Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
物語が!
来た!
扉をくぐった後、俺はあるマンションの一室で寝ていた。
眠気もあったので洗面台くらいあるだろうと洗面台で顔を洗った。
何気なく鏡を覗き込んで・・・。
「なんじゃこりゃああああああああ!」
自分の顔を見て思わず声を上げてしまっていた。
だってそうだろ!自分の左頬にフューリー特有の模様あるし、髪が少し赤いし伸びてるし!
「ちょっとぉ!神様聞こえてんでしょ!どういうことぉ!?」
「(なんですか?ああ、あえてフューリーの容姿にしたんですよ。いいでしょ?)」
「やりすぎだよぉ!まぁいいけど・・・」
タオルで顔を拭きつつ、神様と会話を続ける事にした。
「それで、俺のISとかは?それにこのマンションは?」
「(質問が多いですね、まずISですがアナタが動かせるとこの世界で判明したら手に入ります)」
「ふむふむ」
「(それからこのマンションは仮住まいみたいなものですから、日が経てば引き払われます)」
「なんか、もったいないなぁ・・・」
「(仕方無いことですから納得して下さい)」
「あ、そうだ!俺の戸籍ってどうなってるのさ!?」
俺は一番懸念していた事を神様に聞いた。
「(ご心配なく、名前を
「赤野政征・・・それが新しい俺の名前かぁ」
自分の名前をしっかり覚えておこうと復唱する。
「(フューリー名はマサ=ユキ・フォルティトゥードーですけどね、クスクス)」
「笑うなよ!って・・・ああ、そっかフューリーとしてここにいるんだった」
「(記憶を自覚しましたね?そろそろですよ)」
そう言われて、着替えを済ませると扉に鍵をかけ外へ出た。
「どこもかしこも男性操縦者の発見で盛り上がってるなぁ」
都内っぽい街並みを歩いているとビルにある巨大モニターからニュースが流れている。
「世界で初の男性操縦者である織斑一夏君は・・・」
ニュースを聞き流しつつ、歩いていると男性が長蛇の列を作っているのが見えた。
「なんですか?この列」
「男性のIS起動試験だよ。初めて男性操縦者が見つかったから他にもいるんじゃないかって」
「へえ」
案内の人の話を聞いて自分もやってみようと列に並んだ。
「はい、次は君ね。ただ触るだけでいいから」
「わっかりました」
かなりの時間がたった後、案内の人に促され待機状態のISに俺が触れると起動してしまった。
「嘘!?き、起動した!?」
「あらま、起動しちゃったよ!?それじゃ!」
俺は起動させた事に驚いてる女性を放って退散しようとした。
「君」
「はい?」
それと同時に赤紫色をした髪を持つ男性に話しかけられていた。
「ISを起動させたようだね?それにその顔の模様、同郷の出身かな?」
「え、じゃあ・・・あなたは」
「そう、君と同族だよ。ああ、名前を言ってなかったね、私は紫雲セルダという」
「ブゥーーーー!(紫雲ってスパロボJの統夜の親父さんかよおお!)」
おもわず俺はオーバーリアクションしてしまい、動揺もしていた。
「どうしたのかな?すごく驚いてるようだが?」
「い、いえ。俺は赤野政征といいます」
「政征君か、良い名だな。いきなりなんだがアシュアリー・クロイツェルに来ないかね?」
「はえ?」
「いきなり言われても混乱するだろう。君は今、男性の身でISを動かしてしまった」
紫雲さんは真剣な目で俺を見て話を始めた。
「君を実験体として狙う輩もきっといるだろう。それを防ぐ意味でもうちの会社に来ないかね?」
「簡単に言えば、今の俺は狙われてるってことですよね?」
「そうなるね」
「なら、一日だけ考えさせてください。言われた通り混乱してるので」
「それがいいかもしれない、なら私の名刺を渡しておこう。電話番号もあるからね」
そういって紫雲さんは会社の名刺を渡してくれた。
「それじゃ、今日は早めに帰る事をオススメするよ?」
紫雲さんはそういって手を振りながら去っていった。
「神様さ、どういうこと!?なんでスパロボJとムーンデュエラーのフューリーの人物がいるのさ!?」
「(私からのサプライズです)」
そういってウインクしてくる神様だった。
「とりあえず、マンションに帰ろう。まだ大丈夫だよね?」
「(はい、明日を含めて三日間はいられますから)」
「三日以内に答えを出さないといけないのか」
俺はブツブツ言いながらもマンションに戻って、身体を横にすべく寝床に向かった。
◇
翌朝、俺はアシュアリー・クロイツェル社に連絡していた。
「はい、アシュアリー・クロイツェル社です」
「えっと、赤野政征と言います。紫雲セルダさんはいらっしゃいますか?」
「少々お待ちください」
受付の女性が電話を保留にした状態にすると、ドギマギしながら俺は待っていた。
「もしもし、政征君かい?」
「は、はい」
電話の相手が紫雲さんに変わると、俺は緊張していた。
「はは、緊張しなくても大丈夫だよ。それで要件は何かな?」
「えっと、昨日のお話の件です」
「ああ、それで?」
紫雲さんが急に真剣な口調で言葉を返してきたのを聞いて俺も真剣になった。
「お話をお受けします、流石に自分一人では対処出来ませんので」
「そうか、なら今日の午後にアシュアリー・クロイツェル社に来るといい。そこで話し合おう」
「はい」
「では、失礼するよ」
そういって紫雲さんは電話を切った。
「はぁ・・・緊張した。紫雲さんと話すなんてあり得なかったし」
そう言いながら俺は電話の通話を改めて切った。
「午後からか、少し時間あるな」
身の上ぐらいは整えようと美容室に行き、髪型を整えた。
そうしてる間に午後になり、俺はアシュアリー・クロイツェル社に向かった。
「デカッ!!」
それ以外に出てくる言葉がなかった。
高層ビルの他にほとんどの土地所有とか大企業ってレベルじゃないでしょ!
