短めです
時が流れ幻想郷の季節は秋へと突入し始め、妖怪の山の木々も紅葉に包まれる頃、天狗の里にある封印牢ではご機嫌な鼻歌が響いていた...
封印牢を覗くと、そこには新たな施設こと第0部隊専用の大浴場が増設されていた...
side美羽
「んふふ~♪良い気分だわ~」
アタシは現在独りで浴槽につかり至福の時を味わっている...ついに第0部隊専用の浴場が完成した...共同浴場だと他の天狗の目があるからどうしても長くはお風呂に入れないのよねン...ここでなら好きなだけ浸かれるというものよ!
「やはり交渉して正解ねン!」
本来は仕事のご褒美ではなく、文の新聞の購読数を上げたことによるご褒美というのは少し微妙だけど、お仕事はちゃんと頑張っているのだもの!これくらいのご褒美は貰っても罰は当たらないわ!
「睡煉と夜喪妓も仕事中でなければ来ることが出来たのですがね...」
「!?」
後ろを振り向くとそこには、アタシの半身である柚神が浴槽に浸かっていた...
「アンタ...いつの間に?」
「貴女の(んふふ~♪良い気分だわ~)の時には既にいましたよ?」
柚神は満足そうに深く温泉に浸かっている...
「アンタ仕事終わっているのよね?そのために半身状態なのだけど?」
「無論です...仕事を他人に振ってサボっている貴女とは違うので」
「ちゃんと仕事は終わっているわよン!!」
...至福の時間が崩れた気がするわ...ん?というより元の状態というべきかしら?
アタシは桶に入れた日本酒とお猪口を柚神の方に流す...彼女は御猪口を持って中に入っていた酒を呷る
「まぁ...悪くないです...仕事終わりのご褒美と思えば」
「ふふん!そうでしょう!?で?あの子達の仕事の進み具合はどうなのよン?」
「いつも通りの警備ですし、そのうち交代の時間ですよ...」
じゃあ!すぐに来るわね!あの子達も楽しみにしていたし!楽しくなりそうだわ!
お仕事がないのは暇だけど、平和な事が続くのは良い事よン!!出来ることならば続いてもらいたいわね!
ゾク...
「...っ!?」
...ン!?何よ急に...一瞬だけど...体が震えたわね?この状況で体が冷えたわけではないというのに...
「...ン?...ン!?」
でもこの感覚には覚えがあるわ...戦争の数刻前...強敵と戦う前に感じる震え...まさに危険予知というべきかしら?
「どうしたんです?」
柚神がアタシに尋ねてくる...この子は何ともないようね?
「逆に聞くけど...アンタは何も感じないの?ちょっと嫌な予感を感じただけよ...」
アタシの言葉に柚神は察したのか辺りを見回す...
「周囲は特に問題はないようですが...嫌な予感ですか?一体何を?」
「さぁ?見当がつかないわね」
アタシの勘が鋭いのは自慢にはなるけど...今回は外れてもらいたいわねン...力を持っているアタシが震えるということは...
ガラララ!!
「只今戻りましたよー!」
「私達も登場だ!同志諸君!」
急に引き戸が開いたかと思うと、外から裸の状態の睡煉と夜喪妓がやってきたわ...
「ご苦労様です...お仕事は無事に終わりましたか?」
柚神の言葉に2人は頷いて洗い場へと向かう
「退屈ですよー!どうせ妖怪の山に用がある人何て滅多にいないというのにー!」
「確かに手持ち無沙汰になった気がするな...警戒に越したことはないが...」
2人はそれぞれ感想を発した後シャワーを浴びる...
「まぁ...そうよねン...」
内心溜息をつき、アタシは大浴場の天井を見つめる...
平和というのはあっという間に崩れてしまうのかしら?今度の異変の警戒が必要なのかしら?...願わくば何もない事を祈るだけよ...
その頃...幻想郷の外の世界
日ノ本に存在するとある神社では...あることが水面下で行われていた...
夕暮れ時の神社の境内には、参拝客の姿は見えず無人と化している...
(移転準備は完了だよ!)
(ご苦労)
突如2人の人影が神社の境内に現れて本殿に向かう...
(さて?次の世界はどうなるのかな?あっという間に私達の天下になったりして?)
(油断するなよ...次の場所は特殊な場所だ...私達並みの力を持つ者が存在するかもしれないぞ)
2名は何やら話をしながら歩を進めている...
(深く考えすぎだよー!)
(逆にお前は甘いんだよ...だから私に負けるんだ)
(何だとー!)
何やら少しずつ口論に発展し始めている...
その2名の声を聞きつけたのか、神社から1人の少女が飛び出してくる...
「御2柱方!近所迷惑になりますから!喧嘩はやめてください!」
長い緑色の髪に巫女服に身を包んだ少女は2名を注意をする...
怒られた2名はシュンと肩と落とす...
(喧嘩も何も...こいつが昔の事を持ち出すから...)
(それに普通の人間には私達の声は届かないし...意味がないというか...近所迷惑にならないというか...)
「...うう」
その2名を見た少女は戸惑うような仕草を見せるが、すぐに持ち直してパンパンと手を叩く...
「それももうすぐで御仕舞ですよ!御2柱なら次の世界でも信仰を獲得できますよ!さぁ!ご飯が出来ていますし!行きますよ!」
(はぁい!)
(すまん...)
3名はそのまま神社の中に入り、境内には静寂が訪れる...
幻想郷に新たな異変の火種が持ち込まれる...未知の未来はどうなるのか...それは誰にも分からない...
人でも妖怪でも神でも仏でも兵器でも...
完了です
ではこれにて