Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
以上
※補足
セシリアの個人ルートその2です。
[推奨BGM 『Ground Zero』第二次スパロボα]
ブルー・ティアーズを纏ったセシリアは白いアンチボディと戦闘を始めていた。
「ハハハハハ!やれよ!バロンズゥ!!」
「なんて、追尾スピード!それに数が多い!」
「女!オーガニック・エナジーが作ってくれた再会のチャンスをともに祝おう!」
ジョナサンが駆るバロンズゥの武器、フィンがセシリアを追尾する。
「自然溢れるこの場所で使いたくないのですが!行きなさい!ティアーズ!アーマー・ビット!」
特訓メンバーの中に、ビット兵器を扱うフェンシングの世界チャンピオンと訓練した事がセシリアにとって幸運だった。
彼との訓練によってビット兵器であるティアーズとアーマー・ビットに対し自分の精神を感応させることに成功したからだ。
しかし、特訓中に彼からも注意を受けた。
『ビットを扱う時は相手の姿を自分の中に置くのです。そうしなければ無害なものにも危害を与えてしまいます』
「ぬうう!何だこれは!?追尾兵器とでも言うのか!?」
チャクラシールドによってビットから放たれるレーザーは消されている。それでも戦えているのは特訓の成果だろう。
「ダメですわ!あの光が攻撃を消してしまう」
「行けよやぁぁ!!」
再びフィンを展開し、セシリアは回避しようとするが変則的に仕掛けられ直撃してしまう。
「きゃああああ!」
「セシリア!」
フィンに直撃したセシリアはそのまま落下してしまうが、落下する前にビットを回収し落下した。
雪が落下の衝撃を緩和してくれたおかげでセシリアに怪我はないが、戦闘が難しい状態になってしまった。
「うう・・!」
「ブレン!助けられてばかりで悔しくないのか!」
勇の喝にブレンがフラつきながらブレンバーを構える。それ見たセシリアは大声で叫んだ。
「ダメです!うっ!片手しかないそんな状態で戦ってはいけません!」
どこかを打撲した様子でセシリアは顔を顰めていた。
「逃げてくれ!セシリア!ここは!」
「ダメです!わたくしが!」
「二人共、一気に終わりにしてやる。消えてなくなれぇ!!」
ジョナサンの気迫に押されるようにバロンズゥが追撃を仕掛けようとしたが何かの光に阻まれた。
「何だ?援軍か?」
そこには従来よりも大型化したブレンパワードがおり、すぐにユウ・ブレンの傍へ寄り添った。
「お辞めなさい!バロンズゥを操る人、貴方には貴方が思うほどの力はないのです!お帰りなさい!バロンズゥ!アナタのプレートに!」
女性の声が聞こえる、その声は凛としていながらも静かで力強い声だ。
「俺のバロンズゥ!何をビビってる!?たった一人のブレンだぞ!?」
「そこの人、まだ飛べますか?飛べないのなら私のブレンの手に」
「はい、お願いしますわ」
女性が寄り添っているブレンパワードの手の上に乗り、共に去った。バロンズゥの追撃はなく、女性が住んでいるという小屋の近くに着陸した。
雪原に降りると同時にセシリアは女性に声をかけた。
「ありがとうございます、あの・・貴女は?」
「ネリー、ご覧通りの女です」
「わたくしはセシリア・オルコットと言いますわ、よろしくお願いしますね?ネリーさん」
「はい」
挨拶を交わした後にセシリアは疑問を感じていた。勇を始めとする全員の名前が浮かぶはずなのに何故、この女性だけは名前が浮かばなかったのだろうかと。
「セシリア、無事だったか」
「ええ、勇さんも。でもブレンは治すことが・・」
「ああ」
「いいえ、この子は強い子のようね。私のブレンといれば少しは落ち着くてくれるようね」
「(この人、不思議な方ですわ・・・全てを悟りきっているような、それでいて全てを包むような優しさがあります)」
セシリアはネリーの後ろ姿を見つめていた、何故か自分が惹き込まれて仕方なかったからだ。
「どうしました?」
「いえ・・・なんでもありません」
「セシリアさん、貴女は焦っていますね」
「え?」
「もうすぐ吹雪が来ます、小屋へ行きましょう」
三人は歩き出すとネリーが住んでいる小屋の中へと入った。中は一人で住むには広すぎるくらいの大きさだ。
暖炉に火を入れると温かい紅茶をネリーが淹れ、座った。勇は簡単な手当を受けると疲れが来たのか直ぐに眠ってしまった。
「いただきますわ、ネリーさん」
「ええ、どうぞ」
ネリーの淹れた紅茶を一口飲む。何故か長い溜息が出た、飲むたびに自分の中にある蟠りが消えていくような気がして仕方が無かった。
「美味しい・・不思議です、こんなに落ち着く紅茶を飲んだのは初めてですわ」
「ふふ、そんなに褒めても何も出ませんよ」
