る。ブレン達は合図のように目を光らせる、それはまるで比瑪の言葉を肯定しているかのように。

 

「わたくしが・・・」

 

二人はそれぞれのブレンパワードに搭乗し、オーガニックエナジーに反応する花からエナジーを受け始めた。

 

セシリアもブルー・ティアーズを展開しエナジーを浴びる。ISであるはずのブルー・ティアーズが輝いているように感じていた。

 

蒼い雫。仲間が出来た国での呼び名、その意味をセシリアは考える。自分のISの名を何故、蒼い雫と名付けたのかと。

 

ISは宇宙へ行くためのものだと勉強した、宇宙から見た地球の映像も思い出す。蒼い地球は宇宙の中にある一滴の蒼い雫、その意味が込められているのではないかと。

 

「故郷である星の名を持つ・・・それがわたくしのIS」

 

名の意味に到達したと同時に勇とセシリアは何かを感じた。その瞬間、現れたのが白いアンチボディ、グランチャーバロンズゥだ。

 

「あれは!?」

 

「(あの時に感じた凶暴さがありませんわ。その代わり深い怨念のようなものが)」

 

バロンズゥに対し、セシリアは違和感を感じていた。ここに飛ばされる前に戦ったジョナサンから感じられた凶暴さが無いのだ。

 

フィンを展開し、勇を執拗に狙っている。その様子を冷静に観察しある結論に達した。

 

「勇さん、あれはジョナサンという方ではありません!別の誰かですわ!」

 

「何!?その者、やめろ!」

 

フィンを切り払うが瞬く間に再生し、追撃してくる。セシリアも勇を援護するがやはりチャクラシールドに攻撃が阻まれてしまう。

 

「っ!」

 

「セシリア!お前の攻撃は届かない!離れろ!」

 

「伊佐未勇、死ねよぁ!」

 

絡め取られたブレンバーを取り戻し、チャクラ光を弾丸として放つがそれすらも今のバロンズゥは意に介さず攻撃を続ける。

 

「わたくしは・・・わたくしは諦めませんわ!必ず届かせてみせます!」

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『野生化のチャクラ』発動]

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)が発動した事でセシリアはバイタルネットやチャクラの流れを読むことができるようになっていた。

 

この状況で発動した事に意味を見出す事がセシリアには出来ていた。セシリアが忘れていたのは諦めずに何かを守ること。

 

失ってしまっても自分が大切だと思うものを守っていきたいという決意こそがブルー・ティアーズの単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を発動させる鍵だったのだ。

 

「この世界でもわたくしは負けませんわ!行きなさい!ティアーズ!」

 

強化された全てを使うのではなく、ブルー・ティアーズの基本戦法に戻す事でバロンズゥと戦おうと考えた。

 

チャクラの光を帯びた弾丸はバロンズゥのチャクラシールドを貫通し、ビットからのレーザーもチャクラの光を含んでダメージを与えていた。

 

「お前も私の邪魔をするのか!?ジョナサンの敵か!セシリア・オルコット!なら、見ていなさいジョナサン!貴方の敵は私が全て排除する!」

 

「この方、もしや・・」

 

「アノーア艦長?」

 

「我が力を使え!そして、息子の為に死ねぇー!」

 

バロンはバロンズゥに自分のエナジーを吸わせ、巨大化させていく。それはまるで命を捨てる事も厭わない特攻する人間を思わせる。

 

「そんな・・自分の命を」

 

「二人共、あの人を止めないと大変なことになる!」

 

比瑪の言葉に勇とセシリアはバロンに対し、何かを感じ取った。それは親として子供に何も出来なかった後悔を出しているようだった。

 

「比瑪、合わせろ!」

 

「お前の願いは私が叶えてやる!」

 

二体のブレンパワードが並び立ち、ブレンバーを構えると同時にバロンズゥに二体分のチャクラ光を放つ。

 

「「チャクラエクステンション!」」

 

「バローーン!!」

 

