Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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それぞれの特訓開始

特訓途中で戦い発生

各々が単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)を習得し発動

政征、改めて自分から告白(世界三大恥ずかしい告白レベル)

以上


大切なモノを取り戻すと嬉しいよね

アシュアリー・クロイツェル社にて特訓が開始され、それぞれ別れた。

 

女性陣は五人の格闘家達に、男性二人が四人のチームの下で特訓を始めた。

 

「久しぶりだな?鈴」

 

「はい、お久しぶりです」

 

「鈴さん、この方々と知り合いですの?」

 

「ええ、私に格闘の特訓をしてくれた人達だから」

 

「そうだったんだ」

 

「この方々はかなり強いな」

 

「言っとくけど、学園でやってたよりもかなりハードだから覚悟したほうがいいわよ?」

 

鈴の言葉に全員が目を見開くがそれでも強くなりたい一心で着いていく覚悟を固めた。

 

「あらかじめ言っておく、俺達は女といえど容赦はしないぞ」

 

ハチマキをした日本人の格闘家の言葉を合図に特訓が開始された。柔軟体操に二時間近くかけてから基礎訓練が始まった。

 

「はぁ・・はぁ・・・!!こ、こんなにハード、です・・・の!?」

 

「はぁっ・・はぁ、これ・・キツいって、レベルじゃ、ないよね!?」

 

「ぜい・・・ぜい、これは、軍隊訓練や教官、以上・・だな」

 

「みんな何言ってんのよ?この程度はまだ序盤よ?私はこの特訓を三週間だけとはいえ耐えたわよ」

 

鈴以外の三人は開始三十分で体力を使い果たしかけていた。だが、この特訓に着いてこれているだけでも賞賛されるべきだろう。

 

「道理で、タフなはずだよ・・」

 

「この特訓に・・・耐えられたなんて」

 

「だが、これを乗り越えれば強くなれる確信がある」

 

三人の中で回復が早かったのはラウラだった、軍隊訓練を乗り越えてきた成果だろう。

 

「さぁ、強くなりたいなら休んでる暇なんてないわよ?(私もあの境地に至りたいから)」

 

「負けませんわ、絶対に!」

 

「僕だって、義姉さんを越えるんだ!」

 

「私も姉様を助けるために強くなる!」

 

全員が気力を出し、特訓を再開した。それを見ていた五人の格闘家は見守るように眺めていた。

 

「チャイナガールは怠っていなかったみたいだな?でも、他のガールズは鍛えなきゃダメか」

 

「仕方ないよ、見てると鈴以外の三人は最初の頃の鈴と同じだもん」

 

「みたいですね、ですが今回は時間がありますから」

 

「ああ、かなり鍛え込む事が出来る」

 

「(鈴は明鏡止水に自力では至れていないようだな、今回でモノに出来ればいいが)」

 

五人の格闘家はそれぞれ四人をどうやって鍛え込むかを考え、特訓を見守った。

 

 

 

 

 

政征と雄輔の二人は特殊隊の四人にISを展開するよう指示を受け、後に軽い模擬戦をするようにも指示を受けた。

 

模擬戦の後、ISを待機状態にすると同時に赤髪の女性に思いっきり頭を殴られた。

 

「「痛ったぁ!?」」

 

「なにやってんだい!お前達は!?」

 

女性はかなりの剣幕で怒っている、どうやら機体の扱いに関してのようでまた拳を握る。

 

「お前達、自分のISをなんだと思ってるんだ!使いこなそうとして強引に動かしてるじゃないか!!」

 

「俺達が・・」

 

「強引に?」

 

「ああ、機体ってのは操縦者と共にあるんだ。今のアンタ達は無理やり機体を自分に従わせようとしてんだよ」

 

女性の言葉に衝撃を受けた。自分達がやっていた特訓が機体との親和ではなかった事実に。

 

「これからみっちりと鍛えてやるよ」

 

「俺達全員でな」

 

更に二人の男性が加わり、四人が政征と雄輔に視線を向ける。その目は優しさと同時に野性的な力強さも持っている。

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 

 

