オレだけなんか世界観が違う   作:ろくす

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本編
一人ヨルムンガンドとはオレのこと


生まれは日本、だったはずだが、医師として紛争地帯に向かう両親について行ったらキャンプにテロリストが現れた。

現地の子供たちと一緒に半ば洗脳されながら育って気がつけば少年兵に。

人を殺すことが当たり前になった頃に助けられたのは実に14歳のころ。

日本人ということが判明して、日本に連れて行かれるも人生の殆どを紛争地帯で生きた俺にはあまりにも似合わない世界で。

銃がないと眠れない俺はどんどん衰弱していって、やはり狼の子供は人の世界で生きられないのかと思われた、そんなときボーダーという存在を知った。

そして、前世を思い出してカサついた口を動かした。

 

 

「……オレだけ世界観ちがくね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり、馴染んだ重さは良い。

重さを調整してもらった銃型のトリガーに思わずニヤけてしまう。

 

「やっぱこれだよなぁ~」

 

周りからちょっと距離を置かれている気がするが気にしてはならない。

今のオレのメンタルはスーパーアーマー状態だ。

念願のボーダーに入れたのだから。

 

 

ボーダーに入るというのは当初は大反対された。

 

だが、ワールドトリガーという漫画の大ファンだったオレが、死にかけの俺を押しのけて行動したことにより生きる気力を取り戻した。

日本語すらぼんやりとして反応しなかったのに、突然流暢に喋り出してボーダーについて聞きまくるオレはちょっとおかしい位だったと思う。

でも、嬉しくて嬉しくて仕方なかったのだ。

 

やる気の無かった勉強もガンバって、手放さなかった銃と同じくらいの重さの鉄の塊も夜以外は部屋の隅に置いた。

偶然ながらもトリオンに恵まれたオレは、適性試験にパスした。

生の活力に溢れたオレは、ついに三門市に来た。

 

流石にボーダーに入っても監視は付くし、定期的にレポートも出さなくてはならないし健康診断という名のカウンセリングも無くならない。

劇的に変わりすぎて多重人格も疑われていたから、診察は気を抜けない。

 

どう考えても世界観違う一人ヨルムンガンドみたいなオレが、なんでボーダーに入れたのかというと、大人の事情も絡んでくる。

現在保護者の居ないオレの立ち位置は宙ぶらりんだ。

政府は日本人の子供がテロリストの兵として人を殺していたなんて公表するわけもいかないので、まだ公的にオレは存在しないものになっている。

てかキャンプにテロリスト来た時点で両親と一緒に死んだことになってるし。

 

死んでる扱いは狼の子供としてマスコミから追いかけられるような生活にならなくてすむので、オレも助かるから文句はない。

そんな存在しない人間の置き場に困っていた政府は、ボーダー本部から侵入禁止区域の間から一歩も出ない、という約束でボーダーに入隊させてくれた。

 

銃がなくてすっかり滅入っていた俺も、ワートリファンのオレも大喜び。

ついでに政府も一安心。

winwinである。

 

とまあ俺とオレ、と区別してみるもはっきりと分かたれていたのは思い出した直後のみで、気がつけば混じり合い一つになっていった。

銃に固執する俺も、ボーダーに固執するオレもおんなじだ。

 

まだまだC級だけど、B級になればより自分に適したトリガーにカスタマイズできる。

相棒を取り戻すためにも、原作を体感するためにも頑張らなくてはならない。

今がどの時期か正確には解らないが、オリエンテーションで生嵐山隊を見れたので原作付近に違いない。

テンション爆上げで手を振ったら振り返してくれた。

嵐山さんかっけー。

 

惚れ惚れするような説明を聞いていくうちにポイントの説明が始まった。

多めのトリオン含めても初期ポイントは1000だった。

ランク戦で上げていかないといつまでもC級のままだろう。

 

そしてお約束の対ネイバー戦闘訓練が始まった。

これで小さいとか言ってたけどバムスターのでかさにびっくりした。

遊真みたいに1秒切ってどや顔したかったが、とうてい無理だった。

3バカ以下の1分30秒でがっくりした。

けど、その後生緑川を見れたので全て良しとした。

 

どうやらオレに転生オリ主の才能は無いらしい。

隠密行動と探知追跡は昔取った杵柄で上位に付けた、と思う。

訓練が終わったらポイントは1062ポイント。

果てしなく微妙である。

同期の輝ける星、緑川君は他の訓練でもバリバリ活躍。

ランク戦の部屋に入ったのを確認すると即行でオレも入った。

ミーハーと言われようとも知らん。

 

速やかに養分になって、ついでに握手してもらって満足だ。

ちょっと引いてた気もするけど、実に充実したボーダーライフである。

 

新しい相棒を試すためにも、その後もランク戦を続けた。

随分勝手が違うため戸惑うことも多かったが、銃というものにそれなりに親しんできたからか勝ち越すことができた。

もっと続けたかったがあまり入り浸っているとカウンセリングにぶち込まれる可能性があるので程々にして引き上げた。

 

程々にしないといけない。

でも、できるなら大規模侵攻の時はB級で居たいので頑張る。

 

とりあえず対人戦をしなければいいだろうと仮想訓練室に入った。

目指せ一秒切り。

 


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