Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉   作:アマゾンズ

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雄輔、二次移行を果たし、フー=ルーとの愛が成就

学園長の意外な繋がりと正体。


以上


悪い勧誘は断るに限るよね

学園から離れた雄輔は自分が最初にこの世界に来た時の山へと向かい、その麓の町に到着していた。

 

「あの時以来か・・・」

 

「(随分と追い詰めた顔してるのね?)」

 

「(!神様か・・しばらく見ないと思えば)」

 

「(ふん、気まぐれよ)」

 

「(そうか、とりあえず山へ行かないとな)」

 

『(気づいていないのね、アンタも目覚めかけてるのに)』

 

その呟きは風に流され、聞こえることはなかった。雄輔は自分が修行していた場所にたどり着き、修行を始める。

 

「はぁ・・はぁ・・俺は」

 

雄輔は上半身だけ服を脱ぎ、自分の体重を支えられる枝を見つけるとぶら下がって腹筋を始めた。

 

要である肉体を鍛えれば、何かを掴めるかも知れないと信じて。

 

 

 

 

 

フー=ルーは学園長のもとへ行き急いでいた。今は没収されている自分の専用機であるラフトクランズ・ファウネアを取り戻すために。

 

「やはり来ましたか、フー=ルーさん」

 

学園長の顔はようやく来たかといった感じの様子で待っていたようだ、机の上には待機状態になっているファウネアが置かれている。

 

「学園長 私は」

 

「分かっていますよ。私の友人から懇願されましてね、貴女に剣を返還して欲しいと」

 

「え?」

 

フー=ルーは理解が追いついていなかった、学園長自らが謹慎処分を受けている自分に剣を返還すると言っているのだから。

 

「私は貴女の会社の重役の方と数年以上の友人でしてね、その友人は貴女もよく知っている方ですよ」

 

「よく知っている?まさか!?」

 

「急いでください、このまま学園の騎士達を失う訳にはいかないのです」

 

「っ・・ありがとうございます!この恩は必ず」

 

フー=ルーは返還されたファウネアを手にし、学園長がいる部屋から飛び出していった。

 

それを見送った後、学園長は受話器を取り友人のもとに連絡を入れた。

 

「約束通り、彼女に剣を返還しました。これで良かったのですか?」

 

「ああ、すまないな。嫌な役を押し付けて」

 

「いえいえ、これも上に立つ者の役目です。しかし」

 

「ん?」

 

「同胞が皇女とフー=ルーさん以外に純血とハーフがこの学園に来るとは思いませんでしたよ」

 

学園長の言葉に電話越しの人物は軽く笑っていた。

 

「ははは、確かにね」

 

「では、今後もよろしくお願いしますよ?セルダ(・・・)

 

「ああ、こちらこそ」

 

受話器を置くと学園長は立ち上がって窓の外を見た、その視線の先には一筋の飛行機雲が見えていた。

 

「頼みますよ、次世代の同胞達・・・そして共存の架け橋となる者達」

 

その表情は子供を見守る親のように慈愛に満ちていた。

 

 

 

 

 

学園長が電話を終えた一時間後、雄輔は特訓と着替えを終えて待機状態のモエニアを見つめていた。

 

「どうすればいい・・モエニア、俺は」

 

「ならば、私と来るがいい」

 

「!!」

 

その声は親友の恋人を奪っていった女の声、いや記憶の中では男性だった人物の声。

 

「カロ=ラン!!」

 

「何を驚く?お前に力を授けてやろうというのに」

 

「ふざけるな!お前の、破滅の力など望まん!」

 

雄輔はカロ=ランの誘惑を跳ね除けるかのように声を荒らげた。

 

「ふん、ならば倒すしかあるまい!」

 

「ちぃっ!」

 

雄輔はモエニアを展開し、カロクアラを展開したままのカロ=ランと空中戦を始めた。

 

「オルゴン・マテリアライゼーション!」

 

ソードライフルをソードモードに切り替え、スラスターを全開にしカロクアラへと突撃する。

 

モエニアの斬撃をシールドクローで受け、カロ=ランは余裕の表情を浮かべている。

 

「貴様の焦りが伝わって来るぞ?くく・・城壁の騎士よ」

 