IS学園のメンバーが修行を始めてから三週間が経ち、ある施設ではカロ=ランが兵を呼び集めていた。

 

その兵はIS委員会から送られてきた女尊男卑を旨とするメンバー達だ。彼女達は女性だけの社会というスローガンを掲げている。

 

「わざわざ御足労いただき感謝しますぞ」

 

「いえ、貴女のような方が我々に賛同してくれたのはありがたい」

 

部隊の隊長とカロ=ランは握手を交わし、これからの作戦を話し合う。

 

「では、織斑一夏以外の男性操縦者を抹殺すると?」

 

「それが一番の宣伝になりましょう」

 

隊長の目的を聞いたカロ=ランは利用できると考え、その提案に乗る事にした。

 

「では、三日後に再び出撃させましょう。よければシャナ=ミア嬢を使っていただきたい」

 

「何故です?」

 

「男性操縦者の一人にぶつければ確実に始末できますゆえ」

 

「分かりました、他の二人も?」

 

「ええ」

 

出撃に備えてISの整備をするよう呼びかけ、備えるように放送した。

 

 

 

 

「やあああああ!」

 

「てやあああああ!」

 

その頃。鈴と日本人の格闘家は拳の応酬をしており、拮抗している。

 

「す・・すごい!」

 

「わたくし達はようやく、慣れてきたところですのに」

 

「あそこまで食らいつくとは・・」

 

休憩をとっている三人は鈴の食らいつきに舌を巻いていた。鈴がどんな相手にも食らいついていく姿勢を忘れなかった理由がはっきりしたからだ。

 

「あれがチャイナガールの良さなのさ。どんな相手でも食らいついて行く強さがある」

 

「お前達はまだ基盤が出来たに過ぎん、その上に自分だけの強さを重ねていけ」

 

ボクサーの格闘家が話しかけた後、パワーファイターの格闘家が三人に話しかけ、精神的フォローをした。

 

どんなに強がっていても十代の少女達だ、追い抜かれる事は彼女達にとって暴走の要因となってしまう。

 

この格闘家は仲間を大切に思い、守りぬくという信念を持っている、その為に精神的フォローが上手い。

 

「さぁ、ガールズ達。休憩は終わりだ」

 

「次はオイラが稽古をつける番だ!油断してると怪我するぞ!」

 

「「「はい!」」」

 

三人は休憩を終えて、少林寺拳法を使う格闘家の稽古を受け始めた。

 

 

 

 

「たああああ!」

 

「甘い!」

 

鈴の一瞬の隙を見抜き、日本人の格闘家は鈴の腹部に拳を打ち込み。その瞬間、鈴は怯み膝を着いた。

 

「ぐっ!」

 

「ここまでだ、熱くなりすぎているぞ?鈴」

 

「あ・・・」

 

「明鏡止水に今のお前では至れないぞ」

 

「どうしてですか!?」

 

「お前は何をそんなに熱くなっているんだ?」

 

「そ、それは」

 

鈴は熱くなってしまう原因が自分で分かっていない。

 

彼女が熱くなる原因、それはどうしても倒したい相手がいるからだ。

 

その相手とはラフトクランズを駆る二人の騎士だった。彼女にとって超えたい壁が彼らだ、倒せそうで倒せないというのは彼女にとって最も辛いのだ。

 

「鈴、一度だけ俺の明鏡止水を見せてやる」

 

「え?」

 

「・・・・」

 

ハチマキを締めた日本人の格闘家は智拳印(ちけんいん)を結び、精神を集中させる。

 

智拳印(ちけんいん)とは仏教における金剛界の大日如来が結ぶ印で一切の煩悩、無明を滅し仏の智恵を意味するものだ。

 

己を鍛え続けている鈴には彼の状態が分かった、怒りも憎しみも悲しみも彼からは感じない。

 

あるのは純粋な戦う相手への敬意だけ、穏やかで澄んだ心の境地を見せられた鈴はその姿を瞬きもせず見ていた。

 

「お前に足りない物が掴めたか?」

 