「こんな事ではー!!」

 

突如としてジョナサンが現れ、守るかのようにチャクラエクステンションを弾き消した。バロンからくる思いはジョナサンへの異常なまでの思いだ。その思いを攻撃的になるまでバロンズゥへ送り続けている。

 

「落ちない?」

 

「これが怨念で戦うということですの?」

 

「勇・・・」

 

巨大化したグランチャーは三人に迫るとフィンを使い、変則的な攻撃を仕掛けてくる。刃を切り払ったり、回避し続けているがこのままでは追い詰められていく一方であった。

 

「私の思いを受けて誕生したバロンズゥは無敵である!」

 

最早、暴走と何ら変わりのないバロンは勇を殺すことしか考えていなかった。それだけが息子の望みであると解釈しているがゆえ、それしか考えていないのだ。

 

「勇さん!比瑪さん!三人のチャクラを合わせましょう!」

 

「え?」

 

「そんなことをすれば!」

 

「いいえ、あの方を戦いから解放するのにはそれしかありませんわ!」

 

「あの人を」

 

「戦いから解放するだって?」

 

二人はセシリアから聞かされた言葉に驚きを隠せないでいた。バロンを倒すのではなく、戦いから解放すると言ってきたからだ。

 

「信じてください!この機会を逃したらあの方は目的を果たしたとしても、罪悪感に囚われたままになってしまいますわ!」

 

「セシリアさん、うん!わかったよ!勇!」

 

「ああ!」

 

「いきますわよ!」

 

セシリアを中心に比瑪が左に勇が右にピタリと密着し、ブレンバーを構えセシリアは銃弾の無いライフルを構えた。

 

銃弾は必要ない、ただブレンバーに集まるエナジーを増幅させればいい。自分はそのためのトリガーだ、そうすればバロンズゥも大人しくさせる事ができると確信を得ている。

 

「1!2!3!」

 

「ブルー・チャクラ・エクステンション!」

 

「「シュートォォォォ!!」」

 

三つの光が重なり、宇宙から見た地球を連想させるようなチャクラ光が巨大化したバロンズゥを捉え、鼓動を打っている頭部を破壊すると同時に包み込んだ。

 

「何・・これは・・?」

 

「もう、良いでしょう?アノーアさん。貴女はやり直せる機会を得たのですから」

 

「セシリア・オルコット・・・貴女は」

 

「わたくしはもう、向き合うことも話すことも出来ません。でも、貴女達はまだどちらも出来るのですから」

 

蒼い光から解放されたバロンズゥは眠っているかのように動きを止めていた。それをジョナサンのグランチャーがバロンズゥを支えながら着地させていく。

 

コクピットからはジョナサンと勇の声が飛び交っている。だがセシリアはそれを見ているだけだった。自分はこの戦いで家族の複雑さ、人との向き合い方を学んだ。

 

それ以上に親が生きている二人が純粋に羨ましかった。向き合うことが出来る、やり直すことの出来る二人が。

 

「わたくしはここから離れないといけませんわね・・」

 

「やったんだよね!セシリアさん!あれ?セシリアさん・・・身体が!?」

 

比瑪が駆けつけると同時にセシリアは身体が光の粒子に包まれ始めていた。それはまるで此処に居たのが泡沫の夢であるように。

 

「わたくしの役目は終わってしまったようですわね・・・元の世界に帰らないと」

 

「帰るの?せっかくお友達になれたのに・・」

 

「何処かでまた会えますわ、きっと」

 

セシリアの表情はもう見えなくなっていた。光が大きくなり顔を覆い隠しているためだ。

 

「うん、またね!セシリアさん!」

 

「比瑪さんもお元気で。勇さんにも伝えておいて下さいね」

 

挨拶を終えると同時にセシリアは姿を消した。比瑪の顔に涙はない、あるのは笑顔と再会の約束だけだ。

 

「私は忘れないから」

 

比瑪の呟きはオーガニックエナジーに乗り、オルファンへと消えていった。

 

