ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス 作:オリゴデンドロサイト
アンブリッジ視点
他者に見下されないためにはどうするべきか。それは自身が見下す側になるしかない。
そしてそうなるためにはどうすべきか。私は今までの人生でその秘訣を学び取っている。
それは耐える時はジッと機を待つ。そして機会が訪れた時は即座に行動すること。それが上に行くための秘訣だ。そうすることで私は最底辺の身でありながら上にのし上がることが出来た。私自身の実力で這い上がることに成功したのだ。
それはこのホグワーツに来てからも変わらない。そう、今も、
「さぁ、ミス・エッジコム。何か重要な話があるとのことでしたね。それもハリー・ポッターやダンブルドアの不正に関することだとか」
「そ、そうなんです。わ、私……実は……」
私の目の前にまたとないチャンスが転がり込んできたのだ。これを逃す手はない。
闇の帝王の準備は整いつつある。そのためもう私が遠慮する必要もない。だからこそ野獣達を教職から追放したわけだが、肝心なことは手を付けられないでいた。
だがようやくその手段を手に入れた。先程今目の前にいる女生徒が、廊下を歩く私に突然話しかけてきたのだ。
『ア、アンブリッジ先生……少しお話よろしいですか? わ、私はマリエッタ・エッジコムと言います。魔法省のエッジコムの娘です。実は私……先生にお話ししないといけないことが。……ポッターとダンブルドア校長に関することで。彼らが今やろうとしていることを、私は知っています』
この小娘の言が正しいのなら、私は強力なカードを手に入れる。たとえそれがどんなに小さく、ただ切欠に過ぎないものだとしても、今ならその切欠だけでも十分。私の権力はもはやダンブルドアなど歯牙にもかけないものとなっている。親愛なるファッジ大臣のお陰だ。日刊予言者新聞によって、世間でのあのいけ好かない老人の評価は地に落ちた。その最後の一押しをこの女生徒がもたらしてくれる。思わず舌なめずりしそうな気分だった。
たとえそれが愚鈍で取るに足らない生徒だったとしても、多少の甘い汁は与えてもいいと思える程機嫌が良くなるというものだ。
尤も私が名前を覚えていない程度の無価値な生徒。エッジコムという名前でようやくそんな魔法省職員がいたなと思いだす程度のもの。ここまで来たというのに、最後の最後に愚かな行動に走り出す。
「じ、実は……。で、でも……。やっぱり……」
ここまで来て躊躇するような態度に思わず舌打ちしそうになる。これだから機会を目前にしながら躊躇するような人間は嫌いなのだ。初めから私より恵まれた立場にありながら、その立場に甘んじるばかりでそれ以上に行こうという気概がない。いや、勇気がない。
私は何とか優し気な態度を保ちながら話かけた。
「えぇえぇ、私は貴女の気持ちがとてもよく分かりますわ。報復が怖いのね? あのダンブルドアやポッターが仕返しに来るのではないかと恐れているのでしょう? でも安心しなさい。私が必ず貴女を守ってみせるわ。勿論貴女のご両親のこともね。貴女のご両親はとても優秀な職員ですもの。私が最も信頼する職員ですのよ」
当然、本当はエッジコム夫妻のことなど顔も覚えていない。誰がそんな無価値な人間たちなど覚えていられるだろうか。私の役に立つでもなく、ただ私の下にいるだけの職員を。
だからこそ私は一度無価値な人間のことを持ち上げ、次いで馬鹿な小娘に容赦なく現実を突きつけた。
「ですから非常に残念ですわ。もし貴女がお話しくださらないのなら、優秀な職員が二人も失われてしまうのですもの」
「そ、それは!?」
「あら、何を驚いているの? 当然でしょう? 貴女の言葉が正しいのなら、あのポッターとダンブルドアの不正に関することを私に知らせないということですもの。それも今まで私に黙っていた……それはもう私のみならず、魔法省に背信していたということですわ。そんな愚かな娘を持つご両親をどうして信用することが出来ますの?」