「まだ、分かりませんけどきっかけは掴めた気がします」

 

「そうか」

 

普段の状態に戻った日本人の格闘家は今日の修行を切り上げる事を鈴に伝え、出て行った。

 

「そっか、倒したいと思ってるだけじゃダメなんだ。相手への敬意が足りてないんだ・・・私」

 

鈴は先程、日本人の格闘家が結んでいた智拳印(ちけんいん)を結び、目を閉じて自分が倒したいと思っている相手への敬意を抱いた。

 

「(あれ?この感じ・・・あの時と一緒?川の流れ、静かな流れ・・見えた!水の一滴!)」

 

その瞬間、待機状態となっている爪龍が僅かに輝いた。

 

「明日、試してみよう」

 

鈴は吹っ切れた様子で訓練室から去った。

 

 

 

 

鈴が去った二時間後。シャルロットは特訓の途中でカルヴィナに呼び出されISを纏って来るよう言われたのだ。

 

「来たわね?」

 

「カ、カルヴィナ義姉さん!?どうしてISを纏ってるの!」

 

今のカルヴィナはベルゼルートのようなISを纏って立っており、その目には闘志が宿っている。

 

「ああ、これ?束に頼んだのよ。ISでベルゼルートを再現してくれって」

 

「篠ノ之博士に?」

 

「そうよ、シャル。アンタに私の呼び名を継承出来る実力があるかテストしたくなってね」

 

「カルヴィナ義姉さんの呼び名?もしかして!?」

 

「ホワイト・リンクス、それが私が呼ばれている呼び名よ。今でも現役だけどね」

 

「全戦全勝の白い山猫・・・」

 

シャルロットは身体が震えていた。自分に射撃の技術を鍛えてくれたのはこの人だ、その人が自分を越えてみせろと言ってきている。

 

「義姉さん・・・いや、カルヴィナ・クーランジュ!僕は貴女を越えてみせる!」

 

ベルゼルート・リヴァイヴの拡張領域からオルゴンライフルNとBを両手に構える。

 

「私を越える・・か。やれるもんならやってみなさい!」

 

「行くよ!義姉さん!!」

 

「来なさい!」

 

シャルロットとカルヴィナ、二人の銃口が火を噴きそれが開戦の合図となった。

 

「オルゴンライフルB、N!ダブルシュート!!」

 

実体と非実体の弾幕を展開しカルヴィナに迫っていく。しかし、カルヴィナはそれを知り尽くしているかのように回避してしまう。

 

「確かに成長してるけど、動きのクセまでは直せない!ショートランチャー!」

 

小銃のような武装を両手に持ち、正確な射撃を繰り出しシャルロットを狙い撃ってくる。

 

「嘘!?義姉さんが二丁射撃を!?うわああ!」

 

「確かに私はシングルの方が得意よ?でも、二丁射撃が出来ないとは言ってないわ」

 

カルヴィナの予期せぬ射撃に当たってしまうがシャルロットはすぐに持ち直し、銃を構えなおす。

 

「山猫の目は逃げ水に惑わされない・・か」

 

「そういう事、諦める?」

 

「ふふ、冗談キツいよ。こんなにも越えたい人が身近に居たんだ。ますます越えたい!」

 

シャルロットは笑みを浮かべていた、越えるべき目標を見つけた事による高揚からくるものだった。

 

「なら、来なさい!」

 

「もちろん!」

 

再び弾幕を展開し、カルヴィナへ撃ち込んでいく。回避されてしまうがそれがシャルロットの狙いだった。

 

「そこだ!」

 

「何!?グレネードか!うあっ!」

 

弾幕をわざと囮にし、グレネードを投げていた地点におびき寄せダメージをあたえたのだ。

 

「ふふ、やるじゃない」

 

カルヴィナがショートランチャーを収め、オルゴンライフルを手にする。それはカルヴィナが本気になった事を示していた。

 

「シングルのオルゴンライフル・・・僕が一度も勝てなかった本気の義姉さん」

 

「シャル、行くわよ?」

 

