オレだけなんか世界観が違う   作:ろくす

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新年明けましておめでとうございます。
そしていつもながら感想評価誤字脱字報告ありがとうございます。

今回は難産でした。
お待たせして申し訳ありません。
また、前半をちょっと加筆修正しました。


実力派エリートの危惧

風刃を手放した帰り、迅はランク戦の対戦ルームに向かった。

 

案の定、彼はいつものように起動したトリガーを抱え込むように抱いたまま、床に座り込んで対戦ログを見ている。

そういうところが異質だと思われる原因なのだが、本人に自覚症状は無いのだろう。

 

声をかけるつもりは無かった。

良い結果にはならないことはサイドエフェクトを使わなくても解っている。

 

彼との出会いは、彼がボーダーにやって来た初日だった。

 

 

「はじめまして!これからよろしくお願いします!ボーダーにずっと憧れてたのでとても嬉しいです!」

 

 

ボーダーの隊員として紹介された迅も、前もって話を聞いておかなくては彼の過去を連想することなんて欠片もできないような、ごくごく普通な様子で挨拶された。

その態度にはどこにも生々しい戦争の痕跡などなく、近所を歩いていてもおかしくないと思わせるのが逆に不自然だった。

 

彼と顔を会わせた瞬間見えた無数の未来と傷痕から、彼が見た目通りの人間ではないことは直ぐにわかったが。

彼をどうすれば良いのか、思わず悩みたくなるその未来にその場は受け入れた。

ボーダーとしては、迅に会わせることは扱いに困る彼を受け入れて良いのか判断するための第一の関門だったのだろう。

迅は特にリアクションをしなかったからか、厳しい行動制限があるものの彼はボーダーに受け入れられた。

 

迅としては早期に会っておいて良かったとは思う。

しかし、彼自身はそうではなかっただろう。

 

普通に振る舞いながらもどこか緊張しているその姿は、迅のサイドエフェクトを知った上で何かやろうとしている人間によく見られる態度だった。

 

その”やろうとしていること“が予知のサイドエフェクトではっきりと知ることができないのもまた不自然だった。

彼は、迅が会ったこともない誰かが関わる未来で、何かをしようとしている。

迅ですらまだ不確定な未来を、明確に確信した上で何かをしようとするなど不自然きわまりなかった。

外部から来たばかりの人間が何故迅のサイドエフェクトを知っていて、かつ迅すら知り得ない何かを確信しているのか謎は尽きない。

 

そんな彼は、迅と遭遇することをいつだって警戒している。

 

顔を会わせれば満面の笑顔で挨拶をされるが、裏腹にその目は逃げる理由を探している。

迅からサイドエフェクトで見たものについて聞かれたくないのだろうか、少し話そうとした時も迅の言葉を遮り挨拶だけして足早に立ち去られた。

初対面の際は第三者の目があったからこそ意図して不自然なくらいに天真爛漫に振る舞おうとしていたが、迅に対しては取り繕うことすらしないその態度が際立つというものだ。

 

迅のサイドエフェクトは未来は見えても過去は見えないので、何故彼がそんな行動に出るのか理由を知ることはできない。

だが、未来は見ることができる。

 

大規模侵攻までにもう時間がなかった。

このまま彼をボーダーに置いていいのか、決断しなくてはならない。

 

人の命がかかった選択は、いつだって重いものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「烏丸先輩……じつは、ぼく銃手になりたいと思ってるんですが……」

 

 

急な修の申し出に、訝しげな目になる烏丸。

今までレイガストで戦ってきて、自力でB昇格直前まで持ってきたのに何故今さら変更しようとするのか、真意を知りたかった。

 

 

「銃手……?銃手は自分のトリオンを弾丸にして飛ばすから攻撃手より消費が激しい。普通はトリオンに余裕があるやつがなるもんだぞ」

「それは……そうなんですが……」

「……前教わってた師匠の影響か?」

 

 

実力を把握するために仮想戦闘室で戦った後、本人の口から語られた師匠の存在が頭をよぎった。

修をこんな風にしてしまった存在に、正直あまり良い印象は無かった。

そんな烏丸の空気を何となく感じているのだろう。

説得するために、言葉を選びながらゆっくりと口を開いた。

 

 

「先輩の影響が無いかっていうと嘘になります。でも、今回の理由は違うんです」

「……何が理由なんだ?」

「ぼくが、弱いからです」

「いや、弱くはないだろう」

 

 

確かに正道から外れたところはあるが、決して弱くはないと思う。

トリオン能力の差が出やすいところでは確かに力不足を感じるが、一対一で戦ったときも搦め手を駆使して全力で倒そうとして来る頭脳と身体に刻み込まれた動きは悪くはなかった。

 

 

「でも、その程度なんです。ぼくは何度戦っても空閑みたいに小南先輩に勝てないと思います。」

「それは……」

「基本的に勝てない相手とは戦うな、が先輩の教えてくれた鉄則でした。でも、それじゃあダメなんです」

「……」

「これからは遠征のために勝てない相手とも戦わなくてはならないのに、今のままではダメだと思ったんです」

「……それで、考えた結果が銃手か」

「はい」

 

 

勝てない相手と戦う為には仲間との連携が必要だと思った。

けど、先輩に教えて貰った戦い方では、どうやっても空閑と千佳と力を合わせて戦うビジョンが浮かんでこなかった。

誰かの助けなんて有るはずがないことを前提として戦う為の方法は学んできたが、誰かを助け、助けられる戦い方は知らなかった。

力を合わせて戦うにはどうすれば良いのかについて全く考えたことがなかったことに気付いたのだ。

 

今まででの戦い方を捨ててでも、やるべき事があるのではないかと考えた結果がポジション変更だった。

自分だけで倒すのではなく、協力して倒す。

全て最初からスタートすることになるとしても必要なことだと思った。

 

 

「……ちょっと待ってろ。メニューを組み直す」

「はい!ありがとうございます!」

 

 

修は一歩、踏み出すことができた。

 

 




ワートリ二次の原作知識ありのオリ主の鬼門迅ニキをうまくかけずに修正しましたが、まだ解りづらかったら申し訳ありません。

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