そして震え上がる小娘に再度私は告げる。私に話しかけてきたのも衝動的なものだったのだろう。絶対な権力を手にしつつある私に恐怖し、思わず恐怖に耐えかねて私に密告しようとした。この程度の小娘の行動原理など私には簡単に予想することが出来る。だがここに来た以上、もう小娘に選択肢などありはしない。もはや私に利用されるしかこの小娘に価値はないのだ。
「さぁ、もう一度聞いてあげますわ。貴女はどんなことを私に話したいのです? これ程の時間を取らせたのですもの……私にどんな利益をもたらしてくださるのです?」
私の最後通告にようやく小娘も観念した様子だった。恐怖に顔を土気色に変えながら、おもむろに口を開き話し始めようとする。
勝った。小娘が何かを話し出そうとした瞬間、私の中にはもはや抑えきれない優越感が既にあふれ出していた。この小娘が何を言い始めるかは分からないけれど。内容などもはやどうでもいい。どんな些細な内容であれ、口実さえあればあの老人を追放することが出来る。野獣達を起用したことだけではダンブルドアの信奉者は納得しないだろうが、魔法省への背信行為と言及出来れば無理やり黙らせることが出来る。差別がどうのと馬鹿々々しいことを言う現実を見ない連中も、魔法省という絶対的な論理で見下すことが出来る。だからこそ私は次の瞬間には勝利宣言を発するような心持で小娘の言葉を待っていた。
……ですが間が悪いことに、
「失礼します。何やら興味深い話をされていますね。私にも話を聞かせていただけませんか?」
部屋に突然響いた冷たい声音によって、私の楽しみは少しではあるが遅れてしまうことになる。
弾かれた様に部屋の入口に目を向ければ、そこにはあのマルフォイ家長女の姿があった。その表情は冷たく、私の目からもいつもの如く人を人として見ていない程の冷たさを瞳に宿しているように見えたのだった。
……少なくとも、私の目には。
マリエッタ視点
それはあまりに衝動的な行動だった。
ここ最近の私は恐怖のあまり碌に睡眠も食事も摂れずにいた。もはや正常な思考など出来るはずがない。私だって最近の自分がおかしくなりつつあることは自覚している。チョウにも心配されたし、あまりの顔色の悪さからDAメンバーからも奇異な目で見られている。
でも……なら私はどうすればいいの?
皆私の気も知らないで。どうしてアンブリッジ先生のことが……ダリア・マルフォイのことが怖くないの? 恐怖感を馬鹿々々しい正義感で誤魔化せるの?
日に日に増す両親への罪悪感、自身の絶望的な未来に対する恐怖。そしてそんな私の感情を少しも理解しようとしない連中。色んな感情がごちゃ混ぜになり、もう私の中に真面な思考力など残されてはいなかったのだ。
だからこそ……廊下を歩くアンブリッジ先生に話しかけたのは、もうこんな恐怖感を早く終わらせたいという衝動的な行動だった。
『実は私……先生にお話ししないといけないことが。……ポッターとダンブルドア校長に関することで。彼らが今やろうとしていることを、私は知っています』
勿論話しかけた直後、私は自分の行動を激しく後悔した。まるで蠅を見つけたガマガエルのような表情を向けられれば尚更。いくら衝動的な行動だったとはいえ、直後に自分自身の行動を一瞬振り返るくらいのことは出来る。
でも、一度行動してしまった私に後戻りすることは許されない。私の馬鹿な行動は、
『もし貴女がお話しくださらないのなら、優秀な職員が二人も失われてしまうのですもの』
もう目の前のガマガエルに絡め捕られてしまったのだから。
両親から聞いていた通り、私がただの学生だからと許してくれるような雰囲気ではない。私が後戻りしたり、つまらない情報を話せば本当に両親にまで責が及びそうな口調だ。私は両親を守りたい一心だったというのに、これでは全くの逆になってしまう。