カルヴィナの目は姉としてではなく、好敵手に見せる目をしている。それだけ本気にさせてしまったという事でもある。

 

「オルゴンライフルB、そこだ!」

 

オルゴンのエネルギーで狙い撃ちし、ベルゼルートが接近してくる。

 

「まずい!接近戦の切り替えが」

 

ビーム状のエネルギーを回避しつつ、シャルロットは接近戦用の銃器を取り出す。

 

「遅い!ブレード!」

 

オルゴンライフルのエネルギーを瞬間的に出力し、それを刃のように扱い斬りかかった。

 

「ううっ!?しまった!避けたらバランスが!」

 

「まだまだぁ!」

 

横薙ぎを避けられたがすぐさま縦の唐竹割りに切り替え、斬りかかる。

 

「そんな!わああああ!!」

 

カルヴィナがライフルのエネルギーを利用した剣撃戦闘をしてくるのが予想外だったのだ。それによってシャルロットは直撃を受け、SEを削られてしまう。

 

「ビームにはこんな使い方もあるのよ、撃つだけが全てじゃないわ」

 

「負けない、義姉さんを越えるって決めたんだ!負けてたまるもんか!」

 

「その不屈、嫌いじゃないわよ」

 

シャルロットは立ち上がり、その目の闘志は微塵も薄れていない。

 

「行くよ!」

 

実弾のライフルに切り替え、カルヴィナの周りを撃っていく。

 

「この程度じゃ牽制にもならないわよ!」

 

「百も承知だよ!僕の狙いは牽制じゃない!」

 

シャルロットは拡張領域からグレネードをばら撒いた。

 

「それだ!」」

 

「グレネード?同じ手は!な!?くあああ!」

 

シャルロットの狙いはグレネードに自分の銃弾を撃ち込み、爆発させることだった。

 

「今だ!義姉さん、これが僕の全力全開だァァァァ!!」

 

シャルロットはゼロ距離で両手のライフルを全て撃ち込んだ。

 

「うあああああ!!」

 

ベルゼルートとベルゼルート・リヴァイヴは損傷し、二人は動けなくなっていた。

 

「ふふ・・ゼロ距離の全開射撃なんて、初めて貰ったわよ」

 

「結局越えられなかったかな、僕」

 

「そうね、お互い戦闘不能で引き分け。と言いたいけど私の負けよ」

 

「え?」

 

「よく見なさい、お互いにSEがギリギリだけど僅かに私が下回ってるの。些細な事だけど負けは負けよ」

 

「え、じゃあ・・」

 

「二代目ホワイト・リンクスの名、貴女に譲るわ」

 

カルヴィナからの言葉にシャルロットは驚きを隠せなかった。ホワイト・リンクスの名を自分が継承したという事が信じられなかったからだ。

 

「カ、カルヴィナ義姉さん!」

 

「すぐ泣くんじゃないの!頑張りなさい、私の後継者」

 

カルヴィナがアル=ヴァンにしか見せなかった笑顔をシャルロットに向けている。

 

「(カルヴィナ義姉さんの笑顔ってこんなに綺麗だったんだ)」

 

その綺麗な笑顔を写真に撮れなかった事を残念に思いながら、シャルロットはホワイト・リンクスの名を守ると誓っていた。

 

誓いを受け止めたベルゼルート・リヴァイヴはその名を冠した能力を得ようとしていたが、シャルロットがそれに気づくことはなかった。

 

 

 

 

カルヴィナとシャルロットが戦っている間、セシリアは赤髪の女性から指導を受けていた。

 

「アンタも焦ってるね、機体を自分の思い通りにしようと考えてるよ」

 

「やはり、自分でもわかってはいるのですが」

 

「そうだね。アンタは一回、死ぬ寸前まで追い込まなれないとダメだね」

 

「え?」

 

「ISを展開しな。アタシも借りてくるよ」

 

赤髪の女性は訓練用のISを借用し、セシリアもブルー・ティアーズを展開した。

 

「これから攻撃を開始するけど、アンタは回避だけしな」

 

「そんなっ!?」

 