そう思いながら、中に入ると受付に通された。
「え・・っと、今朝電話した赤野という者ですが」
「はい、お受けしてます。ご案内しますね」
そう言われて、受付の人に案内された先は応接室だった。
「会長が来るまでお待ちください」
「はい、って会長!?」
驚いた後、20分後に紫雲さんが応接室にやって来た。
「すまない、待たせてしまったね」
「いえ」
「社長が会いたいそうでね、来てくれるかい?」
「い、いきなり社長ですか!?紫雲さんがこの会社の会長だってだけでも驚きなのに!」
「その事には私もびっくりしていてね、おそらくは」
「同族…だからですか?」
「言いにくいがそうなるね」
応接室から出て、エレベーターに乗り、紫雲さんと共に社長室へ向かった。
「入りたまえ」
ノックを二回すると厳格のある声が中から聞こえた。
「失礼します」
「し、失礼します」
そこには年齢は50代後半のような初老の男性が座っていた。
「楽にしてくれていい、君かね?同族でありISを動かした男性というのは」
「は、はい」
「ふむ、ならば君に一つ頼みたいことがある」
「なんでしょうか?」
初老の男性の威厳に当てられたのか俺は無意識に敬語になっていた。
「これは紫雲君のみに話していたが、我がフューリーの皇女がIS適応がある事が発覚してしまったのだ」
「はああああああ!?(皇女ってシャナ=ミアだよな?どーなってんの?神様」
「(サプライズのつもりがフューリーの方々とこの世界の物語が融合してるみたいですね)」
どう考えてもおもしろがってるだろ、この神様。
「発覚してしまった以上、我が社で匿い続ける事も難しくなって来ていてな?会社の所属とするから君に皇女の護衛を頼みたいのだよ」
「え、でも。俺はフューリーとしての自覚が有るだけで、剣を扱える技術は未熟もいいところで」
「心配には及ばない。セルダ君が特訓に付き合ってくれるそうだ」
「本当ですか?」
「ああ、君の中に眠っている力を引き出してやろう」
「お、お願いします」
特訓するからにはしっかり頑張らないと。
「それに、皇女とも面識があった方が良いだろう。少し待っていたまえ」
そういって社長さんはどこかへ連絡を始めていた。
それからしばらくして扉をノックする音が再び響いた。
「開いている、遠慮せず入りたまえ」
「失礼します」
そこには、あのシャナ=ミア・エテルナ・フューラが目の前にいた。
「っ・・・・・・」
スパロボJやMDを見ていた俺にとってシャナ=ミアはかなり好きなキャラクターだった。
それが今や目の前に実在の人物としている。
流れるように長くサラサラとした水色の髪、穏やかながら気品溢れる紫色の瞳。
立ち振る舞いは皇族だけあって凛としていてとても美しかった。
「どうしたのかね?皇女に見惚れていたのかね?」
「え?ああ・・・その・・・」
「変なことは言わないでください。ええと・・」
「赤野政征です。フューリーの名はマサ=ユキ・フォルティトゥードーと言います」
自己紹介をするとシャナ=ミアはふわりと微笑んだ。
「シャナ=ミア・エテルナ・フューラです。よろしくお願いしますね、マサ=ユキ」
俺は無意識に忠義の礼節をしていた。
操られたとか、暗示とか、記憶のせいではなく自然にそうしたくなったからだ。
皇女への忠誠と更には一目惚れなのか憧れなのか、それが表に出た行動なのかもしれない。
「そ、そのような忠義の礼をせずとも大丈夫です!同い年なのですから」
「いえ、これが自分の行動の表れです。お気になさらず」
そう言って俺は礼節を解くと向き直った。
「見事な騎士の礼節だった」
「君になら任せられるな」
紫雲さんと社長さんは真剣な顔をして俺を見ていた。
「え?」
「特訓と同時に君には機体を与える。無論、社内の訓練機だがね」
「は、はい」
短い会話を紫雲さんと済ませると紫雲さんは俺にだけ聞こえるよう小さい声で。
「皇女と添い遂げるのは並大抵の事ではないぞ?」
「なっ!?/////」
ハハハッと笑いながら紫雲さんは俺の肩をポンと叩いた。
シャナ=ミアはどうしたのかといった様子だ。
「何かありましたか?」
「い、いえ!何でもありませんよ!!/////」
俺は必死に誤魔化すが顔の熱さは益々強くなっていた。
「?」
「うう・・・/////」
紫雲さんが変なこと言うから意識しまくりだろ、俺!
