真面目に描写しようとしたら終わらなくなったのでかなりスキップしてます。
その結果日常回としても中途半端になってしまいました……。
良いと言われたら、行くしかないでしょ三門市観光!
と、いうことでオレの初聖地巡礼の旅は決まったのであった。
当然監視役兼案内人は居るが、オレ自身現代日本の生活から離れていたので、誰か一緒に来てくれるというのはとても頼もしい。
ついでに持続時間と範囲指定のテストもかねて例の試作トリガーを渡された。
換装したトリオン体には顔の傷が無いので、もしかしたら……オレのうぬぼれでなければ、このトリガーはオレのために急いで作ってくれたのかもしれない。
寺島さん……一生ついていきます!!
研究室の方に向かって敬礼していると、聞き覚えのある声に現実に引き戻された。
「どーも、お守りです」
「あっ、どーも今日はお忙しいなかありがとうございます、って」
例のデフォルメ顔でこちらを見ながら迅さんにもらったであろうぼんち揚片手に立っていたのは原作一巻表紙の彼である。
まじか。
「空閑くんが……?」
「あぁ。先輩先輩が逃げようとしても今度はバッチリ捕まえるぞ」
「いや、頼もしいけど良いの?学生の休日なんて超貴重じゃん」
「ホントは今日、オサムとチカと出掛ける予定だった」
「うわっ、タイミング悪くてすいません……」
いやほんとまじですみません。
玉狛支部の友情を深める機会を邪魔してしまったようだ。
先輩の威厳とかプライドとかは欠片もないので思いっきり頭を下げる。
そうしたら、空閑くんは更なる一撃を投下してきた。
「ので、今日は二人も居る」
「へ?」
それってホントにオレのお守りなんですかね……。
……とりあえず、オレ集団の中でボッチフラグ立ったんじゃねこれ。
「先輩先輩がドウシテモと言うので連れてきた」
「ドウシテモ……」
「うわっ恥ずかしくないんですかロウ先輩」
「こ、こんにちわ」
「優しさが染みる」
ドウシテモ作戦を自分から言い出したとはいえ精神ダメージを負わないと言ってはいない。
辛辣な後輩と強かな後輩に囲まれた先輩は言わば前門のなんとかと後門のなんとかに挟まれた宇宙人なのだ……。
知らない先輩が行きなり来たら普通はドン引き必須なのに挨拶してくれる千佳ちゃんまじで良いこ。
初めてのシャバにテンション上がってたけど、修くんや千佳ちゃんは先輩の黒歴史的な事情は知らないのを失念していた。
空閑くんにお守りしてもらう必要があるなんて言ったらなんで?って言われるに決まっているので言えない。
そのため断腸の思いで提案したドウシテモ作戦だったがすでにライフは0になりそうだ。
でも!!恥をかいても聖地巡礼したかったんだよ!
「先輩、今日は空閑に三門市の案内をするつもりだったんですけど」
「先輩のことは気にせず遊んでくれ」
「一応聞きますけど、どこか行きたいとことか無いんですか」
「いや、本当に良いよ」
「オサム、あれに入ってみたい」
優しい後輩はドン引きしつつもオレの意見を聞いてくれた。
が、しかしオレは三門市の地理に全く詳しくないのでなにも言えないのであった……!