「ほらほら、行くよ!」

 

赤髪の女性が借りてきたISには大量のマシンガンやフルオートのライフルや弾薬がそばに置いてある。

 

本気でセシリアを死ぬ寸前にまで追い込もうとしているのだ。

 

「戦場で合図なんてないよ?ほらほらぁ!本気で避けないと

!!」

 

「きゃあ!」

 

セシリアは弾幕を回避し始めるが、正確な射撃に少しずつ当たり始めてしまう。

 

「あうううう!」

 

「甘ったれてんじゃないよ!」

 

回避し続けているがSEが削られていき、後一撃で機能停止するという状態まで追い込まれてしまう。

 

「うう・・ああああああ!!」

 

「絶対防御?そんなもんエネルギーが切れちまえば意味がないんだよ!!」

 

赤髪の女性は情け容赦なく銃撃を続ける。セシリアは機体とISスーツの防弾仕様によって守られてはいるが動けないのは明白だ。

 

「く・・・あ(嫌・・嫌です、死にたくない、負けたくない、追いつきたい!)」

 

「このままだと本気で死ぬよ!」

 

「いゃ・・で・・す・・わ!」

 

セシリアは本当に死ぬ事を自覚し、それと同時に心の底から死にたくないと願った。

 

「わたくしは・・・わたくしは死にたくない!!」

 

追い込まれたセシリアは自分の中に眠っていた『野生』とチャクラを自覚しブルー・ティアーズと共に動けないハズの状態で回避した。

 

「うう・・い、今のは?」

 

「目覚めたね?アンタの中の『野生』もう一つは・・どっかで見たことあるけど忘れちまったね」

 

「わたくしの『野生』・・・」

 

「優雅に戦おうと考えず、たまにはがむしゃらに戦ってみなよ。戦いで優雅さなんて捨てちまったほうがいい」

 

「・・・はい!」

 

野生とチャクラ、二つの力の影響を受けブルー・ティアーズの中のコアが僅かに輝いた。それはセシリアが今まで自分で付けていた枷を解き放ったということだ。

 

「(優雅さを捨てて戦う、この特訓の間にやってみせますわ)」

 

 

 

 

 

セシリアが野生を自覚した後、別の場所で政征と雄輔も己の『野生』を引き出し、模擬戦を行っていた。

 

「うおおおお!」

 

「でやああああ!!」

 

互いに得意とするのはオルゴンソード、鍔競り合いをしておりお互いに一歩も引かない。

 

「二人共、見違える程に動きが良くなってきているな」

 

「ああ、最初の時が嘘みたいだぜ」

 

「すごいったらありゃあしないって」

 

模擬戦を見ている三人の男性は二人が成長しているのを感じていた。機体制御を赤髪の女性から指導され、格闘と射撃をこの三人から鍛えられた。

 

「た、大変です!」

 

飛び込んできたのはラウラだった、ここまで急いで走ってきたのだろう息が弾んでいる。

 

「模擬戦中止!どうした!?」

 

「IS委員会の奴らが政征兄様と雄輔師匠を引き渡せと上空から要求してきています!」

 

「なんだと!?」

 

「そいつは本当か!?」

 

「マジでやばいな、それ」

 

ラウラの言葉に三人は苛立ちを隠せない様子だ。更に要求に関してラウラは付け加えた。

 

「更には私達四人と政征兄様、雄輔師匠だけで出て来いと」

 

「そうか・・恐らくはカロ=ランが仕向けたか。シャナを取り返すチャンスだ」

 

「更には俺達の機体の接収と実験体にする気か」

 

「政征兄様」

 

「ラウラ、行くぞ?シャナを取り戻すためにね」

 

「!はい!!」

 

「親友の恋人を取り戻す手伝いっていうのも悪くないか」

 

三人はセシリア、鈴、シャルロットとも合流し外へ出た。外には量産型のISを纏った数十人の女性と一夏、箒、シャナの姿があった。

 

その中で隊長機らしきISを纏った女性が言葉を発した。

 

