やぁ、みんな自室に戻って三獣士の対策と宝具の練習をしていたザイードだよ。
みんなは苦手な食べ物とかある?
俺は納豆とかオクラとかネバネバした食べ物が苦手だなぁ。
因みにドーヤは豆が苦手で姉と妹はピーマンが苦手なようだ。
まぁ、頑張れば食べることができるから姉や妹、ドーヤの前では何食わぬ顔して食べて「好き嫌いは良くない」、なんてお母さんみたいなことやっているのだけども。
「ザイード殿、如何された?もしや体調が優れないのですか?」
「あっ、はい。オカマイナク」
これは(鼻を痛いぐらいに刺激する赤黒過ぎる麻婆)流石に無理だわ。
え、ナニコレ?本当に麻婆豆腐?合成失敗した悪魔の間違いじゃない?
今にも「オレ外道マーボ今後トモヨロシク」っていいそうなんだけど!?
「ささ、私の自信作ですのでどうぞ」
そういって外道麻婆を笑顔で進めてくるのはチョウリ大臣の近衛兵隊長ジン。
顔を見る限り心の底からの善意である。
この状況になったのはかれこれ一時間前にさかのぼる
「ザイード殿」
力強い声と共にコンコンと自室をノックされる。
「どうぞ」
「失礼する」
短く刈り上げた銀髪の男が部屋に入ってきた。
まぁ、声を聞いた段階で誰かは分かっていた。近衛兵隊長ジンだ。
いつもの様な寒冷地用の戦闘服ではなく私服なので午前中の再戦ではないだろう。
「どうしました?」
が、わざわざ俺の部屋に来た意図が分からない。それに俺の直感が危険と判断している。少し警戒するべきか。
「うむ。突然だが辛い物は大丈夫だろうか?」
「は?あ、ああ。まぁ大丈夫だが・・・」
警戒解除。
なんだ、飯の話か。どうやら俺の直感はこれに反応したらしい。
って、飯で危険って毒でも盛られるのか?
いや、それなら食べる直前で働くか。
ジンは「そうか。邪魔をした」といってそのまま帰っていき俺の直感も鈍ったかな?などと思っていたのだが・・・・・・。
うん、俺の直感。疑ってすまなかった。
しかもこの麻婆皆さん普通の顔で食べているんですよね。
ドーヤとか「あ、またこれか」みたいな感じで食べ馴れているし。
妹に至っては先ほどおかわりしに行ったぐらいだ。
「・・・ザイードさん?これホントに・・・」
「姉よ、疑ってはいけない。これは麻婆豆腐だ。いいね?」
ただ一人、姉だけは俺とおんなじだったようで顔に冷汗掻きながら此方を見ている。
俺はいつも通り涼しい顔で姉を諭しスプーンを持ち余裕の態度を見せる。
「・・・手、震えてますよ?」
「・・・・・・武者震いだから」
・・・・・・・・・・・・。
ドーヤ!ドーヤさん!ドーヤ様!助けて!!
これやっぱ厳しいよ!最悪、俺はいいからせめて姉のだけでも別のものに!
「ん?」
あ、気が付いた!流石ドーヤ!
さぁ、此処にいる助けを求める二人を救っておくれ!!
って、何でおもむろにスプーンを持ち上げているんですか?
あれ?なんでそのスプーンを姉の口まで持って行っているんですか?
「はい、あーん」
「!?」
あ、姉ぇぇぇ!
涙目で此方を見る姉。
アイコンタクト
(ザ、ザイードさん!)
(・・・・・・死にはしないから)
(ザイードさぁぁん!?)
裏切りのザイードは静かに合掌した。
アイコンタクト終了
「あーん」
「あ、あーん」
そして、外道麻婆は姉の口の中に。
「~~~~~~!!!?」
当然、涙目の姉。やはり辛かった。
不謹慎だが涙目可愛いな。などとほっこり(最低)したのが良くなかった。
「ざ、ザイードさん」
「ん?」
「はい、あーん!」
「!?」
因果応報。
自業自得。
裏切り者には報復があるのは世の常でありまして・・・。
「え、ちょ、落ち着け?」
「あーん!!」
涙目の癖に笑顔な姉がザイードの口に赤黒い凶器を近づける。
アイコンタクト
(待ってくれ!悪かった、次は助けるから!)
(・・・死にはしませんから)
(あ、姉ぇぇぇぇぇ!)
アイコンタクト終了
「・・・あ、あーん」
結論。
辛いけど案外うまかった。
それと姉との距離が縮まった気がする。
誤字脱字感想お待ちしております