いや、両親だけで済めばまだいい方かもしれない。私は両親のことも守りたいけど……チョウのことだって守りたい。私をこんな状況に追い込んだのは他なぬ彼女ではあるけど、それでも彼女は私の大事な友達なのだ。出来るならば彼女のことも守ってあげたい。馬鹿な夢から覚め、その上で何の罰も与えられないようにしてあげたい。ここまで来れば全て洗いざらい吐き出した方が、友人を見逃してもらえる確率が上がるというものだ。でも、それも私がここで足踏みすればする程不可能なものになってしまう。何故なら時間が経てば必ず……もう一人、恐怖を体現したような人物がこの事態を嗅ぎつけるのだ。
「失礼します。何やら興味深い話をされていますね。私にも話を聞かせていただけませんか?」
それは人間の声でありながら、どこか人間のものではない印象を受ける声だった。
突然の声にアンブリッジ先生と同時に振り返れば、そこには案の定ダリア・マルフォイの姿が。彼女への一年生の頃から抱く印象と寸分も変わらない。ただ冷たく、無機質。人をその辺の石ころにしか思っていないような、まるで人ではない
監視の目がありながら、どこにでも現れて生徒を石にしていたような彼女のことだ。こんな誰かが今まさに破滅するだろう場に現れないはずがない。私は彼女の登場に恐怖こそ感じても、あまり驚きはなかった。ダリア・マルフォイならば何をしても驚くには値しない。ただ恐怖の対象になるだけだ。
尤もまだホグワーツに赴任してから半年たったかどうかの先生は、ダリア・マルフォイの異常性にまだ慣れてはいなかったらしい。先生は突然の登場に目を見開き、少し声を震わせながら応えていた。
「ミ、ミス・マルフォイ! な、何故こ、この部屋に入ってきているのです!? わ、私は貴女を呼んだ覚えはありませんよ!?」
「いえ、偶々ですよ、アンブリッジ先生。ただの通りすがりです。私の……そう、
そしてアンブリッジ先生の言葉をも超然とした態度で受け流すダリア・マルフォイ。どう考えてもおかしな状況なのに、それを指摘させないだけの冷たい雰囲気をまとっている。普段であればいきり立つであろう先生が、納得していない表情でありながら一瞬黙り込んでいた。
やっぱり……アンブリッジ先生以上に、ダリア・マルフォイこそ恐ろしい人物なのだ。二人の姿を見て私は確信する。
普通に考えれば、教員であるアンブリッジ先生の方がダリア・マルフォイよりも立場は上のはずだ。部屋に勝手に入ってくるなど本来は減点もの。高等尋問官親衛隊なんて立場も先生から与えられたもの。でもあの厳しい先生はダリア・マルフォイの暴挙には何も言わなかった。いえ、何も言えなかったのだろう。
ホグワーツの人間なら誰だって知っている。ダリア・マルフォイは『継承者』であり、気に入らない生徒を何人も石にした恐ろしい人間だ。それどころか皆彼女が犯人だと知っているのに、誰一人として彼女を追放することが出来ずにいる。正真正銘、この学校で一番恐ろしい人間なのだ。アンブリッジ先生が魔法省から来ている人間とはいえ、彼女に対して何か出来るはずがない。出来るのならば誰も恐れてなどいない。
あぁ、こんなことになるのなら早くアンブリッジ先生に話しておけば良かった。私は足踏みしたばかりに、こうしてダリア・マルフォイにまで睨まれる羽目になってしまった。元々アンブリッジ先生が一人の時に話しかけたのも、心の中でどこかダリア・マルフォイに介入されたくないという打算もあってのことなのだ。ダリア・マルフォイに介入されれば、チョウのことだって守れなくなってしまう。アンブリッジ先生の目的がダンブルドアの失脚である以上、私たち生徒のことなど二の次のはず。なら密告することを条件にチョウだけでも救えるはず。