「出てきたか、要求通り赤野政征と青葉雄輔の二人を引き渡してもらおう」

 

「断るわ!」

 

「何?」

 

鈴の言葉に上空にいる女性全員が驚いた。女性が男性を庇うなど彼女達にとってありえない事だからだ。

 

「貴女達の要求に応える義務はありませんわ!」

 

「君達は女性でありながら男の味方をするというのか!?ISという女性の象徴を纏いながら!」

 

「関係ないよ、僕達はこの二人と特訓を通じて女性も男性も関係ないというのを学んだからね」

 

「シャルロットの言う通り、兄様達がISを動かせたという事はISも先へ行く事を望んでいるのだ!」

 

「ふざけた事を!ISは我らの象徴だ!男など抹消すべきだ!」

 

女性達が宣言したと同時にIS学園のメンバー達もISを展開する。

 

「来なさい!ブルー・ティアーズ!」

 

「来て!爪龍!」

 

「リヴァイヴ!力を貸して!」

 

「レーゲン!テックセッター!」

 

一人だけ何かが違うような気がするが政征と雄輔はあえてツッコまなかった。

 

「目覚めろ!モエニア!」

 

「行くぞ!リベラ!」

 

全身装甲が三人、通常のISが三人というそれぞれの展開を目の当たりにし量産型を纏っている女性達は驚きを隠せない。

 

「(リベラ、今回は顔は覆わないでくれ)」

 

『了解した』

 

ラフトクランズ・リベラだけは全身装甲の顔部分だけを展開したままになっている。

 

「総員!戦闘開始だ!!」

 

隊長機の宣言と同時に戦闘が開始された。

 

「政征さん、私達が敵を惹きつけます!早くシャナ=ミアさんの所へ!」

 

「セシリア!?」

 

「アンタはシャナ=ミアの騎士でしょ!?囚われのお姫様を助け出すのが騎士の役目じゃないの!」

 

「鈴!」

 

二人の言葉に政征は頷き、シャナのもとへと向かうが他の女性達に阻まれてしまう。

 

「今度は僕の番だね、早く!シャナ=ミアさんの所に!」

 

「シャルロット・・・!」

 

「ふふ、二代目ホワイト・リンクスを信じてよ、ね?」

 

「っ・・ああ!」

 

政征はシャルロットに場を任せ、雄輔、ラウラと共にシャナのもとへと向かっていく。

 

「来たな、赤野!」

 

「織斑一夏・・・!」

 

「シャナ=ミアさんの所へは行かせねえぞ?うおおおお!」

 

一夏が雪片弐型を手に政征へと突撃するが、その刃を黒い雨の仮面を着けた少女が両刃の槍で止めた。

 

「政征兄様!ここは私が引き受けます!早くシャナ=ミア姉様を!」

 

「この全身装甲の操縦者、ラウラか!?」

 

一夏の刃を止めながらラウラは政征に話しかけていた。兄の道を自分が作り、姉のもとへ向かわせるために。

 

「ラウラ・・」

 

「私ではシャナ=ミア姉様を助けられません!助けられるのは政征兄様だけなのですから!」

 

「わかった!」

 

「な、待ちやがれ!」

 

「行かせるか!」

 

「く、ラウラ!!」

 

政征は一夏の相手をラウラに任せシャナのもとへと急いだ。ラウラは両刃の槍をバトンのように回し構えると一夏へ突撃していく。

 

 

 

 

 

「俺は篠ノ之箒を惹きつける。シャナさんを絶対に助け出せ!」

 

「!わかった!」

 

モエニアを纏った雄輔は途中で方向転換し、箒へと向かっていく。政征が向かった先にその相手がいた。

 

「シャナ・・」

 

「ラフトクランズ・リベラ。今度こそ!うう・・」

 

シャナは頭を押さえながらテンペスト・ランサーを展開する。政征もソードライフルをソードモードに切り替え、構える。

 

「必ず助ける、待っていてくれ!オルゴン・マテリアライゼーション!!」

 

「喋らないでええええ!!」

 

シャナの突撃と同時に政征も突撃し、戦闘が始まった。

 

