「オラァ!」
こんにちは。
今日も元気なザイードです。
「ぜりゃ!」
ようやくここの寒さにも慣れてきたところで今では普通に暮らしています。
「クソ!槍兵は奴を囲め!逃げ場を無くして動きを制限するんだ!」
雪の足場だというのに迅速な行動で指示通り動く近衛兵達。
俺を中心に円形で囲み槍の穂先でこちらの動きを牽制。
その間に両手剣の隊長格と共に二人の兵士が互いの動きを阻害せぬよう此方に向って突撃してくる。
「甘い」
「な!?あたっ!!」
「え、あいてッ!」
「痛ってぇ!?」
だが、甘い。
水気を絞り適度に硬くなった小さな雪玉をそれぞれの額に命中させる。
「よっと」
悶絶している突撃兵を無視し、そのまま身体のばねを使い槍衾を作っていた兵士を一人一人倒していく。
近距離では仲間に当たる為、振り回すことも出来ず槍兵達は為す術もなく地面に沈み。
「はい、今日の練習は終わり!解散!」
俺の掛け声とともに今日の練習が終わったのだった。
まぁ、見て分かる様にチョウリ大臣の近衛兵達と毎日模擬戦をしているザイードです。
こんなことになったのはこの町に来て直ぐの事。
スピアと握手をした後少しばかし休憩をしてチョウリ大臣と食事をしたのだがその時の受け答が不味かった。
「君もドーヤさんと同じ傭兵なのだろう?」
「え。まぁ、そうですね?」
「いや、丁度いい。実は私の部下たちを鍛えて欲しいのだ」
「え」
滞在させてもらうのに何もしないのは心苦しいので引き受けた。どうせ三獣士と戦うのだから兵士全体にそれとなく対策を覚えて貰おうと思っていたのだが・・・まぁ、これが凄い堅物たちで困った奴らだった。
「断る!」
「はぁ!?」
もうそれはきっぱり断ってくれましたよ。
近衛兵の隊長ジンという奴が言うには。
「お前の様な暗殺者もどきに教えを乞うまでもない。我々は十分強く、錬度も高い。貴様の様に影からコソコソと隙を狙う臆病者に教わるべきことなど一つもない。分かったら失せるがいい、誇りなき者よ」
「・・・・・・ほぉ?(#^ω^)」
いや、ね?確かに強いのだろう。どの兵の顔付きを見ても過酷な鍛錬と修羅場を潜ってきたのだろう。元の平凡な俺なら正論にぐうの音も出ないだろう。
だが、この身体は紛れもない英雄のもので技術も超一流。
それにこいつはあろうことか『誇りがない』など抜かしやがった。
それに俺も元のザイードも怒りが溢れてしまい。
「・・・ばか・・・な」
「他愛もない」
近衛兵を全員ぼこぼこにしたのだ。因みに仮面無しでやったので気絶しているものの誰も殺してはいない。
んで、地域の住民からそれを聞いたスピアとドーヤが慌てて飛んできた。
「ザイード?」
「反省はしているが後悔はしていない!さぁ、やるならやるがよい!」
ドーヤを前にして雪の上で大の字になる。
まぁ、今回のことに関してはまったく後悔していない。
他者を知りもせず決めつけた奴らの自業自得だ。
自信と傲慢は全く別の物なのだ。
「はぁ。まあ今回はあんたが正しいわ。ただ、私達はあくまでチョウリ大臣の好意で滞在を許して貰っているのだからもう少し手心を加えなさい」
「・・・善処する」
「よろしい」
で、それからスピアとチョウリ大臣に謝りに行くと「お強いのですね!」と目を輝かせたスピア。大臣は「まぁ良い薬になっただろう」と満足げであった。
その後、食事の最中にスピアとチョウリ大臣に何処で何をしていたのか。流派は何か。などの質問攻めにはぐらかしつつ答ながらドーヤと姉妹に救援要請を送るもワクワクとしながら聞く姉妹と優雅にワインを煽りながら目線で続きを促すドーヤ。
正に四面楚歌。
馬鹿正直に『転生してきました!』なんて答えるわけもいかず適当な設定を作り上げたのだった。
内容は傭兵として育てられたが育てていた組織が壊滅。
そのまま各地で転々と仕事をしながら帝都にやってきた。
流派はあるにはあるが名前は知らない。
ドーヤとは帝都であることが理由で手伝いをしていること。
出身は自分もよく分からない。
はい。嘘です。
設定に無理がありそうだがごり押ししました。
で、ここからが本題。
まぁ、さっきも言ったが食事の席でワインなどのアルコール成分の入った飲み物があったのだが全員酒癖が悪いの何の。
もう、此処で語ると大変なのでまたいつか語るとしよう。
んで、話は戻るのだがあまりにもボロボロにされた近衛兵達はこうして模擬戦を挑んでくるようになった。
まぁ、色々あったが結果オーライ。順調に相手の戦闘スタイルを考えることを覚えてきている。
後は俺が三獣士の戦闘スタイルを真似たりすれば完璧だ。
「さぁて、夜は何をしようか」
曇り空に白い息を吐き出し俺は借りた部屋に戻ったのだった。
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