「ぐ・・黙れェェェェ!!!」

 

「そのような動きで」

 

もう一方のシールドクローでカウンターを繰り出し、展開せずにモエニアを殴り飛ばした。

 

「がはァァ!?」

 

地上への落下だけはしまいとスラスターをふかし、姿勢を維持する。だが、それでも受けたダメージが大きかったのか肩から出血している。

 

「ぐ・・・ぅ・・・」

 

「共に来い、お前の力が必要だ」

 

今のカロ=ランからは雄輔にとって魅力的な誘い文句が紡がれている。

 

その誘いに乗りそうになったその時、オルゴンエネルギーが二人の間を通り抜けた。

 

 

 

 

雄輔が誘いに乗りそうになる30分前。

 

IS学園から飛び出していったフー=ルーはファウネアを展開し、モエニアの反応を頼りに限界値ギリギリの高さを飛んでいた。

 

「間に合ってください、手遅れになる前に!」

 

フー=ルーは自分の想いに気づき始めていた。教師という名の仮面を被っても一人の女としての自分が愛している者がいる事に。

 

「!不明機の反応が!彼を行かせるわけにはいきません!!」

 

不明機の反応をキャッチし、ソードライフルをライフルモードに切り替え構えた。

 

「この距離は得意とは言えませんが、引き離すことが出来れば!」

 

彼女が最も得意とするオルゴンライフルによる狙撃、それを長距離とは言えない超長距離から行おうとしていた。

 

自分を導いてくれたサイトロンを信じ、フー=ルーはそのトリガーを引いた。

 

 

 

 

 

「む!?これはオルゴンライフル!?」

 

カロ=ランは突然、飛来したエネルギーがオルゴンライフルであることを見抜き距離を取った。

 

「この長距離からのオルゴンライフル?こんな事が出来るのは!」

 

エネルギーが飛来した方向へ視線を向けると同時にISらしき機体が雄輔の隣へ並び立つ、それは親愛を旨とする騎士の姿だった。

 

「久しい、と言った方がいいかな?フー=ルー・ムールー」

 

「まさか本当に女性になっているとは思いもしませんでしたわ、カロ=ラン」

 

互いに女性の為、一人の男を取り合っているようにも見えるが実際は最前線で戦う騎士と裏側で敵を屠る謀士のにらみ合いだ。

 

「今の私は怒りに満ちていてよ?」

 

「ほう?所詮は女だったという事か?」

 

フー=ルーは静かにライフルモードにしていたソードライフルをソードモードに切り替えていた。

 

「彼に手出しはさせませんわ!」

 

「来るがいい!」

 

カロクアラとファウネアの戦闘が始まり、カロクアラは二つのシールドクローを使いファウネアのオルゴンソードを捌いている。

 

「く・・・流石に防御装備を重視しているカロクアラに一撃を与えるのは厳しい!」

 

「ハハハハ!腕が落ちたか?フー=ルー、それともそこの男と愛でも交わしでもしたか?」

 

「くっ・・・!!」

 

元々ファウネアは射撃重視のチューンをされたラフトクランズであり、防御重視のカロクアラとは相性が悪い。

 

さらに言えば防御重視でありながら接近戦をこなすのがカロクアラの最大の特徴だ。

 

それだけにファウネアを駆るフー=ルーは少しずつ追い詰められていく。

 

「でやああああ!!」

 

ファウネアを援護するようにカロクアラへ攻撃を仕掛ける機体があった、負傷しながらも戦う意志を捨てていなかったモエニアを駆る雄輔だ。

 

「ほう?その傷でまだ戦えるだけの力があったか」

 

「雄輔さん!」

 

「ぐ・・・この腕じゃバスカーソードを使うのは無理か?」

 

雄輔は痛みをこらえながらもソードライフルを手放さないよう強く握った。

 

「ならば先に貴様を倒すとしよう、バスカー・モード起動!」

 

カロクアラのゴーグルアイが輝き、カロ=ランは雄輔に狙いを定め突撃してくる。

 

「ユウ=スケ!」

 

「おわ!?」

 

フー=ルーは雄輔を咄嗟に突き飛ばした、バスカー・モードの攻撃範囲に入ったファウネアに攻撃を仕掛ける。

 

