アサシンが参る!   作:雨の日の河童

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つたない戦闘描写ですいません。
これから、頑張って改善していきます。



運命が参る! 中

逃げ場はない。

だが、それは敵も同じ。

落ち着け、取り乱すな。

 

「ふぅー」

 

息を軽く吐き必要最低限の酸素を取り込む。

 

「コロッ!!」

「!!!!」

 

剛腕が容赦なく背中を襲おうとして躱される。が、予想していたかのように別角度から風を切り裂きながら鞭が襲い掛かった。

 

帝国暗殺部隊side

正に必殺のタイミングだった。

クロメが操る「骸人形」となった元・将軍ロクゴウは鞭での攻撃と鋭い観察眼を持って確かに獲物を捕らえた。

「・・・え?」

 

それすら、ヌルリと目の前の男は躱した。

それは同じ人間なのかと思うほど不気味な避け方であった。

生物帝具の拳を見ずに身体を軽くひねるだけで躱し、続く鞭での攻撃を生物帝具の拳を利用し後ろに弧を描くように回転して避ける。さらに、迫る二撃目の鞭は首を狙うも、後転で避け、距離を取る。生物帝具はそのまま裏拳を叩き込もうとするが逆に踏み台にされ大きく距離を取られてしまう。

口で説明は出来る。が、それを瞬き一つするだけで自身がミンチになるような場面で出来るわけがない。しかもだ、決して遅い攻撃でもないのにそれを軽々やるこの男にクロメさえも驚きを隠せない様だ。

月を背景に佇む不気味な男。

その身は月の光に照らされているのに関わらず影の様に黒くその身に付けた仮面は本物の死神を連想させるには十分すぎた。

 

そして、死神の手にはいつの間にか火炎瓶が握られており既に火がついていた。

 

「ッ!コロ、奥の手!!」

「ゴオオオオォォォ!!!!」

「おそい」

 

生物帝具が暴走すると同時に火炎瓶は死神の手から落ち、

激しい爆発音と炎に身を包まれ悲鳴をあげる事すら許されず目の前が暗くなった。

 

ザイードside

 

どうやら、地雷がきちんと機能した様だ。

暗殺部隊のほとんどは殺すことが出来た。

土煙と火薬の煙が酷く視界が悪い。だが、一息つける。

 

「あはは!!凄いよ、凄い!!貴方、私の人形に加えたくなったわ!!」

「ッ!!?しまった!?」

 

視界が悪いにも関わらず安心した代償は死角からの斬撃だった。

クロメが抜いた帝具「八房」をドーヤに買って貰った黒塗りの短槍で何とか受けるが足場にしていた木から落ちてしまう。

 

「処刑!!」

 

な!?

 

さらに、予期せぬセリューからの追撃。

ガツンと鈍い音が脳に響き木々の合間を縫って飛んでいく。

 

くそ、そういえば本人もなかなか強かったの忘れてた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ!!」

 

息が上手くできない。しかも、仕事モードが切れた。

身体を極限まで軽くするため息を犠牲にしたのが裏目に出たか!

 

「くっ!?」

 

だが、休んでいる暇など無いらしい。クロメお気に入りのナタラが間髪入れず襲ってくる。

それを短槍で何とか防ぐ。

 

「コおぉロぉオオォォォ!!」

「GRAAAAAAA!!」

 

「クソが!!」

 

最悪だ。トラばさみに落とし穴、他にもいくつか爆薬を設置した場所があるが使う余裕がない!!

刹那でコロの眼を一突きにするが、治りが速すぎて、無駄な結果に終わる。

 

「ハサン、しゃがみなさい!!」

「ッ!!」

 

聞きなれた声に従い地面とっさに伏せる。

DAN!!と銃声が聞こえコロの頭が半分吹っ飛ぶ。

 

「逃げるわよ!!」

「了解」

 

声の主に従い戦線離脱を試みる。

が、

「ニガサナイヨ?」

 

地獄の亡者の様に足に鞭が絡みつき行動を阻害される。

 

「しつこい!」

 

余りのしつこさに心の声が漏れたが仕方ないと思いたい。

再び、槍を使う。

念のためザイード固有スキル『刹那の一刺し』を使う。

 

タンッ!!

 

鞭を簡単に切り裂き、先に逃げ道を確保してくれたドーヤの後を追い、途中で担ぎ上げて逃げる事に成功した。

ドーヤside

 

「遅い」

 

いつまでも帰ってこないザイードを探す為、ドーヤは外に出た。

 

「おい、こっちにいたか!!」

「いや、やっぱり森に逃げた様だ」

 

帝都の警備隊が騒がしく、身を隠し聞き耳を立てる。

どうやら、帝具使いの隊員と謎の犯罪者が戦闘中らしくその加勢に行く様だ。

 

「まさか・・・」

 

嫌な予感とは当たって欲しくないときに当たる。それは過去の記憶に焼き付くほどに。

ドーヤの直感が告げる。ザイードがへまやった。っと。

 

仕方ないとため息を吐きながら、全速力でドーヤは森を駆ける。

ザイードを切り捨てて。

襲撃ポイントには自分一人で向かう。

元々、ザイードとの契約はクロメの暗殺を前提としたもの。

故に、足手まといになった場合は捨てると最初から決めていた。

・・・・決めていたというのに。

(どうしてこんなにも胸が痛いのよ・・・!!)

 

あのふざけた態度が、あの笑い声が、少し寂しそうな目が頭について離れない。

 

たった、数週間パートナーとして行動しただけだったのに情が移ってしまった様だ。

それをどうにかこうにかふりきろうとして、腹から震えるような爆音が辺りに轟く。

爆発した方角を確認し、知らずに口角が上がったのに彼女は気付かない。

 

「は、あのバカ私の獲物に手ぇだしてんじゃないわよ!!」

 

爆発したという事はそこで誰かが戦っていることだ。さらに、あの大規模な爆発。

ザイードが張った罠とやらに間違いない。

そして、それを使うことが出来る人間はザイードただ一人。

素早く、だが、誰にも自身を悟られぬよう森の中を進む。

そして、予想通り、帝具使いとクロメを相手にしながら苦戦する馬鹿の姿が。

 

「ハサン、しゃがみなさい!!」

「ッ!!」

 

特注で買った一発限りの使い捨てハンドガン、『コンテンダー29』を撃ちこむ。

一発しか撃てない上に直ぐに砲身が熱で熱くなると言う欠点満載の銃だがその分威力は絶大だ。凄まじい反動が腕にかかるがそれに見合った火力が撃ちだされ筋肉が浮かび上がった気持ちの悪い犬もどきの頭を半分吹き飛ばした。

(チャンス!)

 

「逃げるわよ!!」

「了解」

 

そのまま後ろを振り返ることなく先ほどの道を駆け抜ける。

少し遅れてザイード追いついた。

「わるい、かつぐぞ」

 

いつもより、声がおかしいが気にせずそのまま担がれた。

自身で走るよりも速く。そのまま大回りで帝都に入りいつもの宿に戻る。

 

「さて、ザイード?言い訳はあるかしら?」

「・・・・・」

「ザイード?」

 

ザイードに説教しようとして異変に気付く。

ぐらりとザイードの身体が床に沈んでいく。

 

「ザイード!?」

 

慌てて受け止める。

腹部からはドクドクと血が流れだていた。

幸い、腰布が血を吸っていたのか血の痕跡で場所を特定される心配は無くなっていた。

 

「ちょ、ちょっと怪我してるじゃない!!」

 

怒鳴るも意識がない様だ。

 

「ああ、もう!」

 

こうして、ドーヤの長い夜が続くのであった。

 




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