 

 

 

政征とシャナが戦いを始めている最中、セシリアは戦い続けていた。

 

「狙撃だけに拘っていたわたくしが愚かでしたわ!華麗さなどもう必要ありませんわ!」

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『野生化のチャクラ』習得・発動]

 

「はあああああ!!」

 

「な、なんだあれは!?」

 

セシリアはビットを展開し、ライフル射撃と同時に攻撃していく。かつて優雅さを魅せていたセシリアの戦い方ではなかった。

 

「やあああああ!!」

 

「わああああ!」

 

セシリアはそれでも殺しだけはしていなかった、ISだけを戦闘不能にしパイロットだけは無傷だった。

 

「わたくしは殺しがしたくて強くなろうとした訳ではありません!さぁ、来なさい!」

 

セシリアの恫喝はIS委員会の女性操縦者達を怯ませている。今の彼女に優雅さは無い、人間が失ってしまった野生の力を振るう一匹の獣となっていた。

 

 

 

 

「たぁ!」

 

「ぐあ!」

 

鈴は格闘でISを戦闘不能にしていたが自分の中に出てくる熱さを抑えていた。

 

「(ダメ、どうしても倒したくなってくる)」

 

「もらったぞ!!」

 

「え?きゃあああ!」

 

鈴はライフルで撃たれ、SEを削りながらも体制を立て直した。だが、その目には自分を撃った相手への怒りが宿っている。

 

「よくも!やったわね!だああああ!」

 

「ふん、すぐ熱くなるのが癖のようだな!」

 

「はっ!?」

 

攻撃を回避しながら自分の癖を指摘され、改めて鈴は自覚させられると同時に深呼吸した。

 

「ふうううう・・・はぁぁぁぁ・・・!」

 

精神を落ち着かせた鈴は智拳印(ちけんいん)を結び、目を閉じる。

 

「(思い出すのよ、あの一瞬を・・・。水の流れ、見えた!水の一滴!!)」

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『明鏡止水』 習得・発動]

 

爪龍が輝き、鈴の表情からは怒りが消え穏やかになる。

 

「だああああ!ブラキウム・レイドォ!」

 

「なんですって!?きゃああ!」

 

オルゴナイトの結晶を纏った拳で自分のクセを見抜いていた相手を殴り飛ばした後に、次々と相手を倒していく。

 

「来なさい、みんな倒してあげるわ!」

 

 

 

 

「山猫からは逃げられないよ!」

 

シャルロットは一対多数でありながら、相手を追い詰めていた。高機動を利用した二丁射撃、長距離の実弾狙撃。

 

あらゆる射撃を使いこなし、次々と戦闘不能にしていく。

 

「山猫だと?この動き、どこかで・・まさか!」

 

一人の女性がその姿に誰かと重ねていた。それはかつて一度だけ軍に席を置いた時に見た事があった。

 

獲物を狙う山猫のごとく、相手を仕留め、戦いにおいて全戦全勝を打ち立てた女性がいた。

 

「ホ、ホワイト・リンクス・・・カルヴィナ・クーランジュ!」

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『ハンター・ホワイト・リンクス』 習得・発動]

 

「これが僕の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)・・・行くよ!」

 

発動した能力によってロックオンプログラムが向上し、エネルギー消費が最小限になっている。

 

「二代目ホワイト・リンクス!シャルロット・デュノア!ここから先は行かせないよ!」

 

その姿はカルヴィナ本人がシャルロットと重なって見え、女性達に戦慄を覚えさせていた。

 

 

 

「うおおおお!」

 

「はぁああ!」

 

一夏とラウラの戦いは一夏が僅かに押されていた。彼が押されている要因は男は女よりも弱いという認識だった。

 

更には姉の剣を受け継ぎ、カロ=ランの下で訓練したことで自分が強くなったと確信を持っていた。

 

「くうう!」

 

「おらぁ!!」

 

一夏の一撃を受けてしまい、ラウラは体制を崩してしまう。

 

「でやああああ!!」

 

「うわああああああああ!!」

 