でも彼女は違う……。ダリア・マルフォイの目的は、アンブリッジ先生のような明確な目的などではない。ただ残虐に、他人が破滅する場面が好きなだけ。噂に聞く彼女は正にそんな恐ろしい人間だった。人を人として見ていない冷たい無表情。そんな無表情を唯一人を傷つける時だけ綻ばせる異常性。チョウと同じく特別でありながら、決して相容れてはいけない異常。それがダリア・マルフォイなのだ。私は勿論、チョウのことも決して見逃してくれるはずがない。どんな言い訳をしようとも、ダフネ・グリーングラスがスパイとして送り込まれている以上言い逃れなど出来ない。
私の恐怖感は更に強まり、もはや何も言えなくなってしまう。そんな私を見逃してくれるはずもなく、ダリア・マルフォイは私の体面に回り込みながら尋ねてくる。
「エッジコムさん。……ここまで来た以上、もう
本当に異様な空気だった。突然現れた彼女にこの空間全てが既に支配されている。そしてそんな空気の中、更にダリア・マルフォイは私への冷たい視線を強めながら続けたのだった。
私の目を……まるで
「ですが、それでも貴女には黙っているという選択肢もあったはず。なのに態々アンブリッジ先生に話に来た。それは何故ですか? 貴女は
私の目とあの冷たい金色の目が合わさる。色こそ明るいのに、その印象はまるで底なし沼のように冷たく暗い。その上視線を合わせているだけなのに、まるで心の中に何かが入り込んでくるような感覚すら覚える。何の魔法もかけられていないのに、無理やり心の奥底から真実を引きずり出されるような気分だった。事実気が付けば私は、私が
「わ、私はただ……
しかし私の答えを聞いた後、ダリア・マルフォイはただ私の目を見つめるばかりで中々言葉を発しようとしない。声を出すのは半ば蚊帳の外に追いやらつつあるアンブリッジ先生くらいのものだ。
「……ミス・マルフォイ。気が済みましたか? 突然部屋に入ったことはこの際何も言わないでおいてあげましょう。ですがこれ以上私の時間を無駄にすることは許されません。さぁ、ミス・エッジコムの話を私に聞かせなさい」
なのにダリア・マルフォイはそれでも先生の言葉には応えず。やはりただ私の瞳を見つめていたのだった。そしてようやく言葉を発したと思っても、
「ただ自分のためであればどうなろうと知ったことではありませんでしたが……そうですか。
相も変わらず誰に話しているのかも分からないものでしかなかった。
いや、それどころか、
「……貴女にグレンジャーさんの呪いが降りかかっても、もはや無駄な犠牲にしかならないでしょうね。ならば貴女はもう関わらない方がいい。貴女はただ巻き込まれただけ。これからはこんな馬鹿々々しいことに巻き込まれないように気を付けるのですよ。貴女の大切な家族のために。『オブリビエイト、忘れよ』」
次の瞬間私に杖を向け、あろうことかいきなり呪文を放ってきたのだ。
「な、何をしているのです、ミス・マルフォイ! 忘却呪文!? 貴女は一体何をしたというの! その娘は大事な証人ですよ! それを突然現れた貴女は、」
「先生、落ち着いてください。この生徒の話を聞いても精度の低い情報しか得られませんよ。今
薄れゆく意識の中、私の耳に先生と彼女の会話が届く。でもそれも数秒のことで、私は直ぐに深い眠りに落ちていくのだった。
目が覚めた時、何故アンブリッジ先生の所に行ったのか……その理由を思い出せなくなるとも知らずに。
ダフネ視点
「ダフネ、無事だったか!」
先程まで『必要の部屋』にいたはずなのに、気が付けば私は談話室に立っていた。談話室にいるのはドラコだけ。他の生徒は周りに見当たらない。
……何故先程まで違う場所にいた私が、次の瞬間ここにいるのだろうか。
その疑問は隣から突然響いた声によって氷解することになる。
「グリーングラス様! ドビーめはお嬢様にご命令いただいたのです! 御友人であるグリーングラス様を安全な場所にお連れするようにと!」
声は私のすぐ隣、ただ視線を下げなければ見えない場所から発せられていた。声のする方を見れば、そこにはダリアの大切な『屋敷しもべ妖精』であるドビーの姿が。他のしもべ妖精の区別はつかないけど、流石にダリアが家族と考えている子のことは私にも分かる。私は屈みこみ彼と視線を合わせながら尋ねた。
