ハリー・ポッターと帝王のホムンクルス   作:オリゴデンドロサイト

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ホグワーツからの手紙

 ダリア視点

 

お兄様が先月11歳になり、私もあと一か月で11歳になる。

そんな時、家族皆で食後の紅茶を飲んでいる時間、ついにその手紙が来た。

お父様がしもべ妖精が持ってきた手紙を受け取ると、その中身を確認する。

 

「ようやく来たか……。ドラコ、ダリア。お前たちに手紙だ」

 

お父様から手紙を受け取ると、

 

 

 

 

親愛なるダリア殿

 

このたびホグワーツ魔法魔術学校にめでたく入学を許可されましたこと、心よりお喜び申し上げます。教科書並びに必要な教材のリストを同封いたします。

新学期は九月一日に始まります。七月三十一日必着でふくろう便にてのお返事をお待ちしております。

 

副校長 ミネルバ・マクゴナガル

 

 

 

 

そう書かれた手紙と共に入っていた教材リストをみる。

 

「やはり全部読んだものばかりですね……」

 

魔法に触れたことがないマグル生まれの子供も入学するのだ。

当たり前のことだが、やはり本当に基本的なことしか最初は教えないようだった。

 

私はお父様に三歳から魔法を教えてもらっている上に、自分でも好きで魔法の本を読んでいる。そんな私に、

 

『ホグワーツを卒業した大人にも勝る知識と力をつけている』

 

と、お父様がおっしゃっていた。そして闇の魔術を使えば、そこらの闇祓いにも負けないだろうとも。

 

しかしお兄様の方は、まだホグワーツ一年生が終わったくらいの知識しかない。

この差は別にお兄様が不真面目なためではない。むしろお兄様の性格は案外真面目な方だ。むしろこの段階でそれだけの知識があるのはすごいことなのだ。

だが、お兄様は私程魔法の勉強について興味があったわけではないのだ。どちらかというと、魔法のことよりクィディッチの方に興味をお持ちのようだった。

魔法界で育つということは、それだけ周りが魔法であふれており、それだけ魔法が当たり前の存在になる。

それだけ当たり前のものに大きな興味をいだけというのはやはり難しいのだろう。

そんな中でそこまで知識があることは寧ろすごいことなのだ。

 

それに私の場合は、肌を日光に長時間さらせない影響でクィディッチなんてもってのほかだ。箒に乗ったこと自体はあるが、私が箒に乗る場合、横座りで、日傘をさしたような、過激な動きがちょっと難しい乗り方しか出来ない。全身布で覆った状態で乗れば話は別なのだが、そこまでして乗りたいとは思わない。

 

そんなこともあって、私の趣味は基本的にインドアなものとならざるを得ず、さらに勉強に打ち込んだ結果がこの差を生んでいた。

余談だが、魔法界には『十七歳未満の者の周囲での魔法行為を嗅ぎ出す呪文』、通称『匂い』が存在する。十七歳未満の者はその精神力、魔法力など様々な面において未熟なため、本来魔法を魔法学校以外の所で使ってはいけないのだが、私の場合はお父様が一緒にいることでごまかしている。周囲に大人がいれば、最悪そちらが魔法を使ったと言えばばれない。まあ、三歳のころからこの年まで、それでごり押しできたのはひとえにお父様が持つ、魔法省への影響力故なのだが。

 

私が教科書について落ち込んでいると、

 

「ダリア。そんなに落ち込むことはない。ホグワーツの図書室はこの家の書庫より蔵書が多い。そこならお前の知識欲も満たしてくれるだろう。まあ、お前の好きな闇の魔術の本は禁書の棚にあるだろうし、それにホグワーツよりダームストラングの方があるのだが……」

 

「だってドラコとダリアが遠くに行ってしまうなんて、私耐えられませんもの」

 

そう、お父様としては私たちにダームストラングに行ってほしかったみたいなのだが、お母様が私たちを遠くにやるのを嫌がったため、ホグワーツに行くこととなったのだ。

私は確かにダームストラングの闇の本の蔵書には興味があるものの、そんなことよりお母様の方が大切だ。それに、

 