シールドクローでフー=ルーのファウネアへ攻撃し殴り飛ばした。

 

「うあ、ぐうう!!」

 

「撃ち抜く!!」

 

オルゴンキャノンを単発で連射し、ファウネアを撃ち抜いていく。それでも追撃が止むことはない。

 

「クロー、展開!」

 

両腕に装備されたシールドクローを展開する、展開されたクローはまるで獲物を狙う飢えた獣だ。

 

スラスターを全開にし、ファウネアへと追いつくとクローで引き裂き始める。

 

「ぐうう!がっ!うあああ!」

 

「フハハハハハ!貴様を切り刻んでくれるわ!」

 

一撃一撃が重く、ファウネアの装甲が僅かに引き裂かれていき、SEも削られていく。

 

「あああああっ!」

 

「貴様は間もなく堕ちる、ヴォーダの深淵にな!!」

 

クローに集中させたオルゴンエネルギーを斬撃として飛ばし、ファウネアの動きを緩和させる。

 

「オルゴン・マテリアライゼーション!滅殺!」

 

巨大なオルゴンナイトの爪に引き裂かれ、ファウネアは更に吹き飛ばされ落下していく。

 

「きゃああああああああああ!!」

 

「っ!!!フー=ルー!!」

 

雄輔は自身の怪我を顧みず、ファウネアを助け出しフー=ルーに話しかける。自身の血がフー=ルーに着くが話しかける。

 

「な・・何故?こんな・・・」

 

「ふふ・・・愛しい人を守りたいと・・・思ったから・・・です」

 

「っ・・・!?」

 

「私も・・・あの方と同じ・・でしてよ。よかった。貴方を守れて・・・」

 

そのままフー=ルーは笑みを浮かべ気を失ってしまった。

 

「ぐ・・・く・・うおおおおおお!!フー=ルーーーー!!」

 

気を失ったフー=ルーを抱え、普段は冷静な雄輔が咆哮のように声を上げた。

 

自分の想いと彼女の想いが同じであったのに傷つけてしまった。守れなかった、剣を持った身で守れないなど何が城壁の騎士か。

 

これが親友が受けた苦しみなのか、愛する者を自覚し守れなかった悔しさがこれなのかと。

 

「所詮は女か、もっともこの身で言えた事ではないな」

 

「っ・・く!」

 

「退いたか、良いだろう。ここで待っていてやる」

 

 

 

 

[推奨BGM 『THE GATE OF MAGUS』スパロボOG]

 

雄輔は地上に降り、自分が鍛錬していた場所に寝かせると同時に雄輔の意識が光に飲まれた。

 

「ここは・・?城?」

 

『ようやく対話が出来たな・・主よ』

 

城から誰かが歩いてくる、全身を鎧を着込んだ人らしきものだ。

 

「主、まさか?お前は・・・」

 

『そうだ、貴方の剣であり自由と共にある騎士・・・モエニアだ』

 

「・・・」

 

『時間が無い、主よ。私の剣で私を斬れ』

 

「何!?」

 

『この鎧、いや・・・兜こそが枷なのだ』

 

「・・・」

 

雄輔は迷っていた、モエニアは自分を斬れと言っているがそれは正しい事なのかと。

 

『早くしろ!迷うな!!私は貴方と共にある、気にするな』

 

「!わかった」

 

モエニアから剣を受け取ると雄輔は思い切り、剣を振り下ろしてモエニアを斬った。

 

その兜の中から現れたのは整った顔立ちの女性だった。全身を覆っていた鎧の意図が変わり、四足歩行の獣をモチーフにしたような鎧を纏っていた。

 

『主よ、愛とは完全な弱さではない。それは強さであり弱さともなるのだ、それを忘れるな』

 

「ああ」

 

強い光の中に再び飲まれると同時にフー=ルーを寝かせた特訓の場所へ戻っていた。

 

「ここで持っていて欲しい、フー=ルー」

 

雄輔はモエニアを再び纏うとカロ=ランが待つ上空へ上がり、対峙した。

 

「此処に来たという事は誘いを受けるか?」

 

「その誘いは受けない、お前のおかげでようやく政征と同じ場所に立てた」

 

「何!?」

 

モエニアに表示されているディスプレイに手を触れ、二次移行の項目に触れた。

 

