魔法使いの俺に弟子がいるのは間違っている   作:ゼルガー

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pixivのアンケートの結果、葉山の玉無しは無かったことになり、全裸一本を貫くことになりました。やったね葉山くん


魔法使いの俺に弟子がいるのは間違っている⑭

 

 

「くっ、まだ腹が痛い。とっておきの魔法薬を複数使ったのに、後遺症が酷すぎる・・・・・・」

 

 

数分トイレに籠り、痛む腹を抑えて魔法薬を飲むためにキッチンに向かう。

 

途中、自室から出てきた弱り切った馬鹿後輩と鉢合わせした。

 

 

「せ、せんぱーい・・・・・・万能薬、まだ残ってませんかぁ。正直、乙女としてトイレに籠りたくないんですけどぉ」

 

「ストックはまだある・・・・・・くそっ、油断した。まさか由比ヶ浜が暗黒物質を錬金するとは思わなかった」

 

「見た目は普通でしたし、材料も普通。その結果がアレですかぁ・・・・・・何で同じものを食べた結衣先輩だけが無事なんですか?納得いきませんよぉ」

 

「口に入れた瞬間、意識が逝った上に未知の味覚が口いっぱいに広がり、胃に入れた瞬間にまた意識を持っていかれた。常に魔法薬を持ち合わせてなかったら俺達は病院行きだったぞ」

 

「は、はい。この日ほど、魔法薬に感謝したことはありませんね」

 

 

あの後、俺達は部長が考案したお菓子作りを実行した。

 

城廻先輩や雪ノ下、馬鹿後輩が調理したクック―は美味かった。店に出してもおかしくない位の出来だった。

 

だが、その至福の時間が終わったのは、由比ヶ浜がクッキーを調理し終えた時だった。

 

ハッキリ言おう、マズイ。この世のモノとは思えないほどにマズイ。

 

半妖の雪ノ下も死にかけ。あの先輩ですら死にかけた。

 

俺がとっさに魔法薬を飲ませなかったらアウトだったな。

 

 

「ちっ、また胃がズキズキしてきた。少しコンビニに行って、茶碗蒸しでも買ってくる。流石に何も食わないのもよくないだろ。エビと松茸、どっちがいい?」

 

「あー、じゃあエビでお願いします。正直今、調理したい気分じゃないです」

 

「だろうな」

 

 

馬鹿後輩は魔法薬を飲むと、自室に戻っていった。

 

コンビニは歩いて5分もかからないので、本当に便利だ。

 

時間はすっかり夜で、街灯が道を照らしている。

 

 

「少し冷えるな・・・・・・四月の後半だしなぁ。おお、寒い」

 

 

明日には体調も良くなるだろう。んで、絶対に由比ヶ浜を〆る。

 

俺のゲンコツとデコピンは男女平等なんだよ。

 

しばらく歩くと、ふと違和感を感じた。

 

確かに今の時間は少し遅い。だが、それでも交通量は普通で、この時間帯でも通行人とすれ違ったりする。

 

なのにも関わらず、未だに人とすれ違っていない。それどころか、周りの民家に明かりが点灯していなかった。

 

 

「どういうことだ?」

 

「それはね、邪魔されたくないから結界を張ったんだよ?」

 

「っ!?お前は・・・・・・!」

 

 

気が付かなかった。いつの間にか、俺の目の前に誰かがいた。

 

否、誰かじゃない。俺はソイツを知っている。

 

いや、そもそもだ。ソイツが俺の目の前にいる事自体がオカシイのだ。

 

何故だ。何でお前が・・・・・・・なんで

 

 

「なんで、今更俺の前に・・・・・・?」

 

「やっと・・・・・・やっとやっとやっとやっと見つけた。ずっと、ずっとずっっっと探したんだよ。アハ、アハハハハ!会いたかった、会いたかったよ、お兄ちゃん?」

 

「昔の面影が無くなっているな。俺は会いたくはなかったぞ・・・・・・小町」

 

 

そう、昔の面影がまったくない

 

くりくりっとしてた愛らしい目は、かつての俺のように腐っており、目の下に隈ができている。

 

髪も綺麗なショートから、ぼさぼさしたロングに

 

ハキハキしてて、誰にでも懐きそうな雰囲気が完全に消えて、人を寄せ付けない暗いオーラを纏っている。

 