「ドビー、ありがとう。でも、ごめんね。正直、突然色々なことがありすぎて現状をよく理解できていないの。アンブリッジにDAがバレたことだけは分かったのだけど……最初から話してもらってもいいかな」
そんな私の質問に、まずドラコが最初に応えた。
「それはまず僕が話そう。こいつに話させると長そうだ」
「ド、ドラコお坊ちゃま」
「お前と顔を合わせるのは久しぶりだな、ドビー。だが今はそんなことどうでもいい。もうすぐ僕も出ないといけない。それにおそらくダフネもな。なら早めに事態を理解していた方がいい」
ドラコはドビーと短く話した後続ける。
「お前が集会に行っている間に、そこのドビーから連絡があったんだ。メンバーの一人がアンブリッジに接触しているってな。それもダリアが前々から裏切ると予想していた生徒がな。こんなこともあろうかと、ダリアはドビーにそれとなく注意するよう言っていたらしい」
「そうでございますです! お嬢様はアンブリッジ先生と誰かがお会いする時は、それとなく監視するようにと。それが生徒ならば尚更……とお嬢様が仰っていたのです!」
「……それで数分前にこいつがダリアに知らせてきたんだ。集会メンバーに裏切り者が出たってな。おそらくだが、裏切り者が一人でも出た以上、もうあの集会はお終いだ。一人処理しても、必ずまた同じような奴が出てくる。……グレンジャーはこれだから詰めが甘いんだ。アンブリッジにも接触された以上、もう事態を元に戻すことは出来ない。ダリアはそう考えたんだろう。それでグレンジャーに知らせを寄こすと同時に、お前をドビーに回収させたのさ。どうやら『屋敷しもべ妖精』は自由に城の中を飛び回れるらしいからな」
「ほ、本来ならしもべ妖精が人を連れて城内を飛ぶことは許されないのですが……ド、ドビーめはお嬢様のしもべ妖精でありますので」
ここまで聞いて、私はようやく事態の全貌をつかみ始めていた。
成程、ダリアは最初からこの事態を予測していたのだ。ダリアは最近ずっと浮かない顔をしていた。勿論『闇の帝王』が復活してからというもの、ダリアが明るい表情を浮かべてくれたことなど一度としてない。でもそれにしたって、ここ最近のダリアの一人で考え事をしている時間はあまりに多かった。
そしてそのダリアが懸念していた事態が……まさに今現在進行形で起こっているのだろう。
DAメンバーの裏切り者。私としては誰があんな下らないメンバーを裏切ったなんてどうでもいい上、これで『ダンブルドア軍団』なんて名前の集団が解散になるのなら清々するのだけど……そうも言っていられないことくらいは私にも理解できた。
思考が追い付かないなりに、私はまず聞かなければならないことを続けて尋ねる。
「何となく現状は分かったよ……。それで、当のダリアはどこなの? 他のスリザリン生も見当たらないし」
しかし結局私の質問に答えたのは、
「他の奴らは自分の部屋だ。お前が帰ってくるのを見られないように、ダリアが全員を部屋に帰した。……ダリア本人は今、」
「ドラコ! まだここにいたの!?
突然談話室に飛び込んできたパンジーだった。
彼女が入ってくると同時にドビーの姿は掻き消え、パンジーは私とドラコに目を向けながら続けた。
「あら? ダフネもここにいたの? 部屋にもいなかったから、どこにいるのかと思っていたのよ? まぁ、いいわ。それよりドラコ! 早く行かなくちゃ! アンブリッジ先生からも言われているでしょう!? これはグリフィンドールの連中に恥をかかせるいいチャンスよ!
……『ダンブルドア軍団』がどうなろうと私にはどうでもいい。
ハーマイオニーとルーナ……それと何となくネビル・ロングボトムには逃げ延びてもらいたいけど、その他の連中など知ったことではない。DAなんて解散されれば清々するくらいだ。
でもそんな呑気なことを言っていられる事態ではないと……この瞬間になって本当の意味で理解しつつあった。