「私はホグワーツの理事だ。困ったことがあったら、私に言いなさい」

 

多くの秘密を抱える体を持つ私としては、こっちのほうが結果的によかったのだろう。

 

「ダリア、今年ハリー・ポッターがホグワーツに入学するのを知っているかい?」

 

「ええ、ここ最近ずっとそのニュースしか一面記事になってませんもの。魔法界も平和になったものですね」

 

そう、他に重要なことがないのか、連日ハリー・ポッター入学の記事しか一面にならない。正直私は飽きていた。

そもそも、私はハリー・ポッターにそこまで興味がない。確かに闇の帝王を打ち破ることで、私が帝王の道具にならずにすんだという点においては感謝してる。ただ、会ってみたいといえる程の興味はわかなかった。

むしろ闇の帝王を打ち破った方法の方が大変興味がある。彼が受けたのは闇の魔法の中でも特に強力な、『死の呪文』だときく。『死の呪文』には対抗手段がないとされていたのだが、彼はそれを打ち破った。

闇の魔術を学ぶものとしては、大変興味がある話だ。

 

だがそれだけだ。その興味のある方法すら、やってのけたのが赤ん坊の時なのだから、彼に聞いても答えを得ることはないだろう。

 

私はそう考えていたのだが、お兄様はそうではないらしい。

 

「彼は今マグルの中で暮らしてるんだそうだ。なら何も知らないはずだ。純血の尊ささえ。僕が正しい友達の作り方を教えてあげなくては」

 

「まあ、ほどほどにお願いしますね」

 

私はマグルやマグル生まれのことを嫌ってはいない。

だからと言って純血主義を真っ向から否定してもいない。

 

私にとって純血主義とは、魔法族の持つ本能的危機感なのだ。マグルと魔法族は決してその文化において混ざりきることはない。お互い信じるものが違うのだ。マグルは科学を。魔法族は魔法を。それらが相容れることはない以上、その二つはお互い断絶とまではいかないが、ある程度お互いに距離をもつしかない。

だが、そこに話をややこしくする存在が出てくる。

マグル生まれだ。

マグルの価値観をもちながら、魔法を使える存在。魔法族、とりわけ魔法界の価値観を持つ純血からしたら面白い存在であるわけがない。

そんな自分たちの信じるものを脅かすかもしれない存在を、忌避し、さらに強硬に自分の領域を守ろうとする考えが、結果として純血主義をつくっている。

 

別にマグルやマグル生まれが悪いわけではない。だが、純血主義をかかえる人たちも真に悪の人間だというわけでもないだけだ。まあ、物理的に排除するのは行き過ぎな主義だと思うが。

結局のところ、純血でもない私は純血主義になることはないし、だからと言ってマグル生まれを好きになるということでもない。

 

私にとって、マグルも、マグル生まれも、血を裏切るものも、そして純血すら等しく()()()なのだ。

私は大切な人間が無事に、幸せであればそれでいい。

これを脅かす可能性があれば、どんな手段を使ってもその可能性を排除するだろう。

 

 

 

 

「さあ、明日からリストのものをそろえなければな。大体のものは家にもあるが、新品の方がいいだろう。純血たるマルフォイ家が忌々しいウィーズリー同様使い古しであっていいはずがないからな」

 

ウィーズリーとはお父様がよくおっしゃる血の裏切り者の一家のことだ。

よく家に立ち入り調査をしようとしていると、お父様はぼやいていらっしゃった。

なんでも燃えるような赤毛が特徴の家族らしい。私はまだ見たことがないが、今山ほどいる子供の何人かがホグワーツにいるらしいので、見る機会もあるだろう。

 

「楽しみだなダリア」

 

「ええ、お兄様」

 

そう、お兄様との新しい生活に思いをはせながら、二人で笑いあうのであった。

 




造られた目的に対する反抗心から、ダリアは人を傷つけるということに忌避感を持ってます。ただ、自分の大切な人を守るためなら、なんのためらいもなくなっちゃいます。

次回から賢者の石編

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