Moon Knights IS〈インフィニット・ストラトス〉 作:アマゾンズ
臨海学校開始
以上
臨海学校一週間前、アリーナを借りてシャルロット、鈴、セシリアが模擬戦をしていた。
[セシリア戦闘推奨BGM『Dancing Blue』スパロボOGより]
「あぐっ・・もう一度ですわ!」
「まだやるの!?これ以上はオーバーワークになるよ!?」
ブザーが鳴り、結果はシャルロットの勝利。
しかしセシリアは直ぐに立ち上がるとシャルロットの指摘に耳を貸さず、セシリアは次の対戦相手を指定する。
「早く来なさい!次は鈴さんでしてよ!」
「一体どうしたのよ?セシリア・・。今のアンタ、ものすごく焦ってるように見えるわよ」
「お喋りは要りません!早く模擬戦を!!」
「わかったわよ。シャルロット、離れて」
「うん、分かったよ」
開始のブザーが鳴り、セシリアと鈴の模擬戦が始まる。
「行きなさい!ブルー・ティアーズ!!」
定番のビット攻撃を展開し、射撃戦を展開する。
「(わたくしは・・・わたくしだけが置いていかれるわけには!!)」
セシリアの焦りはこうして今に限った事ではなかった。
政征や雄輔というイレギュラーは仕方ないにしても、他のメンバー達は確実に強くなってきている事に嫉妬していた。
「(セシリアってば焦りすぎてて、ビットにも射撃にも集中出来てない・・・これじゃあ)」
「どうしました!?わたくしに!・・・え?」
そこにあったのは鈴が愛用している二本の青竜刀だけであった。
「ど、どこに!?」
「上よ!オルゴン・シャドウ!!」
「っ!ティアーズ!」
「それを待っていたわ!牽制の二発!」
ティアーズが一箇所に集まったタイミングを逃さず、オルゴナイトの拳をビットへ放った。
「あ・・・そ、そんな」
ビットを撃ち落とされ、セシリアはそのまま呆然となるが鈴は容赦しない。
「シャドウはまだまだ出るわ!行けぇ!!」
オルゴナイト・シャドウを16体出現させ、その分のオルゴナイトの拳をセシリアへ放った。
その全てを受けてしまったブルー・ティアーズはエネルギーがゼロになり、ブザーが響く。
「ま・・また・・負けましたわ・・・っ!もう一度」
「セシリア、気付いてないの?」
「な、何を!?」
「機体状態よ。それ以上はもう模擬戦レベルじゃない損傷になるわよ?」
「え?あ・・・」
二人に指摘されて気づいたが、ブルー・ティアーズはダメージレベルがギリギリでDラインになっている。
本気でも全力ではなく、しかも手加減されていた事にセシリアは更に悔しさを覚えた。
「一体どうしたのよ?いつもの冷静さを無くしてるわよ、アンタ」
「なんだかものすごく焦ってるしね・・」
二人の心配をよそにセシリアは声を震わせていた。
「・・・・せんわ」
「え?」
「お二人に、わたくしの気持ちは分かりませんわ!強さを得ることができた貴女達に!追いつく事の出来ないわたくしの気持ちは!!」
そういってセシリアは泣きながらアリーナを飛び出してしまった。
「あ、セシリア!!」
「行っちゃった・・・」
「そっか・・・セシリア、自分が置いていかれてると思ってるのね」
「無理もないよね。僕はカルヴィナ義姉さんに、鈴は機体の改修と格闘を鍛えてもらえたんだもの。僕達との模擬戦だけじゃ追いつけなくなってきてるのかもね」
「周りに鍛えてくれる人が居ないものね・・セシリア」
鈴は改めて自分がいかに恵まれていたのかを噛み締めていた。
鍛えてもらった師曰く、己一人だけでは限界がある。
傍にいる友や相方を大切にしろと。
「・・・私達は置いていかないわよ。セシリア」
◇
着替えた後、セシリアは学園を飛び出してモノレールに乗っていた。
感情的になってしまった故の行動だったが、頭を冷やすには丁度いいと適当な駅で降りた。
「ここは・・・まだ緑が溢れていますのね」
IS学園は基本的に都会と言われる部類の中心に建っている。
適当な駅で降りた場所は都会に近いものの緑が生きている田舎町だった。
「歩いてみましょう」
しばらく歩き続け、見ていた風景は全てが新鮮だった。
自分の生活とは全くの正反対の生活、それでも見る人の顔には笑顔があった。
「活き活きとしていますわね。あら?あれはなんでしょう?」
「・・・・(ウゴケナイノ)」
白色の変わった何かが目の部分らしき所を光らせていた。生命体のようなそれを見たセシリアは動けないのだろうと察した。
「この、木片が足を挟んでいますのね?少し待ってくださいませ!」
「・・・・(ウン)」
自分の愛機であるブルー・ティアーズの両腕のみを部分展開し、木片を危険のない場所へと移していく。
「ふう、これでもう大丈夫ですわよ」
部分展開を解除して生命体を見ると、また目の部分が光っていた。
「・・・(アリガトウ)」