「此処に来る前にも言いましたが貴女は焦りすぎていますね、蒼い雫の訴えが聞こえないまま」
「!」
蒼い雫と言われセシリアは目を見開いた。何故この女性が自分のISの機体名を知っているのかと、束曰くこの世界は過去のデータだ。
データとはいえこの世界は生きている、それだけは信じることができた。
「ブレンと意志を交わせる貴女なら、すぐに蒼い雫の言葉が聞けるはずですよ」
「はい、ありがとうございます。それにわたくしは・・・」
セシリアはいつの間にかネリーに対し、自分の事を全て話していた。なぜ話したのか自分でもわからない、今話しておかないと必ず後悔するという予感めいたものがあった。
「そうでしたか。でも、今の貴女には信頼できる沢山の友人がいるのでしょう?勇みたいに」
「はい」
こうして会話しているがセシリアは妙な胸騒ぎを覚えた。ネリーが居なくなってしまう、それは予感ではなく確信に近いものだ。、
「ネリーさん」
「はい?」
「わたくし、貴女と出会えたことに感謝しますわ」
セシリアの言葉にもネリーは微笑みを見せているだけだった。セシリア自身も微笑みを見せる、今の二人には言葉でなくても通じ合える何かがあった。
◇
吹雪が止んだ朝、勇、ネリー、セシリアはバロンズゥに襲われていた。セシリアはISを展開し二人から離れない位置で援護している。
「く、この女!私の邪魔をするのか!」
「お二人をやらせはしませんわ!攻撃が効かなくても!」
ライフルによる射撃を展開するがバロンズゥのチャクラシールドに阻まれてしまう。
「セシリアさん、自分だけと思わないで!それでは貴女のチャクラは通用しません!」
「セシリア!ネリー!俺達の事はいい!逃げてくれ!」
「そうはいきません!」
「わたくしも逃げるわけにいきません!」
バロンズゥが展開するフィンを回避し続けるが二機のブレンは被弾し、それによって窮地に追い込まれてしまう。
「とどめは一気に受けた方が楽だぜ!勇!」
「ああっ!くっ!」
「くうう!」
「ネリーさん!勇さん!」
「女ァ!余所見をしてるヒマがあるのかぁ!」
「はっ!?きゃあああっ!?」
二人に気を取られていたセシリアはバロンズゥの放つチャクラ光に被弾してしまい。それを見届けたジョナサンはすぐにブレン達を狙う。
ネリー・ブレンの一撃がバロンズゥを引き離すと同時に何かがブレン達を包み込んだ。
「リバイバルのブレード!?」
「な、何ですの!?あの現象は!?」
リバイバル。それはブレンパワード、もしくはグランチャーが生まれ出る現象だ。しかし、二体のブレンが巻き込まれる形になるという極めて珍しい現象が起こっている。
「中で何が起こってるんですの!?動かない!どうして!?」
セシリアは向かおうとするが身体が動かない、むしろ自分のISであるブルー・ティアーズが近づかないように引き止めているような感じだ。
「カーテンの向こうで何やってる!?」
ジョナサンはブレン達がいる場所へ攻撃を続けている。しかし攻撃が届くことはない、全てが吸収されているかのように。
『勇、忘れないで憎しみだけで戦わないでね?』
「ネリー・キム!」
リバイバルの中で二人が会話している中、ジョナサンはいつの間にか撤退しており、誰かを連れて行ったようだ。
◇
勇がネリーの声を聴いている中、その声はセシリアにも聞こえていた。幻覚ではなくはっきりした声で。
『セシリアさん、貴女は自分の戻るべき世界で破滅と戦う事になるでしょう』
「ネリーさん?わたくしの世界で何が、破滅とは一体何ですの!?」
『忘れないで、破滅は憎しみや怒りでは決して倒せないの。希望と宇宙への翼である無限の成層を信じて』
会話している間にもリバイバルの光が薄れていく、少しずつ見えてくるのは青いブレンだ。
『蒼い雫の声を聴いてあげてね?貴女達はきっと掛け橋になれる』
「行かないで!ネリーさん!ネリー!!」
『貴女の力はもう目覚めています、きっとこの試練を乗り越えられるはずです』
「わたくしは・・・わたくしは貴女にお礼も言えなかったのに!」
セシリア自身も次の場所へ飛ばされる前兆のように光り始めていた。それに伴い、ネリーの姿も霞んでいく。
『この世界で貴女が倒すべき相手は怨念で戦ってきます。憎しみで戦わないで、セシリア』
「あ、あああああっ!ネリーーーーー!!」
セシリアは泣きながら必死に手を伸ばすが、その手がネリーに届くことなく、その涙と共に最終地点へとセシリアは跳ばされていった。
大切となった友人をセシリアは再び両親と同じように失ってしまいました。
ちなみにネリーは一度、セシリアの前に現れています。
次回はセシリアの個人ルートの決戦。
セシリアは倒すべき相手を倒せるのか?親と子の複雑さも学びセシリアは元の世界に戻れるのか?