 

 

 

元の世界にある束の研究室、カプセルらしき装置から目覚めたセシリアは起き上がるとすぐに口を開いた。

 

「篠ノ之博士。セシリア・オルコット、帰還しましたわ」

 

「!ああ・・よかったぁ!君が帰還者第一号だよぉぉぉ!」

 

束は思いっきり安堵しており、その場でへたり込んでしまった。今の束は自分以外の人間は違った方法で生きているという一般的な認識があるため、気に入った人物以外とのコミュニケーションが出来るようになっていた。

 

「どうしたの?何かを掴んだような目をしてるけど?」

 

「いえ、自分が出来る事と欲しかった物が分かっただけです」

 

「そっか、データと機体整備するから休んでて」

 

「整備は必要ないのでは?」

 

整備をするという言葉にセシリアは疑問を抱いたが束はすぐに答えつつ、コンピュータのキーを叩いていた。

 

「束さんの勘なんだけど、機体自体が今の君に着いて行くのがやっとのはずだから整備と改修もやっちゃうよ」

 

データによる総仕上げとはいえ、本当の生き死にを経験したセシリアの変化を束は見抜いていた。今のセシリアは己の中の野生を『厳しさ』オーガニックエナジーを『優しさ』として自分の中でものにしている。

 

優雅さは競技として魅せればいい、戦場では本気で殺し合う覚悟で戦えばいい。今までの自分では考えられなかった考えを持ち始めていた。

 

初めて政征と戦った時と同じ、自分が本当に死ぬのではないかという恐怖を再び味わい、自分が何を求め、なぜ戦うのか答えも得る事が出来た。

 

「もし、再会できるならデータでの世界ではなく・・この現実でお会いしたいですわ。比瑪さん」

 

データの世界で出会った相手へ、呟いた声が届くことを願いセシリアは束の言葉に従い、休息を取る為にクロエのもとへと向かっていった。

 

 

 

 

とある孤児院。そこでは子供達の面倒を見る一人の少女が青空を見上げていた。周りには幼子達が服を掴んだりして少女に声をかけている。

 

「なんでかな?どこかで誰かと出会うような気がする」

 

少女にとってそれはただの予感めいたものだ、確信はなく記憶にもない。名前も知らない相手と出会うというただの予感。

 

そんな予感は普通ならば流してしまうだろう。しかし彼女、宇都宮比瑪は流すことをせず、子供達を説得した後に自分の大切な相棒がいる場所に歩いて行った。

 

「君も出会う予感がするの?」

 

そこにはアンチボディ・ブレンパワードが座っており、比瑪の言葉を肯定するように目にあたる部分が光りだす。

 

「きっと、良いお友達になれる人よ!ね?ブレン」

 

ブレンは再び肯定する意志を見せ、比瑪に合図する。セシリアと比瑪の想いはオーガニックエナジーの流れに乗り、消えていった。




よ、ようやく書けた・・。

個人ルートがこんなにもキツイとは思いもしませんでした。

セシリアにブレンパワードを当てた理由は「頼まれなくたって生きてやる」というキャッチコピーと家族という部分ですね。

特にクリスマスプレゼントの部分はセシリアにとって最も大人になる糧に出来たのではないかと思います。

遺産狙いの自称家族、両親の本質が分からないなど共感部分もあるかと。

もしも最初期のセシリアのままだったら、ジョナサンの言葉を全て肯定しているのではないでしょうか?

ブレンパワードの原作も観ましたが親子の擦れ違いや自分はどう戦っていくのかと、一番セシリアが成長出来る環境だと個人的に思いました。

次回は鈴ルートに入ります。

鈴にとって鍛えてもらった修行よりも辛い場面を見る事になりますね。

ラオタン島のデビルガンダムと言えば、確か二人の兄が・・・。

ひょっとした鈴がモビルトレースシステムを使うかも?

乗せる?乗せちゃいます?モビルトレースシステムに。

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