「構いませんわよ、ふふ」
セシリアは持っていたハンカチを使い、土で汚れていた部分を拭き取った。
「・・・・(ウレシイ)」
「不思議ですわね、アナタといると荒れていた心が静まってきましたわ」
「・・・・(イカナキャ)」
しばらくして、それは立ち上がるように起き上がっていた。どこかへ帰るような様子だ。
「帰るのですね?理解しているかは分かりませんが、お気をつけて」
「(・・・・マタネ)」
肯定を示す光を出した後、それは何かに乗って一瞬で居なくなってしまった。
「わたくしも帰りませんと・・・。それにしてもあれは・・・一体?」
セシリアが見た幻だったのか、聞いた事もなく情報も無かった。
「貴重な体験でしたわね」
駅に向かうセシリアの表情はどこか晴れやかだった。
この時のセシリアは気づいていなかった。
その生命体と共に、身体中の細胞を蝕む病に犯されながらも懸命に生きた一人の女性が微笑みを向けていた事に。
「(貴女には貴女が気付かない力が眠っています。その目覚めは近いですよ)」
学園に帰ると織斑先生とフー=ルー先生に怒られてしまった。
授業を中抜けして飛び出してしまったのが原因だろう。
飛び出したことを深く謝り、反省文を書いた事で処分は終わった。
帰宅前にセシリアはフー=ルー先生に呼び止められた。
「セシリアさん、我が社のあるアーマーのテストパイロットをしていただけませんか?」
「わ、わたくしが!?」
「このアーマーは空間認識能力とビット適性で高度に扱えるのは貴女だけなのです」
これはチャンスだと思い、セシリアは二つ返事で返事を返そうとしたが一つ、疑問に思ったことを質問した。
「わたくしの国は大丈夫なんですの?」
「問題ありませんわ、合同という形でイギリス政府からも承認を頂いています」
「そうでしたか、ではお受けいたしますわ」
「臨海学校時になると思いますので、お忘れなく」
「はい!」
その後、セシリアは生命体を撫でたハンカチを大切に持ち続けていた。
◇
日数が過ぎ、臨海学校当日となった。
「海だー!」
バスの中ではカラオケなどで盛り上がった後、窓の外に映る海にみんな目を奪われていた。
バスの席では一夏が織斑先生と一緒の席で、箒はフー=ルー先生と一緒だった。
シャナはバスの最後尾の席だ。左の窓際から政征、シャナ、雄輔、セシリア、鈴の順番で座っている。ラウラは補助席に何故か座っており、シャナと話している。
鈴は本来2組だが、教員二人が一組に乗るよう言ってきたのだ。
その意図に気づいた鈴はすぐ、バスに乗った。
バスから降りると旅館の女将が玄関から出てきた。旅館の名前は花月荘というらしく、IS学園では長くお世話になってるそうだ。
「今日から三日間、この花月荘でお世話になる」
「皆さん、節度を持って行動してください」
「「「はーい!」」」
「今年は賑やかで良いですね」
歳は三十代そこらだろうか?佇まいと笑顔がしっかりとマッチしている。
「今回はすみませんでした、男女の区分けでお手数をおかけしてしまいまして」
「いえいえ、こちらの三人が?」
「そうですわ。あ、私はフー=ルー・ムールーと申します」
「ご丁寧にどうもありがとうございます。清洲景子です」
「赤野政征です」
「青葉雄輔と申します」
「織斑一夏です」
男性三人はそれぞれ挨拶を済ませるとクラス全員と共に旅館へと入っていった。
シャナはセシリア、ラウラ、シャルロット、特別に鈴も加わった部屋だ。
恐らく、アリーナでの一夏の行動を考慮に入れての判断だろう。
男性三人は教員の部屋で泊まる事になった。
一夏は織斑先生、政征は山田先生、雄輔がフー=ルー先生となっていた。
この時の雄輔はガチガチになっていたのだけは覚えている。
一夏は首を傾げており、政征は何故か知っているため黙っていた。
荷物を置き、軽めのバッグに必要な物を入れて浜辺へと向かう。
そしてこの時に俺は海という事を考えておくべきだったのだ。
IS学園のプライベートビーチ状態、IS学園は女子高。
それが頭から抜けていた為に男にとっての拷問を受ける事となる。
そう、女性の水着姿という名の。
とうとう、やってきました臨海学校編。
更新は一話だけだと言ったな? あれは嘘だ。
ここでISの原作ガールズは合体攻撃という名の連携を生み出すことになるかも?
自由の騎士が暴走した銀の音に惑わされ白き夜に飲み込まれてしまう。
片割れを助けようとする城壁の騎士の前に立ち塞がる紅い椿。
騎士を傷つけられ、悲しみに暮れたシャナ=ミアへ向けられる毒牙。
片割れの騎士と龍の爪はシャナを守れるのか?
「我は無限、我は混沌・・・。全てを飲み込み、力と成して無へと還すもの。儚き希望は寂滅すべし!」
このくらいのレベルの絶望が来ます。