アサシンが参る!   作:雨の日の河童

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雨の日です。
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夜に参る! 上

ヒタヒタ。

夜の帝都に不気味な足音が響く。

ヒタヒタ。

音がする方向に目を向けるも其処には何もいない。ただ、足音が聞こえるのみ。

今日もどこかで姿なき足音が聞こえるのだった。

 

 

 

 

 

どうも、この頃帝都で怪談になっているザイードです。

なんだか、気配遮断は上手くいっているのに時々、足音が漏れているようで帝都の警備隊や一般市民の方々に怖がられているそうな。

 

さて、今回は何をしているかと言うと・・・・

 

「帝都の金をたんまり貯め込んでる悪徳商人の家に来ています」

 

もうね、調べれば調べるほど屑しかいないんです、ここ。

不正に税を取ったり、貧しい人々からわざわざ盗んだり。それで、金に困った人に安い金で重労働させたり、身売りさせたりして。もうなんか救いようがないわ・・・帝都。

 

そういうわけで、今、五右衛門やってます。

 

腰布に仮面、そして、日本伝統の泥棒が使うような風呂敷を持ってこの頃、侵入、金庫破り、逃走を繰り返している状況。

 

盗んだ金は貧困に喘いでいる人にプレゼント。

が、これじゃあ、イタチごっこになるので出来るだけ良い解決方法を探している。

 

「ッ!?・・・今日はここまでにしておくか」

 

ごっそりと金を奪い、この屋敷の主の元に向かう。

 

悪趣味な扉を発見。間違いなくこの部屋だ。

音もなく扉を開け中を覗くと考えた通りの事が目に入る。

女性にのしかかり、今まさに俺がこの世で一番見たくないことをしていた。

 

「・・・・・・」

 

冷酷な暗殺者へと思考を切り替える。

・・・・ああ、本当にこの国はスクエナイ。

 

悪徳商人side

 

今夜もいつもの夜と同じ。

家族の為に女、子供は身を差し出し、男は馬車馬の様に働き地を這う。

血反吐を吐き、声なき声でこの世の不条理を嘆く家畜ども。

それを窓の外から見るのは何と気分のいいものだろうか。

 

全て私の思い通り。

ああ、愉快だ、愉悦だ。

今日も私の為に美味そうな肉体が用意される。

「・・・・・」

絶望に染まり、何もかも諦めたその顔が私を満たす。

 

そうだ!今日は薬を使って壊そう。

歪んだ思考が加速する。ああ、興奮する!!もう我慢が出来ない!!

考えられる非道、悪逆で興奮は最高潮に。

 

早速、薬を使おうとして、

 

「あれぇ?」

 

視界が百八十度回った。

 

「捕まえたぞ」

 

その目に映ったのは死神。

興奮は恐怖に変わり、身体から熱が消え去った。

 

「貴様には永劫の痛みと恐怖を与える。慈悲はない」

 

ゴリュッ!!

 

首の付け根から嫌な音が聞こえた瞬間、意識を失う。

 

次、目を覚ますときしゃべることも動くことも出来ないとは知らずに。

 

 

ザイードside

首の頸椎を無理矢理壊し、肉塊を地面に転がす。

 

「・・・・・」

 

冷酷な思考で、それを実行。

これも初めてじゃない。何度も何度も、何度もやった。

手に残る『奪う』感覚。

これだけは、何時まで経っても慣れないな。

 

虚ろな女性をシーツに纏わせ、金と共に屋敷を後にする。

 

いつもの宿に戻り、仮面を外す。

あー、どっと疲れた。

助けた女性を自身が寝るベッドに寝かせる。どうやらぐっすり眠っている様だ。

 

「おかえり」

「ただいま」

 

ドーヤがベッドから声をかけてくれた。

ドーヤの側には最初に助けた姉妹が幸せそうに眠っている。

 

床に座り込む。

 

「・・・苦しいならやめればいいじゃない」

 

おろ?ドーヤが心配してくれた。

 

「心配してくれるのか(笑)?」

 

少しからかうように返答。そうでもしないと肯定してしまいそうだから。

 

「ふん。別に」

 

そういって、ドーヤはまた眠りついた。

 

「・・・・・・」

 

嫌ならやめればいい、か・・・。

 

頭の中ではさっきの言葉が繰り返される。

正直、人なんて殺したくない。

でもさ、ドーヤ。

「苦しんでる人や絶望している人を見捨てる事の方がよっぽどできないよ、俺は」

 

三日月を眺め、ポツリとつぶやいた。

 




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