「皇女のIS学園入学まで半年ある、その間に特訓と考えているのだが・・・」
「それで大丈夫です」
社長さんの提案に俺は二つ返事ですぐにOKをだした。
「騎士としての力を引き出すのは容易ではない、それゆえ厳しくいくぞ?」
「望む所です!今は鞘に収めた剣ですが、必ず輝きを帯びてみせます!」
「その粋だ。今日から始められるが、どうする?」
少し迷ったが、今日から特訓を受ける事にした。
本心を言えば早く、フューリーの機体を使ってみたかったからだ。
「今日からお願いします、あ・・・」
「どうしたのかね?」
社長さんが不思議そうに聞いてきた。
「いや、その・・・マンション引き払っちゃったから住むところが・・・」
申し訳なさそうに俺は社長さんと紫雲さんに言った。
「ならば我が社の社員寮を使うといい。紫雲君の隣の部屋の空きがあるからIS学園の入学までは許可しよう」
それはねがってもみない答えだった。
「いいんですか?」
「構わないよ、特訓があるのだから社員寮の方が通いやすいだろう?」
「あ、ありがとうございます!!」
俺は深々と頭を下げてお礼を言った。
「(このタイミングで渡すイベントですか)」
こらそこ、スパロボのようなメタ発言はやめなさい。
「さ、参るぞ?時間はまってくれぬからな」
「はい!」
それから紫雲さんの特訓が始まった。
特訓を開始する前にリュンピーという機体を貸し出された。
これって従士の機体じゃん!と思いながらも使わせて貰うことにした。
「これから指示をする。訓練は甘くしないからな?」
「はい」
この世界でのフューリーの機体はほとんどがISとなってるらしく、リュンピーは訓練機だそうだ。
フューリーの階級。禁士・騎士・準騎士・謀士・従士といったものはまだ現役だ。
俺は騎士の訓練を受ける駆け出しということで準騎士の称号を受けた。
「左にズレているぞ!レンジを修正しろ」
「はっ!」
紫雲さんは禁士。つまりは騎士を束ねる人だそうで、ISは動かせずともその実力は高いそうだ。
動かすためだけの訓練という事でリュンピーを使っていたが。
準騎士ということでヴォルレントという騎士専用の訓練機の使用が許可された。
同時に訓練用ターゲットを倒し続け、ISの訓練が終了し勉学にも取り組む。
紫雲さん曰く「騎士たる者、剣を振るうだけではなく学もあって成り立つものだよ」だそうだ。
「(いきなりラフトクランズかと思ったら訓練なんですね)」
クスクスと笑いながら神様は俺に話しかけてきていた。
「仕方ないじゃん、記憶と機体を動かせるだけじゃ難しいもん」
俺はカリカリとノートにペンを走らせていた。
社長さんに取り寄せてもらったIS学園の参考書を手に勉強をしているのだ。
少しだけ背伸びをして目を軽くマッサージもした。
勉強を続け、特訓を続けることを忘れず日時は過ぎていった。
◇
三ヶ月後、紫雲さんから騎士の称号を受けるように言われた。
これには特訓に付き合ってくれていた社員の皆さんもかなり驚いていた。
社員さんの話によれば騎士の称号はフューリーの憧れの称号らしい。
サイトロンの適合率が高いせいもあるが、俺には元々操縦センスがあったらしく社員の皆さんに激励された。
「(私のおかげですけどね~)」
「それに関してはなんにも言えない」
IS特訓後に格納庫で待っているようにと紫雲さんの伝言を受けたスタッフさんに言われ待機していた。
「すまないな。疲れているところを待たせて」
「いえ、平気です」
「そうか、なら着いて来てくれ」
「?」
紫雲さんの後に着いて行くと一番奥の格納庫に案内された。
「ここだ」
扉が開くとそこには見間違えるはずのない「あの機体」が6機並んでいた。
相反の意思、相克の感情を体現したかのような灰色の騎士。
親愛の意思、戦う事で愛を見せようとする緑色の騎士。
狂気の意思、血のような赤に染まった深紅の騎士。
殺意の意思、暗殺のみを旨とする黒色の騎士。
虚偽の意思、己の弱さを隠そうともがく紫色の騎士。