そんなオレのピンチを汲み取ってくれたのか、空閑くんが派手なカラーリングの店舗を指差して行き先を決めてくれた。
店先のクレーンゲームや外からも聞こえる爆音からして、
「ゲーセン?」
懐かしい響きだった。
心はいつまでも少年なオレは大はしゃぎである。
「先輩はしゃぎすぎですよ!!」
「すみません……」
当然叱られる。
本日二度目の謝罪。
後輩に叱られるとか恥ずかしすぎる。
まず入って早々、入り口にあった銃のゲームをやった。
よくあるゾンビゲーで、トリガーの使用感と少し近いからかそこそこうまくいき、3クレジットくらいでラスボスまで行けた。
その後は千佳ちゃんが目を輝かせて見ていたぬいぐるみをみんなで取ってプレゼントした。
後輩達にかっこいいところを見せられた(気がする)のでここまでは良い。
今度はみんなで対戦できるゲームをやろうということになった。
某配管工のレースゲームで遊び、ホッケーをして、無理やり三人をプリクラに連れ込む。
合成された後の原型をとどめていない顔に笑い、ついでに玉狛組だけでも撮らせ四等分することによりオレは合法的に写真を手に入れた。
だいたい目ぼしいものは手を出したあとに格ゲーに興味を示した空閑くんと対戦。
なにやら身体の調子が良かったのか我ながら鬼畜な反射速度でコマンドを入力し完勝。
どや顔のオレに、悔しかったのかもう一回という空閑くん。
勝者の余裕でどや顔でOKしたら突然空閑くんが覚醒。
もはや人間業でないコンボにギャラリーも拍手するレベル。
先輩の威厳()をかけてリトライするも最初のキレはなんだったのか負け続け……もう一回!と引き下がるカッコ悪い先輩は後輩に叱られました。
「空閑も……途中からレプリカの力を借りていただろう」
「バレたか」
「えっ」
「筐体を挟んだ反対側でロウ先輩は見えないからってぼくたちには隠す気が無かっただろ」
「なにそれズルい」
「先輩先輩のどや顔がムカついてつい。ゴメンナサイ」
「オレもレプリカ先生のプレイ見たい!」
「…………そっちなんですね」
聞こえたぞ千佳ちゃんよ!別に使えるものを使って勝つのは悪いことではないのだ!
ただ純粋にオレがレプリカ先生のかっこいいところを見たいだけなのだ!
もう一回!と言おうとしたが修くんの目を見て止めた。
そう、戦場で生き残るには相手をよく観察することが重要だ……今のオレでは修くんに勝てるビジョンがない為これは諦めるのではなく戦略的撤退なのだ……。
「そろそろ出ますよ」
「三人共に腹すいてない?今日付き合ってくれたお礼に先輩が何でも奢っちゃうぞ」
「そんな、悪いです」
「ホントは三人で遊ぶはずだったのに邪魔しちゃったからさ、奢らせて」
千佳ちゃんが遠慮しちゃうのは解っていたので逆に拝み倒す方向に持っていく。
修くんは今さら遠慮なんてしないだろうし、空閑くんも気にしないだろうからね。
近くのファミレスでみんなで軽く食べて、本来の目的だった三門市の案内を再開した。
駅からスタートして各種公共施設を見ていく。
それは施設を使うために教える、というよりも常識を教えていく、知識を実感させる類いのものだった。
空閑くんが学校であまり浮世離れしたことを言わないように、普通の人なら知っていて当然なレベルから教えてあげているのだろう。
ボーダーからほぼ出ないオレも使うことは無いだろうが、空閑くんが馴染めるように一生懸命教える後輩達にほっこりした。
そして最後はスタート地点の駅に戻ってお開きになる。
オレを送り届けないといけない空閑くんと二人、残される。
「あのさ、空閑くん」
「なんだ、先輩先輩」
「後一ヶ所、行きたいところがあるんだけど、いい?」
「どこ?」
「学校、行ってみたいんだ」
そう言ったオレの顔をちらりと見た空閑くんは、あっさりと答えた。
「いいよ」
学校。
結局今回は通うことがなかった場所。
原作で空閑くんと修くんが出会った場所であり、オレはともかく俺からしたらボーダー以上に遠くて、理解できない場所だ。
せっかく来たけど休日だから当然門は閉まっている。
夕焼けに染まる校舎は人気がなくてどこか寒々しい。
ただ何も言わずにじっと見ているオレを気にしてか、空閑くんから提案される。
「入ってみる?」
「いや……って、こらこら門を越えちゃだめだって。空閑くんはともかく部外者の先輩は不審者騒ぎは起こしたくないからやめてくださいお願いします」
「先輩先輩は……変な人だな」
「今さっきまさに門を乗り越えようとしていた子に言われたくないなぁ」
「外から見てるだけで満足なのか」
「そうだよ。…………うん、今日は本当に付き合ってくれてありがとう。そろそろ帰ろうか」
もう門限が近い。
しかし今日は本当に楽しかった。
怒られもしたけどバカみたいに笑ったし、聖地巡礼したし、見たかったものも見れた。
空閑くんの負けず嫌いなとこも見れたし、ゲーセンで取ったお土産のう○い棒お徳用もある。
今、オレはとても幸せだ。