追撃を受けたラウラは落下してしまうがすぐに持ち直し、間合いを開く。

 

「貴様は・・貴様はシャナ=ミア姉様のなんなのだ!」

 

「シャナ=ミアさんは俺が守る人だ!誰にも傷つけさせはしない!」

 

「けるな・・・!」

 

「なんだよ!?ラウラ」

 

「ふざけるな!それはお前の理想を押し付けているだけではないか!」

 

ラウラは怒りを覚えると同時に、過去の自分と一夏が重なって見えていた。

 

かつて自分自身、織斑千冬に憧れ、千冬の強さを自分の理想として押し付け、強さ以外の千冬の感情を認めなかった。

 

それと同じように一夏はシャナ=ミアに対し、弱さ以外の感情を認めようとせず自分の理想を押し付けている。

 

「今のお前はかつての私だ!姉様を理想の弱者とし、自分が守る事に酔っているに過ぎん!」

 

「それの何が悪いってんだよ!女の子を守るのは当然のことだろ!」

 

その言葉がラウラの中にあった一本の糸を切ってしまった。

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『マスカレード』発動]

 

「ぬうあああああああああ!」

 

単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)の発動と同時にシュヴァルツェア・レーゲンという仮面を着けたラウラの姿が更に変わっていく。

 

それは記憶や肉体を代償に戦い抜いた二人の仮面の戦士が行った進化(ブラスター化)と似ている。

 

「な、なんだよあれ!?三次移行なのか!?」

 

「ぬおおおおおお!うああああ!」

 

赤と緑の輝きがシュヴァルツェア・レーゲンから発生し、背から尻尾のような触覚と翼のような物が現れ変化が終わる。

 

その能力はAICに使うエネルギーをブースターの出力強化に回し、ワイヤーブレードの強化だ。戦闘特化型の状態になったと言っていいだろう。

 

「行くぞ!」

 

「は、早い!?」

 

「言っておくがこれは三次移行ではない!純粋に戦闘に特化した姿だ!」

 

男の筋力に女は勝てない、それならば別の方法で補えばいいという柔軟な発想が今のラウラにはある。

 

「それでも負けねえ!」

 

「私も負けん、この仮面は私の決意の証だからだ!!」

 

二つの刃がぶつかり合い、新たな舞踏会が開演された。

 

 

 

 

「シャナ・・」

 

「たあああ!」

 

政征は戦闘開始から剣を持ったまま回避だけしかしていなかった。恋人だから攻撃できない訳ではなく何かを伺っている。

 

「どうして、どうして反撃しないのです!」

 

「・・・・(まだだ)」

 

「たあああああああ!」

 

「・・今だ!」

 

一瞬の攻防の中で政征はシャナを抱きしめるような形でテンペスト・ランサーを止めていた。

 

「は・・離しなさい!」

 

「シャナ・・今でも身につけてくれてるんだな」

 

「・・はっ!?」

 

政征はプレゼントしたペンダントを見た後に視線をシャナへと戻した。

 

「シャナ、今度は俺から言うよ」

 

シャナを抱きしめたまま、政征は口を開いた。その目には自分の思いを伝えようとする為に。

 

「俺は、俺は君を愛している!」

 

政征からの告白を受け、テンペスト・ランサーがその手から滑り落ちていった。

 

この時、オープンチャンネルで告白してしまったために戦闘している全域で聞こえてしまっていた。

 

「政・・・征?」

 

「シャナ!」

 

「政征!!」

 

シャナの目に光が戻り、全ての記憶が戻った。その目からは涙が流れている。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい政征!私、貴方を傷つけて・・!」

 

「良いんだ、シャナ。おかえり」

 

政征はシャナの涙を受け止めた。ようやく取り戻した大切な人を決してもう離さないと誓いを新たにして。




書いていたら一万字を超えてしまっていた。

全員が覚醒、これもう勝てるメンツいないんじゃ・・・。

シャナ=ミア皇女は世界三大恥ずかしい告白されました。

ラウラの変化は変形みたいなものです、三次移行はしません。

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