絆の意思、互いの強さで互いを高め合い続ける青色の騎士。
そう
「ラフト・・・・クランズ」
「そうだ、だが現存するのはこの六機のみだ」
「え?」
「この
「フューリーの独自開発の機体・・・」
重い口調で俺は言葉を出した。
「その通り、この中の一体を君の専用機のISに改修せよと命令が出てね。君自身が選ぶんだ」
「俺専用のラフトクランズ・・・」
俺は内心飛び跳ねたいほど喜びたかったが、紫雲さんとの特訓で剣を持つ重さを知ってしまった。
それだけに浮かれ気分で喜ぶことは出来なかった。
「サイトロンの導きに従いましょう」
そういって俺はラフトクランズに近づいていく。
「!この機体を改修してください。色も変えて」
俺は紫色のラフトクランズの前でそういった。
この機体を使っていたのはソ=デスというキャラだ。
諜士が騎士の機体を使っているなんてと思ったが、いくつか提供されていた記憶が出てくる。
「その機体を改修して欲しいと?どのように?」
「はい、まずはヘッドをアウルン仕様に。カラーリングは
「なるほどな、具体的で助かるよ」
それから細かい部分の改修及び日数などを細かく決めた。
「この機体はバスカー・モードが無い。改修と同時に追加しておこう」
「あ、ありがとうございます」
「しかも君は三つのバスカー・モードに対応できるようになっているようだ」
三つのバスカー・モードって剣、銃、爪の事だよな?三つに対応って、主人公レベルじゃん!
この世界に来る前の記憶を思い返していたが、上隣を見ると神様が口笛を吹いていた。
やっぱりあんたの仕業かよおおおお!!?
「マサ=ユキ・フォルティトゥードー!!」
「は、はいっ!!」
フューリーとしての名前を突然呼ばれて俺は姿勢をおもわず正した。
「この機体を駆るという事は騎士の証であり、守るべきものを守る覚悟を持つという事だ」
紫雲さんのいつになく厳しい目に俺も気を引き締めた。
「そなたにそれが果たせるか?伴侶が現れた時、誓いを守れるか?」
この言葉は俺の覚悟を試しているのだろう。紫雲さんは真剣なまま俺を見ている。
今の紫雲さんは禁士として、騎士となった俺に向けて言葉を向けている。
「マサ=ユキ・フォルティトゥードー、騎士として伴侶と弱き者の為に剣を振るいます!」
「良い覚悟だ。その誓いを忘れるな」
そう言って紫雲さんは俺が選んだ紫色のラフトクランズの前に俺を連れてきた。
「さぁ、この
俺は促されるままに紫色の
触れると同時に紫色のラフトクランズは起動し、俺を搭乗者と認めてくれたのだ。
「これからその機体を君の専用ISとして改修する。しばらく預かるよ」
紫色のラフトクランズは格納庫から開発部へ運ばれ、改修が始まった。
「改修が終わるまで時間はあるからIS学園への入学手続きを済ませてしまおう」
「はい」
◇
数ヶ月後、皇女の身分を隠して入学手続きを同時に済ませた後にIS学園の前にいる。
「護衛をよろしくお願いしますね?政征」
「はい」
シャナ=ミアは俺に護衛をしっかり頼んできた。
フューリーの自覚を持って俺自身がシャナ=ミアを護衛する、それが今出来ることだ。
「(皇女様が入学なんて大変な事態ですね)」
「楽しんでる癖に何を言ってんだよ!?」
「(サプライズがこんな形になるなんて思ってもみなかったんですよ~)」
神様はニコニコしており、心底楽しんでる様子だ。
「まさか・・・他のフューリーの人まで」
「(別の形でありえますね)」
ニコニコしていた神様が表情を引き締めていた。
「それでも俺は・・・!」
「行きましょう、政征」
「ええ、行きましょう。シャナ=ミナ様」
「様は要りません、気軽にシャナと呼んでください。敬語も要りません」
「え・・・。わかった、シャナ。これでいいのか?」
「はい」
シャナは満面の笑みで返事をしてくれた。
今はシャナへの想いが愛なのか憧れなのかは分からない。
それでもシャナは必ず守る。それが俺の騎士としての誓いだ!
次からは入学編ですが原作通りにならないかも・・・