そして何より、太陽のような笑顔をしていたのに、今は気味が悪い笑みを浮かべている。

 

一目で小町とわかる要素は、アホ毛と顔だけだ。

 

比企谷小町。俺と血を分けた二つ下の実妹。

 

俺とは違い、両親や親戚に愛され、可愛がられた存在。両親とは違い、俺に懐いていた気がするが、俺は鬱陶しかった。小町が俺に懐く度に、親父は俺を憎悪して体罰をし、お袋は体罰を容認して飯すら食わせてくれなかった。

 

だから、俺は小町が嫌いだった。

 

俺が師匠の養子となり、ケジメとして家族の縁を切った時を最後に別れた。アイツは泣き叫んで俺を引き留めようとしたけど、俺はそれを無視した。

 

それが、一色に出会う一年前の事だ。

 

 

「お兄ちゃんがいけないんだよ?小町を置いていくから・・・・・・あんなクズどもを押し付けるから」

 

「・・・・・・小町?」

 

 

やはり、様子がおかしい。俺が知る小町は、少なくともあの両親をクズとは言わなかったと思うのだが?

 

 

「小町はね、ずっと知ってたんだ。父親がお兄ちゃんに暴力を振るったり、母親がお兄ちゃんに酷いことしたり。でもね、小町は我慢したんだよ?あの時はお兄ちゃんを救える力がなかったから。あのクズどもからお兄ちゃんを奪って、復讐できるその日まで」

 

「お、おい?」

 

「なのに、お兄ちゃんはそんな小町の気も知らないで勝手に出て行っちゃった。せっかく、二人っきりで暮らしていけると思ったのに全部全部ぜーーーーんぶ、台無しになった!」

 

 

ちょ、ちょっと待ってください。こ、小町さん?え、なんですか?ひょっとしてその性格って、俺が気が付かなかっただけで・・・・・・元々?

 

 

「そうだよ?お兄ちゃんには可愛い妹っていう風に見えるように演技してたんだよ?醜い小町を隠すために偽ってたんだよ?」

 

 

え、えー・・・・・・今知った衝撃の事実なんですけど

 

 

「だからね?お兄ちゃんが居なくなったなら、あのクズたちはもうイラナイよね?お兄ちゃんを苦しめた分、苦しんでもらってから食べちゃった」

 

 

・・・・・・食べた?

 

ふと、気が付くと俺と同じ黒髪だった小町の髪が真っ白に染まり始め、うねうねと動き始めた。

 

そして、髪の先端が数本にまとまり、蛇の頭に変化していった。まるで、神話のメデューサのように

 

え?なにこれ?新展開?この小説ってバトルは無いんじゃないの?

 

 

「だからね、お兄ちゃんを小町のモノにするの。誰にも邪魔されないように、手足を斬ってずっと監禁して・・・・・ね。それと、お兄ちゃんにずっとくっ付いてる雌は邪魔だから食べちゃうけどね」

 

 

馬鹿後輩の事か。普段ならともかく、今のアイツではこの小町を相手にするのは無理だろう。

 

正直な話、今も小町は嫌いだ。だが、情が無い訳じゃない。

 

嫌いになる前は一応は可愛がっていた事もあった。俺を思ってくれていたのは・・・・・・まあ、少し嬉しい

 

だが、それでも・・・・・・馬鹿後輩を殺すって言うんなら話は別だ。

 

 

「小町、お前が誰を食べるだって?調子に乗んなよ。お前が誰に喧嘩を売ってんのか教えてやる」

 

 

この際、小町が何者で、どんな異能がある化け物になったのかなんぞ知ったことじゃない

 

 

「ぼっちを貫き通した魔法使いの弟子の実力、見せてやるよ」

 

 

・・・・・・実戦なんかしたことないけどな!

 

 

 

 

 

その頃、いろはは・・・・・・

 

 

 

「せんぱい遅いなー。歩いて5分のコンビニにどれだけ時間掛かってるんですか?はぁ、仕方りませんね。迎えに行きましょう。べ、別に先輩が心配だからって訳じゃないですよ!?茶碗蒸し!そう、茶碗蒸しを早く食べたいだけです!・・・・・・・一人はさびしいです」

 

 

続く


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