「俺は・・・フー=ルーと共に戦う。そしてかつての(誓い)を示す!」

 

 

[オルゴンクロー、リミッター解除完了済]

 

[オルゴンキャノン、リミッター解除完了済、チャージリミッター解除完了]

 

[全バスカー・モード開放済]

 

[オルゴン・クラウド部分限定発動からオルゴン・クラウドSへと更新、常時発動済]

 

[ラースエイレム限定解除・使用許可承認後に発動可能状態へ移行済]

 

[オルゴンライフル、リミッター解除]

 

[オルゴン・ガーディアンとの同調完了]

 

[単一仕様能力(ワンオフ・アビリティー) オルゴン・サンクトゥス習得]

 

 

二次移行を果たしたラフトクランズ・モエニアは全身装甲となり、リベラと同じように本来のラフトクランズに近い姿となった。

 

「行くぞ、カロ=ラン!フー=ルーを傷つけた罪は重いぞ」

 

「ふ、その機体もろとも此方へ引き込んでやろう!」

 

「やれるものならな!オルゴン・マテリアライゼーション!」

 

雄輔はソードライフルをソードモードに切り替え、カロ=ランへと突撃していく。

 

「オルゴン・クロー!」

 

カロ=ラン自身もシールドクローを展開し突撃する。

 

「はあああああ!」

 

「うおおおおおお!」

 

剣と爪がぶつかり合い、火花が散る。互いに引かずに攻め続け一歩も引くことをしない。

 

 

 

「うう・・・ここは?」

 

二人が戦っている最中、フー=ルーは目を覚まし起き上がった。どうやら誰かが特訓場所として使っている場所のようだ。

 

目を覚ましたフー=ルーが最初に気づいたのは空で火花を散らしながらぶつかり合うラフトクランズ(IS)だった。

 

「あれは・・・」

 

フー=ルーの目に映ったのはカロクアラと本来のラフトクランズに近い機体だった、その姿は守る為の戦いをしているようにも見える。

 

「もしや・・モエニア!?」

 

雄輔が纏うダークブルーの色がそれをフー=ルーに教えている。そして確信する、あれこそモエニアが二次移行した姿のだと。

 

「雄輔・・・」

 

今の自分は戦いに割り込むことが出来ないと考え、その戦いを見守るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

「はあああ!」

 

「ぐうう!おのれ!!」

 

雄輔はカロクアラを追い詰めていたが戦う前に受けていた傷の影響で後一歩の一撃が届かなかった。

 

「ふ、ここらが潮時か」

 

「カロ=ラン!」

 

「いずれ学園に侵攻する、その時まで待つのだな」

 

「ぐ・・傷が」

 

カロクアラは撤退し、それを追撃しようとしたが叶わず雄輔も特訓場所へと降りていった。

 

「ユウ=スケ・ダーブルス」

 

「!」

 

フー=ルーは真剣な表情で雄輔のフューリーとしての名を呼んでいた。この時のフー=ルーは真剣そのものだと知っている。

 

「っ・・!」

 

「なっ!?」

 

驚きもするだろう、フー=ルーが雄輔の胸元に飛び込んだのだから。

 

雄輔は驚きと気恥ずかしさで何も考えられなかった。

 

「何故・・・私がこのような事をしてるか分かりますか?//」

 

「え・・・?」

 

「私、フー=ルー・ムールーは教師ではなく、騎士でもなく、一人の女として貴方を慕っているのです・・分かりますか?///」

 

「あ・・・え・・・//」

 

フー=ルーの突然の告白に雄輔は混乱した。確かに自分はこの女性に誓いを立てたがそれだけだった。

 

「・・・う、うう//」

 

答えが分からず雄輔は混乱を極めてしまい、フー=ルーへの返答が出来ないままだった。




はい、告白イベント第二弾です。

そして学園長の意外な繋がりと正体が判明です。

学園長が言っていた純血は分かると思いますが、ハーフは誰なんでしょうね。

隔世遺伝というのもありますから意外と近くにいるかもしれません。


次回は夏休み後半、全員が集まります。

ラウラに二次移行の兆しが!

ラウラ、仮面の下の涙を拭え!優しい姉を取り戻すために!

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